<モスクワのわるいやつら――さもしさがあふれる都市>
<すぐに破棄される約束>
・「あなたがホテルに迎えにきてくれたとき、あなたとタクシーを手配したコンセルジュ、そしてわたしの3人で、料金は3000ルーブルと約束しました。たとえ渋滞が発生し、どんなに所要時間が長くなっても、あなたは超過料金を求めないと約束しました。あなた自身が『一切、ありません』と明言した。それなのに……。余計な560ルーブルは、いったいなんの追加料金ですか」
たしかに560ルーブル(約1120円)は、それほどの金額ではない。だから、わたしはチップだと思ってあきらめることもできる。でも、納得できない。なぜかれは約束を一方的に反故にするのか、その理由をわたしは資したいと思った。
<約束するにはその条件を確定すること>
・わたしがロシア人同士の会話でよく耳にするのは、約束を守らなかったことをめぐるモメ事である。時々というよりも、「とても頻繁」に聞く。人間関係に亀裂が走り、罵り合う場面も、なんども目撃している。
<善意につけ込むロシア人>
・わたしは、いつもポケットに携帯電話を入れており、なにかあれば、日本大使館に通報できるようにセットしている。わたしが「大使館に電話します」と声を絞り出すと、5人の男たちはバラバラに立ち去っていった。こうしてわたしは、窮地を逃れることができた。
<賛美される他力本願の生き方>
・ところで、わたしはモスクワ滞在中、スーパーに立ち寄って食料品を買うことが多い。ただ、ソ連時代から、レジの店員には細心の注意をはらってきた。紙幣を差し出すと、お釣りをごまかすことが多いからだ。買い物客から小銭を巻き上げるのだ。とくに外国人は標的にされやすい。
露骨に「お釣りがないので、チューインガムをあげるね」と1、2枚を渡されることもたびたびある。
・店員のことばを聞いて、わたしはすぐにロシア人が日常しばしば口にするフレーズを思い出した。「他人のポケットに手を突っ込んで生きる」
ロシア人の多くはどんなに努力しても、豊かな生活を手にいれることはできない。富は特定の階層に集中しており、貧者はどんなに努力しても報われることはない確信しているのである。たしかに所得に応じて大きく三つの階層に分けると、「富裕層」は人口の10%を占めるのに対して、「貧しき人びと」は全体の半分に達する。
ロシア人は、プーチン政権が自分たちの生活を本気で改善してくれることはないと思っている。
<暴走する親切心>
<おせっかいな親切心>
・もちろん、ロシアにあるのは罪深い面だけではない。これまでに述べてきた側面とは真逆の、親切心に満ちたロシアが存在しているのも事実である。
意外に感じられるかもしれないが、ロシア人の気遣いは桁外れだ。
<欧米スタイルを崩すロシア流の親切心>
・いずれにしても、店員はわたしを相手に過剰な親切心を発揮したのである。このような親切心は、ロシア人に特有の性質によるところが大きい。モスクワのような大都市では、欧米化の波が押し寄せているが、まるでそれを打ち消すかのように、個人を相手に全開になるロシア人の善良さが日常的に姿を見せるのだ。
<注意はするけど、お好きなように>
・「ロシアで生活すると、あれもダメ、これもダメ、窮屈に感じるだけではなく、ロシアに不信感をいだくようになります。たしかに制約が多すぎますが、それでも乗り越える方法があります」
<絶望のロシア>
<不条理の国>
・2019年12月28日、わたしはロシアで新年を迎えるために、成田空港からモスクワ近郊の空港に降り立った。10時間を超えるフライトに疲れていたが、経験上、ここから入国にむけての試練がはじまる。
空港ビル内の長い通路を10分ほど早足に歩くと、少し広い空間に突き当たる。丸天井から白い蛍光灯の光がそそぐ入国審査場だ。
・よく観察すると、入国審査には一人当たり3分を要している。わたしは先頭から数えておよそ80番目なので、入国までに240分(4時間)待つことになる。とはいえ急いでいるわけではなく、焦ることもない。モスクワ時間は午後6時まえなのだが、日本時間では翌日の午前0時になろうとしている。たしかに眠気が増してきている。このまま無力感に打ちひしがれて無為の苦しみに悶えながら、時間をやり過ごすのも空虚なロシアらしさを体感できる。
<状況を突破せよ>
・「ロシアで生き抜くのに大切なことは、行列をいかに突破するかの知恵を身につけることです。どんなにたくさんの知識を得ても、りっぱな高等教育を受けても、ロシアではあまり役に立ちません。行列をくぐりぬけるのには、だれかに媚を売ったり、抗議したりするのは無駄です。たとえお伺いを立てても、「ダメ」と一蹴されるどころか、無視されてしまいます。とにかく、やみくもに突進することです。自力で、最悪な状況を突破することです」
<奇異なロシア>
・わたしでさえ、同じ場面に出くわすことは二度とないに違いない。一つひとつのシーンに反復性は期待できず、わたしの経験はいわばロシア社会のほんの小さな断片に過ぎないといえる。
しかし大切なことは、ロシアを訪問すれば、だれでも自分だけの不可解な一コマを体験できるということだ。一過性のオリジナルなロシアに偶然にめぐり合うことができるのだ。ロシアの手荒い歓迎に狼狽することはない。
(2021/1/16)
『中国の正体』
知ってはいけない「歴史大国」最大のタブー
黄文雄 徳間書店 2020/1/31
<本当の中国>
・歴史、民族、国家までも捏造して侵略を正当化してきた中国。孔子や司馬遷から始まるウソの歴史から、中国を野蛮な国にした儒教や漢字文明の害毒、何でも統一したがる中華思想の実態まで、目からウロコの「本当の中国」を解説する。
<世界の中国誤解が中国の増長を招いた>
<中国人の『中国自慢』はすべてがあべこべ>
・中国ほど、外国人が抱く幻想とその実態のギャップが大きい国はないだろう。中国については「悠久の歴史をもつ」「文化大国」「礼儀の国」などと称され、また中国人自身もそのようによく自国を自慢する。
中国人はよく自国のことを「地大物博」と称する。これは、土地が広くて資源が豊富であるということだ。
・最近は、人口が多いことまで自慢の一つとなり、「地大物博 人口衆多」という成句にもなっている。
中国に人口が多く面積が広いのは確かだが、しかし、資源が豊富だということはウソである。本書でも述べているが、歴代王朝では必ずといっていいほど有限の資源をめぐる内乱が起こり、干ばつや水害などの天災も加わって各地で農民蜂起や反乱が発生、全土を覆う天下大乱となって、王朝滅亡・王朝交代という「易姓革命」が繰り返されてきた。
その歴史のなかで森林伐採による禿山化、土地の砂漠化が進んできた。現在は砂漠化を食い止めるための植林事業も行われているが、工業化にともなう土地や水質の汚染が広がっており、ほとんど効果がない。
毛沢東も、かつて中国社会を「一窮二白」(貧しく、無知)と喝破していた。
しかも、現在は14億人もの「人口衆多」であるために、食糧不足やエネルギー不足が深刻化し、中国は食糧・石油の輸入大国となっている。
<なぜ世界は中国を見誤るのか>
・さすがに現在はそこまで中国礼賛はないものの、首相の靖國参拝を批判したり、日本の防衛力強化に反対したりする一方で、中国による尖閣諸島周辺への領海侵犯には口をつぐむなど、中国の主張に同調、あるいはお先棒を担ぐような日本の文化人やマスコミ、政治家も多い。
・また対外的には、国家の支援を背景とした国有企業が、鉄鋼などの過剰生産とダンピングによって国際市場を牛耳り、さらには国からの潤沢な補助金を元手に海外企業を買収し、その独自技術を吸い上げるといったことを、平気で行うようになってきた。
西欧諸国も、明らかに中国の本質を見誤っていたと言わざるをえない。
<中国の野蛮に気づき始めた世界>
・しかしいま、中国という国への大きな疑問が世界で噴出している。ようやく世界も、中国が「近代国家としての常識が通用しない国」だということに気がつきはじめたといえる。
2018年から始まった米中貿易戦争は、世界経済の秩序を壊す中国の横暴なやり口が、アメリカの安全保障を脅かすまでになったことが大きな要因である。
<中国に関する「常識」は間違いだらけ>
・本書では歴史的に「常識」となってきた中国についての通説や、日本人の一般的な中国理解について、そのウソや誤りを指摘し、日本のメディアや教科書などではまったく伝えられない中国の本性を解説したものである。
<封印された禁断の中国の歴史>
<なぜ孔子は大ウソつきか>
・中国人といえば、その国民性の一大特徴として、すぐ「ウソをつく」ということがあげられる。このようなことを述べると、すぐに「ヘイトだ」と批判されそうだが、しかし、これは中国に長年暮らしてきた西洋人も記録に残している。
<現代の中国人は漢人の「なりすまし」>
・いまでも少数民族を除く中国人は、みずから「漢人」を名乗る。だが、これは真っ赤なウソだ。後述するが、漢人は漢帝国の天下崩壊後、種の絶滅に至っている。
・中国政府は、「多党制は各党それぞれ党利党略に私利私欲ばかりだが、中国共産党員はすべて無私、人民専制(プロレタリア独裁)の制度がいちばんよい」と教えている。
<日本も台湾も「中国がつくった」というウソ>
・中国は昔から、日本人は中国人の子孫、日本国は中国がつくったと唱えている。尖閣諸島は中国の固有領土であり、「琉球回収、沖縄解放」まで叫びうごめいている。
それは決して日本に対してだけではない。インドやロシア、ベトナムに対しても、「固有領土」回収のトラブルが絶えない。BC(生物化学)兵器や核を使ってアメリカを取り戻し、第2の中国をつくるとも意気込んでいる。
<地名を克明とした中国の策略>
・中国人では「日本人は中国人を侮蔑するために『支那』という侮蔑語をつくった」などとされ、現在では完全に死語となり、タブー用語として言葉狩りが行われているが、それは真っ赤なウソである。
<中国歴代王朝のウソを暴いた清>
・なぜなら、清の盛世は、「人頭税」が史上はじめて減免され、人口が爆発的に増えたのに対し、明の時代は北京宮廷の文武百官から万民に至るまですみずみに朝廷のスパイ網が張り巡らされ、監視下に置かれて、人格から人権まで歴史上もっとも蹂躙された時代だったからだ。「胡化」と「華化」はそこまで違うのだ。
<なぜ中国はウソばかりなのか>
<「同」の中国と「和」の日本>
・それによれば、「同」を求めることで窮極的に至るのが、すべて同一の価値、いわゆる同倫同俗の世界となる。現代語でいう全体主義である。
<中国の歴史認識はなぜ間違いだらけか>
・しかし日本では、中国のノーベル平和賞受賞者の劉暁波のように、史観の違いによって逮捕・収監されることはない。それは国のかたち、そして国体と国格が違うからだろう。
・まして、中国のいわゆる「正しい歴史認識」とは、ほとんど架空のものといってよいものであり、政治目的のプロパガンダばかりである。韓国のほうはただの空想妄想であり、大中華に呼応追随しているだけである。
・「正しい歴史認識」は逆説で知り、「すべて正しくないと知れ」という見方まで勧めることは、一見して極言や極論にも聞こえる。「なかには正しいこともあるのでは」という考え方は日本人には多いが、しかし、それは甘い。
<「騙」は中国の特色文化>
・台湾と海外メディアによる調査では、中国のメディアのニュースを信じるのは1%くらいで、残りの99%は「都是騙人的」、つまりすべてが人騙しだと思っていることが明らかになった。驚くのは、まだ100人に1人は中国のニュースを信じていることである。台湾では、そういうフェイクニュースを「烏龍(ウーロン)記事報道」と称している。
<中国を蝕む「八毒」と「七害」>
・「すべてはニセモノで詐欺師だけが本物(一切都仮、唯有騙子是真的)」という諧謔は、中国一般民衆のあいだの流行語だけでなく、かつて朱鎔基首相(当時)まで口にしたことがある。
現在の中国では、ブランドものや薬品、食品から映画、音楽のDVDの海賊版のみならず、紙幣、免許証やパスポート、卒業証書など、ありとあらゆるものが偽造される。ニセモノで溢れかえっているのが現状だ。
そんなインチキな商売だけでなく、庶民がいつも利用する市場にも、いわゆる「八毒」が蔓延している。八毒とは、坑(陥れる)、蒙(ごまかす)、拐(あざむく)、騙(だます)、仮(ニセ)、偽(いつわり)、冒(なりすまし)、劣(粗悪品)のことを指す。
中国社会を蝕んでいるのは「八毒」だけではない。社会全体にはびこっているのが、いわゆる「七害」である。売春、密輸、賭博、婦女子誘拐、麻薬、詐欺、そして黒社会(ヤクザ)のことだ。
・詐欺は有効だが、有限だ。しかし、この有限な詐術が多くの人々を躓かせた。ことに善良な日本人は、中国人は詐術にあって騙されても、また懲りずに何度も騙されてしまう。騙す中国人の共犯者が、日本人のなかにいる。
・「詐欺師だけが本物」の中国では、替え玉受験と学歴詐称、著名学者や教授らの著作や論文剽窃、著書捏造、研究費の詐取などが氾濫している。もちろん、歴史学者は「正しい歴史認識」がむしろ本業にもなっている。そのうえ、エセ学者、エセ学術、ニセ情報が跳梁跋扈し、国際的には、ほとんど信用されていない。信用するのは、日本の進歩的、良心的といわれる文化人だけだ。大学教授、医師、弁護士、記者、文化人などは、中国の民間人からはもっとも軽蔑される人種である。
<「新聞はウソを伝える」が中国では常識>
・私が小学生の時代から高校に至るまで、「新聞」とはウソを書くものというイメージがあった。それが台湾人共有の「常識」だった。大陸から逃げてきた国民党の蒋介石・経国の親子が総統として台湾を統治する時代だったからである。人類史上最長の戒厳令下で、新聞だけでなく、電波禁止法まであった。
・私が高校を卒業するとき、父・蒋介石の後を継いで総統になった経国は、なおも300曲以上の「禁唱」、つまり歌ってはならない歌曲を発表した。「禁唱」といわれたら、声を出さないか、心の中に秘めて歌うか、あるいはトイレに隠れて小さな声で歌うしかなかった。友人の兄はバイオリンが好きで、たいていの曲が弾けた。だから、共匪(中国共産党)のスパイ容疑で逮捕され、獄死した。
私の青春時代は、謀反の計画を知って密告しないと、謀反者と同罪で捕まるという社会で過ごした。だから、学生と市民は街を練り歩きながら、「匪諜(スパイ)自首」の歌を大きな声で歌い、共匪のスパイが自首することをしかたなく呼びかけたものである。
密告によって捕まった人物の財産は全部没収された。当局は密告を奨励するため、没収財産の40%を密告者に渡していた。つまり、密告が手っ取り早い金儲けの手段となっていたのである。「密告業者」も百鬼夜行していた時代だった。私も「僥倖な生き残り」といえるかもしれない。
・ときは移り、世も変わる。1990年代に入って、私は29年ぶりに祖国の土を踏むことができるようになり、言論も随分と自由になったが、地下放送は300以上もあった。新聞はメディアとして没落しつつあったが、ウソばかりの「烏龍記事」が残り、テレビやラジオもウソとマコトを混同した「烏龍報道」を性懲りもなく伝えていた。「言論」はかたちを変えただけだったのである。
・どこの国でも、たいていの女性は男性に比べ、暮らしには敏感だ。1960年代に台湾から欧米へ留学生として出国した女性から話を聞くと、一様に「いままでの人生は『白活』につきる」という声が返ってきたものである。「白活」とは、「ただ生きているだけ」という意味だ。
私のような同時代人からすれば、じつに感無量のひと言である。しかし、「白活」という人生観でさえも、私には贅沢だった。私のある友人は、高校生のときに逮捕され、大学にも進学できなかった。入試のない「牢屋大学」で7年間も学んだのである。「僥倖な生き残り」の者たちは、「白活」以上の悲惨な暮らしだった。
私たちが生きてきた「中華民国」は自称「自由中国」である。しかし、「自由中国」なるものを僭称していたにすぎない。
・どういう中国であろうと、古代から今日に至るまで、国がもっとも恐れているのは、やはり「民」である。私の若いころは、「3人以上同行してはならない」という規則があった。もしその規則を破れば、謀反を企てたと見なされかねない。だから、3人以上集まらないように、いつも気にしていた。もちろん、中国にも同様なタブーがある。
・中国のインターネット警察は、人員300万人といわれているが、いわゆる「五毛党」を含めると、実質はもっと多い。五毛党とは、ネット世論を操作して誘導するために政府に雇われた「ネット工作員」のことだ。ネットで政府寄りの書き込みを一つすると、5毛(0.5元=約6円)もらえるということから、その名がつけられた。
<世界市場の80%のニセモノが中国産>
・中国は堂々たる「ニセモノ大国」として有名だ。世界でもっとも知られているのは、「世界市場に出回っているニセモノの80%が中国産」だということだ。ちなみに、その次は韓国産である。何でも「世界一」を好む韓国人だが、いくら頑張っても、ニセモノづくりは中国には敵わない。
ひと昔前なら、「世界一聡明なのは、大国人(支那人)、韓国はその次」だった。韓国が大国人の次に屈せざるをえないのも当然である。やはり国家規模も人口も中国には劣る。スケールがまったく違うからだ。しかし、ニセモノやパクリに関しては大差がない。大中華と小中華は、大と小の差だけだろう。
・「ないものはない」とまでいわれる中国である。ニセモノが出ないのは、核兵器と戦闘機や旅客機くらいだ。それ以外はだいたい揃っている。たとえば、戸籍名簿、営業許可証、伝票、領収書などの書類なら、多くの企業や個人が何かと便利なので、よく利用している。ニセ領収書やニセ伝票を使っていない企業に至っては皆無だろう。それは中国企業の慣行ともいってもよい。
大卒、修士、博士のニセ証明書となると、80元から100元で販売される。ニセの大学卒業証明書には、ご丁寧に4年間の成績表までついているというから驚く。そのサービス精神には頭が下がる。もちろん、購入者の希望に合わせて、どの大学でも大丈夫である。おもに就職活動に重宝されているようだ。ニセ結婚・離婚証明書は、未婚のカップルがホテルに宿泊する際に欠かせない。公安当局の取り締まり対策である。銀行融資の書類としても必要だ。
しかし、こんなニセ書類の氾濫に、もっとも頭を抱えているのが、日本の法務省だろう。ことに中国人留学生の書類審査では、どれがニセ書類でどれが本物か見分けがつかず、お手上げに近い。
・ある中国人から、「中国の食品については、中国人でもこわい。だから、日本での生活のなかでも、中国産食品はやたらに買わない」という話を聞いた。私は台湾に行くたびにお土産を買って日本に帰ってくるが、友人からよく「中国製だから買わないほうがいい」と注意されたものだ。
日本に来ている中国人たちも中国産食品を信用していない。たとえタダ同然の値段であっても買わないのである。ましてや、わざわざ日本で中国産食品を「爆買い」するバカはいないだろう。中国人たちは、自分たちの食品に、こんな評価を下している。
動物を食べたら、激素(生物ホルモン)がこわい。
植物を食べたら、毒素がこわい。
飲み物を飲んだら、色素がこわい。
何を食べたらいいのかわからない。
<ウソから生まれた人間不信の社会>
・「詐欺師だけが本物」の社会だから、人々はごく自然に「人間不信」になってしまう。当然、信頼関係は成り立たないので、一匹狼のみが生き残る条件になり、さらに自己中が加わって中華思想が生まれたのだろう。また、そういう社会の仕組みから、ウソが生きるための必要不可欠の条件となった。そんなメンタリティが国風となり、国魂にまでなったのである。こういう社会のエートスから言行に現れるのは、ウソにまみれたビヘイビアしかない。
もちろん、それは現代中国だけではなく、古代からすでに人間不信の社会だから、伝統文化にもなり、「騙文化」とまで呼ばれる。
・人間不信の社会だから、「男子門を出ずれば、7人の敵あり」という諺どころではない。「門前の虎」や「後門の狼」がうようよいるのだ。
それ以上にこわいのは、「門内」である。女子は男子どころではなかった。門を出なくても、門内では骨肉の争いが繰り広げられたからだ。それがいちばんこわい。
ことに中国社会では、古代から氏族、宗教、「家天下」とまでいわれる一家一族の天下だから、一家一族の絆は強いという「家族主義観」を常識としてもっている。しかし、それは常識であっても、決して「良識」ではない。一家一族にこだわるあまり、親族間の利害関係から権力争いに発展することも日常茶飯事だ。
中国では「妻まで敵」ということを知る人は少なくない。しかし、所詮「夫婦は他人」だ。中国では、親子、父子、兄弟姉妹の争い、いわゆる骨肉の争いが日常的だ。というよりも、利害関係がからむと必然的に起こるものである。母と子、父と娘でさえ、例外ではないのだ。
比較的よく知られるのは、則天武后が娘を殺して、皇后と王妃の座を争い、自分の腹を痛めた皇太子まで殺したことである。
・中国史を読むかぎり、骨肉の争いは決して希有や限定的な歴史ではなく、伝統の国風である。ことに上にいけばいくほど、骨肉の争いがより激しくなり、数万人もの人間が巻き添えになることもあるのだ。九族まで誅殺されることも少なくない。それが歴史の掟であり、定めでもある。
ニセ書類、ニセ札、ニセ学歴と、ニセモノなら何でもある中国では、ニセ銀行や周恩来のニセの公文まで登場した。ニセモノが氾濫する社会だけでなく、「汚職・不正をしない役人はいない」といわれる国である。国富を私財に換える役人も跡を絶たない。御用学者の鑑定によれば、その総額はGDPの十数%だが、実際はGDPの4分の1から2分の1にものぼるといわれる。
<「詐道」を貴ぶ中国兵法>
・中華世界最大の本質は、「戦争国家と人間不信の社会」として捉えるべきだ。仏教の因果、輪廻の思想でいえば、戦争が「因」で、不信が「果」である。
・だから、「鈍」と「誠」をモットーといっている日本人は、中国人にとって、もっとも「いいカモ」である。騙されても、また懲りずに騙されるというのも、この発想法の違いからくるものではないだろうか。
<「厚黒学」が「論語」に代わってはやる理由>
・では、なぜ近年になって、「厚黒学」ブーム、しかもビジネスの聖典として再燃したのだろうか。中国人の「欲望最高、道徳最低」の現実については、民間学者だけでなく、国家指導者に至るまで語りはじめた。
「厚黒学」はただ反伝統・文化の逆説ではない。中国ではこの厚黒史観が広く認知されるようになった中国人がますます面の皮を厚くし、腹黒く進化していることも実証され、実感もされている。このウソだらけの社会をいかにして変えていくかと思う中国人は、すでにいなくなった。中国から逃げ出せない人だけになったのだ。
いかに、「詐欺師だけが本物」の社会で厚かましく、腹黒くという処世術で生き残ればいいのか。「厚黒学」はまさしく処世の聖典としてブームとなったのである。
<香港と台湾問題から瓦解する中国>
<民主化した台湾と独裁に戻った香港>
・しかし、それこそ独裁政権の中国の反発するところであった。21世紀に残された覇権国家・中国は、日本列島とフィリピン諸島とのあいだにある島、台湾をあくまで「自国の領土」だとして取り込もうとしている。
<天意と民意をめぐる中台対立>
・1993年8月、中国政府は全5章、1万2000字からなる「台湾白書」を発表した。
・その白書いわく「台湾は古来、中国の領土である。古代には夷州、琉求と呼んだ。秦漢代には船による往来があり………」と書かれており、台湾は2000年前から中国の一部であったという主張である。
<史書には「台湾は古来、中国に属していない」と書いてある>
・前述したように、中国はさまざまな歴史書をもちだしては、台湾が中国の絶対不可分な一部だったことにこじつけようと必死だ。日本が遣隋使を派遣した隋代に1万人以上の兵を台湾に派遣したとか、17世紀には10万人もの中国人が台湾に渡っていただとか、明代から台湾は中国が統治していただとか、なんの根拠のない話をでっち上げる。
<中国は台湾を日本の領土と見ていた>
<「野蛮で危険な台湾などいらない」と中国は言っていた>
・現在の中国政府がなぜ台湾を自国の領土だと主張するのかといえば、それは清国時代の領土を継承した正統政府だと自認しているからにほかならない。歴史も言葉も異なるモンゴル地域、中央アジア、チベットまでも「中国」となっている現状がその結果である。ただし、外モンゴル、すなわちモンゴル国が領土に入らなかったのは、ソ連(当時)の力に勝てなかったからだ。
<中国の法的根拠「カイロ宣言」は存在しない>
・中国が台湾領有の根拠としているのが、「カイロ宣言」と「ポツダム宣言」である。
・先にあげた2000年の「台湾白書」には、
1943年12月、中米英3カ国政府が発砲した「カイロ宣言」の規定により、日本が奪い取った中国東北、台湾、澎湖諸島などを含む土地を中国に返還しなければならない。1945年、中米英の3カ国が調印し、のちにソ連も加わった「ポツダム宣言」は「カイロ宣言の条件を実行しなければならない」と規定している。同年8月、日本は降伏を宣言し………10月25日、中国政府は台湾、澎湖諸島を取り戻し、台湾への主権行使を恢復した。
と記されている。これははなはだしい曲解である。ところが、日本の有識者のなかには中国の身勝手な言い分をそのまま受け入れ、「1945年、台湾は日本から中国に返還された」と書く人がいて、腹が立つというよりあきれてものも言えない。
日本は占領地を「返還」などしていない。「放棄」したにすぎないのである。
<台湾関係法とアメリカの戦略>
・アメリカの「台湾関係法」は中国と関係を結ぶ一方で、東シナ海におけるアメリカの覇権を維持するためのものだが、その基本は「中華民国」が自由主義体制として認められたからである。
<台湾が大反発した中国の「半国家分裂法」>
・2005年3月、中国の第10期全国人民代表大会で「反国家分裂法」が決定された。この法はこれまでの「白書」の記述をさらに一歩進め、軍事力をもってしても必ず台湾を中国の一部とすることを示している。
<台湾人は「中国人」ではない>
・台湾は当然、中国の一部であるという中国の一方的な言い分を考えなしに天真爛漫に信じている一部の日本人は、中台統一を支持することこそリベラルだと思っているから困る。しかも、「同じ中国人なのだから、統一したいと思っているだろう」と言う者も多い。
・しかし、いったい台湾人民と大陸の「中国人」が同じだと言えるのだろうか。台湾では明らかに大陸の人種とは異なる東南アジア系の人種がもっとも古い住民である。彼らのことを台湾では、もともとの民族という意味で「原住民」と呼んでいるが、中国では「高山族」と呼び、日本は台湾を統治していた時代、「高砂族」と呼んでいた。
台湾というこの島の歴史と文化を考えるとき、原住民の存在を抜きにしてはならない。ところが、かつて中国の国家最高指導者であった江沢民は「高山族は人口のたった2%にすぎない」として無視し、そのほかの多数が「同じ中国人」だからという理由で統一の正統性をでっちあげた。
<台湾島の中の台湾民族主義の大中華民族主義>
・彼らは規律正しい日本軍とは正反対で、豊かな台湾人たちの生活を見て目がくらみ、台湾人の財産を掠奪しはじめたのだ。これは敵の財産は奪ってよいという中国古来の弱肉強食の戦争と同じ観念である。
末端の国民党軍兵士たちだけではない。国民党軍は指令第一号の降伏受け入れという命令を拡大解釈して、旧日本軍の軍用機、戦艦をすべて接収し、20万もの兵士を2年間支えることができるだけの装備や軍需品、医薬品、食糧を国民党軍のものにした。さらに、台湾総督府をはじめとする官庁、公共機関や施設、学校、官営企業、病院などのすべての資産を接収し、そのうえ日本人経営者のもっていた企業や個人財産などまで「敵産」だといって取り上げた。これらを金額にすると109億990万円、全台湾の資産の60~80%にものぼると推定されている。
・豊かだった台湾はたちまち疲弊し、1946年、有史以来と思えるほどの飢饉に見舞われ、台湾人はイモと雑穀で飢えをしのぐまでになった。
陳儀長官が台湾にやってきてから、全台湾産業の90%が国民党に奪われ、高等教育を受けた人材6万3000人余りが失業に追いやられた。そのうえ中国の悪性インフレが台湾に持ち込まれ、紙幣を無限に乱発して終戦から2年後の1947年には10倍以上もの額になり、台湾人の生活はたちまち困窮したのである。