(2024/8/17)
『図解 自衛隊の秘密組織 「別班」の真実』
時任兼作 宝島社 2023/12/15
・ドラマ「VIVANT」で描かれた「別班」。はたして実在するのか。自衛隊の高官たちは存在を否定するが、その真実に、防諜組織に詳しいジャーナリストが迫る。
<まえがき>
<「別班」の存在と、スパイ組織>
・2023年のドラマで大きな話題になったのがTBSドラマ「VIVANT」だ。その主人公は自衛隊の秘密組織「別班」のメンバーであるという設定だった。そして、その「別班」を取り上げた講談社現代新書『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』(石井暁著)も18年発行の本だが、ベストセラーに名を連ねた。
本書では、これらの話題を受けて、本当に別班は存在するのか。その歴史と最新情報をビジュアルと共に解説する。
<世界各国で古代からスパイは存在していた>
・古代からスパイは存在した。『旧約聖書』にはさまざまな間諜(スパイ)の話があり、それはすでに創世記に登場する。当時、エジプト国境では間諜の出入りを警戒していたことがそこには書かれている。
紅海を渡り、出エジプトを果たしたモーセは、カナンの地を目指す。その遠征を始める前に、モーセは先々の情報を得るために12人の密偵を放っている。彼らは後にイスラエルの12部族の長となるのだが、つまりは情報を得ることがいかに大切かということを、その時代から彼らは理解していたということだ。
中国の春秋戦国時代にも、スパイは多用されていた。
<ヨーロッパで生まれた近代的情報組織>
・古代からスパイ活動は常に政治と戦争の場で重視されていたが、中世ヨーロッパでは特にそれが顕著で、そのスパイ活動の伝統が、近代スパイを生み出すことになる。
<現代社会では、敵国だけではなくテロ行為を行う個人も調査対象に>
・確かに、侵略行為をするためにも情報は使えるし、侵略のために戦争をするということもないわけではない。それでも、やはり戦争の本質は自己保存という消極的なものなのだ。
・世の中が情報であふれているような現代では、スパイ活動もその雑多な情報の多くを解析しなくてはならず、大変である。
・また、以前であれば、敵国や周辺国のみを調べていればよかったのだが、現在ではテロ活動が横行し、庶民の中に敵が混ざり込んでいるため、情報組織の仕事は非常に困難になりつつある。
<2023年の最高のドラマ>
<ドラマ『VIVANT』と「別班」>
<日本にも、法を逸脱してまで、国を守る組織が存在していた。それが「別班」だ。はたして、その存在は必要なのか、否なのか。本書を通じて考えて欲しい課題だと思う。>
<「別班」という存在に惹きつけられる日本人>
・その面白さを作り出したのが、やはり「別班」という存在だ。日本のなかで、シビリアンコントロールから逸脱したスパイ組織が存在するという、それ自体が驚きであった。
<日本を守る存在がやっぱりいた!>
・ノベライズ化された文庫のなかで、この作品の監督の福澤は「平和ボケしたって散々言われているけど、やっぱり日本をちゃんと守ってくれる人たちはいるんだ」と述べている。
・はたして、「別班」の存在を私たちは、どう捉えるべきなのか。スパイと聞くとワクワクしてしまう日本人。だからこそ、本書を通じてより深く、その存在を考えて欲しい。
<自衛隊の秘密組織「別班」の歴史と最新情報>
<別班は本当に存在するのか? その真相に迫る!>
<「日本のスパイ組織」の栄光と挫折>
<第2次世界大戦の敗北によって、壊滅した日本のスパイ組織。いまだに、戦前のレベルに戻っていないという。>
<原爆投下を察知していた日本のスパイ網>
・こうしたなか、海軍は米国の外交暗号「グレイ・コード」はもちろん、より高度な「ブラウン・コード」も解読できるようになっていた。
また、陸軍は「ストリップ暗号」と呼ばれた最も難解な暗号の解読にも成功した。これらの背景には、米国の大使館などに侵入し、コードブックなどに関する情報を盗み出すといった工作があったともいう。
<海軍は米国のより高度な暗号も解読できた>
<米国で活躍した海軍と外務省のスパイ>
・諜報体制すなわちヒューミントも充実していた。「戦後、諜報活動から一切、手を引いてしまった日本からすると、信じがたいほどの活躍ぶりと言える。陸海軍はもちろん、外務省も積極的に行っていたし、それぞれが連携もしていた」
<防諜が起こした悲劇「宮澤・レーン事件」>
・一方、世界各国に大使館を備え、グローバルなネットワークで諜報活動を行っていた外務省も負けてはいない。
・日本国内に目を転じると、特別高等警察が防諜機関としての役割を果たしていたという。
・「こうした諜報体制のもと、開戦前もその後も日本は奮闘した。奇襲攻撃に成功した真珠湾の背景には、日本人スパイの活躍があったし、意外と知られていないが、空襲警報もそうだ。警報は米軍の通信を傍受し、いつ爆撃があるか察知した上で発していた」
<日本料亭から米太平洋艦隊をウォッチ>
<映画のような防諜戦が繰り広げられた真珠湾>
・真珠湾では、まるで映画のような諜報戦が展開されていたという。
<ダブルエージェントに翻弄された日本海軍>
・しかし、米国はもちろん負けてはいない。日米間では熾烈な諜報戦が展開された。
「真珠湾攻撃は米国のミスが幸いしただけで、日本の暗号自体は破られていたのは周知の事実だ。しかも、ここに至るまでの過程では諜報員、組織に関する情報も漏れ、米国での摘発まで始まっていた。米国の放ったダブルエージェントに見事やられてしまった結果だ」
・ともあれ、ラトランドの英国召喚によって日本海軍の諜報網は大打撃を受けたばかりか、のちに明らかになるラトランドの背信による情報将校の相次ぐ逮捕によって機能不全に陥ってしまったのである。
<マンハッタン計画を打電していた海軍>
<通信傍受も最後の最後まで行っていた>
・また、外務省は1941年12月末、『東機関』なる諜報組織を設立。中立国スペインを利用して諜報活動を行うべく、ユダヤ系スペイン人を中心にスパイをリクルートし、翌年6月までには、ワシントンやニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコといった主要都市を網羅するスパイ網を作り上げた。
・「腕力の前にまずは知力。しっかりしたインテリジェンス機関なり組織を整え、正確な情報を日本独自で得ることこそ、真にいま求められていることだ」
「実際には起こるかどうかわかりもしない戦争に備えて軍備に多額のカネを使うよりもよほどリーズナブルであるし、的確な情報を得てから軍備を整えても間に合うのだから」
いまの日本には国のために十全に機能する「スパイ組織」がない――。
外事関係者は、そう指弾すると同時に、新たなる組織の創設を訴えかけたわけである。
<自衛隊に二つあった「別班」>
<人気ドラマ『VIVANT』の「別班」とは別に、もうひとつの非公然組織の「別班」が存在していた。その組織とは何か。>
<日米の密約で作られた公然の「別班」>
・かつて自衛隊には実は二つの「別班」があった。
いずれも米国の都合で作られたようなものであるが、そのひとつが人気ドラマ『VIVANT』に登場し、注目を集めた自衛隊の秘密情報部隊たる「別班」。正式名称は「陸上幕僚監部第二部情報一班特別勤務班」だ。米軍の情報部隊と連携して非公然活動を行っていたのは事実ながら、法の枠を超えるようなことはなかったという。
・ドラマでは、自衛隊員の精鋭が集められ、国家の危機を未然に防ぐため、法の枠を超えて行動するような描かれ方をしていたが、そんなことはない。
<シギントを行う非公然組織>
・そして、もうひとつが「二別」と呼ばれた「別班」。やはり陸上幕僚監部に設置されたもので、「第二部別室」というのが正式な部署名だ。
「『別室』すなわち『二別』は通信傍受などシギントを行う非公然組織」
・「「別班」にしろ「二別」にしろ、もはや、その名称はなくなっている」と言い、フィクションの世界との違いを強調したのだった。
<驚異的なメール・ハッキングソフト>
・このシステムを開発したのは、パランティア・テクノロジーズなる企業。
・2011年5月、CIAが血眼になって探していたイスラム過激派『アルカイダ』のトップで、米同時多発テロの首謀者と目されたオサマ・ビンラディンがパキスタンにおいて発見され、射殺されたのも、このシステムがあったおかげだという。
<太刀洗通信所にあるインターネット防諜組織>
<米国のために米国が提供したシステム>
・パランティア社は、これを機に情報機関の御用達になった。CIAを筆頭にNSA、FBI、さらにはDIAなどが顧客となったのである。
・こうなると、各者と密接な関係にある電波部は米国のために動かざるを得ない。米国から提供されたシステムを米国のために日本で使っているというのが現状だ。
<「別班」の誕生>
<「別班」は米国の要請に基づいて日本の赤化を防ぐために作られた。そして、米軍と連携し、対共産圏を視野に数々の情報工作を展開することになった。>
<朝鮮戦争が生み出した「別班」>
・終戦からほどなくして「別班」は産声を上げた。「朝鮮戦争が誕生の背景に色濃く見て取れる」と自衛隊関係者は語る。
<共産系組織にも潜入工作>
・また、「ムサシ」の呼称は、その後、消えるが、ここで養成された20数名の陸自隊員は2等陸佐の班長のもと、世に知られることなく非公然のベールを被ったまま米軍と連携し、対共産圏を視野に数々の情報工作を展開することになったとされている。
<さらなる国会質問>
<「しんぶん赤旗」報道のあと、40年の時を経て共同通信が報道した「別班員」。それを巡って質問主意書が提出された。対する政府の回答は……。>
<陸幕監部が独断で行った諜報活動>
・「別班」の存在が明るみに出たきっかけは「しんぶん赤旗」で幕が上がった国会質問だったが、それから40年程を経て、再び国会で取り上げられることになった。今度は「共同通信」がきっかけであった。
<「『別班』は存在しない」が政府の回答>
・「別班」が存在しない以上、海外における活動もないし、調査もしないという木で鼻をくくったようなそっけない答弁であった。
<「別班」のいま>
<「別班」を巡る国会質問の数年後、「別班」は名前を変え、米軍とは切り離され、規模も縮小され、もともとの機能はなくなり、現在に至っているという……。>
<陸幕監部指揮通信システム・情報部地域情報班>
・「こうした状況下、海外に拠点を置いて活動するようなことはない。ありえない。米軍と袂を分かって以降やってきた海外情報の間接的な収集を細々と続けているだけだ」
<「特機」なる非公然組織>
・その点を踏まえれば、「別班」は「二別」よりもはるかに暗い闇の中で名実ともに続いていると言うべきなのかもしれない。
<「日本のスパイ」の活動と非公然組織>
<非公然組織のスパイ活動とは、どのようなものなのだろうか。秘密部隊について、関係者に取材した。>
<警察庁警備課にあった「サクラ」>
・「日本のスパイ」網の主軸とされる公安警察の秘密部隊のことである。
<公安の秘密部隊の歴史は戦前の内務省の第4係に遡る>
<精鋭部隊は全国から集められた百数十人>
・半ば公然化しているという公安警察の秘密組織だが、非合法活動をも辞さない構成メンバーについては秘匿が堅持されているという。
<別人に成りすまし、潜入工作>
<大使館員のウォッチ 米軍基地からの密航>
・この工作は24時間体制で行われることが多いため、メンバーは役所に出ず、直行直帰というのが原則。
・「どちらの工作にも欠かせないのは、身元を明らかにしない、すなわち秘匿すること。そのために、彼らは別人になりすます。言うなれば、“背乗り”だ」
<潤沢な資金、年収1000万円超え>
・また、それぞれ特殊な任務柄、潤沢な資金措置もあるとした。
<潜入先企業からの給与と警察のダブルインカム>
<警察以外の「スパイ組織」>
・公安警察の秘密部隊は本格的な「スパイ組織」と言えよう。
・「穏やかな情報収集活動だ。場合によっては、新聞や雑誌、インターネットを検索し、それらをまとめたり、分析したりといった活動もある。この世界流に言えばオシントということになる」
<外務省にある「国際情報統括官組織」>
<内閣調査室は定期的にCIAからブリーフィング>
・「もうひとつ付け加えると、内閣情報調査室はCIAから定期的にブリーフィングを受けるなどしている」
・外務省にも「スパイ組織」らしきものがある。「国際情報統括官組織」のことだ。
・「あくまでも在外公館からの公電などの情報をベースに活動しているに過ぎない。」
<世界の主要国のスパイ組織と日本との関係>
<米国 CIA、NSA、DIA>
<世界最強ともいえるスパイ組織を持つアメリカ。その核がCIAだ。そのCIAを中心に解説する。>
<CIA(中央情報部)>
・「2万人以上の要員を擁する巨大組織ながら、機動力に優れている。ここ数年においても、世界情勢の変化に即応すべく、柔軟に組織改編を行ってきている」
・作戦総局は、いわゆるスパイ活動を行うケース・オフィサーなどの集まりだ。
・情報総局は分析部門。
・科学技術総局はスパイ向けの装備の開発や民間技術の活用を行う部門。
・支援総局は人事や経理などを担当する間接部門である。
・デジタルイノベーション総局はCIAの最新の総局であり、CIA全体のイノベーションを加速しています。
・ミッションセンターは、国家安全保障上の課題に対処するため、すべての政府機関の構成員と緊密に連携します。
<NSA(国家安全保障局)>
・CIAはヒューミントを主としているが、こちらはシギント組織。国防総省傘下にあり、本部に4万人、海外の傍受施設にも2万人以上という最大規模の人員を誇るものの、秘密が多い。
<DIA(国防情報局)>
・NSAと同じく国防総省傘下にあるスパイ組織だが、こちらは軍事にかかわる情報の収集や工作などを行っており、ヒューミント色が強い。人員は1万数千にもおよぶ。海外駐在武官は、この管轄下にある。
・他方、軍事の観点からMASINTにもかかわっている。電磁波、放射線、金融反応、赤外線、地震波、音響、大気や地層成分などの物理・化学的指標を測定して分析するというものだ。
<日本との関係性>
・以上が米国の主なスパイ組織だが、CIAが日本と関係が深いのは周知の事実だ。
そもそも、戦後、自民党に活動資金を提供することなどを通じて親米化工作を主導したのがCIAであり、今日の政府も、この延長線上にある。
・「ここ数年、CIA本部のアジア担当の幹部から連絡が入ることが増えてきている。より正確には情報提供の“要請”と言うべきか……」
・「防衛省情報本部の大刀洗通信所で運用されている驚異的なハッキング・システムを提供したのはNSAで、これによって得られる情報は、もちろん吸い上げている」
・「そもそも情報本部がDIAに倣って創設されたわけだし、さらに遡れば、その前身たる『二別』も、それから軍事情報にかかわるヒューミントを展開する『別班』もDIAのもとに統合された陸軍の情報部隊の要請で作られたもの。こうなるのは自明と言えよう」
<英国 MI6、MI5、GCHQ>
<007のジェームズ・ボンドを生み出した英国のスパイ組織は第2次世界大戦の軍事情報部から生み出された。>
<MI6(秘密情報部)>
・主な任務は英国の国益に資するべく、安全保障、経済分野、地域紛争、国際テロリズム、大量破壊兵器拡散、国際犯罪等の分野にかかわる情報を、海外における諜報活動によって収集してくることだ。事前の許可を得ていれば、非合法活動(暗殺等)も可能であるとされる。スタッフは2000人程度。
<MI5(保安局)>
・英国内の防諜を一手に引き受けている機関で、日本の公安・外事警察のような存在ながら、司法警察権を有さないスパイ組織として設立された経緯があり、外国のスパイやテロリストの逮捕はロンドン警視庁が担当している。
<GCHQ(政府通信本部)>
・MI6、MI5がヒューミント機関であるのに対し、こちらはシギント機関。職員数は1万人強。
<日本との関係性>
・日本との関係で言うと、SISとの公安当局とのつながりが深い。
<韓国 国家情報院>
<金大中拉致事件を引き起こしたKCIAが母体。その後、2度の名前の変更を受けて現在の国家情報院となった。その権限は非常に大きい。>
<1999年に国家情報院に>
・もともとは1961年に創設された中央情報部で、1981年に国家安全企画部に改称されたのち、1999年以降、国家情報院となった。人員は1万人程度。
・ほかのスパイ組織とは違い、捜査権を有しており、権限が大きい。また、秘密保持を徹底しており、身元を明かすことは親族らに対しても許されず、嘘発見器による検査なども定期的に行われるほか、外国人との結婚は認められない。
・「金大中拉致事件もそうだが、それから数年後の1979年10月にはKCIAの金載圭部長がソウル市内にある秘密施設で朴大統領を射殺している」
<日本との関係性>
・「日本の政府職員や外交官に対し、乱暴な諜報工作をしかけているのは、つとに有名だ。その結果、不審死を遂げた者もある。また、慰安婦問題など、日韓で争点となっていることに対する熾烈な工作も目立つ。日本国内での非合法活動をも辞さない。『友好国だ』などと安閑としている場合ではない」
<中国 国家安全部、公安部など6組織>
<スパイ組織の能力と規模を飛躍的に増大させている中国、その6つの組織を解説する。>
<国家安全部>
・国内だけでなく、国外でもヒューミントやシギントを展開する総合スパイ組織。
・「諜報員以外の協力者の獲得にも力を入れており、海外に赴く研究者、ビジネスマン、留学生、果ては旅行者まで範囲を広げてエージェントを募り、非合法活動も辞さない情報活動を行わせている」
<公安部>
・治安維持およびそのための情報収集活動や摘発といった外事・公安部門のほか、刑事警察部門、交通警察部門なども擁しているが、外事・公安部門に比重が置かれている。
・「かつて上海総領事館員が公安部の仕掛けたハニートラップにかかって、最終的には自死を遂げてしまうという悲劇があったが、ここ最近、日中を行き来する人物や在中の企業人らの逮捕が目立つ。いずれも公安部が関係している」
<元総参謀部第二部(聯合参謀部情報局に再編)>
・ヒューミント機関であり、軍事的な偵察部門のほか、海外で情報収集や工作を行う駐在武官を管理する部門などがある。
・「日本にも経済商務部や教育部、文化部などに文官を偽装して数多く配置されている。それらが先端技術の窃取や企業買収、政治工作など各種工作にも手を染めている」
<元総参謀部第三部(聯合参謀部戦場環境支援局に再編) >
・シギント機関であり、12の局と3つの研究所を持ち、通信の傍受や暗号の解読、偵察衛星による情報収集などを行っている。
・「偵察衛星のセクションでは画像分析が行われているが、リアルタイムの全天候型の情報収集が可能となり、解析能力も著しく向上しており、欧米との格差は縮まりつつある」
・ちなみに、北京電子兵器廠、海鷗電子設備廠、第56研究所などがよく知られており、また、通信傍受のための語学教育の場としては洛陽外国語学院が有名だという。
<元参謀部第四部(聯合参謀部ネットワーク電子局に再編)>
・中国に対する通信傍受の防護なども行っているが、電子諜報戦部隊というのが実態。旅団や連隊を有し、サイバー戦を展開している。ハッキングも含まれる。そのための教育機関もあり、電子工程学院がよく知られている。
<統一戦線工作部>
・中国のために国内外を問わずともに戦おうという思想のもと、とりわけ在外華僑を利用し、秘密裏に諜報活動や盗聴・通信傍受などを行っている。
・「活動している者の数は全世界で5000万人に達し、日本では70万人を超えている。また、その多くが営んでいる中華料理店は往々にして情報担当官とエージェントの接触場所として利用されている。もっとも、エージェントは居住国の接触場所には現れない。通常、第三国の中華料理店が用いられる」
<ロシア FSB,SVR、GRU>
<KGBを擁し、冷戦時代はアメリカと諜報合戦を繰り広げたロシア。その力がまた復活しつつある。>
<FSB(ロシア連邦保安庁)>
・KGBは国内部門と国外部門に分けられたが、その国内部門。
<SVR(ロシア対外情報庁)>
・旧KGBの国外部門。
<GRU(連邦軍参謀本部情報総局)>
・ソ連崩壊後も存続し続けている軍のスパイ組織。ヒューミントと同時に、偵察衛星等を用いたシギントも行っている。また、特殊部隊スぺツナズの運用も管轄しており、破壊工作も辞さない。活動範囲は広く、組織は巨大である。
<日本への工作>
・「日本に駐在し、工作活動を行っているのはSVRとGRU。それぞれの大使館のスタッフに偽装していることが多い。
最近も通商代表部の職員に偽装したSVRの要員が携帯電話の職員に接触し、機密情報を得ていたとして事件化したが、この要員は科学技術に特化した情報を収集する『ラインX』という部署の一員」
<北朝鮮 朝鮮人民軍偵察総局など>
<北朝鮮を支配する金正恩。北朝鮮には通称「3号庁」舎と呼ばれるスパイの巣窟があるという。その中心が朝鮮人民軍偵察総局だ。>
<朝鮮人民軍偵察総局(偵察総局)>
・諜報に加えて拉致や暗殺、破壊工作をも辞さないスパイ組織。サイバー攻撃なども担当している。また、経済的に困窮する北朝鮮の事情を背景に、密売・密輸による外貨獲得活動なども行う。
<国家保衛省>
・スパイや反体制派の摘発を主任務とする防諜・治安機関だが、朝鮮民族や脱北者の多い中国の東北地方、香港、マカオ等でも活動しているとされる。
<朝鮮労働党統一戦線部>
・中国と同様、韓国や日本などに居住している同胞をネットワーク化し、情報収集や宣伝・破壊工作などを行っている。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)はその有力ネットワークのひとつである。
<日本への工作>
・「統一戦線部には日本人拉致の実行役を務めた在日の秘密組織『洛東江』をはじめ、在日朝鮮人らで構成される秘密組織がいくつもある。その組織は偵察総局と同じく、非合法活動を辞さない組織だ。
<スパイになろう!>
<高学歴でないとなれない ⁉>
<裏の世界に生き、国家を支える孤独でニヒルな職業。それがスパイである……というのは戦前までのこと。今やスパイはエリートが独占する高級官僚である。>
<スパイを職業とする人々は日本にもかなり存在している。>
・日本でも、トータルするとおおむね1万人前後は情報組織の人間ということになる。
<防衛省情報本部に入るには二つのルートが存在する>
・さて、それでは本命の防衛省情報本部である。ルートは二つ。語学系の職員として入るか、技術系職員として入るか。
・警察庁等も同様で、日本のスパイは、何よりも高学歴なエリートでなくてはならないのだ。CIAなども、ハーバードなどの学閥が問題視されているようであるが、スパイも今や厳然たる官僚ということなのだ。世の中、結局はお勉強ができないとだめということだ。
<世界各国のスパイ組織>
<フランス 対外治安総局>
<小粒でも働きのある効率的な情報機関>
<フランスの対外治安総局は、小規模ながら素晴らしい働きぶりを見せ、中小国の情報組織の良い手本となっている>
<13世紀から続くフランスの情報組織の伝統>
・フランスの情報組織の歴史は古く、ブルボン王朝のルイ13世の時代にまで遡る。
・ルイ15世の時代には、「国王の秘密情報部」と呼ばれる組織が設立されている。
・ナポレオンの時代になると、さらに情報組織は重視され組織が強化された。第1次世界大戦でも彼らは大いに活躍する。第1次大戦でのフランスの勝利は、彼ら情報部の働きによるものとの見方もある。
<国防省が管轄する小さくも機能的な情報機関>
・対外情報機関として根幹に位置付けられているのは、国防省が管轄している対外治安総局(DGSE)である。
・同局は、人的インテリジェンスのヒューミントや、電子情報収集のシギントなど、アメリカなどではそれぞれ別組織が担当している活動をひとつの組織で行っている。
<ドイツ 連邦情報局>
<参謀本部の伝統を受け継ぐ防諜組織>
<第2次大戦後のドイツは、分割され、東西冷戦の最前線に立たされた。 そのため、ドイツ連邦情報局は、対ソ防諜を主任務として成立した。 >
<ドイツの情報機関の中心 歴史ある連邦情報局>
・各国同様、ドイツの情報機関も複数存在する。首相府が管轄する連邦情報局、内務省が管轄する連邦憲法擁護局、国防省管轄の軍事保安局の3つの機関が主たるもので、ほかに連邦電子情報保安局、連邦国防軍管轄の軍事保安局の3つの機関が主たるもので、ほかに連邦電子情報保安局、連邦国防軍情報センター、連邦刑事局などが存在し、業務を補完している。
・連邦情報局は、ドイツ帝政時代の参謀本部第二部が源流であり、その流れを受け継いで存在している。
普仏戦争の勝利など、輝かしき歴史を持つドイツ参謀本部であったが、いつしか肥大化した参謀本部は政治力を行使し始めてしまう。結果、外交的に回避可能であった第1次世界大戦に突入。
・ナチス・ドイツの時代においては、情報組織は親衛隊の情報部門のSD、国防軍の情報部門であるアプヴェーア、秘密警察のゲシュタポを生み、1939年には国家保安本部を設立させ、ナチスによる独裁体制に情報組織は用いられた。
<旧参謀本部のゲーレンが対ソ防諜を目的に設立>
・旧参謀本部のラインハルト・ゲーレンは、敗戦後は米ソの対立が政治の主たるテーマになると予想し、ソ連に関する資料を隠匿してアメリカ軍に投降。戦後になると、アメリカ軍と情報部の後押しを受け、対ソ連防諜組織「ゲーレン機関」を設立。東西ドイツが分裂した後は、冷戦の最前線で諜報活動を行った。
・しかし、連邦情報局には英米仏露などの情報機関と比べると圧倒的に立ち遅れている点が指摘されている。それは、連邦情報局は、いわゆる工作・諜報活動を一切行わないということだ。
<イタリア 対外情報保安庁/国内情報保安庁>
<盗聴事件後に一新された新しい情報組織>
<ローマ文明を生み出した偉大なる国イタリア。近代のイタリアは文化の国としてのイメージが強いが、古代より続く軍事国家としての伝統も消えてはいない。>
<防諜能力の低いイタリアの情報組織>
・戦後、1965年になってイタリアは国防情報庁を設立し、近代的情報組織を手に入れた。