(2024/7/16)
『空腹が人を健康にする』
「1日1食」で20歳若返る!
南雲吉則 サンマーク出版 2012/1/16
・「1日1食」にすれば、
① 体の傷んだところが修復される
② 自分の適正体重になる
③ 皮膚年齢がどんどん若返る
< 空腹になると発動する遺伝子がある!>
・「どんどん栄養を摂れば元気になれる、というのは古い考えである」。いえ、それどころか、「空腹でお腹が鳴ると、体にいいことが細胞レベルでどんどん起きて、若返りの効果がある!」とまでいい切れるのです。
私が今のような「1日1食」のライフスタイルになったのは10年ほど前、45歳の頃からです。
・試行錯誤をする中で、肉食をやめて野菜中心の食生活に変えたところ、あんなに頑固だった便秘があっという間に治ったのです。
・余談ですが、肉を食べなくなったら、なんと体臭がなくなりました。肉食を好む人やメタボの人は皮脂の脂分が多いのですが、それが酸化して過酸化脂質になると独特の臭いを発します。「ノネナール」という、いわゆる「おやじ臭」です。それがほとんど消えたのです。
・さらに「一汁一菜」で食事の量を減らしたら、体重は一直線に下がってゆきました。体調もどんどん良くなっていきました。栄養面から見ても、質素に見える食事の中に含まれている「完全栄養」を摂取することで、体が活性化することがわかりました。ただ毎食一汁一菜を用意するのは大変です。
・そこでいろいろ工夫してたどりついたのが、現在の「1日1食」生活です。以来10年あまり、健康状態はすこぶる良好、体重も62㎏を維持しています。何よりも肌が若々しくなり、人間ドックで血管年齢が26歳といわれるようにまで若返ったのです。
・それを払拭してくれたのが、近年発見された「延命(長寿)遺伝子」です。あらゆる動物実験で、食事の量を4割減らしたほうが、1.5倍長生きすることが証明されたのです。それだけではありません。食事の量を減らしたほうが表情も生き生きとして毛並みも良く、外観が若く美しくなることがわかったのです。
・「見かけ」というのは、すごくわかりやすい健康の指標です。
・肌が若々しくきれいでウエストがくびれていること。それが「1日1食」生活のめざすゴールなのです。
<食べないことがなぜ健康にいいのか?>
<人類の生き残りのカギは「生命力遺伝子」>
・でも、この地球上に人類の祖先が出現してから17万年の歴史をたどってみたとき、人間が三食、満腹するまで食べられるようになったのは、わずかにここ数十年のこと。どんなに長く見積もったとしても、せいぜい100年にも満たない、つい最近の話です。
・毎日3度3度、満足に食べられないことのほうがむしろ当たり前だったからこそ、「十分な栄養を摂ることが健康の秘訣」などという神話が生まれたのでしょう。
・つまり、人類の歴史は、つねに飢餓との闘いだったといっても過言ではありません。
・つまり、人類存亡の危機を何とかかいくぐって、生き延びてきた者の子孫である私たち現代人には、飢えや寒さや感染症のときこそ生きる力が湧いてくる「生命力」というものがあるのです。
その生命力の源こそが、私たち人類が危機を乗り越えることによって獲得してきた「生命力遺伝子」なのです。
生命力遺伝子は一つの遺伝子ではありません。飢餓に打ち勝つ「飢餓遺伝子操作」、飢餓状態において生き残る「延命遺伝子」、飢餓状態のときこそ出生率を高める「繁殖遺伝子」、感染に打ち勝つ「免疫遺伝子」、癌と闘う「抗癌遺伝子」、老化や病気を治す「修復遺伝子」など数え切れないほどの遺伝子が、私たちの体には備わっています。
ただやっかいなのは、飢えや寒さの状態におかれないと生命力遺伝子は働かないこと、さらに飽食状態では逆に、体を老化させ、出生率を下げ、免疫が自分の体を攻撃するほうに働いてしまうことです。
<水を飲んでも太るワケ>
・そう、私たちの体はちょっと食べるだけで太るようにできているのです。そうでなければ、私たちの祖先は飢餓との闘いの歴史を生き残ってこられなかったでしょう。ですから、少しの量の食事でも太ってしまう体質は人類の進化の結果なのです。
食事を効果的に脂肪に変えて温存する「飢餓遺伝子」は、その働きをズバリ示して、「倹約遺伝子」と呼ぶこともあります。
・一般的には、食べたぶんだけ内臓脂肪がつくのが自然の摂理にかなっています。それによって、人類はこの17万年を生き抜いてきたのです。
<細胞を修復してくれる「サーチュイン遺伝子」>
・「飢餓遺伝子」は、わずかの食事から最大のエネルギーを蓄えることができる、いってみれば「省エネ遺伝子」です。
・それが、最近にわかに注目を集めている「延命(長寿)遺伝子」、正式名「サーチュイン遺伝子」です。
・その発見のきっかけは、そもそも「私たちの体は、空腹であればあるほど生命力が活性化し、若返るのではないか」という仮説でした。
これまでも仏教の「断食」やイスラム教の「ラマダン」に見られるように、飽食状態よりも小食であるほうが長生きすることが経験的にわかっていました。そこで実際にあらゆる動物でエサの量を変えて生存期間を観察してみたのです。
するとアカゲザル、ラット、モルモットなど、あらゆる動物実験において、エサの量を40%カットしたときが一番延命効果が高く、なんと寿命が1.4~1.6倍にも延びたのです。
・こうした実験結果から、生物が飢餓状態におかれた場合、何とか生命を維持しようと活性化する遺伝子がどこかにあるのではないか。そんな予測のもとに研究を続けた結果、見つかったのが「サーチュイン遺伝子」です。
さらに調べていった結果、この遺伝子は、空腹状態におかれたとき、人間の体内に存在している50兆の細胞の中にある遺伝子をすべてスキャンして、壊れたり傷ついたりしている遺伝子を修復してくれる、ということが明らかになりました。
これは、寿命だけでなく、同時に「老化や病気をくい止める働き」にも関与しているということを示しています。
・それは「生命力遺伝子」を活性化させることこそが、私たちに長寿と健康をもたらしてくれるということ、そしてこの「生命力遺伝子」は飢餓のときにしか発現しないということです。
これが、本書のテーマである「1日1食健康法」の根拠となっています。
昔から、「健康の秘訣は腹八分目」として満腹を戒めてきたのは、このような遺伝子をしっかり発現させるようなライフスタイルを心がけろといっているのです。
<食べすぎこそ病気の始まり>
・毎日欠かさず、三度三度お腹いっぱい食べることが、本当に体にとって健康的なのかと問われれば、明らかに「NO」といえます。栄養は足りなければたしかに病気になりますが、体内の生命力遺伝子はその病気を治癒・予防するために働きます。
しかし食べ過ぎたときに働く生命力遺伝子はほとんどないために、飽食と誤った食生活によって病気になっている人が、あとを絶たないのです。
・なぜこんなに「外見」のことばかりいうかというと、外見の若さと美しさこそが、健康のバロメーターにほかならないからです。
<満腹には適応できない現代人の体>
・私たちの体は環境に適応するため、つねに最適化されるようにできています。こうした人類の適応力、環境への最適化は、その環境下において最高の力を発揮します。「生命力遺伝子」についていえば、飢えと寒さにおかれたときほど活性化するというわけです。
・私たちの体は飢えには強いけれども、満腹には適していないのです。
<糖尿病は人類の進化の証 ⁉>
・近視は病気だと思っている方が多いでしょうが、じつは環境への適応なのです。
・糖尿病とは、あらゆる捕食器官が退化していく病気です。
・必要のなくなった器官は、どんどん退化してくのが自然の摂理なのです。
・同様に、氷河時代を生き延びるためには、ヒトにとって体毛は必要なものでした。
・捕食する必要がなくなった人類にとっては、手足も感覚器官も、もはや不要となって退化していく。ある意味では飽食への急激な環境変化に対する「適応」といってもよいでしょう。
<糖尿病でやせる本当の理由>
・つまり糖尿病とは、飽食という新たな環境に適応するために生じた「いくら食べても太らない体」をつくるものだともいえるのです。
・一般的に進化というと、何かすばらしい方向に身体器官などが変化することだと考えられがちです。けれど本来的な意味では、糖尿病や近視のように、環境に適応した状態への変化は「適応」と呼び、それが遺伝子変化を伴えば「進化」と呼ぶのです。
<危機が迫ると脳細胞まで活性化する>
・脳細胞は、1日に数万個ずつ壊れているといわれます。そんな勢いで壊れ続けていたら、早晩、脳細胞はなくなってしまうのではないかと心配でしょう。
けれども実際には脳細胞は脳全体で1000~2000億個もありますし、そのうち実際に使われている脳細胞は、全体のわずか3%だといわれています。生涯にわたって毎日数万個ずつ壊れるとしても、脳全体で見れば、ほんの数%に過ぎないのです。
とはいえ、脳細胞がそれを上回る速さでどんどん壊れてしまえば、認知症が生じることはたしかです。
ところが人間の体というのは、本当によくできているものです。海馬と呼ばれる部分に幹細胞が存在し、神経細胞を再生することが最近の研究で明らかになりました。
・ただし不摂生を続けていれば脳細胞は増えません。どんなときにこの脳細胞が増えるのかというと、なんと「飢えと寒さ」にさらされたときだというから驚きです。
・海馬の働きをひと言でいうと、脳の中での記憶の取捨選択です。
・夢とは、実際の体験を順不同につなぎ合わせたものです。だから支離滅裂で意味は通じませんが、まったく体験したことのないものは登場しません。
フロイトは夢判断の中で「夢とは抑圧された願望と潜在思考の合わさったもの」といっています。
<寒いとなぜ体がガタガタふるえるのか>
・先述したように、私たちの体は、少しの食べ物を摂取しただけで、脂肪を蓄えるようにできています。脂肪には「皮下脂肪」と「内臓脂肪」があり、女性は皮下脂肪型、男性は内臓脂肪型です。
・一方、寒いとき私たちは体をガタガタふるわせますが、これは筋肉を収縮させることによって、筋肉の中のグリコーゲンという糖分を燃やして熱を発しようとしているのです。ところが糖分は薪ストーブと同じで燃焼効率が悪く、1gを燃焼させても、わずかに4kcalにしかなりません。
・そこで冬眠する動物や赤ちゃんは、もっと燃焼効率の良い発熱体を利用するようになりました。それが内臓脂肪です。脂肪は灯油やガソリンと同じように効率が良く、1gを燃焼させると、9kcalの熱を生産することができます。
つまり、飢えや寒さといった非常時には、脂肪がいちばん効力を発揮するというわけです。
・飢えと寒さの中で、それでも人類が生存を続けられたのは、何も食べるものがないときにも耐えられるような体のメカニズムを備えていたからです。それが、体内に内臓脂肪を蓄えさせておくという機能でした。
<必要以上に蓄えられている内臓脂肪>
・赤ちゃんが寒さでふるえているのを、見たことはないと思います。なぜなら、赤ちゃんは内臓脂肪のかたまりだからです。
同様に、冬眠する動物も内臓脂肪のかたまりで、食べるもののない冬の間じゅう洞穴の中で眠って過ごしても凍死することがないのです。
・それにもかかわらず、私たちの体は食べ過ぎて内臓脂肪をたくさん蓄えてしまっていますから、暑さ寒さに関係なく一年じゅう内臓脂肪を燃やし続けなければならない状態にあるともいえます。
<メタボが寿命を縮める本当の理由>
・このように、本来、内臓脂肪は一時的な「飢えや寒さ」に備えて体内に蓄えておくべきものでした。ところが飽食の現代では、過剰に蓄えられた内臓脂肪が、四六時中、燃え続けるようになってしまいました。
・物が燃えるときには必ずスス(煤)が発生します。内臓脂肪も例外ではありません。このススが、じつは私たちの体に、大きなダメージを与えているのです。
内臓脂肪が燃焼する際に発生するススを、医学的には「サイトカイン」と呼びます。このサイトカインはそもそも原始的な動物に備わっている免疫物質です。
・外から菌や毒物などが体内に入ってきたとき、リンパ球はこのサイトカインという攻撃物質を出して、それらの敵に立ち向かいます。サイトカインは、外からの悪者に体の中から対抗するためのいわば「武器」ともいうべきものなのです。
ところが、このサイトカインには、自己と外敵との見分けがつかないという弱点があります。そのため、敵が体内に入ってきたときに、敵に向かって放った弾で、自分自身をも傷つけてしまうということになるわけです。
・体内で内臓脂肪が燃焼している最中にも、内臓脂肪から「アディポサイトカイン」というススが発生し、私たちの血管の内皮細胞をさかんに傷つけています。傷ついた血管にできたかさぶたは血管を堅く変化させて「動脈硬化」を起こすのです。
アディポサイトカインには、血管の柔軟性を保ち、動脈硬化を予防する「善玉アディポサイトカイン」と、血栓(血液のかたまり)をつくりやすくし、動脈硬化を促進させる「悪玉アディポサイトカイン」があります。
正常な状態では、それぞれの分泌はバランスよく保たれていますが、内臓脂肪が蓄積した状態では、善玉の分泌量が減り、悪玉が過剰に分泌されてしまいます。
・メタボ体型の人が動脈硬化を起こしやすく、心臓病や脳卒中を起こす割合が非常に多いというのも、内臓脂肪を燃やす際に出るススである悪玉アディポサイトカインが、みずからの血管をいためつけているからにほかなりません。
・何万年もかけて獲得した遺伝子の最適化は、急激な環境の変化には、すぐに適応できないというのがいちばんの欠点だといえるでしょう。
<「1日1食」は究極の健康法>
・冬眠する動物のオスは内臓脂肪型ですが、メスは皮下脂肪型です。というとメスだって冬眠するのに不思議に感じるかも知れません。
メスが内臓脂肪をもたない理由は、内臓脂肪に代わるほかの発熱体をもっているからです。それは何でしょう?
じつは赤ちゃんなのです。赤ちゃんは内臓脂肪のかたまりだといいました。冬眠時のメスは必ず妊娠しているので、それが発熱体となり、内臓脂肪を蓄える必要がないのです。
・性交してもなかなか妊娠できないのは、人間とパンダぐらいのものです。
・では、内臓脂肪を減らすためには、具体的にはどうしたらよいでしょうか。飢えと寒さにさらされればいいのです。
といっても、そんな過酷な環境に身をおくことは困難です。誰でもできる生活環境はないか、医者の立場からそう考えて提案するのが「1日1食健康法」です。
食事の回数を減らすことで食事の量を減らします。内臓脂肪を減らし、空腹状態において「サーチュイン遺伝子」を目ざめさせ、健康で若々しい肉体を手に入れることができる、究極の健康法です。
もちろん、いきなり「1日1食」にする必要はありません。ふだん1日3食食べている方は、まずは1日2食から始め、徐々に1日1食生活へと移行していけばいいのです。
<あなたも必ずできる「1日1食」生活>
<食事の量を減らすカンタンな方法「一汁一菜ダイエット」>
・ダイエットの基本は、摂取カロリーをコントロールすることです。
厚生労働省では、カロリー計算表を出して、換算表を見ながら1日に摂取する食事を計算するように推奨しています。
・カロリー計算は医学生のときに勉強しましたし、医者になってからも糖尿病や肥満の人には、栄養科に頼んでカロリー計算による食事指導を行ってきました。しかし自分でやってみて、こんなに面倒で煩わしいことを、よく今まで患者に強いてきたものだ、と心から反省しました。
・そこで注目したのが「一汁一菜」です。古来、日本では質素な食事をよしとする習慣がありました。これは前述してきた観点からも、じつに理にかなっているといえます。品数で摂取カロリーをコントロールすることができるからです。
さらに今までと同じものを食べていても、茶碗と皿のサイズを小さなものに変えることによって、簡単にカロリーを減らすことができます。
・規則正しく一汁一菜ダイエットをして、腹六分目を達成すれば、太っている人は必ずやせます。また、やせ過ぎの人は、逆に太ることができるでしょう。
一般的にダイエットというと、やせることだけをさすと思われがちですが、本来のダイエットとは、「正しい食事療法」のことです。その人にとっての適正体重になることが、ダイエットの本当の目的なのです。
<1日1食にムリなく移行するのは>
・さて「一汁一菜ダイエット」によってダイエットの楽しさを学んだ方は、いよいよ「1日1食ダイエット」に進みましょう。
1日1食を基本とする食生活にする場合、メインの食事をいつするかは、大きな問題です。なぜなら、食事が1日1回になると、その1回の食事がよりいっそう大事なものになるからです。
・医学的にも、胃を休めるために絶食が必要です。水分補給だけにしておきましょう。
胃潰瘍で入院すると、何日間も絶食して点滴をされます。みなさんは点滴によって潰瘍が治ったと思っていますが、あれはただの水です。絶食によって消化管を休めることが体の治癒力を引き出しているのです。
・間違っても甘いお菓子は食べないこと。少量でもインスリンという消化ホルモンが出て、内臓脂肪が増えますし、腹持ちが悪くなり、ますますお腹がすきます。
・昼食後、眠くならないようにタバコをスパスパ吸ったり、濃いコーヒーを飲んだりしているサラリーマンもよく見かけますが、こんなに体に悪いことはありません。
・もし食べるなら、GI値(グリセミック指数)が低いもので、血糖値が一気に上がらないようなものをおすすめします。主食は、白米や白パンよりも、玄米や全粒穀物からつくられたパンなどにします。また糖やデンプンよりもタンパク質を主体にしたほうがよいでしょう。
・果物の皮には、傷を治す「創傷治癒作用」と体の細胞を酸化から守る「抗酸化作用」があるので、これを食べていれば傷ついた消化管の粘膜も肌も治療されますし、老化から身を守ってくれる。もちろん、カゼもひきにくくなります。
・日中お腹がすいたときにはそういった果物や全粒粉のクッキーを少量食べてください。眠気を催さずに空腹を感じなくなります。
もし今消化器系の調子が悪いという人であっても、あとで述べる「一物全体」の完全栄養による「1日1食」の食事にして、早寝早起きを52日間(体の細胞は52日間で一新されます)実行すれば、適正体重になって体調が良くなります。それも、外見上も若々しく見えるようになるという、うれしいおまけつきです。
<一日のいつ食べるのがいいか>
・「1日1食」にする場合、その1食はいつ食べるのか。私がおすすめするのは、1日の最後を締めくくる「夕食」です。
・お腹がすいているとき、脳はもっとも活発に働きます。
<1日1食なら、何を食べてもOK>
・基本的に、食べたいものであれば、何をどれだけ食べてもOKです。
・私の場合、何を食べたいかと聞かれれば「玄米と具だくさんのみそ汁、野菜のおひたし、一夜干しの魚があればいいが、なければ納豆」と答えます。
<お腹が「グーッ」と鳴るのを楽しむ>
・私は朝食を摂ることはほとんどありません。昨晩の消化し切れていない食事や、血液中に残ったアルコール、そして内臓脂肪を消費して朝食代わりとしているのです。
・日中は、お腹がすかなければ何も食べない。のどが渇かなければ何も飲まない。つまり、自分の体の声に耳を傾ければいいということ。逆にのどがからからに渇いたと感じれば飲んでもいいし、お腹がグーッと鳴ったら少しは食べてもかまわないのです。
<空腹時にお茶やコーヒーを飲んではいけない>
・空腹時に濃いコーヒーを飲んだりすると、吐き気やめまいがして、よだれが出たり、下痢をするようなことがあるのは、副交感神経への刺激作用があるから。
・食後にお茶を飲むと、お腹がスッとして満腹感がやわらげるのは、このタンニンの作用で消化管の粘膜が変性を起こして消化吸収障害が起こるから。
・どうしてもお茶が飲みたいという場合は、カフェインの入っていない麦茶やゴボウ茶にします。
・ゴボウ茶の主成分は、「ポリフェノール」です。今でこそポリフェノールといえば、赤ワインに豊富な成分で、健康にも良いことが知られています。
<「1日1食」でなぜ栄養不足にならないのか?>
・栄養について考えるときにいちばん大事なことは、栄養は「量」ではなく、「質」だということ。たくさん食べたからといって、栄養が満たされるわけではありません。
・では、どうしたらよいか。食べる量は少なくても、すべての栄養素をバランスよく含んだ「完全栄養」を摂ることが重要なポイントとなります。
完全栄養とは、前にも触れたように、牛乳や卵などがその一例です。
<「一物全体」で完全栄養を摂る>
・だとすれば、魚を丸ごと一尾食べるのが、もっともヒトの体を構成している栄養素と近い、バランスのとれたものということになります。
・同様に、人間が食べるものも、自然界の命を丸ごといただく「丸ごと食」が、生命体としてのバランスをとるのにもっとも望ましいということになります。
<野菜に捨てるところなんかない!>
・野菜を食べるにあたっても、「一物全体」「医食同源」の考え方は同じです。基本は、「葉ごと皮ごと根っこごと」。つまり、捨てるところは何ひとつなく、丸ごとすっかりいただくという考え方です。
<青魚の脂はなぜすぐれているのか>
・ところで、魚のどの部分に、いちばん栄養があるかをご存じですか?
植物の場合、外界とのバリアになっている「皮」の部分に傷を治す効果のある成分が多く含まれています。
・ウシやブタなど、私たちが食する動物は、体温が37度前後に一定している恒温動物です。この恒温動物の脂肪は、室温ではラードとなって固まってしまいます。そうした固まりやすい脂を摂ると、体内の血管の中でかたまりとなり、動脈硬化を起こすもとになってしまいます。
・一方、変温動物である魚は、冷たい海水の中でも、その脂が固まることはありません。当然、室温で脂が固まることはなく、人間の血管の中でも固まったりはしません。
それどころか、血管を詰まらせる悪玉コレステロールと置き換わり、血液をサラサラにする働きがあるということが注目されています。とくに魚の皮の下のぬるぬるの脂肪の部分には、動脈硬化を改善するうえで非常に有効なEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれています。
それらは青魚と呼ばれるサンマやサバにとりわけ多く含まれていることが知られています。
・なぜなら、サプリメントというものは、一部分の栄養だけが濃縮している部分栄養だからです。サプリメントも薬のひとつです。良い作用もあれば副作用もあります。作用が濃縮されているということは、副作用も濃縮されているわけですですから危険です。もし副作用がないサプリメントなら、良い作用もないということです。
・よく雑誌などの広告に「レモン500個分」というようなうたい文句がありますが、レモンは1個摂れば十分で、500個分摂った栄養はみんな尿中に排泄されます。また脂溶性の栄養なら体に蓄積して中毒を起こします。
何事も、過ぎたるは及ばざるがごとし、自然の生き物から必要最小限の栄養をいただくようにしましょう。
<本当に1日30品目食べなければいけないのか?>
・毎日、食事のたびに30品目を摂るために、あと何品目と数えるのも、カロリー計算と同じように面倒です。それに実際問題、ひとり暮らしの人が、1日30品目をそろえるのは不可能です。
また、「5色バランス健康法」といって、食材を赤・白・黄・緑・黒の5つの色に分けて、毎日、5色の食材を食べることをすすめる食の健康法も知られています。
・同様に、「マゴハヤサシイ」という標語にして、「マ→豆類、ゴ→ゴマ、ハ(ワ)→わかめ(海藻類)、ヤ→野菜、サ→魚、シ→シイタケ(キノコ類)」の組み合わせを考えた食事をすすめる健康法もあります。
・正直なところ、そうしたことに気を使うくらいなら、食材は何品目もいらない。その代わり食べるものは「一物全体」、つまり、これまで述べてきたように、魚であれば煮干しやいりこを含んだ小魚、小エビ、小イカといった海の幸を「皮ごと骨ごと頭ごと」全部食べる。野菜も「葉ごと皮ごと根っこごと」の丸ごと食べる。「穀物は全粒で」といったことを徹底させたほうが、よほどバランスのとれた食事になります。
・繰り返しいいますが、栄養ということを考えた場合、私たちの体を構成しているすべての栄養素をほぼ同じ比率で摂るということが、もっとも大事なポイントになるのです。
<メタボにならないための4つの条件>
・メタボの三高をご存じでしょうか。「高脂血症」「高血糖」「高血圧」です。
・医者からメタボといわれて、あわてて高脂血症の薬や降圧剤を飲まないでください。それを飲み始めたら、死ぬまで飲み続けなければなりません。その前に、自分でできることがあるでしょう。そうです。生活習慣、とくに食習慣の改善です。
メタボがあなたに訴えかけているメッセージは次のようなものです。
その1、食べ過ぎない
その2、脂を摂り過ぎない
その3、砂糖を摂り過ぎない
その4、塩を摂り過ぎない
・精をつけるために肉を食べなさい、ともいわれました。日常的に、ほとんど肉を食べることができない環境下にあったときには、決して間違いではなかったのでしょう。
でもそれは、コレステロールが非常に欠乏していた時代の話です。
・コレステロールはわざわざ口から摂らなくても、体の中で合成することができます。それを口から過剰に摂れば、肥満のもとになり、動脈硬化の原因にもなります。
現在のような飽食の時代にあって、中高年のメタボ世代の人々にとっては、これ以上、肉を口にする必要はないのです。
また、コレステロールを必要以上に摂ることで性ホルモンが過剰になれば、閉経後の乳癌、男性の前立腺癌など、性ホルモンによって発症するとされる癌が増えることになります。
つまり、コレステロールの摂り過ぎは、「癌、脳卒中、心筋梗塞」という、まさに日本人の三大疾患のもとをつくっているというわけです。
・つまり、癌の発生率は、体質や人種の問題ではなくて、食生活を中心とした生活環境によるものだと考えられるわけです。
食の欧米化によってコレステロールが増え、そのことによって閉経後も性ホルモンが増加して乳癌を増やしているのです。
<砂糖の摂り過ぎは確実に寿命を縮める>
・本来、食事は空腹でお腹がグーッと鳴ったら食べればいいのです。ところがお腹がすいていなくても、時間がくれば習慣で食べているという人が、圧倒的に多いのではないでしょうか。
・ケーキなどの砂糖たっぷりの甘いものを食べると、体がホカホカしてきて眠くなってきますが、それは血糖値が上がってきたからです。
この砂糖が体を老化させ、命を縮める原因となっていることをご存じでしょうか? タバコの害は知られていますが、砂糖はタバコにも匹敵するほど、健康に害を及ぼすものなのです。
スイーツを食べると、血糖値はだいたい140mg/dℓ以上に上昇します。それはタバコを4本吸ったときと同じくらいに血管の細胞を傷つけます。
こうした糖のもつ毒性は「糖毒性」と呼ばれ、動脈硬化や脳卒中、心臓病などの原因となるだけでなく、内臓脂肪を増やすので、ダイエットの大敵にもなります。
・コレステロール値を上昇させる肉や乳製品、砂糖たっぷりのスイーツを日本人の5倍も食べているアメリカ人は、乳癌の発生率も日本人の5倍、前立腺癌になる確率も5倍です。
・それだけに、本当にスイーツには気をつけていただきたい。血糖値を急激に上昇させてしまう砂糖を摂取して体を傷つけるようなことは、いますぐやめていただきたいのです。
・そのために高血糖はまず膵臓に対しても強い攻撃を行います。
・インスリンがどんどん働くと血糖値が下がる代わりに内臓脂肪がどんどん蓄えられて太ってしまいます。それを防ぐためにβ細胞を破壊して太らない体を獲得するのです。それが糖尿病です。
糖尿病になったら、次の標的は捕食器官です。食事を摂るための機能がすぐれていれば、どんどん食べて太ってしまうので、捕食器官を攻撃して太らないようにするのです。
そのために、まずは目の網膜です。網膜を破壊して失明させればエサを見つけられなくなります。次は腎臓です。腎臓を破壊すれば糖が尿中にどんどん出ていってしまうので太れなくなります。そして足です。足の血管を破壊して足を腐らせてしまえば、もう獲物を追っかけることはできなくなってやせてしまいます。
「糖毒性」は、甘いものをやめられないあなたをこれ以上太らせないための、生体の防御反応なのです。