<●「少子高齢化」「人口減少」でも経済成長できる

・先進主要国の児童手当や税制支援を見てみると、たとえばイギリス、フランス、ドイツ、スウェーデンには所得制限なしの第一子月額2万円程度の制度があります。アメリカにはこうした制度はありません。

 ただし、アメリカには児童税額控除があり、イギリスにも児童税額控除、フランスには世帯単位で課税するN分N乗方式、ドイツには児童手当との選択制で児童扶養控除があります。スウェ-デンには児童税額控除はありません。

 先進諸国ではこのように、児童手当は児童税額控除と一体運営されるのが普通です。所得制限がないのはそのためです。一方、日本では、児童手当は第一子原則1万円で所得制限があり、税制支援は扶養控除が担います。つまり児童手当と税制支援は併存していて一元化されていません

 

・欧米で児童手当と税制支援が一体となっているのは、税と社会保障が一体運営で、税と社会保険料は一体化されて歳入庁で運営されているからです。児童手当は社会保障関連支出として解釈し、税と一体運用する方が合理的だから、こうした体制がとられていますちなみに先進国のなかで、税と社会保障を一体運営する歳入庁が存在しないのは日本だけです。

 

・いわゆる「異次元の少子化対策」は「異次元の消費増税」につながる可能性があるわけですが、私はそもそも少子化対策の必要性自体に疑問を持っています。

 

・人口が減少し続けないためには最低でも1.8の出生率が必要だとされていますが、この水準は、出産を希望する女性が全員出産できた場合に達成される数字で、現実的なものではありません。出産は自然の摂理で、1を割ることは珍しく、1.5くらいでも問題はないとされています。

 

その国の生産力を見るときには、その国のGDPを見るのが普通です。GDPは簡単にいうと「平均給与×総人口」です。

したがって、人口が減ればGDPが減るのは当たり前だと言うことができるのですが、重要なのは、厚労省の前提に従えば「予想通り2070年に8700万人に人口が減るとすれば、GDPは実際にどれくらい減るのか」ということです。

私が持っている計算式に従って先に結論を言ってしまうと、人口が8700万人に減少した場合に、それがGDP成長率に与える影響は最大で0.7%です。人口の増減と一人あたりGDPの増減はほとんど関係がありません。人口の増減はマクロ経済指標にはほとんど影響しません

 

・人口減少が経済にマイナスに作用する要因になるという理論は確かにあり、「人口オーナス」によるGDPの押し下げ効果がよく知られています。

 オーナスとは「負荷、重荷」といった意味ですが、これはたとえば、まだまだ働きたいという高齢者を積極的に登用すればいいし、それこそAIを利用して生産性を上げればいいだろうという話になります。

 

・人口減少が経済に影響するというのは単なる思い込みです。身近な生活にも影響はありません。経済の基本からすればそう結論せざるをえず、世界のなかで人口減少している国は20カ国程度ありますが、経済成長率を見たとき、日本はここ30年ほどのデフレ不況で最低の成長率にあるものの、他の国々はちゃんと経済成長しているのです。

 

<●外国人労働力は本当に必要か

・2023年9月28日に、日本商工会議所が7月に全国の中小企業3120社を対象に行ったアンケートの結果を発表しました。人手不足状態を確認するためのアンケートで、約7割、68%の中小企業が「人手不足である」と回答したのですが、これは2015年の調査開始以来最悪の数字であるとのことでした。

 

・移民に関するコストについては、企業の便益は安価な労働力、それにより経済成長のマクロ便益はありますが、日本人の労働を奪うのでマクロ便益は軽微になります。一方、安価な外国人を受け入れるので社会保障はかなりマイナスとなり、日本全体ではマイナスです

 

一般に人手不足は悪いことではありません。人手不足によって賃金アップがうまれるからです。また、「人口オーナス」という理論があるのと同時に、人口減少を「人口ボーナス」として捉える理論もあります。

 

簡単にいうと、人口減少が経済成長に影響があるとしたところで、それは人間の発想で克服することができるということです

 

・人口減少は数字で明らかなように確かに起こっていることですから、社会問題と関係づけて説明することで危機を煽り、一般人の興味を惹くことができます。しかしそれは、因果関係を科学的に説明することなどできない手前勝手な理屈にあるにすぎません。

 

<●AIが国家運営をすれば、戦争がなくなる?

・もしもAIが国家運営をすることになれば戦争はなくなります。

 

・歴史的に見ると、戦争は少なくなってきています。

 

そうしたところにロシアのウクライナ侵攻が起きたわけです。ロシアの行為がいかに暴挙と呼ぶにふさわしいかということでもあるでしょう

 

・政治家の仕事はAIにさせてしまえというのは一理あります。しかしAIはどこまでいっても人間がプログラムするものであるにすぎませんから、当然バイアスがかかります。

 

政治家は、今の国家運営体制が間接民主主義だから存在します。

 

・政治家が暴走する可能性は常にあります。そしてAIはどこまでいっても不完全であり、政治家に政治を委ねる仕組みが残ります。委ねられた政治家にはある程度の自由裁量権がありますから、戦争の可能性も常にあり続けるということになります。

 

行政を叩くだけでは進展なし

<●マイナンバーカード騒動から見えること

・2023年に入って以降、マイナンバーカード問題なるものが世間を騒がせているようです。

 

・実際、今までの保険証では本人確認のミスが年間約500万件あり、その処理コストに1000億円ほどかかっているという厚労省のデータもあります。

 

・マイナンバーカードは、リアルの身分証であり、かつネット上での身分証です。

 

・また、返納することのデメリットとして、政府の情報をチェックするのがたいへんになるということが挙げられます。

 

マイナンバーカードの返納は、意味がないのと同時に、享受すべき利便性を失うという大きなデメリットを負ってしまう行為であるといえるでしょう。

 

<●「官僚が悪い」という思考停止に注意

・よく「官僚」という言葉が権力の横暴といったイメージをかぶせられて使われることがありますが、官僚は決められたルールに従って仕事をこなしているだけです。

 

しかし日本は、憲法に非常事態条項が書かれていないたいへん珍しい国です。憲法上の規定がない以上、世界各国が速やかに行ったような個人の行動制限、あるいはロックダウンと呼ばれる都市封鎖はできません。

 

・新型コロナ禍当初に速やかに鎖国できなかったのは官僚の怠慢だとか業界に対する忖度だとかという声も一部に聞かれましたが、それは妥当ではありません。有事対応の憲法改正ができていないところにその根本の原因はあります。行政の不具合をなんでもかでも官僚ないし役人のせいとするのは思考停止であり建設的なことではありません。

 

<●本来、政治家の仕事は“立法”である

・問題はここです。立法府である国会あるいは地方議会の議員であるにもかかわらず、法律を書くことができない政治家が数多く存在するというところに問題があります

 

今のところは8割以上が閣法ですから、官僚が自らに都合の良い法案ドラフトを書くことができるチャンスが多いというだけの話です。議員立法に優れた法案が多くなって取り扱われる数が増え、いずれ内閣提出の法案がなくなってしまうようなことになれば、裏の権力者などと言われてきたような官僚のパワーは終息します。

 

<●地方分権の原則「ニアー・イズ・ベター」

・地方分権の基本的な考え方として、「ニアー・イズ・ベター」という原則があります。国民の身の回りのことは国民に身近な行政機関、つまり地方自治体が行った方がいいという意味です

 

・2000年に施行された地方分権一括法で、従来よりも国が自治体の事務に対して関与する度合いが減り、自治体による法律の解釈権や条例の制定権は大きく拡大したと言われています。

 

・よその国が決めるのはおかしいと考えるのが普通で、アメリカ合衆国建国の契機となったアメリカ独立戦争(1775~1783年)は、アメリカに住む自分たちの税金をイギリス本国が決めているのはおかしい、ということから起こった戦争です。

 

・イギリスは民主主義国家ですが、意外に中央集権的です。税金のほとんどは中央政府が決めます。イギリスに地方税はほとんどありません

 

・イギリスに言わせれば「日本の地方議会は、無駄事だから解散しなさい」ということになるでしょう。

 

<●意味がない、「年金が破綻する・しない」議論

・つまり、現役世代1.8人に、「高齢者1人」の年金を払っても困らないくらいの所得があればそれですんでしまう話です。問題になるのは人の数ではなく、あくまでも個々の所得なのです。

 

結論を先に言っておきますが、人口が減少しようが高齢化が進もうが年金はめったなことでは破綻しません

 

・年金制度は、どれだけ多くもらえるかとといったことよりも、「制度として安定している」ことが重要なのです。制度的にに安定していれば年金は確実にもらえます。

 

・お金の問題である限りは、年金制度の安定性については、そのバランスシートで考える必要があります。

 

賦課方式は、制度がずっと続くことを前提とします。そして、「負債」と「資産」は必ず一致するように計算されますから、「年金制度に債務超過は発生しない」ということになります。

 

・未来永劫合わせた年金資産と年金負債でつくられたバランスシートは《「保険料」=「給付額」》という式によって、「資産」と「負債」は必ず一致することになります。

 

あらゆる面で、国民皆年金を積立方式でスタートすることは難しかったのです

 

・ともあれ年金破綻を主張する人たちは、右記の実情を知らないまま主張しているか、あるいは都合の悪いところをあえて無視してミスリーディングしているといえるでしょう。

 

・年金に関して議論するとすれば、議論のポイントは、年金は破綻するのかしないのかではなく、「不足額を減らすスピ―ドを上げるのか下げるのか」という制度改正でしかありません。

 

・公的年金は「ミニマム」つまり最低限の保障です。

 

・年金制度は、負担額の低さと給付額の低さのバランスがとれていることが重要なのです。このバランスがとれていれば、日本の年金制度はそう簡単に破綻するものではありません。

 

真実を見抜くための、ニュースの見方

<●「0点か100点か」でしか報道できない、マスコミの罪

・1994年まで2%台にあった失業率はその後20年間以上、3%台、4%台、5%台を行き来するまでに悪化していましたが、2017年には2%台に回復しました。

 

・マスコミは「0点なのか、100点なのか」という極端な意見にしか興味がない、というよりもそういう考え方でしか理解できないのです。

 

・アベノミクスを採点するのであれば、「マクロ経済で重要なこととは何か」というところから始める必要があります。マクロ経済で重要なのはまず「雇用」です。

 

・したがって経済政策を評価するとき、私は「雇用」に6割のウェイトを持たせます。

 

・給料の採点は50点ですが、給料のウェイトは全体の4割ですから点数としては20点です。「雇用」の60点と「給料」の20点を足した80点が、私の採点ということになります。大学の、Aは85点以上、Bは75点以上、Cが60点以上、あとはDというABCD評価で言えばアベノミクスはB評価です。

 

・したがって、インフレ率についてアベノミクスはだいたい60点と採点することができます。60点は大学で言えばCの合格ラインです。

 

実はこの、100点ではないけれども落第点ではないというのが「数字で見る、読む、考える」ということです。

 

<●科学や経済学を知らない文系マスコミ

・文系の、特に左派政党を支持する人たちは、そのイデオロギーのために思い込みの強い人が多いものです。

 

・理系に代表される、物事をロジカルに考える人たちにとってはイデオロギーなど邪魔なものでしかありません。

 

・オークンの法則は「経済成長率と失業率の間に負の相関関係がある」という法則です。

 

・経済成長不要論は環境問題や公害問題とセットにしてよく語られます。

 

・経済成長は国の基礎体力です。経済成長によってすべての問題が解決するわけではありませんが、経済成長しないでいる場合よりも問題解決できることは確かです。

 

<●日本のマスコミ人には“学歴”がない ⁉

・はっきり言ってしまえば、日本のジャーナリストの書くものは、ほとんどが他人のデータと意見のパクリです。ほとんどが参考文献のパクリによってできあがっています。日本のジャーナリストはそのレベルである、ということも知っておいた方がいいでしょう

 

<●「円安」=「国力低下」とはかぎらない

・2022年10月20日に一時150円台、1990年8月以来およそ32年ぶりの円安水準を記録して以来続いている円安傾向を、日本の国力と結びつけて論じるマスコミやジャーナリストが少なからずいます。これは自分の無知をさらけ出しているだけです。

 

昨今の円安は国力うんぬんではなく、マネタリーベースで説明できる範囲の円安で、ひどいものではありませんGDP増加のチャンスと捉えるべきですが、円安で苦しむ企業や個人がいることも確かです。

 

・国債の評価について、世界標準として何が見られているかというと、先にもお話したCDSを見ます。国や企業の破綻リスクを売買するデリバティブ、金融派生商品です。

 

・数字で議論できない人ほど「格付け」などといったふわりとした話に飛びつきます。CDSにおいて日本の国債は、常時トップ10にいるくらいの安全度です。これは「数量的に見て日本には国家破綻する要素はほとんど存在しないと世界は考えている」ということを意味してます。

 

<●国際情勢認識の甘さ ~ハマスとパレスチナの混同

・ハマスは公安調査庁ウェブサイトによれば「注目される国際テロ組織、世界のテロ・ゲリラ組織」に分類されている「武装闘争によるイスラム国家樹立を目的とした設立した武装組織」です。イスラエル殲滅を目標としているハマスはパレスチナを代表しているわけではありません。ガザ地区を実効支配し、むしろパレスチナ人を抑圧している組織です。

 

そもそもパレスチナとハマスを一緒にすること自体、間違っています。会談を行うのであれば、パレスチナ自治政府のアッバス議長ではなく、ハマスの代表者を相手にしなければなりません。

 

・状況はいよいよ民主主義対専制主義であり、第3次世界大戦前夜という表現は絵空事ではありません。

 

おわりに ~激動の時代に大切なのは「数字で話す力」

・日本はこれによって、核を持っている非民主主義国3国を相手に3正面作戦をとらなければならないことになります。従来の対中国としての防衛費はGDP1%、高まる北朝鮮の危機に対して予定されているGDP2%の増額は、おのずと3%と高くなっていくでしょう。 

 これは世界情勢を見た場合、不可避の流れです。

 

そこで、「世界が標準としている考え方」と「世界の常識」を知ること、「数字を読んで考え、数字で話す力」ということが今後ますます重要になるといえるでしょう。

 

 

 

『円高・デフレが日本を救う』

小幡績  ディスカヴァー携書  2015/1/31

 

  

 

21世紀最大の失策

・しかし、やったことは間違っている。現実経済の理解も間違っている。戦術的に見事である以外は、最悪の緩和だった。

 結果も間違い。現実認識も間違い。最悪だ。

中央銀行としては、21世紀最大の失策の一つとも言える。なぜか?

 

・まず、原油下落という最大の日本経済へのボーナスの効果を減殺してしまうからだ。

日本経済の最大の問題は、円安などによる交易条件の悪化だ。原油高、資源高で、資源輸入大国の日本は、輸入に所得の多くを使ってしまい、他のものへの支出を減らさなければならなくなった。これが今世紀の日本経済の最大の問題だった。交易条件の悪化による経済厚生の低下として経済学の教科書に載っている話そのものだ。

 

・その結果、他の支出へ回すカネが大幅に減少した。雇用が増え、勤労所得が増えても、資源以外は買えるものが減り、より貧しくなったという生活実感だった。

 この実感は、数字的にも正しく、輸入資源以外への可処分所得が減少したのである。これが実感なき景気回復である。

 

・影響は原油だけではない。円安が急激に進むことによって、多くの生活必需品、原材料が高騰した。パソコンや電子機器の部品を含めて輸入品はすべてコスト高となった。我々は貧しくなった。

 

・そして、さらに根本的な誤りがある。テクニカルだが、将来の危険性という意味では最も危険で致命的な誤りがある。

それは、誤った目的変数に向かって戦っていることである。

誤った目的変数とは、期待インフレ率である。期待インフレ率とはコントロールできない。

それをコントロールしようとしている。不可能なことを必死で達成しようとしている。

この結果、政策目的の優先順位まで混乱してしまった。期待インフレ率のために、あえて日本経済を悪くしてしまっている。

 

・異次元緩和という、長期にはコストとリスクを高める政策をわざわざ拡大して、わざわざ日本の交易条件の悪化を目指している。長期のコストとリスクを拡大することにより、短期的に日本経済を悪くしている。しかも、それをあえて目指している。

 21世紀中央銀行史上最大の誤りだ。

 

<量的緩和による中央銀行の終焉>

・ここで、量的緩和のリスクについて触れておこう。

 量的緩和とは、現在では、実質的には国債を大量に買い続けることである。これはリスクを伴う。国債市場がバブルになり、金融市場における長期金利、金融市場のすべての価格の基盤となっている価格がバブルとなるのであるから、金融市場が機能不全になる。

 それを承知で、すなわち、バブル崩壊後の金融市場の崩壊のリスクは覚悟のうえで、国債を買い続けている。中央銀行が買い続けている限りバブルは崩壊しないで、そのバブルが維持されている間になんとかしよう、という政策である。

 

・この最大のリスクは、財政ファイナンスだと見なされることである。それによって、中央銀行に対する信頼性、貨幣に対する信任が失われることである。

 財政ファイナンスとは、政府の赤字を中央銀行が引き受けるということである。実質これが始まっている、という見方もあり、アベノミクスとは異次元の金融緩和に支えられた財政バラマキであるという議論も多い。 

 

・財政ファイナンスに限らない。貨幣およびその発行体である中央銀行に対する信任が失われるのであれば、その原因は、きっかけは何であれ、中央銀行は危機を迎える。危機と言うよりも終わり、中央銀行の終焉である。

 量的緩和は、あえて、自己の信用を失わせるような手段をとりつつ、信用を維持することを目指すという綱渡りのような、非常に危うい政策なのである。

 

<米国FEDと日銀の根本的違い>

・実は、国債などを大量に買い入れるという、この「量的緩和」は米国も行ってきた。

しかし、「量的緩和」は前述のようなリスクを伴う危うい政策である。このような危うい政策は、どこかで脱出しないといけない、できれば、勝ち逃げして逃げ切りたい、つまり、景気刺激といういいとこどりをして逃げ切りたい……。

 

・米国中央銀行FEDは脱出に成功しつつある。出口に向かい始めたのだ。しかし、日本は脱出に失敗するだろう。なぜなら、米国FEDとは根本的に考え方が違うからだ。日銀は、達成できない目標を掲げ、その達成に向けて全力を挙げているからだ。

 

・なぜ、米国が成功し、日本が失敗するのか?

 米国は、インフレターゲットは手段であり目的ではない、ということをわかっているからだ。

 彼らは、2%のインフレターゲットを掲げながら、インフレ率が2%に達していなくても、出口に向かい始めた。なぜなら、目的は米国経済だからだ。失業率が十分に下がれば、インフレ率がターゲットに達していなくとも、異常事態の金融緩和を解消し、正常化に向かい始めるべきだ、と判断したのだ。米国は手段と目的を取り違えていないのである。

 

<期待インフレ率を目的とする致命的誤り>

・なぜ「期待インフレ率」を目標とすることが、そこまで致命的に誤っているのか?もう少し詳しく述べておこう。

 第一に致命的なのは、目標を達成する手段を持っていないことである。

 期待インフレ率という目標を達成する手段を中央銀行は持っていない。手段のない目標は達成できるはずがない。だから、これは永遠に達成できない目標であり、たまたま運良く経済インフレ率が2%に来て、そこにたまたまとどまってくれることを祈るしかない。これは祈祷である。祈祷だから、異次元であることは間違いがない。

 

 

<●●インターネット情報から●●>

ウィキペディアWikipediaによりますと、

<小幡績 日本の経済学者・投資家>

<主張>

 

  • 量的緩和をすればするほど、金融商品は値上がりし、実物市場のフロー・実需は減り、実体経済の景気は悪くなると主張している
  • 期待に働きかけるインフレターゲット政策は、金融資産市場では資産価格を動かす可能性はあるが、財市場には影響しない。したがって、リフレ政策ではインフレはもちろん、インフレ期待も起こせないのであると述べている。
  • 期待に働きかける日銀の政策は、インフレ期待を上げることによって投資行動が変わり、それが実際にインフレをもたらすという経路を期待している。それは理論的にはありうるが、日本では起こりえない。国内物価の決め手は賃金であるため期待名目金利は上昇するが、インフレ率自体は動かないからだと分析している
  • アベノミクス批判あるいは支持は、政治的な論争にすぎない。我々経済学者とは関係がないだけでなく、経済学に対する不信を招き、本来行うべき経済学の論争の機会を失ってしまっている。こうした形だけの経済政策論争は、政治的な論争、さらに悪いことに、似非経済学者の売名行為、社会的地位獲得のための争いとなってしまう。これらは、アベノミクスがもたらした経済政策アリーナにおける最大の罪である。実質的にわれわれが議論すべきは、金融政策・クロダノミクスである。
  • 世界の経済構造変化の中で、物価は上昇しなくなり、低金利は永続し、経済は成長せず、技術革新が起きたとしても、実質的な経済厚生の改善はあっても、名目で経済が拡大することはない、という現実を認めなくてはならない。誠実なエコノミストとして、政策では経済を拡大できない、拡大しない経済の中で、経済厚生を高め、人々の生活を豊かにしていく方法を提言していくべきとと主張している。
  • 2015年7月時点(4-6月期のGDPは年率-1.2%)で「景気が良すぎる」と主張しており、2015年12月時点(11月の家計支出は3ヶ月連続のマイナスとなる前年同月比-2.9%)で、消費税を上げるのは「経済を立て直すため」と主張している。
  • 北神圭朗財務省同期であり、財政再建派の一人。
  • 2011年8月時点では「2013年に日本国債の売りが仕掛けられる」「財務省的に財政再建に多少舵をきるのは、実はプラス」「野田さんは財務省のいいなりにはならない」「日本銀行総裁またはナンバー2は財務省のドンの方が財務省の影響力を抑制しやすい」と述べている。日銀の人事に関しては、いわゆる財務省日銀のたすきがけ人事の存在を強く否定している。
  • リーマンショックで変更になった「時価評価をしなくていい」というルールなどの影響で国内の金融機関は国債を損切りしないと踏んでおり、新規市場で国債を買う投資家を維持するために国債の発行を減らすことができれば好転するとみている
  • リフレーション政策の批判で知られ、リフレ政策については、日本は企業間競争が激しくインフレーションになりにくい社会であるから無理に紙幣を増刷すると資産バブルが発生し、国債価格を下落させる引き金になると考えている。また「インフレはモノの値段が上がって困るだけ」「1ドル80円がたとえば100円になったとすると輸入インフレ率は2.5%、インフレ率は3%程度になるかもしれない」と述べている。
  • 2011年8月の時点では「日銀の量的緩和は世界の最先端であり米国も追随したが、投資家にとっては株・債券の買い支えになっても米国の雇用には結びついていない。」「先進国の政府は前向きにできることはほとんどない。唯一(やり方を工夫した上での)増税ぐらい。」「欧州や米国は新興国需要をとりいれて株価が上がっているが、その中で日本だけ下がっているのはAppleのようなスキームがないから」「ユーロやドルが安くなっているのは、日本はこれ以上悪くなりようがないのでリスク資産にならないから」「ユーロやドルは(豪州などより)成長力が低いので通貨が安くなる」と述べている。
  • 株価の水準は何事も表していないし、毎日の反応自体も、実体や情報とは何の関係もなく、株価は何の意味もないと述べている。
  • 1ドル85円であった2012年12月時点において「これ以上の(円安への)動きは危険だ」と語っている
  • 2014年7月の時点において、日本銀行総裁である黒田東彦の代弁をするという文体で「(これまで日本経済の問題は需要の問題だと思われていたが)今、需要超過となり、需要の問題はなくなった。」と述べている。9月には、景気下ぶれリスクが意識される中「景気は、まだ悪いと言うよりは良い」と明言している。
  • 1990年代の日本経済の低迷は、住宅金融専門会社が悪者扱いされ大蔵省主導での税金投入が出来なくなってしまったことと自由民主党の議員が東京、大阪、名古屋以外に公共事業をばら撒いたことが原因とみている
  • 民主党のばら撒きは現金が中心であるため効率的だったが、財政が厳しくばら撒きが十分実現しなかったことは幸いだったと考えている。
  • 安倍晋三の経済政策であるアベノミクスについて「日本の経済に必要なのは構造改革である」「財政政策金融政策で解決するものではない」と述べている
  • 政治家たちは必ず経済政策を誤る」「経済学者は嫌いだ」と政治家・経済学者の双方に否定的である
  • 著書「リフレはヤバい」(ディスカバリー携書)では、アベノミクスは国債暴落、ハイパーインフレの危険があると指摘、特に20代以下の若い世代が購買力の低下により苦しむと主張。
  • 金融政策で賃金を上げるのは不可能であると述べている。
  • アメリカはこれまでの利上げ、出口戦略を着実に進めてきた。量的緩和も終了し、金融政策の正常化が終了していた。その一方で、日本は過剰な景気対策で景気が過熱したにもかかわらず、デフレ懸念・物価のモメンタムが損なわれる懸念といった無駄な概念に縛られ、金融緩和の出口に向かえなかった。このまま景気後退の局面が来てしまったら、日銀は何もできなくなるという見通しを述べている。