(2023/11/8)

 

 

『中国の侵略に討ち勝つハイブリッド防衛』

日本に迫る複合危機勃発のXデー

 佐藤正久    徳間書店 2023/4/1

 

 

 

・中国は皆さん一人一人の思考を観察している。すでに皆さんは最前線にいるのだ。問われているのは日本人の覚悟である。

 

ウクライナ侵攻

・政治家になった当初の頃、先輩議員からこう諫められたことがあった。

「外交と安全保障をメインにするのはやめた方がいい」

 有権者にとってわかりやすいのは減税や社会保障政策。外交・安全保障という2つの政治テーマはなければならないものだが、選挙で「票」に繋がらないのが現実だ。

 

・ロシアによるウクライナ侵攻に対する政治家の発言を通じて、他党がいかに外交・安全保障に弱いかを知った人も多いのではないか。

 その自民党も100点ではない。だが自民党は100点を目指すことができる唯一の政党だと私は自負している。

 

すでにアメリカは「有事が起こるかも知れない」ではなく「いつ起こるか」を前提に準備を始めた多くの日本企業が中国とビジネスを行っていることから、「まさか」と思う人も多い。だが中国は本気だ。ウクライナの例でも明らかなように有事は開始されるまでわからない

 

・2023年に日本がなさなければならないことは、「中国に武力行使を実行する気持ちを起させない」ことだ。すなわち抑止力の強化が必要ということだ。

 現在の戦争の勝敗は単純な武力の衝突で決まらない。軍と民の境界線をなくしながら、サイバー、宇宙、電磁波という新たな戦域を通じて、武力行使前の「グレーゾーン」での戦いが勝敗を分ける。

 

有事を起させないためのツールが「外交」だ。安倍元総理は第一次政権、第二次政権を通じて日本を守る安全保障・経済安全保障構造の土台を築いた。

 これまで欧米は大西洋と太平洋を中心に地球を捉え戦略を組み立てていたが、安倍元総理が「インド太平洋」という理念を発案。2つの大洋を「東アジア」に繋ぎ込むことに成功した。

 

自ずと導き出されるのは、台湾有事が日本有事であるという事実だ。その時、列島には多国籍から送られる「ヒト・モノ・武器」の中継地になる。まさにウクライナ戦争におけるポーランドの立ち位置だ

 現行法で「ハブ」の役割を果たせるのかは疑問だ。改正のためには、皆さんの理解が必要である。

 

哀悼 安倍晋三元最高司令官

歴代で最も「自衛隊」を尊重した最高司令官

中国による日本への軍事侵攻が日に日に現実味を帯びてきている。すでにアメリカは、「起こる可能性がある」ではなく、「いつ起こるか」を前提に準備を開始した

 

安倍元総理は自衛官にとって特別な存在だった。当日の予定も合わさって、私のショックは相当なもので、湧き上がる無念と哀悼の念を抑えることができないほどだった。

 歴代総理の中で、安倍元総理ほど自衛隊を尊重し、自衛隊のことを考えて動いた最高司令官を私は知らない。

 

反対派を気遣って「裏門から出ろ」

・そうして今津議員は、ものすごい剣幕で石破茂防衛庁長官と掛け合ってくれて、ようやく正門から出ることになったのである。

 見送る家族に敬礼をし、成田空港行きのバスに向かったが、ほとんどの女性が涙を流している。嗚咽してうずくまっていた隊員のお母さんもいた。隊長である私が泣いたら全員が泣いてしまう。そうすれば見送る家族に不安を与える――そう自分に言い聞かせて必死に涙をこらえていた私がいた。

 そのバスの車内で私たちは迷彩服を脱ぎ、スーツに着替えることになっていた。

 

「自衛隊の最高司令官が務まるか」が総理の資格

・<首相にふさわしいか、ふさわしくないかを考える時、私は、国を守る最後の砦である自衛隊の最高司令官が務まるかどうか、が重要だと思うのです>

 

・2013年4月14日、硫黄島を訪問した安倍総理は帰路に着く際、滑走路の下にも遺骨が埋まっていることを伝えられた。それを聞いた安倍総理は、「この下にも、まだたくさんのご遺骨が眠っている可能性がある…………」そんな想いがあふれだし、滑走路にそっと膝をついた。かつて命を賭して日本の国土を護った英霊への感謝と冥福を祈った。

 

アメリカが導き出した開戦Xデー

日本列島と台湾島は中国の太平洋進出の壁

・実際にアクションが起こるその時まで「有事」は予測しかできない。ロシアによるウクライナ侵攻の際にも、直前までアメリカを中心に侵攻リスクが指摘されたが、それが確定したのは2022年2月24日である。

「有事」は外形的な状況からしか判断できない。外形的な状況を把握するために必要なのは情報で、情報の収集・分析が『インテリジェンス』だ。

 

・特定の部署に責任を押し付ける気持ちはまったくないが、日本にはアメリカのCIAなどの対外情報の専門機関はないから外務省が行うほかないのである。

 

・その理由は外務省の能力不足というよりも、法整備の部分にも問題があるからだ。アメリカ中央情報局、CIAをはじめとする海外のインテリジェンス機関は、法律を違反する許可を得て活動をしているが故に優れた情報収集能力を持つ

  対して日本の場合は法令順守が徹底されていて、テロ対策ユニットにも海外の他の機関ほどの権限を与えられていない。この障壁を壊さなければ国際水準のインテリジェンス能力を得ることは不可能だが、これにはまだ時間がかかる。

 そこでアメリカやイギリスなどインテリジェンス大国の力を借りなければならない。

 ところがアメリカ政府は、2023年に入ってから中国の台湾侵攻についての異様なほど強いシグナルを発信し続けている。

 

領土・領海の拡大を実現して「皇帝」を目指す習近平

・現在の日本経済は中国に対する依存度が高い。そのことから、「まさか中国が侵略など……」と思い込んでいる日本人がほとんどという印象だ。

 しかし実際に、習近平国家主席は、領土・領海の拡大を実現している

 1950年に中国はウイグル全土を制圧し、翌51年にチベットを制圧したが、習国家主席は毛沢東時代に手に入れたウイグル、チベットの統治を弾圧や管理をすることなどで確実なものにした。

 

・「皇帝」に向けた第4期目の実現のために是が非でも手に入れたいのが台湾、そして日本だ。

 

粛清と制裁で第3期習王朝にこぎ着けた

・中国が台湾・日本を侵攻する「本気度」と「その日」が遠い将来でないことを如実に示すのが、第3期習近平体制の人事である。

 

技術開発のギャップを狙う

・リープフロッグとは「カエル跳び」の意味で、特定の技術で新興国が先進国を追い越す現象は「リープフロッグ型発展」と呼ばれる。携帯電話の普及とサービスはその典型だ。

 中国やアフリカは先進国より早く携帯電話が普及し、キャッシュレス決算など先進的なサービスを次々と導入していった。

 

・中国の脅威は、国家戦略として「リープフロッグ」が起こりやすい技術領域を選択し、その開発に集中投資している点だ。自動運転システム、EV、ネット通販と決済システムなど、中国の発展を象徴するキーワードには常に「リープフロッグ」がある。

 

侵攻のXデー

「2027年までに、中国が台湾を侵攻する可能性がある」と発言したフィリップ・デービッドソン氏だ。

 

・報告書は、「中国は台湾有事で2027年までに、米介入抑止の軍事態勢を取ろうとしている」と、警告している。

 

政治、世論の「すき間」を狙う中国

アメリカの有事想定は2023年・2025年・2027年と統一していない。台湾は島国ということで武力行使には特殊な戦力が必要になる。その整備のタイムスケジュールを逆算すると、最も可能性が高いのは2027年だ

 

・重要なのは、中国が日本人をつぶさに観察している点だ。

 第二次安倍政権が約7年8カ月もの長期政権維持に努めたのも、中国に対する抑止力が大きい。外交・安全保障が知悉する安倍元総理がトップを務める安倍政権は、中国にとって好ましくない状況だからだ。

 繰り返すが中国は日本の皆さん一人一人の思考をよく見ている。すでに皆さんは、戦争のフロントラインに立っているのだ。

 問われるのは中国に攻めさせないという日本人の覚悟だと私は考えている。

 

ウクライナが伝える「複合危機」の脅威

今日のウクライナを明日の日本にしてはならない

・ロシアによるウクライナ侵攻は、国際社会の「安全保障の在り方」に多くの問題点を投げかけている。

 最も大きな枠では国連安全保障体制の機能不全だ。

 

・またウクライナを含めた東ヨーロッパの近代戦史を整理することで見えてくるのが、国際社会の不条理だ。核を保有し、資源・エネルギーを入手できる権威主義国は、自身の思惑に従って支配することができる。

 明日の日本を今日のウクライナにしないためには、不条理のリアルを理解しなければならない。「力による現状変更」に蹂躙され続けた、東欧の流血の歴史を整理していこう。

 

21世紀欧州初の戦争を仕掛けた

・1991年12月26日にはソ連が崩壊。1991年からのユーゴスラビアでの紛争によって、ユーゴは分割解体していった。2000年のブルドーザー革命(ユーゴスラビア)、03年のバラ革命(ジョージア)、04年のオレンジ革命(ウクライナ)、05年のチューリップ革命(キルギス)と続く。

 2000年代の東欧圏の「脱ソ連化」すなわち民主化への転換は「カラー革命」と呼ばれている。

 

すでに崩壊していたウクライナ軍

・クリミア侵攻は、ロシア正規軍が侵攻する形ではなく、軍事と非軍事を組み合わせる「ハイブリッド戦」が行われた。2013年にロシアのゲラシモフ参謀総長が、「予測における科学の価値」という論文を発表。翌14年のクリミア侵攻では、その論文に基づいた軍事作戦が展開された。

 

しかも親ロ反欧のヤヌコーヴィチ時代を通じて、ウクライナの行政、軍は深刻な腐敗に汚染されていた

 

たった1隻を残して寝返ったウクライナ海軍

・<旧式の装備品を「不当に安い値段」で売りつけ、その見返りにキックバックを受け取った。幹部は国防省の土地を競売にかけたりもした。

 キーウは徐々に、軍に自費負担を求め始め、上級将校に「軍隊の任務と矛盾する」ビジネスを強要し、汚職の道を開き始めた

 司令官たちは、「軍の装備、インフラ、そして人員を使って、個人の家を建てたり、アパートの修繕をしたりする」ようになった。調達詐欺が横行し、陸軍士官学校への入学や卒業、望ましい配属のための賄賂も横行した>

 ウクライナの工場が中国、エチオピア、カザフスタン、ロシアなどに高品質の製品を輸出する一方で、軍は慢性的な物資不足に陥る。

<ヘリコプターや装甲車は燃料切れや部品不足で動かなくなり、クリミアの兵士は制服を返納して、ウクライナの月給200ドルの5倍ものロシア給与を約束された>

 この結果、2004年の親ロシア派地域でのウクライナ陸軍約1万4000人のうち、戦闘可能な人員はたった約6000人程度となった。空軍は45機のMig-29を保有していたものの、稼働できるのは4~6機。

 最も驚くのは海軍だ。ウクライナ海軍は、ロシア軍とセヴァストポリ海軍基地に駐留していたが、ほとんど抵抗することなくロシア軍に艦船を渡した。その結果、たった1隻を除いて、全艦船がロシアに鹵獲されたのである。

 

こうした腐敗は軍だけでなく行政全体にも及んでいた。そこにロシアは「アセット」を配給していった。アセット(資産)とはインテリジェンスで言うところの諜報員だが、この場合は、親ロシア工作員を指す。そうしたアセットはウクライナ行政・政治などに深く食い込み、内部からウクライナを瓦解させていったのである。

 作戦開始から1カ月もしないうちにクリミア半島が実効支配されたのは、むしろ当然の状況だったということだ。

 

ウクライナの国防改革

・国家安全保障改革で注目すべき点は「民兵組織」の育成だ。

 

・そこでウクライナは法律を変え、民兵集団を結成し育成、「地域防衛隊」として国防省隷下に配属させた。

 最も効果的だったのは法律で治安・防衛関連予算をGDPの5%確保を目標としたことだ。

 

最重要課題は「中国に攻めさせない」こと

・「ハービー」は、兵士が使用するスマートフォンの電波も探知し自爆攻撃を仕掛けたことから、アルメニア軍はスマートフォンの使用を禁止したという。

 自爆型ドローンによって圧倒的な航空優性を確保したアゼルバイジャンは、トルコ製の「バイラクタルTB2無人偵察・攻撃機」を飛ばして軍用車両や兵士を難なく攻撃した。

 

・ウクライナ侵攻でもドローンの効果が絶大であることが明らかになった。すでに戦争は「ヒト対ヒト」ではなく、「ヒト対機械」になっている。やがて「機械対機械」の構図に向かうのは確実だ。しかも、その機械にはAIが搭載されようとしている。

 

宇宙、サイバー、電磁波領域という新たな戦域

・当然のことながら敵が、日本の電磁波を撹乱すれば多くの場面で「優勢」を確保することができる。逆に日本が相手の電磁波を撹乱し、自分たちの電磁波を維持できれば優勢を確保することができる。

 

アメリカの軍民融合

・「高高度気球」でも明らかなように、中国は常に「非対称」の方向に領域を拡大していく。対して日本の安全保障面でのサイバー、電磁波空間対応の出遅れ感は否めない。

 

・マイクロソフトは開戦約1年前の時点で紛争に向けた事前準備を進めていたと評価していた。侵攻開始後から約6週間、ロシアのサイバー部隊はウクライナの数十の組織が保有する教育のシステムのファイルを永久に破壊する、約40個別の破壊的な攻撃が行われた

 

安保3文書改定

・今回の改定で「反撃能力の保有」が宣言されたのである。それを受けて「2、国家防衛戦略」では10年間の防衛力整備を「5年」を節目にして「2段階」で構想することが記載された。今後5年間の優先課題を、

・現有装備品の最大限活用

・将来の防衛力の中核となる分野の抜本的強化としながら、日本への侵攻を阻止・排除する能力確保のために、

・弾薬確保や部品不足解消など「継戦能力」向上

・スタンド・オフ・ミサイルの配備

 を目標した。防衛省は5年後までに「5年間で43兆円規模が必要」としている。さらに10年後にはより早期、遠方で侵攻を阻止・排除する能力の保有を目指す。具体的には、

・極超音速誘導弾など先進的な長射程ミサイルの導入

・複数の無人機を同時制御して防衛に活用

とした。

 

「ミサイルギャップ」解消に向けた一歩

断言してもいいが、有事を起しても、中華人民共和国の敗北と中国共産党の損失以外の結果はない。

 

その時、列島に何が起こるか――覚悟した日本国民こそ最大の抑止力

CSISのシミュレーションの意味

・ほとんどのシナリオで中国の侵攻は失敗するものの、日米台中の被害は甚大であるとの結果になった。

 

その日、中国軍は台湾海峡を封鎖する

・では実際に、中国軍は台湾をどう侵攻するのか――軍事的に一番可能性が高いのは、台湾海峡を機雷で封鎖し台湾島の港を使用できなくすることから始まる。

 

列島はウクライナ侵攻後のポーランドになる

・それでも「備え」の部分は入念に整備しなければならない。すでにアメリカが「いつ起こるのか」を前提で動き始めたのに対して、日本では特に「国民保護」すなわち、有事の際の避難の準備が大きく遅れている。

 

・ところが有事の際に国と行政がどう役割分担をして、どのように動くのかの「国民保護計画」はない。

 

・2023年3月現在、中国には約3万の日本企業の拠点があるが、有事の際の中国在留邦人の避難、救出については考慮されていない。

 

・しかもポーランドはNATOの前線支援拠点となっている。台湾有事の際には台湾在住の自国民の保護、避難援助のために日本に多くの多国籍部隊がくるということだ

 

立ちはだかる「武器輸出三原則」の壁

・西側の同志国が中心になって挑んだ1991年の湾岸戦争で、日本は135億ドル(日本円で約1兆7500億円)もの財政支援を行った。ところが国際社会からは「小切手外交」と批難される。

 

・ところが殺傷兵器移転を禁止した、「防衛装備移転三原則」物品役務相互提供協定(ACSA)を締結している国以外には、弾薬提供を実現することはできないのだ。しかもACSAで弾薬提供は法的縛りがある。

 

鉄くずにされる自衛隊のMLRS

・このように防衛装備品には廃棄を待つ武器・弾薬があるのだ。廃棄ルールさえ変えれば、「間接支援」ができる。そうなれば有事の際の武器弾薬提供を求めることもできるようになるのだ。

 

横須賀防衛学園都市

・安保3文書改定によって自衛隊にはシームレスな防衛体制構築が求められている。人材面で喫緊に育成、採用しなければいけないのが「量子コンピュータ」と「AI」の技術開発者だ。

 

・日本学術会議が「軍事研究」を認めていないことで、もはや一般大学に頼ることはできなくなった。そこで横須賀を筑波のような「情報・通信・サイバー研究学園都市」化して人材を育成する方向に舵を切ったのだ。

 

抑止力の土台「自衛官」の惨状

・1つ強調したいのが、防衛装備で解説した「正面」、「後方」についてだ。どうしても防衛装備品は直接攻撃できる「正面」に予算を投下する傾向がある。限られた予算を「正面」に割いた負担は、誰が背負ってきたのか――数多くの自衛隊員たちである。

 

・AIや量子、サイバーは人材面での「正面」である。本当に次世代を見据えるのであれば、自衛隊を支える「足腰」の部分の待遇改善も同時に行われなければならない。

 

人任せから自立した意識へ

・中国による台湾・日本侵略は極めて不幸な出来事だ。だが、不幸の裏側に幸運があるように、これは日本が「普通の国」になる奇貨でもある。

 普通の国になるために必要なのは、日本人の「覚悟」だ。その「覚悟」こそが、中国に戦争を起させない最初にして最大の抑止力だと私は考えている。

 

 

 

(2023/6/21)

 

 

『知らないと後悔する日本が侵攻される日』

佐藤正久  幻冬舎新書  2022/8/24   

 

 

 

すでに戦争は始まった。日本侵攻は2027年か

平和主義は大いに結構。でも敵はかまわず攻めてくる

2027年、日本がウクライナのようになる――。

 これは決して、脅しではありません。私が本気で心配している「迫りつつある危機」です。総理や国会議員、周囲の人々にも必死にそれを伝えています。

えっ、日本が侵略されるの? 日本で戦争が始まるの?「絶対にそうなる」とは言いません。でも、その可能性は高いと言えます。

 そうならないように、私は働いています。私たちの祖国、日本を守るために。

 

ロシアだけではない。北朝鮮、そしてどこよりも強大な中国

・2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻しました。

 

・日本はプーチン大統領やその家族の個人資産も凍結したので、アジアの他の国々よりも強い態度に出たと言えるでしょう。

 プーチン大統領からすれば「日本は俺に喧嘩を売った敵国」と映るわけです。

 つまり、日本はもう戦争に加わってしまったのです。

 

ヒゲの隊長から政治の現場に。私にしか言えない戦闘の真実

・事実、狙撃の情報は1日に5~6回は入ってきました。とても悔しいですが、親しい同志だった外務省の参事官・奥克彦さんが命を落としました。日本のメディア関係者が亡くなる事件も起きました。

 

日本がなぜ狙われるのか。地図を見たら一目でわかる

・しかしながら今、日本が抱える領土問題の多くは、相手の一方的な主張によるものです。

 

中国が尖閣諸島を欲しがる理由。沖縄の獲得も視野に

・中国からすれば、太平洋に出るためには沖縄を抜けていきたい。ところが、沖縄や南西諸島が点在し、横長に蓋をしている。日本を丸ごと手に入れるのは無理だとしても「せめて尖閣は欲しい」とか「本当は琉球諸島も欲しい」と思っている訳です。

 

逆さ地図で一目瞭然。ロシアが北方領土を返さない理由

・プーチン大統領の本音は「北方領土を返すどころか、北海道も欲しい。あわよくば青森も獲ろう」なのです。

 

「戦争なんて起きない」。何の根拠もなく安心していていいのか?

・ここからわかるのは、彼らは欲しいと思った地域は奪い獲りにくるということ。侵略の屁理屈などは、いくらでもつけられるという事実です。

 

ロシアはなぜあれほどウクライナに苦戦しているのか

ウクライナの意外な強さ。過去の失敗に学び、兵力を増強

・2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻しました。攻め込んだロシアはおそらく「短期決戦」を想定していたはずです。

 世界中がそう思っていたことでしょう。

 

キーウは簡単に落とせる ⁉ なめ切ったプーチン大統領の誤算

・そういう過去を知っているため、ロシア、というよりプーチン大統領は「ウクライナは簡単に落とせる」と踏んだのでしょう。つまり、慢心していた。なめ切っていたのです。彼は「首都キーウは早ければ数時間、長くても3日くらいで陥落できる」という腹づもりでいたようです。

 

戦力の集中と分散。戦い方の基本を無視したロシア軍

・ロシアがウクライナをなめ切っていたことは、当初の攻め方を見ればすぐにわかります。

 

・ロシア軍の攻め方は、愚の骨頂でした。なぜなら、戦いにおける最も大事なセオリーである「戦力の集中と分散」を無視していたからです。

 

・今回のロシアの攻め方を見て、多くの軍事専門家は、首を傾げたと思います。私も同じです。「今回は我々の知っているロシアではない」と。

 首都キーウの郊外にある町・ブチャで虐殺が起こったことも、我々からすれば信じられない暴挙です。計画性がまったく感じられないのです。

 

ブチャの民間人虐殺。日本と対峙する極東部隊の所業か

・実は、ブチャの虐殺を行い、街を破壊し尽くした部隊は、いつもは日本の目の前にいる極東部隊と思われます。

 

・私も自衛官時代、零下10~20度の酷寒地で訓練をしたことがありますが、外にいるのは地獄です。戦車も装備も鉄製のため氷のように冷たい。

 

混乱する戦場。大虐殺はFSBの指示なのか?

・もちろん、私はロシア軍の行為を正当化したり、兵士たちに同情したりしているのではありません。むしろ逆です。過酷な戦場では、めちゃくちゃなことが起こり得る、と言いたいのです

 

・でも、裏を返すとこうなります。有事の際には、そういう練度の低い、めちゃくちゃなことをする“ならず者部隊”が日本に乗り込んでくる、と。

 

・しかし、ウクライナ軍は想像以上に手ごわく、目論見通りにはいかなかったという訳です。

 ブチャの虐殺は、そういうロシアの焦りの現れなのかもしれません。FSB(ロシア連邦保安庁)が乗り込み、部隊に虐殺を指示したという話もあるからです。

 

SNS時代の戦争。市民も兵士の一人になる

・市民がブチャで停滞するロシア軍の動きを撮影し、SNSで通報する恐れがある。ロシアとすれば、それは許せない。苦戦や戦争犯罪を世界中に知られたら、大国の威信は揺らぎます。スマホをもつ市民は「通信兵」のような存在で明らかな敵なのです。「面倒だ。抹殺すべきだ」という判断が働いたことは、想像に難くありません。

 

ウクライナの幸運。過去の戦い方で臨んだロシア軍

・やはり、過信と慢心と言えるでしょう。過去のチェチェンやシリアの戦いでは、空爆が主で、地上軍を壊滅させた後で掃討部隊が乗り込んでいった。しかし時代は変わったのです。新たな戦い方への準備が明らかに不足していました

 

ロシアの混乱と苦戦。中国はそれを教訓にする

・いずれにしても、ロシアは現段階では、その「新たな戦い方」の導入に失敗しました。

 

習近平の目論見。戦いの火蓋はすでに切られた

・大事なのは情報をどう活用するか? そして情報をどのように流すかもインテリジェンスです。

 

ロシアは体力が低下。中国はロシアと北朝鮮を利用する

・このように、相手の側に立って考えることは戦いの基本です。中国から見れば尖閣諸島は台湾の一部。日本はすでに「有事」と言えるのです。