(2024/3/23)

 

 

『バックパッカーズ読本』 

全面改訂版 究極の個人旅行ガイド

旅行情報研究会 『格安航空券ガイド』編集部

双葉社  2024/1/17

 

 

 

必要なのは少しのお金とスマホと勇気!

 

短い日数でも旅はできるができれば1か月は欲しい旅の時間

バックパッカーたちはどれくらいの日数を、どんなペースで旅しているのか。ここでは旅に必要な日数がどのくらいなのか考えていこう。>

(ポイント)

1、3日滞在、1日移動のペースがおすすめ

2、旅でできる日数からルートを決めるのもあり

3、いつかはやりたい、年をまたぐ壮大な旅

 

旅のペースは「1週間で2都市」

・ひとつの街に3日ほど滞在すれば、おぼろげながらその土地の姿が見えてくるし、観光スポットもそこそこ回れるだろう。いくらかゆっくり時間も取れる。そしてこの間に次の街への交通を確保する。

 

1か月の旅って長い? 短い?

・しかし「旅をしているんだ」という実感、確かな手ごたえを感じたいなら、1か月は日本を離れてほしいと思う。

 

一生に一度のチャレンジ

・「いつか1年を超える旅を」

 それは多くの旅人の夢かもしれない。「年単位」の時間を取って、世界を放浪する。だが仕事と両立させることはなかなか難しいだろう。

 

おすすめしたい・できない旅のシーズン

はじめての旅なら乾季に旅しよう 盛大な祭りの季節も楽しいぞ

旅のベストシーズンはやはり雨が降らず気候が安定している乾季。雨季や、その国の長期休暇はできれば避けたほうがいいだろう。>

(ポイント)

1、    雨季に旅するのは本当にきつい

2、    現地の長期休暇を調べておこう

3、    その土地ならではの祭りを楽しみたい

 

アジアの場合、乾季と雨季がある

・旅にもシーズンというものがある。日本人旅行者に人気の東南アジアやインドを例にとってみると、季節は大きく「乾季」と「雨季」に大別されている。だいたい11月から4月が乾季で、5月から10月が雨季となる。

 旅をするならだんぜん乾季のほうがいい。

 

文化を体感できる祭りのシーズン

・現地の祭りや長期休暇も考えておきたいところだ。中国では1~2月の春節や10月の国慶節は大型連休となり、どこに行っても宿や交通機関の予約が取りにくくなる。

 欧米では4月のイースターや、クリスマスから年末年始にかけては動きが取りにくくなる。

 

14億の人民が織りなすカオスに身を投じる中国の旅  御堂筋あかり

技術革新が進む一方、大陸のおおらかさにも満ちた中国。北京在住の著者が、人民の海を旅する方法を伝授する。

▼現地入りの前にアプリの準備を

・中国を旅するならば、日本出国前に最低限必要な中華アプリ、すなわち微信(ウィーチャット)か支付宝(アリペイ)、を入れて、電子決済サービスを使えるようにしておくこと。

 

▼持つべきは想定外を楽しむ心

・以上のことさえクリアできていれば中国なんぞ楽勝……とまでは断言できないものの、比較的旅しやすい国というのが在住者としての実感である。

 

▼ご予算と目指すべき地

・宿は北京のドミトリーなら2600円くらいから。外国人が泊まれるチェーン系の安ホテルでも、大都会なら6000~8000円はかかる。むろん、地方に行くほど安くはなるが、春節や労働節、国慶節など中国の連休にぶつかると、観光地の宿代は軒並みハネ上がる。

 

▼いざ、人民の大海へ

・なんとなく怖い国と思っている方、その感覚はあながち間違いではないだが、軍事管理区をスマホで激写したり立ち入り禁止区域に踏み込んだりしない限り、スパイ容疑で捕まる危険を一般旅行者が考える必要性はまず皆無。

 

旅人の聖地インドから、ヒマラヤに抱かれたネパールを巡る

南アジアは時間を取ってゆっくりと、噛みしめるように旅してほしい。そうすれば亜大陸の混沌に慣れ、旅人としてひとつ強くなれるだろう。

南アジア諸国のビザ事情

・東南アジアより難易度は上がるが、そのぶんだけ旅の魅力がたっぷりと詰まったインド亜大陸。渡航にはまずビザを用意しなくてはならない。

 

旅の出発点デリーは要注意

・乗っているオートリキシャの窓を叩くのは子供の物乞いの弱々しい手だ。

市場や観光地に行けば今度は人間の渦に迷い込む。すさまじい人ごみなのである。総勢14億2860万人で人口世界一となったそのパワーを体感できるが、初めてのインドであればきっと圧倒される。排泄物やごみの臭いも強烈に漂い、たじろいでしまうかもしれない。

 

しかし人間の欲望もまたむき出しの国で、外国人狙いの悪人がとにかく多い要注意なのは旅行者の大半が旅のスタート地点と定めるであろうデリーだ。インドに慣れていない外国人をターゲットにしている。とりわけニューデリー駅周辺に限っては、声をかけてくる人間は相手にしてはならない。

 

ガンジス川と対面しよう

・必ず訪れたいのはガンジス川に面したヒンドゥー教の聖地バラナシだ。巡礼に押し寄せる人々、旧市街の迷路のような街並み、沐浴の光景、それに川沿いで火葬され、そのまま流されていく遺体……すべてが心に残るだろう。

 

インドは南のほうが旅しやすい

・「南こそ本当のインドがある」と語る旅行者も多い。基点はインド最大の都市ムンバイだろう。

 

南部は外国人旅行者が少ないぶん、悪質なサギ師などもわずかで快適だ。それに料理が日本人に合っている。

 

ネパールやバングラデシュにも足を延ばしてみたい

・ヒマラヤを望むネパールもまた、古くから旅人が行き交う国だ。バックパッカーだけでなく、本格的な登山を目的にした旅行者も多い。

 

・さまざまな民族がいるが日本人に似た顔立ち、心持ちの人も多く、ほっとさせられる。

 

スリランカは一時期、ビーチや仏教遺跡をめぐる旅行者に人気だったが、国が経済破綻してしまった。旅にそれほど支障はないが、生活苦に陥っている人々がたくさんいることは心に留めておきたい。

 

思い通りに行かない、それもまた旅なのだ インド北部の奥地ラダックをゆく  三矢英人

ヒマラヤに抱かれたチベット文化圏の地ラダック。この辺境を旅するバックパッカーがいま、増えている。>

・新卒で入社した会社を辞め、長期で旅行をしていた2015年、私はインドに約5か月滞在した。行きたかったところの8割ほどは訪れることができたが、ラダックに行けなかったことだけが心残りだった。

 

・「インドは呼ばれなければ行けない」とバックパッカーの中では昔からよく言われている。どれだけインドに行きたいと思っていても、インドから呼ばれないとなかなか行く機会に恵まれない。

 

 

<▼旧王都レーからラダック各地のゴンパへ

・8年ぶりに降り立ったインドの大地。私は興奮と不安がない交ぜになった複雑な感情を抱えながら空港を出た。

 

<▼雄大な景色の中、一路ザンスカールへ

・ザンスカールへのバスは朝の3時半集合と言われたので、バスターミナルで夜を明かすことにした。寒さとうろつく野犬で眠れぬ夜を過ごしたが、週に1、2度しかない路線なのだ。

 

<▼7月の雪の中で

・ラダックを旅する者の多くは、ザンスカール最奥に位置するプクタル・ゴンパを最終目的地にする。

 

<▼ヒッチハイクで僧院をめぐる

・翌日は、下ラダック地方でもうひとつ楽しみにしていたアルチに向けて出発する。今日もまたヒッチハイクだが、インド人旅行者の車に乗せてもらえることになった。

 

かつての秘境もビザ不要の国が増え、旅行者の人気が高まっている  白石あづさ

どこまでも続く美しい草原に、草を食む羊の群れ。遊牧民がのどかに暮らす中央アジアは、旅人なら一度は訪れてみたい憧れの地ではないだろうか。>

・東は中国、西はカスピ海に挟まれたカザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタンの5か国はすべて内陸国だ。夏は40度を超えることもあり、冬はマイナス20度以下になる都市もある。春と秋が旅のベストシーズンだ。

 

・また現在、兵役を逃れてきたロシア人が流入したことから、ホテルや飲食店などが急激に値上がりしている。

 

旅人たちに知られた「地獄の門」

・中央アジアで最も観光地化され旅行がしやすいのは、モスクや旧市街の美しいウズベキスタンだ。

 

絶景が広がるタジクとキルギス

・最後に牧歌的な雰囲気の残るキルギス。首都を抜け、イシク・クル湖でのんびりしよう。中央アジアでいちばん服装や飲酒にも寛容な国であるため、湖畔のリゾートで長逗留するロシア人が増えた。そのため値段が2倍になった宿もあり、予約が先まで埋まっていることが多い。

 

草原の素朴な遊牧民はどこへ?中央アジア5か国の「いま」を旅する  白石あづさ

スマホを使いこなす老人、オタクショップ……。シルクロードの時代から様変わりした5つの「スタン」を巡る。>

・ところが実際に行ってみると、観光地以上に新鮮だったのが、中央アジアの発展ぶりと人々の独特な価値観であった。

 

<▼3年ぶりにお札見ました

・いま、173もの民族が争わず平和に平和に暮らしていけるのは、お互いの文化や習慣を尊重しつつも、民族の面子よりいいものを選ぶという極めて合理的な考え方が浸透しているからなのだろう。

 

<▼ウズベキスタンは親戚だけで200人?

・それにしても、英語を話す若者がこんなに増えたことに驚いた。

 

<▼貨幣のいらない暮らしを送るソグド人たち

・一方、山岳国タジキスタンは、5か国の中でも旅人は少なく外国人は珍しいはずなのだが、首都ドウシャンベではジロジロ見られることなく話しかけられることもなかった。

 

<▼出稼ぎ国家キルギスの「OTAKU」と「揚げ巻きずし」

・5か国のうち最も気楽なのがキルギスだ。ほかの国と同様にイスラム教が主流だが、お酒も街で飲めるし、服装にも気を使うことがない。首都ビシュケクでは、ミニスカートに生足の女の子もいれば、スカーフにチャドルの女性も歩いている。だが、ウズベキスタンべやトルクメニスタンのように天然資源が少なく職がないため、給料が高いロシアや欧米などに出稼ぎに行く人も多いという。

 

新たな旅人の聖地ジョージアと、アルメニア、アゼルバイジャンを回る  小山のぶよ>

物価が安く、雄大な風景や数々の歴史遺産が残るコーカサスの国々。いま旅行者に最も注目されているエリアを、現地に住み着いた旅人がガイドする。>

3国をめぐる歴史と文化の旅

・デベド渓谷沿いのハフバット、サナヒンの世界遺産の二大修道院を経由し、古都ギュムリへ。黒い石造りの瀟洒な建物が連なる「コーカサスで最も美しい街」は、アルメニア旅のフィナーレにぴったりだ。

 アルメニアから南下してイランへと進むことも可能だが、ビザが必要となる。

 

・コーカサス3国の治安は都市部、地方部のいずれも良好。旅行者を狙ったぼったくりや詐欺、スリ等の軽犯罪も珍しいくらいだ。しかしながら、ロシア、トルコ、イランと3つの大国に挟まれている地理的要因から、政治的に不安定だという点は覚えておきたい。旅行の際は最新の情勢のチェックを忘れずに。

 

コーカサスの小国ジョージアにバックパッカーたちが惹きつけられる理由  小山のぶよ

・近年では「ノマドの聖地」とも言われるジョージアには、世界中から多くの人が集まるようになった。まだまだ安めの物価(旅の予算は1日2000円ほど)や1年間滞在可能であることも大きな理由だが、この国がここまで人々を惹きつけてやまない最大の理由は居心地の良さにある。首都であろうと時間の流れがゆっくりで、ストレスとは無縁な毎日が過ごせる。

 

古き良きヨーロッパが残る最後の地、バルカン諸国がいま面白い   小山のぶよ

政治的な事情から長らく閉ざされてきた地域に、旅人たちがいま増えてきている。ここはもしかしたら、ヨーロッパ最後の、旅人の楽園かもしれない。>

・ビザが必要な国はなく、物価はヨーロッパ最安、宿代を含めて1日2000~3000円で十分に満喫できる。

 

・犯罪は少なく、テロや民族間衝突も長らく発生していない。

 

かつての紛争地が、いまは旅情豊かな地に

・近年ではバルカン半島の自然の豊かさや、歴史が詰まった地方部の魅力が注目されつつある。首都だけを急ぎ足で駆け抜けてしまうのは勿体ない。

 

・夏場は灼熱となり、アドリア海沿岸では宿泊代が跳ね上がるので、できれば春か秋を狙おう。

 

・険しい山道を西に進むとボスニア=ヘルツェゴビナに入る。イスラム教徒が多数派のお国柄、エキゾチツクな雰囲気が魅惑的だ。

 

・ボスニアから南に進めばモンテネグロ。絵葉書のような旧市街がロマンティックなコトルやブドヴァなどアドリア海沿岸の街が注目されがちだが、内陸部の山岳地域の風景も素晴らしい。

 

旅行者に注目されつつあるアルバニア

・続いて旅のハイライトとなるアルバニアへ。長らく鎖国していたこの国はいまだに神秘のベールに包まれている。

 

いかに安くあげるか? 先進国の旅は物価との戦いでもある

日本よりもはるかに物価が高いアメリカやヨーロッパだが、工夫次第でバックパッカー旅行をすることも可能なのだ。>

ヨーロッパの旅なら、スペインとイタリアが狙い目

アメリカはレンタカーの検討も

少しでも安くするのは

・欧米はなにしろ物価が高いが、少しでも安くあげるポイントがいくつかある。

①  大都市に長居しない

②  宿泊先を使い分ける

 

トラブルを乗り越えて旅するために

苦しい思いも旅のうち 問題をクリアしながら旅人は強くなる >

バックパッカーはトラブルとつきあいながら旅をする。毎日のように起こるさまざまな問題を乗り越えて、前進していこう。>

(ポイント)

1、    トラブルは成長のチャンスでもある

2、    トラブル解決にはまず能動的な行動

3、    トラブルの具体例を前もって調べる

 

トラブルこそが旅なのだ

時代が変わっても、旅とトラブルとは切り離すことができない。技術の発達や情報化、インフラの整備によって、確かにトラブルは減ったが、それでも困ったことはあれこれと起きる。ささいなことを含めれば、旅の間は毎日なにかトラブルが発生するといってもいい

 ボッタクリに遭った、部屋のエアコンが動かない、バスが何日も先まで埋まっていて移動できない、どのATMでもお金が下せず途方に暮れる、飛行機が遅れた、インドで牛のウンコを踏んだ……そんなことの連続なんである。なにごともなく平和に過ぎる日のほうが、むしろ少ないかもしれない。ひとりで異国を旅しているのだから、当然といえば当然なのだ。トラブルは絶対に起きる

 

旅は等身大 ロールプレイングゲーム?

・ひとつ確実に言えるのは「たいていのトラブルは解決する」ということだ。その場ではアセるかもしれないが、結局は片づくもの。なんとかなるのだ。

 しかし、受け身のままではどうにもならない。ひとり旅なのだ。誰も助けてはくれない。ひとり旅なのだ。誰も助けてはくれない。旅行者自身の「行動力」が必要だ。足を使って動き、現地の人たちに話を聞き、ときに交渉をする。そうやって右往左往しているうちに、どうにかうまくいく。

 

・困難と戦い、打ち勝って経験値を上げ、レベルアップしていく……それを身体全体で感じられることから、バックパッカー旅行は「等身大ロールプレイングゲーム」なんて呼ばれ方をされることもある。旅の中でトラブルと立ち向かうことが、人を成長させてくれる。

 

事前の情報収集で防げるトラブルは多い

・日々の小さなトラブルは「行動力」によって乗り越えられる。問題は、病気や盗難といった、旅が止まってしまいかねない大きなトラブルだ。できれば遭遇したくないものだが、これは前もって情報を仕入れておくことで回避できる可能性が大きく高まる。

 

こうした情報はオフィシャルなところ外務省の海外安全ホームページ、それに厚生労働省の検疫所サイトに、かなり詳細に紹介されている。ガイドブックでもトラブルについてはかなりのページを割いている。とくにボッタクリやサギといった外国人旅行者の手口については被害者の声と合わせてレポートされていて、けっこう生々しい。

 

・そしてふだんから、国際ニュースに目を通しておくことだろうか。テロや紛争、自然災害といった出来事をチェックしておけば危険地帯に入り込むこともないだろう。合わせて、その国の政治や経済、文化といったニュースを見ておけば、実際に旅したときの理解も深まる。

 

旅行者がかかりやすい病気

誰でも一度くらいは下痢、風邪、熱中症に悩まされる

異文化や、日本と違う自然環境に驚くのは心だけではない。身体もまたびっくりして、体調不良を引き起こすことがある。>

(ポイント)

1、    現地に胃腸が馴染んでから本当の旅が始まる

2、    手洗いとうがいは旅行者の基本と知るべし

3、    なにより大事なのはよく食ってよく寝ること

“下痢は通過儀礼”そんな言葉がバックパッカーたちの間では語られている。それほど多くの旅行者が、たいていは現地について数日以内に下痢になるのだ。おもに途上国で起きやすい。

 原因はいろいろだ。不衛生な環境で繁殖している病原菌に感染するケースが最も多いといわれる。

 またスパイスや油の多さなど、日本とは違う食文化に胃腸がびっくりして消火不良を起こすこともある。よく言われるのは水質の違いで、海外は日本よりミネラル分が高い国が多い。これも胃腸への負担となる。

 それから慣れない海外、不安なひとり旅という環境にまだ適応できていないストレスや疲れも、下痢の一因だ。異文化の地に足を踏み入れたから起こるため「旅行者下痢」ともいわれる

 

下痢の予防と対策は?

・「通過儀礼」を超えたからといっても、衛生的な注意をしていないと、また下痢やさらに危険な感染症にかかってしまう可能性もある。

 そんな事態を防ぐために、まず気をつけたいのが生水だ。細菌や微生物が混入している可能性がある。どんな国でもミネラルウォーターは手に入るのでこちらを飲もう。それに氷も避けたほうがいい。

 熱帯の国ではよくカットフルーツの屋台を見かけるが、これも注意。

 

・料理の付け合わせに出てくる生野菜も慣れないうちは食べないほうがいいだろう。料理はしっかり火の通ったものを。

 食事といえば旅行者たちはよく「人気のある店なら、ある程度は安心」と話す。

 

・そして基本的なことだが、ひんぱんな手洗いを。宿に戻ってきたらせっけんでしっかり手を洗おう。インドなど手で食べる文化圏には食堂にも手洗い場がある。

 

風邪と熱中症も、旅の大敵

・風邪をひく旅行者も多い。やはり疲れや慣れない環境のストレス、衛生状態の違いが原因となる。それに暑い国では、外気とエアコンの効いた室内の気温差で体調を崩すこともある。

 

・熱中症にも注意を。炎天下に歩くことの多いバックパッカーには身近な病気だ。酷暑期のインドなど、摂氏40度どころか50度に迫るような地域・季節もある

 

・街歩きのときはなるべく日陰を選び、こまめに休みを挟んで、水分補給をしっかりと、塩分も摂ろう。ORS(経口補水液)も効果的だ。熱がこもらない通気性のいい服や帽子もおすすめ。

 

自分の身体と体力を信じよう

・旅の基本はなによりもまず体力。無理のない日程で、疲れたら休み、よく食ってよく寝る。

 

・ほとんどのバックパッカーは下痢や風邪くらいにはかかっても、結果的には無事に旅を終えて帰ってくるものだ。

 

注意したい危険な感染症

アジアではデング熱が増加 細菌による病にも気をつけたい

ごく一部ではあるが、ハードな感染症にかかる旅行者もいる。万が一のために、病気についての知識は持っておきたい。>

猛威を振るっているデング熱

・近年、蚊を媒介とする感染症が急激な広がりを見せている。代表的な病気がデング熱だろう。これはデングウイルスを持っている蚊に刺されることで発症し、38~40度の高熱、激しい頭痛と関節痛、それに筋肉痛などに見舞われる。かなりきついが、特効薬やワクチンはいまのところない。

 

このデング熱は熱帯・亜熱帯地域を中心に年間4億人が感染するといわれるが、とくにアジアの都市部で広がりを見せている。バングラデシュのダッカ、ネパールのカトマンズでも流行した。日本人在住者や旅行者も感染している。

 注意したいのは蚊が繁殖する雨季だ。水回りが不衛生な宿は避けたい。

 

・また蚊に刺されないようにするため、暑くても長袖や長ズボンなど肌を露出しない服装をするのも対策のひとつ。防虫スプレーも使おう。

 蚊による感染症ではマラリアもある。発熱や頭痛、嘔吐などの症状が起こり、やはり重症化すると危険だ

 

・さらにチクングニア熱も東南アジアやアメリカ大陸で流行が広がっている。命に関わることはまれだが、激しい関節痛などが起こる。

 

細菌による感染症にかかる人も多い

・衛生状態の良くない途上国では、病原性の大腸菌や赤痢菌、カンピロバクター、サルモネラ菌などが広く存在している。こうした細菌が、食べ物や飲み物を介して身体の中に入ってくることがある。

 

・とはいえ、死に至るようなことはほとんどない。まずは病院に行こう。日本語が通じたり通訳がいるような大病院が最も安心だが、こうした病気が蔓延している途上国では地方の小さなクリニックでもそれなりに処置はしてくれる。

 

旅行者に身近な狂犬病や高山病

・途上国では動物にも気をつけたい。とくに野良犬だ。もはや住民の一員といった顔でそこら中をうろうろしていて人懐っこいやつもいるのだが、狂犬病を持っていることがある。これは発症すれば死亡率100%という恐ろしい病気だ。犬だけでなく、コウモリや猿、猫などもウイルスの宿主になることがある。

 なので犬にかまれたらすべての旅程を中止して即病院へ。

 

・ヒマラヤ山脈やアンデス山脈など標高の高いところへ行くなら、高山病にかかることは考えておこう。空気が薄く酸素濃度が低いことが、さまざまな体調不良を引き起こすのだ。

 

置き引きや強盗について

犯罪被害の大半が「窃盗」だが注意しておけば十分に防げる

海外旅行といえばやっぱり気になるのが治安。外務省のデータをもとに、犯罪被害の傾向と対策を考えよう。>

(ポイント)

1、    警戒しているというアピールが大事

2、    世界的に急増しているスマホ盗難に注意

3、    強盗に遭遇したら逆らわないこと

 

少しの注意で防げるスリ・置き引き

・外務省による「海外邦人援護統計」というデータがある。海外にある日本大使館や領事館に、なんらかのトラブルを抱えて駆け込んできた日本人について取りまとめたものだ。2020年から22年まではコロナ禍によって日本人の海外渡航者数そのものが少ないのであまり参考にならないから、パンデミック前年の2019年の統計を紐解いてみよう。

 まず海外渡航した日本人の総数は、この年およそ2008万人、そのうち援護件数は世界で合わせて2万17250人。1000人にひとりという計算だ。病気、事故、災害や紛争に巻き込まれた、あるいは不法滞在や麻薬など犯罪を犯してしまったなど実にさまざまだが、「日本人が犯罪の被害に遭ったケース」では「窃盗」が圧倒的に多い。援護件数全体の約2割、4260人を占める。

 このうち7割が「スリ」と「置き引き」だ。これは注意を払っていれば、かなり防ぐことができる犯罪でもある。

 

・レストランなどで日本と同じノリで荷物を席に置いたままトイレに行くのはもう盗んでくださいと言っているのと同じだ。

 

・大切なのは「盗難に気をつけている」という姿勢を周囲に示すこと。具体的には「荷物を常に身体と接触させておく」ことだろう。

 

・窃盗被害が多い地域はヨーロッパで、2597人。フランスなど、有名観光地でのスリには要注意だ。また「ケチャップスリ」という手口もある。

 

・全世界に増えているのがスマホの盗難。とくにiphoneの最新機種は高く売れるので狙われやすい。

 

・それと悲しいことだがドミトリーでの盗難もある。個人用の鍵つきロッカーが完備されているドミを選ぼう。

 

中南米では強盗被害が目立つ

・銃や刃物などで脅され強引にお金や荷物を奪われる。いわゆる強盗被害に遭った日本人は、2019年の場合241人。旅行者が少ない割に中南米での事件が多い。遭遇した場合はとにかく抵抗をしない、反撃しないこと。それは異国を旅する人間の鉄則といえる。下手に刺激をすると命の危険がある。

 

・アジアでは睡眠薬強盗も注意。歓楽街で話しかけてきた美女と遊びにいった先で飲み物にクスリを混入されて……といった手口。また2人乗りバイクに後ろから荷物を引ったくられるというケースも。

 

なお2019年に海外で犯罪によって殺害された日本人は8人。性犯罪の被害者は23人、暴行・障害の被害者は66人。2000万人の海外渡航者のうちほんのわずかな人数ではある。こうした被害に遭う確率はきわめて低い。しかし現実に、犯罪に巻き込まれた人がいるのだ。次は自分かもしれないと思って、しっかり対策をしておこう