<卵を産む鶏を殺すような政策をとる地方政府>
・高橋:しかし地方政府を破綻させるかどうかも中央政府で決めることができてしまうのではないですか。これもバブル同様、地方政府が破綻していても破綻していないという言い方になるでしょう。おそらく中央政府はすでにそう決めていると思いますね。
・高橋:現に中国の企業には共産党員が派遣されています。はっきり言えば、地方政府はその共産党員を通じて民間企業から資金を召し上げる仕組みをたくさんつくれるわけです。
<外資からの収奪で延命>
・石平:ここまでの対談をまとめると、大事なポイントの1つは中国のGDPはウソであることがほぼ確定したということです。成長率自体もウソで、おそらく本当の経済規模は発表の数字よりも何割かは少ないのです。
もう1つは中国は不動産バブルが支える経済で、そのバブルは日本と全く違う次元のものだということです。
石平:しかも経済を崩壊させないためにはバブルを維持する以外ないのに、その一方で不動産投資も完全にダメになります。あるいは14億人の、その打撃はさらに大きい。ならば、中国経済はほぼ永久にマイナス成長になるしかありません。
・高橋:確かに今までは外資企業が入って来ています。
石平:中国では目下、外資を含めて民間企業が中国の雇用の7割くらいを生み出しているのです。国有企業あるいは国家部門の雇用はせいぜい3割くらいなので、これから習政権の直面する最大の致命的な問題は大量失業ということになるでしょう。
<人口減少はごまかせない決定的証拠>
<中国人の利用急増で日本の国民皆保険が破綻>
・石平:中国の社会保障制度は1つが医療保険で、もう1つが年金です。ただし都市部と農村部でも違っていて、農村部には社会保障制度はほとんどありません。
高橋:医療での日本のような国民皆保険制度もないわけですね。
石平:医療保険に関しては、中国の体制内の人々、つまり社会主義体制の国家公務員や共産党幹部にはちゃんと適用されています。都市部の国有企業の従業員もそうです。
・高橋:不正利用は論外ですが、正規の制度でも、普通の国では、外国人の短期滞在者にはその国の公的保険を使わせるのではなく民間保険を利用してもらう。そうでない日本は、短期滞在の外国人に皆保険が食われています。
恐らく今後、日本の皆保険目当てに安い航空運賃で日本に来る中国人がどんどん増えていく。
・高橋:日本でもそれがこれから問題になるでしょう。やはり他国のように外国人には民間保険に入って日本に来いと言うべきです。
また日本では年々、社会保障制度の維持コストが重くのしかかっています。しかし社会保障制度が未熟な中国ではそれがかからないでしょう。イギリスは、外国人の社会保障制度利用が契機となって、EU離脱まで追い込まれました。日本も相当注視しないといけません。
石平:日本に比べると維持コストが軽いのは確かです。けれども中国には国家公務員や国有企業の社員、軍人にはそれなりに充実した年金制度があるので、この維持コストはバカにできません。だから、中国政府では年金の負担が重くなっているということで、なるべく定年の時期を伸ばす方向になっています。
中国の民間企業については年金のプール自体があるのかどうかもよくわかりません。
<人口減少の速度は日本の4倍>
・石平:今後の中国の10年後、20年後がどうなるかを考えるとき、いちばん大きな問題はやはり出生数が激減している問題です。
・高橋:中国の人口は去年61年ぶりの減少になりました。それは多くの人々が死んだというよりも出生数が極端に減ったことが大きいのでしょう。
石平:そうだと思います。では今後、出生数が回復するかどうかと言うと、おそらく回復しません。1つの理由はやはり一人っ子政策を長年やってきたために、今の中国では一人っ子というものがもう文化になってしまったからです。
・もう一つの理由は、若者たちの失業率が高いために若者たちも将来に対して希望が持てなくなっている。となると結婚や子供をつくるどころではなくなっています。
・高橋:確実に人手不足になります。だから老人に働いてもらうしかないですよ。
・高橋:年金を手厚くして老人が働かなくても済むようにするというのが普通の国の考え方なのに、中国ではそうではないので老人は大変ですよ。
石平:中国の年金制度はもう確実に破綻するのです。
高橋:年金なしで働けと言われると同時に、公的医療保険も整備されていないのだから、中国社会は今後すごく不安定になりますね。
<出産一時金や児童手当は効果がない>
・高橋:子供を産むかどうかは個人の自由なので政府も誘導策しかできません。誘導策と言っても出産一時金や児童手当くらいしかないのはどこの国も一緒。
・石平:とはいえ中国政府であれば、また変なことをやらないとも限らない。例えば今、中国の一部の専門家が政府に提案しているのがコンドームの販売禁止です。
<もはや機械で代替するしかない>
・石平:今は若者の就職先がないから、農村では多少人気がありますよ。人民解放軍に入ると、とりあえず食ってはいけますから。
また、通常は農村の若者は農村戸籍を都市戸籍には変えられません。しかし農村の若者でも戸籍を変えられる可能性のある方法が2つあります。1つが大学を卒業し都市部で就職すること、もう1つが人民解放軍に入って幹部になることです。
・石平:いや、弱いですよ。人民解放軍に入るためには高額の賄賂を払わなくてはいけません。賄賂を払って軍に入ったような人間がまともに戦うことなどできないでしょう。戦うことよりも賄賂の元を取ることのほうがはるかに大事なんです。
<中国に大衝撃を与えた婚姻件数の激減>
・石平:中国では習政権が発足した11年前から婚姻件数の減少が大きな社会問題になっていきました。
・婚姻率は2013年は9.9%でした。しかし2021年には5.8%へと大きく減りました。現象としては、どういうわけか、習政権になってから若者は結婚しなくなったのです。
・石平:最近、中国でよく言われるのは若者たちの「不恋愛・不結婚・不生育」です。この「恋愛しない、結婚しない、子供をつくらない」という「3つのしない」が一種の価値観となって中国社会に定着し常態化し始めています。
<オフィスビルの空室率上昇に表れた香港の衰退>
・石平:ブルームバーグが今年6月5日、香港全体のオフィスビルの空室率がすごく上昇しているという取材記事を掲載しました。
・石平:香港のデモ鎮圧と一国二制度の破棄のために外国企業が香港からどんどん離れていっています。それによって空室率が3倍以上にも跳ね上がってしまったのです。
・石平:もともと香港には資源もないし大した産業もありません。それでもこれまで資本と人材の2つがあったから、国際金融センターおよび貿易センターとして成り立ってきたのです。
ところが今、香港の資本と人材の両方が徐々に失われつつあります。
<習近平一強体制がトドメの一撃>
<共産党一党独裁から1人独裁に>
・石平:いずれにしても、彼の終身独裁政権の道が開かれてしまいました。今回、わざと後継者もつくらなかったので、3期目に終わるつもりも全くないし引退するつもりもありません。
高橋:対抗勢力も中国共産党内にはいなくなってしまいましたね。
<中央財経委員会と国務院の合体で迷走する経済政策>
・石平:李強はもともと浙江省で習近平の部下でした。だから彼に抜擢されて上海トップを2年間勤めたのです。しかしその2年間で上海は完全に沈没しました。というのも、特にゼロコロナ政策で2ヵ月間ロックダウンしたことが大きな打撃となったからです。
・高橋:いきなり国の運営に携わるというのは、ちょっとあり得ません。外電によれば、李強は「ミスターマイナス13.5」と言われていると聞いています。上海時代の成長率がマイナス13.5%だったからです。それは象徴的なことです。
・石平:今回、李克強を追い出して子分の李強を首相にしたとき、当初は多くの人々は、習近平が中央財政委員会の主任を李強に渡して仕事を全部任せるのではないかと思いました。
ところが、5月に中央財経委員会の会議が開かれたら、相変わらず習近平が主任で、李強はその下で副主任を務めるという形になったのです。この会議で最初に持ち出された経済運営の方針は、共産党の経済に対する指導を強化するということでした。そんな方針で経済を運営できるはずがありません。
<習近平にただ従うのが官僚の仕事>
・高橋:中国の政治構造の特殊性は共産党の下に政府があることです。政府が共産党の下にくっついている。とはいえ他国との交渉もやらなければならないから、実務的にはそこそこの力がないと政治運営などできない。
・高橋:そんなことをしていたら国の経済を回すことなどできないですよ。経済官庁の財務部などは現実に基づいて動かないとダメなのに、現実を無視して共産党の指導だけに従って動くことになったら、ソ連が崩壊したときと同じような状況になります。
本当に今回、国務院のいろいろな部署を共産党の下にくっつけたのはちょっと信じがたいですね。中央銀行や財政部門、金融部門のような専門性の高いところは、政府のなかでもある程度独立させて専門的にやらせるというのが国際水準ですよ。
<愚か者がトップになる最悪な独裁制>
・石平:しかし習近平にとっては成長よりも分配のほうが大事なんです。
高橋:それは本当に「角を矯めて牛を殺す」ことであり、経済を全部ダメにしてしまいます。逆に、成長すればいくらでも分配できる。こんな当たり前のことが、彼にはわかっていないのでしょう。
<日本はデリスキングへの流れに用心せよ>
・高橋:先端半導体は軍事にも直結しているため規制は緩められません。
ただしトランプ政権は「デカップリング」と言っていたのに、バイデン政権は「デリスキング」という言い方をするようになりました。デカップリングが「分断」なのに対し、デリスキングは「リスク軽減」ということです。
<親中派をスパイで拘束し自滅>
<ある日突然スパイ容疑で拘束される外国人>
・石平:習政権は2014年に「反スパイ法」を施行しました。これにより「国家安全」を名目にした外国人の取り締まりを一貫して強化してきました。
・高橋:中国で活動している日本人は、いつ何時拘束されるかわかりません。本当に大変ですよ。
<親中派ほど当局に捕まりやすい>
・高橋:日中青年交流協会の理事長はその立場から言っても親中でした。アステラス製薬も中国が発展して規制緩和があるというので中国への投資を積極的に行ってきました。拘束された社員はもとよりこの企業自体も親中なのです。
石平さんの言うように、やはり中国人との接触が多い親中の人ほど中国では危ない。親中の人ほどスパイ容疑のターゲットとされやすいと言えますね。
<何でもかんでもスパイ容疑にできる改正反スパイ法>
・高橋:これまでの反スパイも酷い法律でした。ところが、それを改正して酷さがバージョンアップした改正反スパイ法が成立しましたね。
・石平:例えば外国企業が中国でビジネスのために資料を収集したりデータを集めたりする行為もスパイ行為と見なすことができるのです。
・石平:改正反スパイ法に基づくと中国にいる日本人を含めた全ての外国人は「誰でも、いつでも、どこででも」スパイとして拘束されても不思議ではありません。
・石平:さらに第16条では、スパイ行為の通報・密告を全国民に義務付けると同時に、通報・密告用の電話番号、メールボックス、ネットワーク・プラットフォームの開設と運用を国家安全機関に求めています。しかも通報・密告者に対する表彰・報奨・保護の規定も付け加えられました。
これは明らかに「反スパイ人民戦争」の発動とその恒久化を図ったものです。しかし、嘘の通報に対する処罰を定めた条項はありません。
となると今後、報奨金目当て・ライバル潰し・恨み晴らし・嫌がらせなどの邪な動機による虚偽の通報・密告が全国で多発することも予想されます。
<投資の誘いとスパイの摘発という大矛盾>
・石平:李強はあちこちで外資に「中国はこれからも開放します。どんどん入って来て投資をしてください」と呼びかけています。しかし一方で習政権は改正反スパイ法によって外資を脅かしているのです。
<中国外交には日本も相互主義で対抗せよ>
・高橋:外交の世界では「相互主義」というものがあります。相手がやっていることと同じことをやる、ということです。ざっくばらんに言えば、「やられたらやりかえす」。この相互主義は外交の世界では当たり前なのに、日本政府はほとんどやったことがありません。
・高橋:ところが、日本では相互主義が非常にやりにくい。というのは、どこの国にもスパイ防止法があるのに、日本にはないからです。
・高橋:ただし日本でスパイ防止法をつくろうとすると、親中の人たちがさらに激しく抵抗するでしょう。日本には親中の人たちがたくさんいます。日本政府もよほど腹を決めないと、スパイ防止法を成立させるのは難しい。
<第三世界のATMと化した中国外交>
<AIIBと一帯一路は完全に失敗>
・石平:鳴り物入りで登場した「一帯一路」構想と「AIIB」は今や見る影もありません。世界経済における中国の凋落を象徴しています。
・高橋:AIIBはダメだという見通しは当りました。私は日本国には全然悪いことを言っていません。日本はAIIBのような地雷を踏まないで本当によかった。
<共産党体制では絶対に人民元通貨圏の拡大はできない>
・高橋:中国は人民元の販路を拡大したくても一帯一路もAIIBも行き詰まってきているから難しくなってきています。
・高橋:国際決済取引での人民元のシェアは3%程度にすぎません。
高橋・要するに、資本取引の自由化については中国が社会主義体制である以上、全くできません。だから人民元も国際通貨に絶対になれないのです。
<半導体産業も崩壊に向かう>
・石平:米中対立による先端半導体のサプライチェーンを中国から切り離すという動きになっています。半導体関連の外資も中国から出ていくのは間違いないですね。
<台湾のTPP加盟を早く進めよ>
・高橋:日本としては台湾のTPP参加をできるだけ早く進めることが重要でしょう。
<暴言を吐いた中国の駐日大使をなぜ国外追放しないのか>
・石平:中国のネット上では普段、「日本が我らの祖国統一を妨害したら、日本列島全体を火の海にしてやる!」「台湾解放のついでに大和民族を根こそぎ滅ぼしてやろうではないか」といった過激な言論が溢れています。
しかし中国の外交官でしかも駐日大使が公然と「日本民衆が火の中に」と発言し、日本国民全体に対して大量殺戮のニュアンスの軍事恫喝を行ったのは前代未聞ですよ。
<中国の戦略は西側の切り崩し>
・高橋:政治の観点では今日でも(合従連衡策は)通用する話ですね。
石平:十分に通用します。この故事が21世紀の我々に伝える最大の教訓とは、現代の秦である中国の連衡策に乗せられて西側の団結が乱れたら、災いが我々全員に降りかかってくるということです。
<どの国も本音は中国はATM>
・石平:特にアフリカ諸国の首脳はみんなわかっています。彼らにとって習近平は自動ATMのようなものなので、暗証番号まで知っている。すなわち、「1つの中国を支持する」「台湾独立に反対する」という暗証番号を入れたら、中国からどっとお金が入ってくるのです。
<中国にロシアとウクライナの仲介は不可能>
・高橋:もともと中立的ではない中国に、ウクライナとロシアの仲介役などできやしません。
<平和が破壊される確率は高い>
<戦争のリスクを避ける「平和の3要件」>
・高橋:「民主主義国は戦争しない」という非常に素朴な理論です。哲学者のカントの主張にも通じています。
・高橋:統計分析の結果、まず平和を保つ要素には3つあることが明らかになりました。「自国と相手国の民主主義度を高くすること」「相手国との相対的な軍事力の差を小さくすること」「有効な同盟関係を結ぶこと」です。そのうえで、各要素ごとに戦争のリスクを避けられる確率を出すと順に33%、36%、40%となりました。
この3つの要素は「平和の3要件」と呼べるでしょう。
<軍事力のアンバランスが戦争を誘発>
・高橋:互いの国の軍事バランスが取れなくなってくると、均衡状態が崩れて戦争発生のリスクが高まってしまいます。
<子供でも分かる強者の論理>
・高橋:最後の「有効な同盟関係を結ぶこと」は2つの国が同盟関係を結べば他国から攻撃される可能性が低くなるということです。
<日米同盟の強化につながった安倍首相の平和安保法制>
・高橋:安倍首相は多大な労力をかけて平和安保法制を制定しました。それによって米国との間での集団的自衛権の一部を実現したのです。集団的自衛権は同盟を強くするための基礎なので、平和安保法制によって日米の同盟関係が強化されたことになります。
<ウクライナが侵攻されるのは必然だった>
・高橋:米国との間で核シェアリングまですると、かなり強くなります。だから私は安倍首相に「核シェアリングをしてください」と言ったのです。今のところ、残念ながら核シェアリングは実現していません。
<憲法9条改正で軍隊ができれば日米は完全な同盟となる>
・高橋:私は平和安保法制は日本の戦争の確率を減らすと一貫して説明してきたし、巻き込まれ論の人には「巻き込まれるのではなく、強い国と組んだらちょっかいを出されることがなくなる」という言い方をずっとしてきました。
<米軍原潜を買うか借りるか>
・高橋:日本の核シェアリングのいちばん簡単な方法は、退役した米軍の原潜を日本が買うか借りるかだと思います。原潜を自前で開発するのはすごく大変なので、退役した原潜を買うか借りるのが合理的なのです。借りる場合は乗員込みで借りればいいでしょう。
<崩壊の道しかない中国は台湾有事を起こす>
・石平:かつて鄧小平は、改革開放で経済を発展させようとしたのです。ある程度は成功するのではないかと思われた矢先、習政権が出現して改革開放は逆行してしまいました。それで今や中国経済は落ち込んでいます。
・石平:しかし習近平は鄧小平路線を止めて、かつ中国経済を先祖返りさせているのです。
高橋:そのお陰でわかりやすくなったじゃないですか。だから、これからは中国には本当に崩壊する道しかなくなってきました。こういうときには海外に活路を求めるしかなくなるというのが人類の歴史なのです。
石平:中国は台湾有事を起こすということですね。
<台湾が「戦わずして負ける」可能性>
<突然全面的に大転換した中国の農業政策>
・高橋:台湾有事ですね。今は「台湾有事がいつ起こってもおかしくない」と言う人も増えてきました。
・石平:前提から話すと、胡錦涛政権時代から農耕地の開発をやりすぎて自然が破壊され大洪水などが起こるようになりました。そこで今から20年前に始められた政策が「退耕還林・還草」(農耕地を森林・草原に戻す)です。あちこちで農耕地をやめて森林に変えていくというもので、これによって再び緑地が増えていった。
また、当時は穀物をつくっても全然お金にならなかったため、お金になる換金作物の栽培も奨励されたのです。それで農民は田圃を潰して花を植えるなど経済価値の高いものをつくるようになり、現金収入も増えていきました。
高橋:緑化で地域の災害を防ぎ、農民の所得を増やすというのは真っ当な政策ですよね。
石平:ところが、23年になって突然、習政権は全国で退耕還林・還草とは正反対の「退林・退草還耕」政策を全面的に始めたのです。今まで植えた木を全部伐採して再び農地に戻させ、農民たちは、今までつくってきた換金作物を全部捨てさせられ穀物の米や小麦をつくらされることになりました。しかも、かつての大躍進政策と同様に行政命令によって強制的にやらされています。
高橋:大躍進政策は、毛沢東の主導で1958年に実施した鉄鋼、農作物の大増産運動ですね。しかし餓死者が2000万人前後も出たとされ、大失敗に終わりました。
・石平:となると、ただでさえ農村は貧乏なのに、換金作物が禁じられてますます貧困化してしまいますね。
高橋:貧困化はどんどん進むでしょう。共同富裕どころか、まさに共同貧乏ですよ。
<戦争に備え食糧輸入を拡大>
・石平:習政権が退林・退草還耕を実行する理由に挙げているのが食糧の確保、つまり食料安全保障なのです。
・石平:中国は爆食しているのだから食糧を止められると非常に苦しい。それで国内は食糧危機に陥る危険性があります。
<自衛隊、1個師団全滅という危機 ⁉>
<共産党エリートの最大の悩みは海外の個人資産の凍結>
・高橋:中国人は、家族とか資産とか個人的なところが弱い。中国に対しての制裁では個人的なところを突くことが欠かせません。米国は金融の力が強いので資産凍結もできます。
・高橋:死活問題の前では祖国統一の大義名分などどうでもよくなります。だから、みんなの目の前のお金でけっこう動くことがあります。台湾人にとっても食うことが優先されるという話をしました。中国の本土の人だって同じ。食うためにはお金が何より大事なのです。
<それでも最後に勝つのは民主主義>
・石平:台湾有事になると日本にも戦争が迫ってきます。それなのに日本の政界や経済界には危機感があるようには見えない。
高橋:防衛費をGDPの2%に上げるというところで政界には危機感が出始めています。
・石平:民主主義には何をやるにも時間がかかりますね。
高橋:仕方がないですね。民主主義では物事はゆっくりゆっくり進み、しかも障害を1つずつクリアしていかないといけません。しかし、民主国家のほうが、経済成長も達成でき、戦争を妨げる可能性が高いのです。
<おわりに>
・今世紀に入ってから多くの日本人が中国崩壊論を唱えるようになった。特に勢いを増してきたのが2010年をすぎてからである。
・とすれば中国崩壊論が現実味を帯びてくるのはまさにこれからだと言える。それでも何せ巨大な国だから崩壊まで短い期限を定めるべきではない。少なくとも10年くらいは時間的な余裕を持たせておいたほうがいいと思う。
・ウクライナ戦争を見てもわかるようにウクライナ人が必死に戦っているからこそ、軍事同盟を結んでいないため派兵できる国はないものの、多くの国が兵器や支援物質をどんどんウクライナに送っているのである。同様に日本人が頑張らないと米軍が来るはずがない。
だから自衛隊は単独で人民解放軍と戦うことになる。それで自衛隊が1個師団くらいの犠牲者を出したときに初めて、日本政府の求めに応じて米軍が参戦することになる。1個師団の兵力は数千人だ。
なお、中国には自国が崩壊する前に台湾を併合するというインセンティブも生まれ得る。台湾併合で中国経済も多少は持ち直すかもしれない。台湾有事は中国経済とも深く関係しているのである。
(2020/8/28)
『新型肺炎 感染爆発と中国の真実』
中国五千年の疫病史が物語るパンデミック
新型コロナウイルスはなぜ中国で発生し拡大したのか
黄文雄 徳間書店 2020/2/29
<2020年1月末の春節から感染が拡大し続けている>
・私は、今回の新型肺炎の世界的流行は、独裁国家が国際的な影響力を持つことのリスクが表面化した事態だと考えている。独裁国家にとって、情報統制は必要不可欠なものだ。
<新型コロナウイルス「COVID-19」が中国で発生、拡大した歴史背景とは>
・中国発パンデミックを警告し続けてきた著者が、疫病の発生・拡大を繰り返してきた中国五千年の社会・政治・民族的宿痾を解説。世界の歴史を動かしてきた中国疫病史をもとに、新型肺炎感染拡大の行方と影響を分析する。
・私は2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が世界的流行を見せた際、『中国発SARSの恐怖』(光文社)という書籍を上梓し、中国の隠蔽体質や事実捏造を告発した。本書の執筆にあたり、17年前のこの著書を読み返したが、当時の中国政府の対応は驚くほど今回と酷似している。
・私は、今回の新型肺炎の世界的流行は、独裁国家が国際的な影響力を持つことのリスクが表面化した事態だと考えている。独裁国家にとって、情報統制は必要不可欠なものだ。為政者にとって都合の悪い情報は絶対に出てこない。
・だが、このような体質が、中国国内はもとより世界への感染拡大を招いている。中国人も世界の人々も、中国共産党の被害者なのだ。だが、情報統制をやめれば、それは一党独裁の終わりを意味する。中国共産党にとって、言論の自由は絶対に容認できない。いまなお1989年の天安門事件すら公には語ることができないという事実が、それを証明している。
・本書では、中国が歴史的につねに疫病の発生地であったこと、その感染拡大が世界の歴史を大きく動かしたことについても解説している。なぜ中国から拡散した疫病が厄介なのかということについても、歴史、民族性、文化、政治など、さまざまな観点から考察している。