『円高・デフレが日本を救う』

小幡績  ディスカヴァー携書  2015/1/31

 


 

<21世紀最大の失策>

・しかし、やったことは間違っている。現実経済の理解も間違っている。戦術的に見事である以外は、最悪の緩和だった。

 結果も間違い。現実認識も間違い。最悪だ。

中央銀行としては、21世紀最大の失策の一つとも言える。なぜか?

 

まず、原油下落という最大の日本経済へのボーナスの効果を減殺してしまうからだ。

日本経済の最大の問題は、円安などによる交易条件の悪化だ。原油高、資源高で、資源輸入大国の日本は、輸入に所得の多くを使ってしまい、他のものへの支出を減らさなければならなくなった。これが今世紀の日本経済の最大の問題だった。交易条件の悪化による経済厚生の低下として経済学の教科書に載っている話そのものだ。

 

・その結果、他の支出へ回すカネが大幅に減少した。雇用が増え、勤労所得が増えても、資源以外は買えるものが減り、より貧しくなったという生活実感だった。

 この実感は、数字的にも正しく、輸入資源以外への可処分所得が減少したのである。これが実感なき景気回復である。

 

・影響は原油だけではない。円安が急激に進むことによって、多くの生活必需品、原材料が高騰した。パソコンや電子機器の部品を含めて輸入品はすべてコスト高となった。我々は貧しくなった。

 

・そして、さらに根本的な誤りがある。テクニカルだが、将来の危険性という意味では最も危険で致命的な誤りがある。

それは、誤った目的変数に向かって戦っていることである。

誤った目的変数とは、期待インフレ率である。期待インフレ率とはコントロールできない。

それをコントロールしようとしている。不可能なことを必死で達成しようとしている。

この結果、政策目的の優先順位まで混乱してしまった。期待インフレ率のために、あえて日本経済を悪くしてしまっている。

 

・異次元緩和という、長期にはコストとリスクを高める政策をわざわざ拡大して、わざわざ日本の交易条件の悪化を目指している。長期のコストとリスクを拡大することにより、短期的に日本経済を悪くしている。しかも、それをあえて目指している。

 21世紀中央銀行史上最大の誤りだ。

 

<量的緩和による中央銀行の終焉>

・ここで、量的緩和のリスクについて触れておこう。

 量的緩和とは、現在では、実質的には国債を大量に買い続けることである。これはリスクを伴う。国債市場がバブルになり、金融市場における長期金利、金融市場のすべての価格の基盤となっている価格がバブルとなるのであるから、金融市場が機能不全になる。

 それを承知で、すなわち、バブル崩壊後の金融市場の崩壊のリスクは覚悟のうえで、国債を買い続けている。中央銀行が買い続けている限りバブルは崩壊しないで、そのバブルが維持されている間になんとかしよう、という政策である。

 

・この最大のリスクは、財政ファイナンスだと見なされることである。それによって、中央銀行に対する信頼性、貨幣に対する信任が失われることである。

 財政ファイナンスとは、政府の赤字を中央銀行が引き受けるということである。実質これが始まっている、という見方もあり、アベノミクスとは異次元の金融緩和に支えられた財政バラマキであるという議論も多い。 

 

・財政ファイナンスに限らない。貨幣およびその発行体である中央銀行に対する信任が失われるのであれば、その原因は、きっかけは何であれ、中央銀行は危機を迎える。危機と言うよりも終わり、中央銀行の終焉である。

 量的緩和は、あえて、自己の信用を失わせるような手段をとりつつ、信用を維持することを目指すという綱渡りのような、非常に危うい政策なのである。

 

<米国FEDと日銀の根本的違い>

・実は、国債などを大量に買い入れるという、この「量的緩和」は米国も行ってきた。

しかし、「量的緩和」は前述のようなリスクを伴う危うい政策である。このような危うい政策は、どこかで脱出しないといけない、できれば、勝ち逃げして逃げ切りたい、つまり、景気刺激といういいとこどりをして逃げ切りたい……。

 

・米国中央銀行FEDは脱出に成功しつつある。出口に向かい始めたのだ。しかし、日本は脱出に失敗するだろう。なぜなら、米国FEDとは根本的に考え方が違うからだ。日銀は、達成できない目標を掲げ、その達成に向けて全力を挙げているからだ。

 

・なぜ、米国が成功し、日本が失敗するのか?

 米国は、インフレターゲットは手段であり目的ではない、ということをわかっているからだ。

 彼らは、2%のインフレターゲットを掲げながら、インフレ率が2%に達していなくても、出口に向かい始めた。なぜなら、目的は米国経済だからだ。失業率が十分に下がれば、インフレ率がターゲットに達していなくとも、異常事態の金融緩和を解消し、正常化に向かい始めるべきだ、と判断したのだ。米国は手段と目的を取り違えていないのである。


<期待インフレ率を目的とする致命的誤り>

・なぜ「期待インフレ率」を目標とすることが、そこまで致命的に誤っているのか?もう少し詳しく述べておこう。

 第一に致命的なのは、目標を達成する手段を持っていないことである。

 期待インフレ率という目標を達成する手段を中央銀行は持っていない。手段のない目標は達成できるはずがない。だから、これは永遠に達成できない目標であり、たまたま運良く経済インフレ率が2%に来て、そこにたまたまとどまってくれることを祈るしかない。これは祈祷である。祈祷だから、異次元であることは間違いがない。


 


『週刊東洋経済』2014.12.27

「危機  著名投資家ジム・ロジャーズ」

 

 

 

<世界規模の破綻が2020年までに来る>

<行きすぎた紙幣増刷は世界に何をもたらすか>

(――東京オリンピックまでの世界経済をどう見ていますか。)

・安倍晋三首相がおカネを大量に刷らせているから、日本経済は当分の間、景気がいいでしょう。しかし、東京オリンピック前に状況が悪化し始め、日本のみならず、世界のほぼ全土で経済が破綻するでしょう。2020年までに、少なくとも1回は世界規模の破綻が起こります。米国や欧州など多くの国々で、今後6年の間に問題が起こるでしょう。正確な時期はわからないが、たぶん16年か17年でしょう。

 

(――つまり国債が暴落すると?)

・そうです。国債が大暴落し、金利があがります。株価も暴落します。今すぐにというわけではありませんが、20年までに起こるでしょう。世界規模の経済問題が発生し、ほぼすべての人が影響を被るでしょう。

 

<安倍首相は円安誘導で日本を破滅に追い込む>

(――なぜ破綻が起こるのですか。)

・大半の国々では4~6年ごとに経済問題が発生しています。だから、もうじき、いつ起こってもおかしくない状態になります。

 今の景気浮揚は、日本や米国、英国など欧州の国がおカネを大量に刷ったことによる人為的なものです。

 

(――破綻を回避する道は。)

・今のところ、防ぐ手立てはありません。(何をしても)非常に悪い状態になるか、少しましなものになるかの違い程度でしょう。いずれにせよ、世界経済は破綻します。

 

・日本は減税をし、大型財政支出を打ち切るべきです。人口問題対策も

講じなければなりません。どうせやらないでしょうがね。仮にやったとしても、問題は起こります。しかし、(何もしないと)16~18年に事がうまく運ばなくなったとき、問題が表面化するでしょう。

 

・安倍首相は、「日本を破滅させた男」として、歴史に名を残すでしょう。投資の世界の人たちや、(金融緩和)でおカネを手にしている人たちにとっては、しばらくは好景気が続くでしょうが、安倍首相が過ちを犯したせいで、いずれはわれわれ皆に大きなツケが回ってきます。

 

(――日本は、東京オリンピックがあるから、少しはマシ?)

・いや、逆かもしれません。オリンピックで大量におカネを使い、債務が増えていくため、状況が悪化する可能性があります。1億2000万人強の日本の人たちを、オリンピックで救うことはできません。

 

(――円安誘導が間違っている?)

・最悪です。短期的には、一部の人が恩恵を受けますが、自国通貨(の価値)を破壊することで地位が上がった国はありません。この2~3年で、円は対ドルで50%も安くなりました。このことが日本にとってよいはずはありません。

 

<『日本を破滅させた男』として安倍首相は歴史に名を残すでしょう。>

(――以前「米国は世界の警察をやめるべき」と言っていました。オバマ大統領は実際そう宣言しました)

・米国がおカネを大量に刷るのをストップし、(世界の)人々に対し何をすべきか、あれこれ言うのをやめるとしたら、世界にとっても米国にとっても素晴らしいことだと思います。しかし、私はオバマ大統領のことは信じません。

 

・多くの米国人は「米国が他国にあれこれ指図すべきだ」と思っています。私は、そう考えない少数派の一人です。「米国の言うことを聞くべきではない」と考える人たちが世界中に増えているのに、大半の米国人は今でもそう思っています。

 日本でも「米国に指導してもらうべき」だとみんな考えているのでしょうが、それは間違い。自分で考えるようにしなければなりません。

 

 

 

 

(2023/9/12)

 

 

『中国経済崩壊宣言』

石平、高橋洋一  ビジネス社  2023/8/1

 

 

 

数字が証明する中国経済崩壊宣言!

・劉教授は「ポストコロナ」において中国の経済回復は思うとおりに進んでいないことを認めたうえで、その問題点として次の「5つの20%」を指摘した。

①  若年層失業率が20%を突破したこと

②  工業企業の利益が前年同期比で20%近く落ちたこと

③  地方政府の土地譲渡金収入が前年同期比で20%減ったこと

④  不動産の新着工面積が前年同期比で20%減ったこと

⑤  消費者信頼感指数が20%以上も落ちたこと

それらの問題点を根拠に、劉教授は「中国経済はすでに自己回復能力

を失っている」と分析し、中国経済の今後に対しては極めて悲観的な見方を示した。

彼のいうとおり、「中国経済はすでに自己回復能力を失っている」の

であれば、この巨大国家の経済沈没は最早避けられないのではないか

 

・こうしてみると、現在の中国の経済状況といえば、輸出もダメ投資もダメ、失業者が溢れて消費が消失している最中であり、まさに絶対絶命的な状況に追い込まれ、崩壊の真っただ中にいるのである

 

崩壊しかない無残な中国経済の数字

簡単なごまかしさえ放置する統計局

・石平:高橋先生との対談本は今回で4作目となりますが、先生には以前から「中国経済崩壊論をいうのは10年早すぎた」と言われていました(笑)。

高橋:そう、中国経済崩壊論じたいが間違いなのではなく、言うのが早すぎたということです。しかしここのところの中国経済を見ていると、まさしく石平さんの言うとおりになりつつある。今こそ中国経済崩壊論を唱える絶好のタイミングです。

 

・石平: 自分たちの数字のウソを辻褄の合うようにするという最低限のことさえやらなくなりました。

 

中国財務省が23年第1四半期のマイナス成長と発表

・石平:この一連の財務省の数字は国家統計局より信憑性があります。どう考えてもマイナス成長でしょう。

高橋:確かにマイナス成長っぽいですね。

 

投資が中国のGDPの半分近くを占めるカラクリ

高橋:中国の統計が異常なのは、消費税の割合が異様に低いことです。普通の国なら消費はだいたいGDPの6割。それが4割にも達しないことを中国は投資が大きいからと解説する向きがありますが、無理がある。

石平:中国ではこの20年間、消費率はずっと4割未満でした。

高橋:途上国の経済問題を分析する経済学の一分野に「開発経済学」という学問があります。途上国の貧困や飢餓、栄養失調、失業、低賃金労働、低教育水準、女性差別、乳幼児や妊婦の高い死亡率、HIVやマラリアなどの感染病の蔓延、環境問題や水問題、汚職、貿易政策や債務問題など、幅広いトピックを扱うのですが、この学問からすると、中国では国内消費が十分に育っていないと見なせるわけです。

 

・高橋:単純に一国が豊かになるということは国民の消費が増えることとイコールです。国民が貧しい国を豊かとは誰もみなさないでしょう。したがって、消費の割合はだいたい6割ないとおかしい。

石平:中国経済の持つ歪な構造がここでわかりますね。

高橋:だから中国経済は投資で持たせているように見える。

石平:22年の固定資産投資総額は57兆2130億元。全体のGDPに占める割合は約47%になっています。

高橋:投資のほうは普通の国なら2割ぐらい。消費も投資も割合が異様です。

 

・石平:現に中国の投資のなかでいちばん大きかったのはやはりインフラ投資。22年のインフラ投資は9.4%でした。ウソか本当かは別として、何とか中国経済を3%成長させようとすると、結局、インフラ投資に頼らざるをえないわけです。

高橋:とすると公共投資をがんがんやって無駄なものをどんどんつくっていることになります。本来、公共投資では社会便益が投資コストを上回るものしかやらないのが大前提です。

 

・石平:ゴーストタウン(鬼城)をせっせとつくっているわけです。

 

中国経済の実態をつかむには貿易統計がいい

・石平:中国では消費と投資と輸出の3つが中国経済を引っ張っていく「3台の馬車」と呼ばれています。

 

・高橋:輸出が大きくなることはときどきあるのでまだわかります。自国通貨安に誘導して輸出ドライブをかければいい。それはありえるとしても、やはり投資の割合がそんなに大きいのは、異常です。裏を返すと、消費がそこまで少ないということもありえません。

石平:構造的に見たら、やはり中国の消費が徹底的に不足している

 

・高橋:いずれにせよ、中国の統計であっても輸出入の数字だけはけっこう信頼できる。というより、唯一信用できるのが輸出と輸入の貿易統計しかないということです。

 

失業率の高さで成長率の低さはまる見え

・高橋:GDPと深い関係があるのが失業率です。「オークンの法則」といって、経済成長がないと失業率が高まることを証明したのです。

 

・石平:共産主義の中国が「失業者」の存在を認めていることじたいが、前進だといえるかもしれません(笑)。

 

・高橋:やはり正しい失業率は発表できないと思いますね。中国では、GDPも失業率も国家統計局が発表していますが、失業の統計を出すセクションとGDPの統計を出すセクションを分けるのが国際基準です

 

・高橋:GDPと失業率の場合、独立している別々の役所の発表する統計がオークンの法則で連動しているからこそ、どちらの統計も信用できることになります。中国の場合、GDPと失業率の数字はやはりオークンの法則からちょっとずれている。それで私は中国の失業率にはちょっと怪しいところがあると言ったのです。

 

働き場を失った若者たち

・石平:国家統計局は23年第1四半期の成長率を4.5%増だとする一方で、同時期の16歳から24歳までの失業率を19.6%、4月は20.4%と発表しました。4月の数字は2018年以降で最も高い失業率です。オークンの法則からしたら矛盾する数字です

 さすがに中国政府も失業率に関しては、多少は真実に近づいている数字を発表するようになったのではないでしょうか。

高橋:それでもまだごまかしている感じがあります。とはいえ、20%前後の失業率は間違いなく高い。ごまかしてもそのレベルになっているとしたら、中国の失業はかなり深刻です。オークンの法則によれば、若者の失業率の高さからすると、成長率がマイナス成長になっていても不思議ではありません

 

・石平:いずれにせよ近年、中国では毎年1000万人もの大学生が卒業していますが、そのうち就職できる大学卒業生はおそらくその3分の1になるかならないかというところです

 

・石平:毛沢東時代なら失業の解決策として都市部の知識人や知識青年たちを農村で働かせるという「下放運動」が行われました。習近平自身も下放されたことは周知の事実です。

 実は今、広東省がこれを行っています。23年から30万人の若者たちを動員して農村に行かせる「下郷運動」です

高橋:しかし若者が送られる農村でも失業問題に悩んでいる。

石平:むしろ失業問題が最も深刻なのが農村部なのです。農村部の若者たちは、ほとんど耕す土地もないため、いわゆる「農民工」となって大量に都会に出ています。農民工は今の数字でも2億5000万人くらいいる。

 

・石平:中国では再び「露店経済」が脚光を浴びてますよ。露店経済というのは、2020年にコロナ感染が始まって経済が悪化したときに、当時の首相だった李克強が言い出したことです。「失業者には仕事がないから、みんな勝手にどこかに露店を出して、何でも売って食べていけ」と。

 

・石平:露店経済は大量の雇用を生むこともないし、安定した収入や安定した仕事を保障するものではありません。だから、このままでは経済が落ち込んでいったら、中国では大変な社会的大動乱が起こるでしょう。

 

粉飾統計は中国の国技

ソ連も6割水増ししていたGDP

・石平:中国がGDPでいったんウソをついた以上、その後もずっとウソの上塗りをし続けなければならない。いわば無間地獄です。

高橋:共産主義国の実態を見破るのは非常に難しい。ソ連のときもそうでした。ソ連は70年間、統計をごまかし、それがウソだったことはソ連が崩壊してようやく明るみにでました。

 

・石平:逆に言うと、ソ連が崩壊するまでノーベル賞を取った経済学者ですら、統計の偽造がわからなかった。その意味では偽造は完璧だったわけで、ソ連が出した数字が全部ウソであっても、専門的にはウソの辻褄がきちんと合っていたということでしょう。

高橋:やはり偽造統計を見破るのは非常に難しい。騙されるのが普通ですよ。しかもソ連が行っていた偽造は半端なレベルではありません。ソ連が崩壊してみて初めてわかったのは、そのGDPは実は偽造統計の4割ほどしかなかったということです。つまり偽造統計の数字の6割減が正しい数字だったのです。

 ソ連の公式統計によると、1928年から1985年までの国民所得の伸びは90倍。ところが実際には6.5倍しかありませんでした。平均成長率に至っては8.3%も成長しているとされていたのに実際には3.3%しかなかったのです。こうした事実もソ連が崩壊して明るみに出たのです。

 

・高橋:ソ連のGDPは全部ウソだったため、ソ連の後継国家となったロシアにもソ連時代のGDPのデータが全くないのです。つまり、ソ連ではずっとGDPのデータはあったのにロシアではそれを全部消してしまいました。ロシアのGDPのデータは1992年以降のものしかありません。

石平:とすると、ロシアのGDPのデータは約30年分しかないわけですね。

 

中国は偽造統計のやり方をソ連に学んだ

・高橋:そのまま残ったソ連式のシステムの1つが統計のやり方です。中国は統計のやり方を社会主義国家の先輩であるソ連に学んだのです。

 当然ながら、ソ連の統計のやり方には偽造統計も含まれていた。

 

・石平:ソ連のように中国共産党による政治体制が崩壊しない限り、中国政府の発表するGDPがどの程度正しいのかはわからないということですね。

 

ウソの統計で自らの首を絞める中国政府

・高橋:中国の統計にはそういう数字の手直しがよくあります。コロナの統計でも患者の数などをいつもこっそりと直しているんですよ。しかもコロナ患者の集計方法もころころ変えます。本来、そんなことをしてはいけない。

 

・高橋:GDPに話を戻すと、中国の場合は6割増しをしている可能性が高いでしょう。10と言っているのが4だとすると、中国政府はGDPを倍以上に膨らませてきたのです。ソ連もそうでした。

石平:改めて言うと、統計では中国もソ連と全く変わらない。だから中国のGDPの成長率の数字はウソであって、当然、毎年の成長率で計算した中国経済規模もウソであるということですね。

 

習近平に忠誠を誓う日本人・中国研究者の異常な反応

・高橋:私は中国の統計がウソであることは以前からわかっていました。それで『中国GDPの大嘘』という本を書いて2016年4月に出版したら、抗議がどんどん来た。

 

単身での訪中はハニートラップOKの合図

・高橋:やはりハニートラップですね。私はいろいろなところで、中国のハニートラップに引っかかった日本人の話を聞いてきました。中国によく行っているのに中国の女性の話だけはしない人を知っています。だから私は、その人はハニートラップにはまっているかもしれない、怪しいと睨んでいるのです。

 

・高橋:また、自民党には中国人の女性を秘書にしている参議院議員もいます。その中国人の秘書は国会の通行証を持っているので、国会のほとんどの場所に自由に行くことができます。

 

夜の明かりで中国のGDPのウソが見抜ける

・高橋:中国の発表するGDPはウソだという話をしてきました。関連した話をすると、中国のような独裁国家が自己申告しているGDPの数字が正しいのかどうかが、衛星で測ったその国の夜間照明から判断できる、という研究も行われています

 

・高橋:今も衛星から夜の地球を見ると、アメリカ、日本、韓国などが明るいのに対し、北朝鮮には全く光がなく、中国もそれほど明るくありません。

 

不動産バブル、本当の恐怖

使用権だけで取引する異常

・石平:去年の中国経済の異変では不動産投資が大幅にマイナス成長となったことが挙げられます。前述のように22年1年間の不動産投資は前年比で10%減でした。どうして不動産投資が減っているのかと言うと、特に住宅が売れなくなってしまったからです。

 国家統計局の発表では去年1年間で中国全国の住宅の販売面積は24.3%減、売上総額は26.7%減。どちらもいきなり20%以上減っています。これがけっこう大きいのです。

高橋:大きいですね。経済のマクロ的な崩壊かもしれないという感じがします。

石平:中国では不動産業が中国経済の支柱産業だと呼ばれてきました。

高橋:ただし中国の土地は全て国有ですね。だから中国の不動産業は土地の使用権の販売だけ成り立っています。

 

日本とは全然違う不動産バブル

・高橋:中国でも不動産バブルが起こりました。

石平:最初はみんな自分が住むために不動産を買ったのです。ところが、しだいにお金を生む道具として不動産をとらえるようになり、2軒も3軒も買い始めました。

 

・石平:中国の不動産市場が繁栄してきたのは、個人の家計がみんな銀行から借金して住宅を買うようになったからです。

 

・高橋:一応、中国の人口は14億人とされていますね。それなのに34億人分の住宅があるなんて、中国らしいと言えば中国らしい。しかし必ず限界が来てしまいます。

 

・石平:本当の土地の取引かどうか同じ不動産バブルでも中国と日本では様相がずいぶん異なりますね。日本ではいくらバブルが崩壊しても土地は残ります。中国はもうバブルそのものです。

 

・石平:しかし最近では新規分譲マンションがもう売れなくなってきました。同時に価格ももう上がりません。経済状況も悪くなって、値上がり期待で2軒、3軒も買っている人もそのローンを払いきれなくなっています。それで、仕方なく値下げして売ろうとしても、今度は誰も買ってくれません。

高橋:弾けるときが必ず来るからバブルなのです。

 

全国民が「負債の時代」

・石平:中国のバブルは債務問題の視点からも見ることができます。

 中国社会科学院の研究員で国内でも著名な経済学者が今年4月11日に、「今の中国経済ではデフレがすでに始まっており、これから衰退の局面に入る」と発言し、「全国で7億人が負債を持っており、中国が全国民の負債の時代になった」ことをデフレになる最大の理由に挙げています

7億人の負債というのは老人や子供などを除いた普通のサラリーマンみんなが負債を負っているということです。

 また、彼は「今の中国の家計の負債率(収入に対する債務)は137.9%にも達している。負債が多いとされるアメリカ人でさえ負債率は90%程度だ」と述べています。

 

・石平:みんながどんどん借金をしてきたのも大半は不動産購入のためでした。それでも不動産価格はまだ非常に高い。だから負債に対する名目上の財産もまだあるわけです。しかし不動産価格が大幅に落ちてしまったら、もう負債だらけの世界になってしまう。

高橋:遅かれ早かれ、そうなりますね。

 

バブルが弾けない理由

・高橋:しかし不動産バブルを維持することは可能なのです。銀行のほうで不動産開発業者にずっとお金を貸し続ければいい。中国では銀行は国有です。だから国有銀行がずっと貸し続ければバブルは維持できます

 

・高橋:不良債権があっても中国政府が「不良債権など一切ない」と言い、銀行も「不良債権はない」と言い切るのであれば、砂上の楼閣がずっと続いていくはずです。

 

・石平:日本では背任になる方法でも中国では許されているから、それで何とかバブルを維持できるということですね。

高橋:維持できるはずですよ。

 

マンション建て替えという不動産市場維持の苦肉の策

・石平:実際、中国の不動産の新規の販売面積は激減しています。22年は前年比で19.9%、さらに23年1月から3月の販売面積は、前年比で26.8%も減少しました。もうみんな買わなくなってきています。

 

・高橋:新規の不動産がほとんどなくなると、GDPも減る。

石平:例えば2020年を例に取ってみても、1年間の不動産投資がGDPの14%をつくり出しました。波及効果も大きいわけです。

 

土地譲渡金がなくなって地方政府の財政も大打撃

・石平:中国の地方政府の大半が財政の半分以上を土地譲渡金で賄っています。不動産開発業者が不動産をつくらなくなると、当然、土地もいりません。土地譲渡金を払わなくなって、地方政府も破綻します。

 

・高橋:バランスシートの問題で、資産があれば債務が大きくても別に大したことはありません。資産と債務の差が問題であり、GDP比は重要ではない。けれども、たぶん中国の地方政府には資産がないでしょう。資産がなくて借金だけでGDPの3倍もあるとすれば問題です。

 

・石平:地方政府の財政収入に対してそれほどの債務があるうえ、さらに今後収入が大幅に減るのはやはり収入の大部分が土地譲渡金だからです。

 

・石平:中国でいちばん大きな税金である増加税のほとんどは中央政府が持っていきます。そうしたお金は中央政府が軍備拡大や治安維持などに使い、一方、都市の維持や最低限のインフラの維持、ライフラインの維持などの費用は全部、地方財政が負担しなければなりません。

 にもかかわらず、土地譲渡金が減少の一途となれば、地方政府の財政は火の車。今や地方政府が破綻したら中国全体が完全に行き詰まるというところまで来ています