(2023/9/12)

 

 

『中国経済崩壊宣言』

石平、高橋洋一  ビジネス社  2023/8/1

 

 

 

数字が証明する中国経済崩壊宣言!

・劉教授は「ポストコロナ」において中国の経済回復は思うとおりに進んでいないことを認めたうえで、その問題点として次の「5つの20%」を指摘した。

①  若年層失業率が20%を突破したこと

②  工業企業の利益が前年同期比で20%近く落ちたこと

③  地方政府の土地譲渡金収入が前年同期比で20%減ったこと

④  不動産の新着工面積が前年同期比で20%減ったこと

⑤  消費者信頼感指数が20%以上も落ちたこと

それらの問題点を根拠に、劉教授は「中国経済はすでに自己回復能力

を失っている」と分析し、中国経済の今後に対しては極めて悲観的な見方を示した。

彼のいうとおり、「中国経済はすでに自己回復能力を失っている」の

であれば、この巨大国家の経済沈没は最早避けられないのではないか

 

・こうしてみると、現在の中国の経済状況といえば、輸出もダメ投資もダメ、失業者が溢れて消費が消失している最中であり、まさに絶対絶命的な状況に追い込まれ、崩壊の真っただ中にいるのである

 

崩壊しかない無残な中国経済の数字

簡単なごまかしさえ放置する統計局

・石平:高橋先生との対談本は今回で4作目となりますが、先生には以前から「中国経済崩壊論をいうのは10年早すぎた」と言われていました(笑)。

高橋:そう、中国経済崩壊論じたいが間違いなのではなく、言うのが早すぎたということです。しかしここのところの中国経済を見ていると、まさしく石平さんの言うとおりになりつつある。今こそ中国経済崩壊論を唱える絶好のタイミングです。

 

・石平: 自分たちの数字のウソを辻褄の合うようにするという最低限のことさえやらなくなりました。

 

中国財務省が23年第1四半期のマイナス成長と発表

・石平:この一連の財務省の数字は国家統計局より信憑性があります。どう考えてもマイナス成長でしょう。

高橋:確かにマイナス成長っぽいですね。

 

投資が中国のGDPの半分近くを占めるカラクリ

高橋:中国の統計が異常なのは、消費税の割合が異様に低いことです。普通の国なら消費はだいたいGDPの6割。それが4割にも達しないことを中国は投資が大きいからと解説する向きがありますが、無理がある。

石平:中国ではこの20年間、消費率はずっと4割未満でした。

高橋:途上国の経済問題を分析する経済学の一分野に「開発経済学」という学問があります。途上国の貧困や飢餓、栄養失調、失業、低賃金労働、低教育水準、女性差別、乳幼児や妊婦の高い死亡率、HIVやマラリアなどの感染病の蔓延、環境問題や水問題、汚職、貿易政策や債務問題など、幅広いトピックを扱うのですが、この学問からすると、中国では国内消費が十分に育っていないと見なせるわけです。

 

・高橋:単純に一国が豊かになるということは国民の消費が増えることとイコールです。国民が貧しい国を豊かとは誰もみなさないでしょう。したがって、消費の割合はだいたい6割ないとおかしい。

石平:中国経済の持つ歪な構造がここでわかりますね。

高橋:だから中国経済は投資で持たせているように見える。

石平:22年の固定資産投資総額は57兆2130億元。全体のGDPに占める割合は約47%になっています。

高橋:投資のほうは普通の国なら2割ぐらい。消費も投資も割合が異様です。

 

・石平:現に中国の投資のなかでいちばん大きかったのはやはりインフラ投資。22年のインフラ投資は9.4%でした。ウソか本当かは別として、何とか中国経済を3%成長させようとすると、結局、インフラ投資に頼らざるをえないわけです。

高橋:とすると公共投資をがんがんやって無駄なものをどんどんつくっていることになります。本来、公共投資では社会便益が投資コストを上回るものしかやらないのが大前提です。

 

・石平:ゴーストタウン(鬼城)をせっせとつくっているわけです。

 

中国経済の実態をつかむには貿易統計がいい

・石平:中国では消費と投資と輸出の3つが中国経済を引っ張っていく「3台の馬車」と呼ばれています。

 

・高橋:輸出が大きくなることはときどきあるのでまだわかります。自国通貨安に誘導して輸出ドライブをかければいい。それはありえるとしても、やはり投資の割合がそんなに大きいのは、異常です。裏を返すと、消費がそこまで少ないということもありえません。

石平:構造的に見たら、やはり中国の消費が徹底的に不足している

 

・高橋:いずれにせよ、中国の統計であっても輸出入の数字だけはけっこう信頼できる。というより、唯一信用できるのが輸出と輸入の貿易統計しかないということです。

 

失業率の高さで成長率の低さはまる見え

・高橋:GDPと深い関係があるのが失業率です。「オークンの法則」といって、経済成長がないと失業率が高まることを証明したのです。

 

・石平:共産主義の中国が「失業者」の存在を認めていることじたいが、前進だといえるかもしれません(笑)。

 

・高橋:やはり正しい失業率は発表できないと思いますね。中国では、GDPも失業率も国家統計局が発表していますが、失業の統計を出すセクションとGDPの統計を出すセクションを分けるのが国際基準です

 

・高橋:GDPと失業率の場合、独立している別々の役所の発表する統計がオークンの法則で連動しているからこそ、どちらの統計も信用できることになります。中国の場合、GDPと失業率の数字はやはりオークンの法則からちょっとずれている。それで私は中国の失業率にはちょっと怪しいところがあると言ったのです。

 

働き場を失った若者たち

・石平:国家統計局は23年第1四半期の成長率を4.5%増だとする一方で、同時期の16歳から24歳までの失業率を19.6%、4月は20.4%と発表しました。4月の数字は2018年以降で最も高い失業率です。オークンの法則からしたら矛盾する数字です

 さすがに中国政府も失業率に関しては、多少は真実に近づいている数字を発表するようになったのではないでしょうか。

高橋:それでもまだごまかしている感じがあります。とはいえ、20%前後の失業率は間違いなく高い。ごまかしてもそのレベルになっているとしたら、中国の失業はかなり深刻です。オークンの法則によれば、若者の失業率の高さからすると、成長率がマイナス成長になっていても不思議ではありません

 

・石平:いずれにせよ近年、中国では毎年1000万人もの大学生が卒業していますが、そのうち就職できる大学卒業生はおそらくその3分の1になるかならないかというところです

 

・石平:毛沢東時代なら失業の解決策として都市部の知識人や知識青年たちを農村で働かせるという「下放運動」が行われました。習近平自身も下放されたことは周知の事実です。

 実は今、広東省がこれを行っています。23年から30万人の若者たちを動員して農村に行かせる「下郷運動」です

高橋:しかし若者が送られる農村でも失業問題に悩んでいる。

石平:むしろ失業問題が最も深刻なのが農村部なのです。農村部の若者たちは、ほとんど耕す土地もないため、いわゆる「農民工」となって大量に都会に出ています。農民工は今の数字でも2億5000万人くらいいる。

 

・石平:中国では再び「露店経済」が脚光を浴びてますよ。露店経済というのは、2020年にコロナ感染が始まって経済が悪化したときに、当時の首相だった李克強が言い出したことです。「失業者には仕事がないから、みんな勝手にどこかに露店を出して、何でも売って食べていけ」と。

 

・石平:露店経済は大量の雇用を生むこともないし、安定した収入や安定した仕事を保障するものではありません。だから、このままでは経済が落ち込んでいったら、中国では大変な社会的大動乱が起こるでしょう。

 

粉飾統計は中国の国技

ソ連も6割水増ししていたGDP

・石平:中国がGDPでいったんウソをついた以上、その後もずっとウソの上塗りをし続けなければならない。いわば無間地獄です。

高橋:共産主義国の実態を見破るのは非常に難しい。ソ連のときもそうでした。ソ連は70年間、統計をごまかし、それがウソだったことはソ連が崩壊してようやく明るみにでました。

 

・石平:逆に言うと、ソ連が崩壊するまでノーベル賞を取った経済学者ですら、統計の偽造がわからなかった。その意味では偽造は完璧だったわけで、ソ連が出した数字が全部ウソであっても、専門的にはウソの辻褄がきちんと合っていたということでしょう。

高橋:やはり偽造統計を見破るのは非常に難しい。騙されるのが普通ですよ。しかもソ連が行っていた偽造は半端なレベルではありません。ソ連が崩壊してみて初めてわかったのは、そのGDPは実は偽造統計の4割ほどしかなかったということです。つまり偽造統計の数字の6割減が正しい数字だったのです。

 ソ連の公式統計によると、1928年から1985年までの国民所得の伸びは90倍。ところが実際には6.5倍しかありませんでした。平均成長率に至っては8.3%も成長しているとされていたのに実際には3.3%しかなかったのです。こうした事実もソ連が崩壊して明るみに出たのです。

 

・高橋:ソ連のGDPは全部ウソだったため、ソ連の後継国家となったロシアにもソ連時代のGDPのデータが全くないのです。つまり、ソ連ではずっとGDPのデータはあったのにロシアではそれを全部消してしまいました。ロシアのGDPのデータは1992年以降のものしかありません。

石平:とすると、ロシアのGDPのデータは約30年分しかないわけですね。

 

中国は偽造統計のやり方をソ連に学んだ

・高橋:そのまま残ったソ連式のシステムの1つが統計のやり方です。中国は統計のやり方を社会主義国家の先輩であるソ連に学んだのです。

 当然ながら、ソ連の統計のやり方には偽造統計も含まれていた。

 

・石平:ソ連のように中国共産党による政治体制が崩壊しない限り、中国政府の発表するGDPがどの程度正しいのかはわからないということですね。

 

ウソの統計で自らの首を絞める中国政府

・高橋:中国の統計にはそういう数字の手直しがよくあります。コロナの統計でも患者の数などをいつもこっそりと直しているんですよ。しかもコロナ患者の集計方法もころころ変えます。本来、そんなことをしてはいけない。

 

・高橋:GDPに話を戻すと、中国の場合は6割増しをしている可能性が高いでしょう。10と言っているのが4だとすると、中国政府はGDPを倍以上に膨らませてきたのです。ソ連もそうでした。

石平:改めて言うと、統計では中国もソ連と全く変わらない。だから中国のGDPの成長率の数字はウソであって、当然、毎年の成長率で計算した中国経済規模もウソであるということですね。

 

習近平に忠誠を誓う日本人・中国研究者の異常な反応

・高橋:私は中国の統計がウソであることは以前からわかっていました。それで『中国GDPの大嘘』という本を書いて2016年4月に出版したら、抗議がどんどん来た。

 

単身での訪中はハニートラップOKの合図

・高橋:やはりハニートラップですね。私はいろいろなところで、中国のハニートラップに引っかかった日本人の話を聞いてきました。中国によく行っているのに中国の女性の話だけはしない人を知っています。だから私は、その人はハニートラップにはまっているかもしれない、怪しいと睨んでいるのです。

 

・高橋:また、自民党には中国人の女性を秘書にしている参議院議員もいます。その中国人の秘書は国会の通行証を持っているので、国会のほとんどの場所に自由に行くことができます。

 

夜の明かりで中国のGDPのウソが見抜ける

・高橋:中国の発表するGDPはウソだという話をしてきました。関連した話をすると、中国のような独裁国家が自己申告しているGDPの数字が正しいのかどうかが、衛星で測ったその国の夜間照明から判断できる、という研究も行われています

 

・高橋:今も衛星から夜の地球を見ると、アメリカ、日本、韓国などが明るいのに対し、北朝鮮には全く光がなく、中国もそれほど明るくありません。

 

不動産バブル、本当の恐怖

使用権だけで取引する異常

・石平:去年の中国経済の異変では不動産投資が大幅にマイナス成長となったことが挙げられます。前述のように22年1年間の不動産投資は前年比で10%減でした。どうして不動産投資が減っているのかと言うと、特に住宅が売れなくなってしまったからです。

 国家統計局の発表では去年1年間で中国全国の住宅の販売面積は24.3%減、売上総額は26.7%減。どちらもいきなり20%以上減っています。これがけっこう大きいのです。

高橋:大きいですね。経済のマクロ的な崩壊かもしれないという感じがします。

石平:中国では不動産業が中国経済の支柱産業だと呼ばれてきました。

高橋:ただし中国の土地は全て国有ですね。だから中国の不動産業は土地の使用権の販売だけ成り立っています。

 

日本とは全然違う不動産バブル

・高橋:中国でも不動産バブルが起こりました。

石平:最初はみんな自分が住むために不動産を買ったのです。ところが、しだいにお金を生む道具として不動産をとらえるようになり、2軒も3軒も買い始めました。

 

・石平:中国の不動産市場が繁栄してきたのは、個人の家計がみんな銀行から借金して住宅を買うようになったからです。

 

・高橋:一応、中国の人口は14億人とされていますね。それなのに34億人分の住宅があるなんて、中国らしいと言えば中国らしい。しかし必ず限界が来てしまいます。

 

・石平:本当の土地の取引かどうか同じ不動産バブルでも中国と日本では様相がずいぶん異なりますね。日本ではいくらバブルが崩壊しても土地は残ります。中国はもうバブルそのものです。

 

・石平:しかし最近では新規分譲マンションがもう売れなくなってきました。同時に価格ももう上がりません。経済状況も悪くなって、値上がり期待で2軒、3軒も買っている人もそのローンを払いきれなくなっています。それで、仕方なく値下げして売ろうとしても、今度は誰も買ってくれません。

高橋:弾けるときが必ず来るからバブルなのです。

 

全国民が「負債の時代」

・石平:中国のバブルは債務問題の視点からも見ることができます。

 中国社会科学院の研究員で国内でも著名な経済学者が今年4月11日に、「今の中国経済ではデフレがすでに始まっており、これから衰退の局面に入る」と発言し、「全国で7億人が負債を持っており、中国が全国民の負債の時代になった」ことをデフレになる最大の理由に挙げています

7億人の負債というのは老人や子供などを除いた普通のサラリーマンみんなが負債を負っているということです。

 また、彼は「今の中国の家計の負債率(収入に対する債務)は137.9%にも達している。負債が多いとされるアメリカ人でさえ負債率は90%程度だ」と述べています。

 

・石平:みんながどんどん借金をしてきたのも大半は不動産購入のためでした。それでも不動産価格はまだ非常に高い。だから負債に対する名目上の財産もまだあるわけです。しかし不動産価格が大幅に落ちてしまったら、もう負債だらけの世界になってしまう。

高橋:遅かれ早かれ、そうなりますね。

 

バブルが弾けない理由

・高橋:しかし不動産バブルを維持することは可能なのです。銀行のほうで不動産開発業者にずっとお金を貸し続ければいい。中国では銀行は国有です。だから国有銀行がずっと貸し続ければバブルは維持できます

 

・高橋:不良債権があっても中国政府が「不良債権など一切ない」と言い、銀行も「不良債権はない」と言い切るのであれば、砂上の楼閣がずっと続いていくはずです。

 

・石平:日本では背任になる方法でも中国では許されているから、それで何とかバブルを維持できるということですね。

高橋:維持できるはずですよ。

 

マンション建て替えという不動産市場維持の苦肉の策

・石平:実際、中国の不動産の新規の販売面積は激減しています。22年は前年比で19.9%、さらに23年1月から3月の販売面積は、前年比で26.8%も減少しました。もうみんな買わなくなってきています。

 

・高橋:新規の不動産がほとんどなくなると、GDPも減る。

石平:例えば2020年を例に取ってみても、1年間の不動産投資がGDPの14%をつくり出しました。波及効果も大きいわけです。

 

土地譲渡金がなくなって地方政府の財政も大打撃

・石平:中国の地方政府の大半が財政の半分以上を土地譲渡金で賄っています。不動産開発業者が不動産をつくらなくなると、当然、土地もいりません。土地譲渡金を払わなくなって、地方政府も破綻します。

 

・高橋:バランスシートの問題で、資産があれば債務が大きくても別に大したことはありません。資産と債務の差が問題であり、GDP比は重要ではない。けれども、たぶん中国の地方政府には資産がないでしょう。資産がなくて借金だけでGDPの3倍もあるとすれば問題です。

 

・石平:地方政府の財政収入に対してそれほどの債務があるうえ、さらに今後収入が大幅に減るのはやはり収入の大部分が土地譲渡金だからです。

 

・石平:中国でいちばん大きな税金である増加税のほとんどは中央政府が持っていきます。そうしたお金は中央政府が軍備拡大や治安維持などに使い、一方、都市の維持や最低限のインフラの維持、ライフラインの維持などの費用は全部、地方財政が負担しなければなりません。

 にもかかわらず、土地譲渡金が減少の一途となれば、地方政府の財政は火の車。今や地方政府が破綻したら中国全体が完全に行き詰まるというところまで来ています

 

卵を産む鶏を殺すような政策をとる地方政府

・高橋:しかし地方政府を破綻させるかどうかも中央政府で決めることができてしまうのではないですか。これもバブル同様、地方政府が破綻していても破綻していないという言い方になるでしょう。おそらく中央政府はすでにそう決めていると思いますね。

 

・高橋:現に中国の企業には共産党員が派遣されています。はっきり言えば、地方政府はその共産党員を通じて民間企業から資金を召し上げる仕組みをたくさんつくれるわけです。

 

外資からの収奪で延命

・石平:ここまでの対談をまとめると、大事なポイントの1つは中国のGDPはウソであることがほぼ確定したということです。成長率自体もウソで、おそらく本当の経済規模は発表の数字よりも何割かは少ないのです。

 もう1つは中国は不動産バブルが支える経済で、そのバブルは日本と全く違う次元のものだということです。

石平:しかも経済を崩壊させないためにはバブルを維持する以外ないのに、その一方で不動産投資も完全にダメになります。あるいは14億人の、その打撃はさらに大きい。ならば、中国経済はほぼ永久にマイナス成長になるしかありません。

 

・高橋:確かに今までは外資企業が入って来ています。

石平:中国では目下、外資を含めて民間企業が中国の雇用の7割くらいを生み出しているのです。国有企業あるいは国家部門の雇用はせいぜい3割くらいなので、これから習政権の直面する最大の致命的な問題は大量失業ということになるでしょう

 

<人口減少はごまかせない決定的証拠

中国人の利用急増で日本の国民皆保険が破綻

・石平:中国の社会保障制度は1つが医療保険で、もう1つが年金です。ただし都市部と農村部でも違っていて、農村部には社会保障制度はほとんどありません

高橋:医療での日本のような国民皆保険制度もないわけですね。

石平:医療保険に関しては、中国の体制内の人々、つまり社会主義体制の国家公務員や共産党幹部にはちゃんと適用されています。都市部の国有企業の従業員もそうです。

 

・高橋:不正利用は論外ですが、正規の制度でも、普通の国では、外国人の短期滞在者にはその国の公的保険を使わせるのではなく民間保険を利用してもらう。そうでない日本は、短期滞在の外国人に皆保険が食われています。

 恐らく今後、日本の皆保険目当てに安い航空運賃で日本に来る中国人がどんどん増えていく

 

・高橋:日本でもそれがこれから問題になるでしょう。やはり他国のように外国人には民間保険に入って日本に来いと言うべきです。

 また日本では年々、社会保障制度の維持コストが重くのしかかっています。しかし社会保障制度が未熟な中国ではそれがかからないでしょう。イギリスは、外国人の社会保障制度利用が契機となって、EU離脱まで追い込まれました。日本も相当注視しないといけません

石平:日本に比べると維持コストが軽いのは確かです。けれども中国には国家公務員や国有企業の社員、軍人にはそれなりに充実した年金制度があるので、この維持コストはバカにできません。だから、中国政府では年金の負担が重くなっているということで、なるべく定年の時期を伸ばす方向になっています。

 中国の民間企業については年金のプール自体があるのかどうかもよくわかりません。

 

人口減少の速度は日本の4倍

・石平:今後の中国の10年後、20年後がどうなるかを考えるとき、いちばん大きな問題はやはり出生数が激減している問題です。

 

・高橋:中国の人口は去年61年ぶりの減少になりました。それは多くの人々が死んだというよりも出生数が極端に減ったことが大きいのでしょう。

石平:そうだと思います。では今後、出生数が回復するかどうかと言うと、おそらく回復しません。1つの理由はやはり一人っ子政策を長年やってきたために、今の中国では一人っ子というものがもう文化になってしまったからです。

 

・もう一つの理由は、若者たちの失業率が高いために若者たちも将来に対して希望が持てなくなっている。となると結婚や子供をつくるどころではなくなっています。

 

・高橋:確実に人手不足になります。だから老人に働いてもらうしかないですよ。

 

・高橋:年金を手厚くして老人が働かなくても済むようにするというのが普通の国の考え方なのに、中国ではそうではないので老人は大変ですよ。

石平:中国の年金制度はもう確実に破綻するのです。

高橋:年金なしで働けと言われると同時に、公的医療保険も整備されていないのだから、中国社会は今後すごく不安定になりますね。

 

出産一時金や児童手当は効果がない

・高橋:子供を産むかどうかは個人の自由なので政府も誘導策しかできません。誘導策と言っても出産一時金や児童手当くらいしかないのはどこの国も一緒。

 

・石平:とはいえ中国政府であれば、また変なことをやらないとも限らない。例えば今、中国の一部の専門家が政府に提案しているのがコンドームの販売禁止です。

 

もはや機械で代替するしかない

・石平:今は若者の就職先がないから、農村では多少人気がありますよ。人民解放軍に入ると、とりあえず食ってはいけますから。

 また、通常は農村の若者は農村戸籍を都市戸籍には変えられません。しかし農村の若者でも戸籍を変えられる可能性のある方法が2つあります。1つが大学を卒業し都市部で就職すること、もう1つが人民解放軍に入って幹部になることです。

 

・石平:いや、弱いですよ。人民解放軍に入るためには高額の賄賂を払わなくてはいけません。賄賂を払って軍に入ったような人間がまともに戦うことなどできないでしょう。戦うことよりも賄賂の元を取ることのほうがはるかに大事なんです。

 

中国に大衝撃を与えた婚姻件数の激減

・石平:中国では習政権が発足した11年前から婚姻件数の減少が大きな社会問題になっていきました。

 

・婚姻率は2013年は9.9%でした。しかし2021年には5.8%へと大きく減りました。現象としては、どういうわけか、習政権になってから若者は結婚しなくなったのです。

 

・石平:最近、中国でよく言われるのは若者たちの「不恋愛・不結婚・不生育」です。この「恋愛しない、結婚しない、子供をつくらない」という「3つのしない」が一種の価値観となって中国社会に定着し常態化し始めています。

 

オフィスビルの空室率上昇に表れた香港の衰退>

・石平:ブルームバーグが今年6月5日、香港全体のオフィスビルの空室率がすごく上昇しているという取材記事を掲載しました。

 

・石平:香港のデモ鎮圧と一国二制度の破棄のために外国企業が香港からどんどん離れていっています。それによって空室率が3倍以上にも跳ね上がってしまったのです。

 

・石平:もともと香港には資源もないし大した産業もありません。それでもこれまで資本と人材の2つがあったから、国際金融センターおよび貿易センターとして成り立ってきたのです。

 ところが今、香港の資本と人材の両方が徐々に失われつつあります。

 

習近平一強体制がトドメの一撃

共産党一党独裁から1人独裁に

・石平:いずれにしても、彼の終身独裁政権の道が開かれてしまいました。今回、わざと後継者もつくらなかったので、3期目に終わるつもりも全くないし引退するつもりもありません。

高橋:対抗勢力も中国共産党内にはいなくなってしまいましたね。

 

中央財経委員会と国務院の合体で迷走する経済政策

・石平:李強はもともと浙江省で習近平の部下でした。だから彼に抜擢されて上海トップを2年間勤めたのです。しかしその2年間で上海は完全に沈没しました。というのも、特にゼロコロナ政策で2ヵ月間ロックダウンしたことが大きな打撃となったからです。

 

・高橋:いきなり国の運営に携わるというのは、ちょっとあり得ません。外電によれば、李強は「ミスターマイナス13.5」と言われていると聞いています。上海時代の成長率がマイナス13.5%だったからです。それは象徴的なことです。

 

・石平:今回、李克強を追い出して子分の李強を首相にしたとき、当初は多くの人々は、習近平が中央財政委員会の主任を李強に渡して仕事を全部任せるのではないかと思いました。

 ところが、5月に中央財経委員会の会議が開かれたら、相変わらず習近平が主任で、李強はその下で副主任を務めるという形になったのです。この会議で最初に持ち出された経済運営の方針は、共産党の経済に対する指導を強化するということでした。そんな方針で経済を運営できるはずがありません。

 

習近平にただ従うのが官僚の仕事

・高橋:中国の政治構造の特殊性は共産党の下に政府があることです。政府が共産党の下にくっついている。とはいえ他国との交渉もやらなければならないから、実務的にはそこそこの力がないと政治運営などできない。

 

・高橋:そんなことをしていたら国の経済を回すことなどできないですよ。経済官庁の財務部などは現実に基づいて動かないとダメなのに、現実を無視して共産党の指導だけに従って動くことになったら、ソ連が崩壊したときと同じような状況になります。

 本当に今回、国務院のいろいろな部署を共産党の下にくっつけたのはちょっと信じがたいですね。中央銀行や財政部門、金融部門のような専門性の高いところは、政府のなかでもある程度独立させて専門的にやらせるというのが国際水準ですよ。

 

愚か者がトップになる最悪な独裁制

・石平:しかし習近平にとっては成長よりも分配のほうが大事なんです。

高橋:それは本当に「角を矯めて牛を殺す」ことであり、経済を全部ダメにしてしまいます。逆に、成長すればいくらでも分配できる。こんな当たり前のことが、彼にはわかっていないのでしょう。

 

日本はデリスキングへの流れに用心せよ

・高橋:先端半導体は軍事にも直結しているため規制は緩められません。

 ただしトランプ政権は「デカップリング」と言っていたのに、バイデン政権は「デリスキング」という言い方をするようになりました。デカップリングが「分断」なのに対し、デリスキングは「リスク軽減」ということです。

 

親中派をスパイで拘束し自滅

ある日突然スパイ容疑で拘束される外国人

・石平:習政権は2014年に「反スパイ法」を施行しました。これにより「国家安全」を名目にした外国人の取り締まりを一貫して強化してきました。

 

・高橋:中国で活動している日本人は、いつ何時拘束されるかわかりません。本当に大変ですよ。

 

親中派ほど当局に捕まりやすい

・高橋:日中青年交流協会の理事長はその立場から言っても親中でした。アステラス製薬も中国が発展して規制緩和があるというので中国への投資を積極的に行ってきました。拘束された社員はもとよりこの企業自体も親中なのです。

 石平さんの言うように、やはり中国人との接触が多い親中の人ほど中国では危ない。親中の人ほどスパイ容疑のターゲットとされやすいと言えますね。

 

何でもかんでもスパイ容疑にできる改正反スパイ法>

・高橋:これまでの反スパイも酷い法律でした。ところが、それを改正して酷さがバージョンアップした改正反スパイ法が成立しましたね。

 

・石平:例えば外国企業が中国でビジネスのために資料を収集したりデータを集めたりする行為もスパイ行為と見なすことができるのです。

 

・石平:改正反スパイ法に基づくと中国にいる日本人を含めた全ての外国人は「誰でも、いつでも、どこででも」スパイとして拘束されても不思議ではありません。

 

・石平:さらに第16条では、スパイ行為の通報・密告を全国民に義務付けると同時に、通報・密告用の電話番号、メールボックス、ネットワーク・プラットフォームの開設と運用を国家安全機関に求めています。しかも通報・密告者に対する表彰・報奨・保護の規定も付け加えられました。

 これは明らかに「反スパイ人民戦争」の発動とその恒久化を図ったものです。しかし、嘘の通報に対する処罰を定めた条項はありません

 となると今後、報奨金目当て・ライバル潰し・恨み晴らし・嫌がらせなどの邪な動機による虚偽の通報・密告が全国で多発することも予想されます。

 

投資の誘いとスパイの摘発という大矛盾

・石平:李強はあちこちで外資に「中国はこれからも開放します。どんどん入って来て投資をしてください」と呼びかけています。しかし一方で習政権は改正反スパイ法によって外資を脅かしているのです。

 

中国外交には日本も相互主義で対抗せよ

・高橋:外交の世界では「相互主義」というものがあります。相手がやっていることと同じことをやる、ということです。ざっくばらんに言えば、「やられたらやりかえす」。この相互主義は外交の世界では当たり前なのに、日本政府はほとんどやったことがありません。

 

・高橋:ところが、日本では相互主義が非常にやりにくい。というのは、どこの国にもスパイ防止法があるのに、日本にはないからです。

 

・高橋:ただし日本でスパイ防止法をつくろうとすると、親中の人たちがさらに激しく抵抗するでしょう。日本には親中の人たちがたくさんいます。日本政府もよほど腹を決めないと、スパイ防止法を成立させるのは難しい。

 

第三世界のATMと化した中国外交

AIIBと一帯一路は完全に失敗

・石平:鳴り物入りで登場した「一帯一路」構想と「AIIB」は今や見る影もありません。世界経済における中国の凋落を象徴しています。

 

・高橋:AIIBはダメだという見通しは当りました。私は日本国には全然悪いことを言っていません。日本はAIIBのような地雷を踏まないで本当によかった。

 

共産党体制では絶対に人民元通貨圏の拡大はできない

・高橋:中国は人民元の販路を拡大したくても一帯一路もAIIBも行き詰まってきているから難しくなってきています。

 

・高橋:国際決済取引での人民元のシェアは3%程度にすぎません。

 

高橋・要するに、資本取引の自由化については中国が社会主義体制である以上、全くできません。だから人民元も国際通貨に絶対になれないのです。

 

半導体産業も崩壊に向かう

・石平:米中対立による先端半導体のサプライチェーンを中国から切り離すという動きになっています。半導体関連の外資も中国から出ていくのは間違いないですね。

 

台湾のTPP加盟を早く進めよ

・高橋:日本としては台湾のTPP参加をできるだけ早く進めることが重要でしょう。

 

暴言を吐いた中国の駐日大使をなぜ国外追放しないのか

・石平:中国のネット上では普段、「日本が我らの祖国統一を妨害したら、日本列島全体を火の海にしてやる!」「台湾解放のついでに大和民族を根こそぎ滅ぼしてやろうではないか」といった過激な言論が溢れています。

 しかし中国の外交官でしかも駐日大使が公然と「日本民衆が火の中に」と発言し、日本国民全体に対して大量殺戮のニュアンスの軍事恫喝を行ったのは前代未聞ですよ

 

中国の戦略は西側の切り崩し

・高橋:政治の観点では今日でも(合従連衡策は)通用する話ですね。

石平:十分に通用します。この故事が21世紀の我々に伝える最大の教訓とは、現代の秦である中国の連衡策に乗せられて西側の団結が乱れたら、災いが我々全員に降りかかってくるということです。

 

どの国も本音は中国はATM

・石平:特にアフリカ諸国の首脳はみんなわかっています。彼らにとって習近平は自動ATMのようなものなので、暗証番号まで知っている。すなわち、「1つの中国を支持する」「台湾独立に反対する」という暗証番号を入れたら、中国からどっとお金が入ってくるのです

 

中国にロシアとウクライナの仲介は不可能

・高橋:もともと中立的ではない中国に、ウクライナとロシアの仲介役などできやしません。

 

平和が破壊される確率は高い

戦争のリスクを避ける「平和の3要件」>

・高橋:「民主主義国は戦争しない」という非常に素朴な理論です。哲学者のカントの主張にも通じています。

 

・高橋:統計分析の結果、まず平和を保つ要素には3つあることが明らかになりました。「自国と相手国の民主主義度を高くすること」「相手国との相対的な軍事力の差を小さくすること」「有効な同盟関係を結ぶこと」です。そのうえで、各要素ごとに戦争のリスクを避けられる確率を出すと順に33%、36%、40%となりました。

 この3つの要素は「平和の3要件」と呼べるでしょう。

 

軍事力のアンバランスが戦争を誘発

・高橋:互いの国の軍事バランスが取れなくなってくると、均衡状態が崩れて戦争発生のリスクが高まってしまいます。

 

子供でも分かる強者の論理

・高橋:最後の「有効な同盟関係を結ぶこと」は2つの国が同盟関係を結べば他国から攻撃される可能性が低くなるということです。

 

日米同盟の強化につながった安倍首相の平和安保法制

・高橋:安倍首相は多大な労力をかけて平和安保法制を制定しました。それによって米国との間での集団的自衛権の一部を実現したのです。集団的自衛権は同盟を強くするための基礎なので、平和安保法制によって日米の同盟関係が強化されたことになります。

 

ウクライナが侵攻されるのは必然だった

・高橋:米国との間で核シェアリングまですると、かなり強くなります。だから私は安倍首相に「核シェアリングをしてください」と言ったのです。今のところ、残念ながら核シェアリングは実現していません

 

憲法9条改正で軍隊ができれば日米は完全な同盟となる

・高橋:私は平和安保法制は日本の戦争の確率を減らすと一貫して説明してきたし、巻き込まれ論の人には「巻き込まれるのではなく、強い国と組んだらちょっかいを出されることがなくなる」という言い方をずっとしてきました。

 

米軍原潜を買うか借りるか

・高橋:日本の核シェアリングのいちばん簡単な方法は、退役した米軍の原潜を日本が買うか借りるかだと思います。原潜を自前で開発するのはすごく大変なので、退役した原潜を買うか借りるのが合理的なのです。借りる場合は乗員込みで借りればいいでしょう。

 

崩壊の道しかない中国は台湾有事を起こす

・石平:かつて鄧小平は、改革開放で経済を発展させようとしたのです。ある程度は成功するのではないかと思われた矢先、習政権が出現して改革開放は逆行してしまいました。それで今や中国経済は落ち込んでいます。

 

・石平:しかし習近平は鄧小平路線を止めて、かつ中国経済を先祖返りさせているのです。

高橋:そのお陰でわかりやすくなったじゃないですか。だから、これからは中国には本当に崩壊する道しかなくなってきました。こういうときには海外に活路を求めるしかなくなるというのが人類の歴史なのです。

石平:中国は台湾有事を起こすということですね。

 

台湾が「戦わずして負ける」可能性

突然全面的に大転換した中国の農業政策

・高橋:台湾有事ですね。今は「台湾有事がいつ起こってもおかしくない」と言う人も増えてきました。

 

・石平:前提から話すと、胡錦涛政権時代から農耕地の開発をやりすぎて自然が破壊され大洪水などが起こるようになりました。そこで今から20年前に始められた政策が「退耕還林・還草」(農耕地を森林・草原に戻す)です。あちこちで農耕地をやめて森林に変えていくというもので、これによって再び緑地が増えていった。

 また、当時は穀物をつくっても全然お金にならなかったため、お金になる換金作物の栽培も奨励されたのです。それで農民は田圃を潰して花を植えるなど経済価値の高いものをつくるようになり、現金収入も増えていきました。

高橋:緑化で地域の災害を防ぎ、農民の所得を増やすというのは真っ当な政策ですよね。

石平:ところが、23年になって突然、習政権は全国で退耕還林・還草とは正反対の「退林・退草還耕」政策を全面的に始めたのです。今まで植えた木を全部伐採して再び農地に戻させ、農民たちは、今までつくってきた換金作物を全部捨てさせられ穀物の米や小麦をつくらされることになりました。しかも、かつての大躍進政策と同様に行政命令によって強制的にやらされています

高橋:大躍進政策は、毛沢東の主導で1958年に実施した鉄鋼、農作物の大増産運動ですね。しかし餓死者が2000万人前後も出たとされ、大失敗に終わりました。

 

・石平:となると、ただでさえ農村は貧乏なのに、換金作物が禁じられてますます貧困化してしまいますね。

高橋:貧困化はどんどん進むでしょう。共同富裕どころか、まさに共同貧乏ですよ。

 

戦争に備え食糧輸入を拡大

・石平:習政権が退林・退草還耕を実行する理由に挙げているのが食糧の確保、つまり食料安全保障なのです。

 

・石平:中国は爆食しているのだから食糧を止められると非常に苦しい。それで国内は食糧危機に陥る危険性があります。

 

10自衛隊、1個師団全滅という危機 ⁉

共産党エリートの最大の悩みは海外の個人資産の凍結

・高橋:中国人は、家族とか資産とか個人的なところが弱い。中国に対しての制裁では個人的なところを突くことが欠かせません。米国は金融の力が強いので資産凍結もできます。

 

・高橋:死活問題の前では祖国統一の大義名分などどうでもよくなります。だから、みんなの目の前のお金でけっこう動くことがあります。台湾人にとっても食うことが優先されるという話をしました。中国の本土の人だって同じ。食うためにはお金が何より大事なのです。

 

それでも最後に勝つのは民主主義

・石平:台湾有事になると日本にも戦争が迫ってきます。それなのに日本の政界や経済界には危機感があるようには見えない。

高橋:防衛費をGDPの2%に上げるというところで政界には危機感が出始めています。

 

・石平:民主主義には何をやるにも時間がかかりますね。

高橋:仕方がないですね。民主主義では物事はゆっくりゆっくり進み、しかも障害を1つずつクリアしていかないといけません。しかし、民主国家のほうが、経済成長も達成でき、戦争を妨げる可能性が高いのです。

 

<おわりに>

今世紀に入ってから多くの日本人が中国崩壊論を唱えるようになった。特に勢いを増してきたのが2010年をすぎてからである。

 

とすれば中国崩壊論が現実味を帯びてくるのはまさにこれからだと言える。それでも何せ巨大な国だから崩壊まで短い期限を定めるべきではない。少なくとも10年くらいは時間的な余裕を持たせておいたほうがいいと思う。

 

・ウクライナ戦争を見てもわかるようにウクライナ人が必死に戦っているからこそ、軍事同盟を結んでいないため派兵できる国はないものの、多くの国が兵器や支援物質をどんどんウクライナに送っているのである。同様に日本人が頑張らないと米軍が来るはずがない。

 だから自衛隊は単独で人民解放軍と戦うことになる。それで自衛隊が1個師団くらいの犠牲者を出したときに初めて、日本政府の求めに応じて米軍が参戦することになる。1個師団の兵力は数千人だ。

 なお、中国には自国が崩壊する前に台湾を併合するというインセンティブも生まれ得る。台湾併合で中国経済も多少は持ち直すかもしれない。台湾有事は中国経済とも深く関係しているのである