大丸山の頂上に到着しました。
その高さは156.8m。
山頂は広々としており、まるで公園のようで、子どもたちが縦横無尽に駆け回ったり、まったり寛ぐ人々でにぎわっていました。
ベンチをはじめ、テーブルとイスのセットも完備されており、申し分ない。
その中の1セットが空いていることに気づき、「あそこでお昼でも食べようかな」と思いながらも、まずは景色を味わいます。
横浜市最高峰ではあるけど、横浜方面の展望は開けておらず、南側の横須賀方面、そして、分水嶺の水が注ぐ東京湾側がしっかりのぞめました。
その奥には千葉県房総半島の鋸山や富山が顔をのぞかせています。
横では、(わたし推定)社会人3,4年目くらいのお兄さんがフェンスに腰掛けて、「おぅー」と感嘆の声をあげています。
「すべて俺のゴルフ場にするぞ」とか若い野望を抱いているのかしら(嘘)。
わたしと同じように、横浜のそれも自然の中に立ってながら房総半島がそこに見える感動が、つい声に出たのでしょう。
味わいつくしたところで、空腹を感じ始めたのでお昼のほうを味わうことにします。
振り返って空いていた席を見ると3人組がすわっていました。
ざんねんっ。のんびりしすぎました。
でも、わたしには秘密兵器があります。
リュックにくっついてきた携帯用座布団です。
それをおもむろに広げ、にぎにぎしてきたおにぎりとおかずを頬ばりました。
(三角屋根が特徴の八景島シーパラダイスが見えた。)
(あの山は鷹取山?あれは横須賀駅近のタワーマンション?など、頭の中で地図を広げられるのが嬉しい。)
ごちそうさまでした。
さて、そろそろ出発しましょっか。
リュックに荷物を詰めて、登ってきた階段を降りようとそちらに歩き出しました。
するとおじいさんが近寄ってきて
「どっち方面に行くの? 鎌倉方面だったらこっちのほうが近いよ」と教えてくださるではないですか。
人間ウォッチングをしながらお昼を食べていたわたしでしたが、逆にこちらのほうがウォッチングされていたようです。
このおじいさんこそ本物の鎌倉アルプスのプロ⁉と思う間もなく、体がそちらに向かっていました。
「ありがとうございますっ。そうします」
そのご教示いただきます。と、指されたほうへと歩き出しました。
ピストンにも良さは存分にありますが、違う道を歩けるならば歩きたいですから。
(今日は「みどりの日」。「昭和の日」に押し出されるような格好で制定された「みどりの日」。素敵な緑な1日を!)
(上りとは別の階段を下る。ずいぶんと華奢な階段だ。)
大丸山へ上る前の道に合流。
❝バック・イン・ザ❞ ビートルズトレイルな道を、先へ先へと進みます。
前の繰り返しになりますが、分岐が多いため、きちんと行きたい方向に向かっているのかと、頻繁に山アプリを確認することにはなりました。
ですが、そんな心配は横においておきながらの、この道草感がたまらないのです。
(へびいちご、みーっけ! 食用いちごと同様にランナーを伸ばして生息域を広げていくのが特徴だ。)
(四つ葉のクローバーもみーっけ。こうしてみると、ぷっくりとしていて、柔らかい雰囲気を醸し出してるー。)
(ラッキーを呼び寄せてくれたクローバーに感謝。アオスジアゲハがご登場。しばし、しゃがみ込んで真剣に撮影する。)
しばらく歩くと、横浜自然観察の森方面と天園(鎌倉)方面への分岐が見えてきました。
ビートルズトレイルは自然観察の森でゴールですが、わたしは天園へと進みます。
天園に近づくにつれて、岩を削った道、(鎌倉といえばの)切通しのような道へと変化してきました。
ロックな道です。
太陽が岩を輝かせています。
❝ヒア・カムズ・ザ・サン❞を脳内再生しながら先を行きます。
(木の根がビラビラ~葉っぱはフサフサ~。崩れ落ちそうな岩の上で木が踏ん張っていた。この強さに畏敬の念を抱いてしまう。)
(岩だけじゃない。日差しが空気をキラキラ輝かせている。進めば進むほど、目に青葉若葉の季節が到来したのを実感していく。)
(代表する切通しではないでけれど、これが鎌倉の山の真骨頂。風薫る5月、いにしえの香りも運ばれてきた。)
これから向かう天園方面の「天園」は、東郷平八郎がその地を「天国の園に遊ぶようだ」と表現したことから天園と呼ばれるようになったとか。
そこまでの道中、右手側の木々の合間からは、横浜霊園が何度となく見えます。
山の上から見晴るかすと都会にある霊園がのぞめる、なんていう眺めはそう多くはないかと思います。
鎌倉アルプス、一向に飽きません。
(この言葉が合っているのか疑問だが、壮観な景色だ。死んだらここを住まいにしよーっと。もちろん、自分が天国に行ける前提だよーん。雑。かつ軽い。)
さらに、お花天国。
まるで春を確かめに鎌倉アルプスへとやってきたかのように、春を彩るお花たちが次々と出迎えてくださいます。
ひとつひとつの出逢いに感動しながらてくてく歩いているうちに、知らない間に鎌倉最高地点・大平山に到達していました。
(シャガさん。毎度のことながら美貌の中に個性を出してこられる。)
(乙女の椿ちゃん。ここでお会いするとは思ってなかったわー。)
(寒さにも強いタツナミソウさま、お元気そうですね。ほっこりするー。)
(右も左も天園ハイキングコースだが、右は北鎌倉方面、左は鎌倉方面へ行く。右を選んだ。)
(このあたりが横浜市と鎌倉市の市境かと思われる。)
(ギョギョギョ!(八景島に引っ張られたのか、さかなクンが降ってきた。)鎌倉カントリークラブの上に、忽然と觔斗雲のような雲が現れた。)
(まったく頂上感のない大平山。絶対に看板がないと気づかない。背伸びをして金網の上からのぞくと、ランドマークをはじめとしたみなとみらい地区が見えた。)
お気楽ハイキングー♪と思っていたら、鎌倉カントリークラブ横を通り過ぎてすぐの大平山手前で、急に現れた急な岩肌に驚くことになりました。(写真におさめるのを忘れてしまいました。)
わたしにはサッカーボールを蹴りながら上がるのは無理、な傾斜とゴツゴツ感です。
❝ヘイ・ジュード❞を心の中で歌いながら上ります。
その距離は超短いですが、久しぶりに緊張感を持ちながら歩いた印象でした。
大平山を越えても岩を切り開いた道は続きます。
3座目の鷲峰山(127m)山頂あたりとわかる目標物も大きな岩。切り出した岩からは地層も確認できます。
そのロックさに、天国(天園)までテンションが上げながら、地層のお勉強までしてしまいたいところです。
でも、残念ながら、そこから歴史を推しはかったり、石を削って化石やらを見つけ出したりできる能力をわたしは持ち合わせていません。
ただ、学びを深めている風の自分を楽しみながら、武蔵国と相模国の国境を進みました。
(木々の鮮明な緑とゴツゴツとした岩だらけの道。太陽の光でハードさが誤魔化されている気もするが。)
(鷲峰山の頂上。その重なりから、長い時の流れを感じられる。通りすぎてから何の気なしに振り返ると、地層をのぞいている風(失礼~)の方がいらっしゃった。わたしと頭の構造が同じようだ。)
(唯一だったかな? ロープがあった。これがハイジなアルプス。)
鎌倉に多い「やぐら」が見えてきました。「切通し」とともに鎌倉の山の特徴にあげられる「やぐら」。
中には石仏や供養塔が備えられています。
日夜戦いに明け暮れる武士たちは信仰心もあつく、やぐら供養はさかんに行われたといいます。
「そういえば、横浜で石仏の看板も見かけたわ」
書かれていた内容をはっきり思い出し、古都鎌倉へ向かいながら人の手で形作られた石を探し始めました。
すると、都合よく、すぐに見つかりました。
目印は、「かながわ景勝50選」の石碑。この背後上方にある凝灰石の大岩は、隠れパワースポットとして有名ならしい。(変な日本語。)
岩の表面に、冥界(地獄界)の十王のうち閻魔大王・血盆地蔵・如意輪観音の像が3体刻まれています。
天園(天国)ハイキングコース脇の高みにおられるのが地獄の仏さまたちというのが、天園があとからついた名称にせよ、パンチがきいているなあと気に入りました。
この十王岩からの眺めは、石碑が示すように「鎌倉十王岩の展望」として「かながわの景勝50選」にも選ばれているほどの絶景です。
鶴岡八幡宮段葛から相模湾へと一直線に伸びる若宮大路、そして分水嶺の相模湾側の登場にも興奮します。
(鎮座されていたのはことごとく首のない石像。石像の多くは明治の廃仏毀釈で首を刎ねられたそうだ。歴史にのまれた石像たちの一員なのだろうか。)
(十王岩の周りよりも、少し横に移動した開けた場所からのほうが期待する景色をのぞめる。)
(かろうじて仏像であることがわかる程度。風化がすすんでいた…。いちばん右が閻魔大王さまらしい。)
(源頼朝が鎌倉に幕府を開いた理由は、三方を山に囲まれた天然の要塞をもつからだといわれる。写真にはおさまってないが左右も山。鎌倉の地形がよくわかるスポットだ。)
鎌倉の街を一望できる、ここでしか見ることができない古都鎌倉を眺めながら、かつて同じ景色を見ながらこの地を歩んだ人々に思いを重ねました。
時空を超えて当時の人々の息づかいを感じられることを贅沢に感じます。
つづいても眺望が開けた場所で足を止めました。
ここは、4座目・勝上山の頂上。先ほどとは違う相模湾が見えてきます。
蹴ってきた変化球を受け止めました。
(立札の上にボケて見えるのは、鎌倉五山第一位の建長寺。建長寺を懐に抱いて勝上山は聳えている。)
(相模湾の先には伊豆半島が見える。ひとつ海を越えた先まで見渡せる絶景ポイントだ。)
5月の光を受けた葉っぱがさやさやと揺れる音とともに、優しい空気が運ばれてきます。
それらの春を思いっきり吸い込むと、建長寺の横に建立された明月院へとつながるルートへと歩き出しました。
このルートも天園コースに含まれています。
あとは下るだけ、と思いきや、まだ上りがありました。
最後の力で長めの階段を上り、明月院の裏側にたどり着く階段を下りました。
(もうひとつ、(少しだが)息が乱れた場所があったのを忘れていた。人生最期の天国への階段だ。え、まだヤダ。)

(円海山→大丸山→大平山→鷲峰山→勝上山ときて、ひとまず山歩きはここでゴールだ。)
最初に触れたように、鎌倉アルプスはおまけが付いてくるコース。
つづきはボーナストラックをどうぞ。



























