尺八は上部菅と下部菅に分かれる物がほどんどです。下部管は凸形、上部管は凹形ではまるようになっています。

よい製管師の物はきっちりできていて、尺八を吹かない人でも加工精度が分かる部分です。

さすがに新品の時からグラついているものは売り物では見かけません。しかし、年月と共に収縮し抜けやすくなってきます。乾燥によって状況もかわり、よく練習している時は固め、練習をしていない時はスッポリ抜けやすいので練習量のバロメーターにもなります。

最近はこれを防ぐため中継ぎのほぞ部分は竹以外もよく使われるようです。

先日お邪魔した大橋鯛山さんの工房では、塩ビパイプを使っていました。規格ではVP16でしょうか。

泉州さんは最近グラスファイバーを使っていると仰っていました。音はむしろ良いとのことです。

ある尺八も吹かれる詩吟家元との話。

「最近中継ぎがゆるくなってしまって。直す方法はありますか?」

製管師に修理に出される方が多いですが、自分でも直すことができるので、紹介します。

最近気に入っている普臣の1尺7寸管。古いもので、入手した時からグラグラです。

紙を半周巻いてしのいできました。

この部分で息が漏れると、乙のレ、ツ、ロが出にくくなります。甲のロにも大きく影響します。

この際、直しておきまましょう。

管内側にも浅い亀裂が見られます。

合成うるしの「カシュー」が使いやすいと思います。

特にチューブタイプはやや割高ですが、ちょうど良い粘度で最後まで使い切りができます。

缶入りタイプは使い切る前に表面に膜がはってしまうことが多いです。

私は、これが好き。サンコー商会製。各色あります。(透明や金色も)

名古屋近隣では、カーマ、カインズ、ロイヤルといったDIYショップでは見つからず、アントで扱っています。

釣り具屋さんにもあると思います。

赤と黒のまぜ具合を調整し、持っている尺八に近い色を作ります。今回は黒のみ使用。

少しだけ出して(面倒だから梱包シートの上)

平な小筆で塗ります。

1、汚れ・油分を良く取っておくこと。

2、目の細かいサンドペーパーで少し表面を研磨しておくとはがれにくくなります。

3、一度に重ね塗りはしません。二度塗りの場合は翌日です。

4.ホコリ、筆の抜け毛厳禁。

5、カシューは専用溶剤がありますがチューブタイプでは必要を感じません。はみ出しのふき取りや筆洗いはシンナーで可能です。(ラッカーシンナー・ペイントシンナー共に)

表面の光沢が出た状態で作業は止めます。いつまでもいじるのは悪影響です。粘度が高くなる前の表面張力に任せるのが美しく仕上げるコツだと思います。

このまま放置。一度に0,1㎜くらいの厚さだと思います。

私の場合は、かなり緩め(紙を半周挟んで使っていた)でしたので、上部管の凹部分も塗り、ちょうどよい固さになりました。

塗装後は翌日組み立ててみたい所ですが、二日待って楽器用スライドグリスかワセリン(なければ薬用リップクリームかポマードもOK)を塗って組んでみます。急いで組立をし、しわがよった時は修復に手間がかかり面倒なことになります。

ついでに音程調整用に削ったり、パテを盛ったりしたと穴の内側も塗装しておきました。

きちんと漆で直したい方は専門家に任せるか、ご自分で漆を入手されると良いと思いますが、私はカシューで不具合を感じていません。

漆への食いつきも悪くありません。中継ぎ部分の漆は消耗部分と思っています。

キッチリ中継ぎを仕上げて、乙ロの鳴りが良くなった気がします。気のせいかな?

スルッと入り、ちょうど良い中継ぎの固さは気持ちが良いです。