泉州工房の三塚さんにお話を伺っていたとき、

「尺八の鳴りは内径形状と歌口にかかっています」

と仰っていました。

金管楽器でも木管楽器でも、管楽器は口に近い所ほど影響力があるそうです。

チューバやユーフォニウムの修理をしていたとき、マウスパイプの凹みは、わずかでもとても大きな影響があった事を覚えています。一方先端のラッパ状のベル部分はかなり変形していてもあまり影響はない気がします。

一流の金管楽器奏者がベルがベコベコの状態で平気で演奏をしているのを見たことがあります。

チューバで本当にあった話

「最近音の鳴りがすこしモヤモヤしていると思ったら中から灰皿が出てきた。」

「ビリ付きがあると思ったら楽器の中から楽譜が出てきた」

「マウスパイプからホースで水を送ったらホコリにまみれて、煙草のすいがらが出てきた」

何とも豪快な話です。

一方マウスピース側は各楽器の奏者共とても神経を使って、些細な変化で一喜一憂しています。

今回、複製尺八の歌口を整形し仕上げます。

三塚さんは歌口の深さ、歌口の幅、顎当たりの角度の3か所を各3段階変化させ、使用者が一番合う物をセレクトできるようにされています。

3×3×3で計27種類の組み合わせですね。

泉州オリジナル管の場合は

・歌口の深さは5㎜と極端に深め

・顎当たり角度は大きく傾斜

の2点が特徴だと思います。尺八奏者にとって、この歌口の深さは面食らうと思います。私の場合半年間毎日吹いて抵抗感がなくなってきました。大きなパワーが出ますが繊細なコントロールができるかどうかが課題になってきます。倍音の乗りも意図的にコントロールしないと音造りがさまになりません。

さあ、複製尺八の歌口整形。ヤスリを使って同じように仕上げます。表面研磨はまだしていないので艶っぽくありませんが同じになったかな?下の複製尺八の黒い部分は流し込みプラスティックの残っている部分です。

埋め込み部品の形は音に影響ないと思います。向こうは琴古流、手前は明暗流の形。私?都山流・・。都山流本曲コンクールでも出場しない限り気にしません。

 

ここから見るとまだラインが違う

粗いままですので傷は残っています。同じに仕上げたつもりでも顎につけてみると差を感じる。難しいものですね。

内部の漆は原型重視で塗らないつもりでしたが、いろいろ傷が残ったので、今度赤く仕上げてみましょう。