今回はマイクの話。

木管楽器用としましたが、尺八・フルート中心で話をします。

サックス、クラリネット、オーボエなどは、セッティングや選び方も違ってくると思いますが、あくまでの定番の話です。

CD製作等のレコーディングのマイクとライブ演奏のマイクでは根本的に考え方がちがいますよね。

レコーディングはあくまでハイクオリティー、何度でもやり直しながら、情報を余すことなく拾い、意図した音へ加工していきます。

ライブでは、信頼性、コンサートとしての熱気・勢い、大音量でも安定した拡声、そしてプレーヤーの意図した音を一発勝負で供給しようとします。

邦楽の世界では、生音重視で、大ホールでも、感度の良いコンデンサーマイクで、ほどほどの音量で場内へ流すことが多いので、マイクはレコーディングの場合と大きくはちがわないと思います。尺八の横山勝也先生は、40年前、ノイマンU87を楽器と共に持参され、どこの演奏でも使ってみえたような気がします。

でも、打楽器、電子楽器、和太鼓、エレキギター、津軽三味線などが入ると、一気に状況が変化します。

友人の音響エンジニア(彼はサックス演奏者で自分のビッグバンドも持っている)がコンサートにてジャズシンガーを呼んだ時

「私、いつもの気に入ったマイクを持ってきたんですけど」

「はい、じゃあ」

と言って出したのは、ラージダイヤフラムの広指向性コンデンサーマイク 

「これは、ちょっと・・・」

「なぜ?私の声はこのマイクが合っているの。」

「ビッグバンドの前でこれを使うと、○◇△※づhうhぴうはぴhfph・・・以下宇宙語」

とにかく使用マイクには向き不向きがあるのです。

 

前置きが長くなりましたが、コンサート用マイクの話

定番はこれでしょう。

シュアーのSM58 通称 ゴッパー

本来シンガーが手にもって歌うボーカル用マイクですが、楽器にもよく使います。

尺八やフルートのように至近距離で息が吹きかかるような場合は有効です。

このマイクを知らない音響屋さんはいないはず。

「あのー、ゴッパーを持参してるんですが、これでいいですか?」

「・・・・・・誰もが、黙ってうなずく・・・・・・」

世界中の音響屋さんはこのマイクの特徴を熟知しています。

あるいは

シュアーのSM57 通称 ゴーナナ

息を吹きかけない場合は、こっちの方を使う事が多いでしょうか。二種類はウレタンやメッシュのスクリーンの有無が影響し、少し特性が違いますが、ユニットも少し違うようです。

尺八・フルートの場合はこれで口元を狙うのが良いと思います。

マイクとの距離はかなりシビアで、近付くと中低音が厚くなります。

コンサート後半や、アンコールで場内が盛り上がったり、全員の手拍子の場合はかなり寄って演奏することになります。(専属ミキサーがいれば出演者の調整はいりませんが。)

私の場合、筝はこれを標準に使っています。打楽器のハイハットを真上からねらうセッティングもよく見ますね。

二種類とも古くから使われているマイクで、ダイナミック型でもこれより高性能なものは、いまなら多数あるはずですが、音造りのしやすさと信頼性でスタンダードとなっています。

 

わたしの バンドではこれらを長年使ってきました。こだわりと言えば・・。

両方ともボロボロの58・・。特に右はハゲハゲ。

これを見て「オッ」とうなったあなたはマイク通。

これは58の中でもビンテージとされるUSAモデルと呼ばれるものです。

ベテラン音響さんに言わせると

「USAの58は別物です。音の抜けが違います」

マグネットは、フェライトでなくアルニコ、現在世界中で作られている58も最初はアメリカ工場だけで作られ輸出されていました。1ドル360円の時代の話ですよ。この文字の形を見たら、ゲットですね。オークションで出品者が気付かずジャンクとして出されることもありますので、写真の文字に注目ですね。

右が現代のSM58です。両者の間にメキシコ製というのがあり、これもアメリカ製ほどではないにせよ、特別扱いをされています。

これも57のビンテージ。筝はこれです。

購入時の注意として

偽物が出回っているとのことです。私の様に、ジャンク狙いの人には関係ないですが、安い新品は気を付けてください。

この57,58は不思議なくらい丈夫です。ジャンクでも音の出ない確率はかなり低い。58のメッシュはベコベコに凹んでいることが普通ですが、木の棒を内側から押し込んで直すこともできます。

私が「58もどき」と呼んでいるものがあります。

外観はSM58とそっくり。重量は半分くらい。値段はコードがついても考えられないくらい安い。

以前数本使ってました。ポイントは、付属のコードは絶対使わないで捨てることです。このコードのコネクターは、プラスティックに金属風の通電性のあるメッキ塗装をしたもので、トラブル続き、使ってはいけません。本体のトラブルは少ないです。金網部分が本物の58に流用できるので、純正部品より安いこのパーツの活用は業界の裏技となっているようです。

本体にトランスは入っていないし、音質もそれなりですが。使えなくはありません。

この型番です。本物を装った偽物ではないので、わかって使えば問題はありません。

 

で、実は現在、シュアーをメインに使わなくなりました。好みの問題です。

これこれ、ゼンハイザーのMD421-U「黒くじら」と言われるものです。訳あり品を直して使っています。

繊細、感度がよい。コンデンサーマイクのような情報量で少し離れてもみずみずしさを失わない。高域と低域ののバランスがやや強調され、私の尺八・フルート・サックスの音を補正してくれます。でも、これのジャンクは手を出さないほうがよさそうです。メーカー外の修理は困難で、「音出ます」とあっても、「低音ぬけ」であることがあるので、注意してください。

シュアーの57,58を揃え、違うマイクが欲しくなったら自分の好みで・・。といったと所でしょうか。

ここのページが参考になると思います↓。http://www5d.biglobe.ne.jp/~fabpage/recequip/recmic001.html

最近の和楽器バンドや和太鼓、ドラムスの入ったバンドでは、歌口マイクが増えています。

どうしてもこのスタイルになります。このポイントは息音を外しながらも、ハウリング対応ができる部分です。

私が使っているのはこれ

AKG ( アーカーゲー ) / C519ML の前のタイプ

こちらですが419だったかな。生産中止?

音は悪くないと思います(クリップタイプにしてはの話)。海外でマイクスタンドが確保できず、和太鼓のセッション用の時に、これを用意していきました。

尺八の裏側にL型のアルミ部品を両面テープでつけ、ここにクリップで固定します。

フルートも同様で行けます。

マイクのポイントは

「息の出口斜め45度横、口より指の太さ二本分の距離を離す」

が私のベストポイントです。ワイヤレス化し、ステージを動き回りながら演奏することができますね。

サックスの場合はこんな感じ。

AKGのこの小さい卵状のマイクもよい音です。大きい方はD112低音用。

ダチョウとスズメの卵くらいの差があります。同じデザインで、並べてパチリ。

これも残念ながら生産中止?

シュアーのこれも使ってみましたが、あまり中低音は出ず、今は使っていません。

AKGのこのタイプは良い音のようですが、かなり高いかな?AKB48も使っていましたね。

 

サックスのマイクについて詳しく触れているページがありました。↓やはり同じようなマイクを紹介して見えます。金管楽器でも基本的には大きく違わないと思います。

http://sound.jp/mpcroom/inst/microphone.html

 

大橋鯛山さんが、尺八の歌口マイクの情報をのせていましたので紹介。

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歌口マイク

台湾の友人から「歌口のところに取り付ける尺八用マイクを開発したので見てくれないか」というメールが入りました。安く性能が良く、そして尺八の場合は扱いが簡単でなくてはなりません。何せほとんどの方が70才以上ですし、何に使うかと言われれば(三曲合奏のわけがねえでしょうが)、余興とか慰問演奏に使うわけですから操作は簡単でなくてはね。
私が最初に歌口マイクを見たのは36年前、ジョン・ネプチューンの家で彼に説明を受けました。その後、三塚幸彦さんが熱心に取り組みました。
今では普通に見るマイクですが、まだまだ尺八界では使う人、それどころか存在を知っている人すら少ないのです。音量の大きい西洋楽器と合奏したり、青天で人の多い時などには便利です。プロのライブではよく使われていますよね。
でも私は老人で音の小さい人にこそ求められていると思います。
養老院などへの慰問演奏は、私がこれまでに知っている範囲ですと、御本人が養老院に入っていて全然不思議ではない御老人がやっているケースがほとんどです。
老後の生きがいとして尺八を持って行って、歌謡曲とか民謡を吹いて一緒に楽しんでいます。
そして、基本的にヘタですからね、「もう少し音が出る方法が無いか」との相談をよくうけます。
今世に有る、「生くと生けるもの」は全て進化と言う名の形態変化で生きてきています。生存の根本要因である生活環境と食料事情に自らを合わせたのです。
形態が変える事で、それまで食料にならなかった物も食べられるようになりますし、外部環境に合わせて驚くべきバリエーションを造り出して来ました。。寒い所で生きるためには根性なんかじゃダメですぜ。
楽器だってそうですよ。食料であるソフトや演奏環境に合わせなくては。
ですから尺八もね、ご都合に合わせて変えれば良いんですよ。日頃はしっとりと古典を楽しんでいたって、騒がしい環境では歌口マイクを使えば良いじゃないですか。
ガッついた「何でもオーケー」の雑食性を取り入れれば豊になりまっせ。オレ断然その方が良いがな。
「尺八はそういうモノではない」と言う人もいるでしょうな。「生物は神が造ったままで進化などしていない」と主張する人もいますから、まあ「神学論争」はしないで勝手にやるとしましょう。
歌口マイクは条件に合えば来年春には売り出しますが、あくまで条件が合えばです。音が大きく出せない御老人の皆さま、お楽しみに・・・。
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良い物が安く製品化されるのであれば楽しみです。今後、音量がない演奏者向けでなく、多ジャンルの演奏をする尺八家には必需品になっていくことでしょう。
 
今、私の定番は、「黒くじら」です。気に入っています。古い製品でも、ドイツの工業力とセンスを感じます。これも業界定番爆  笑。難点は、演奏中の私の顔が隠れること・・。見えなくてもイイとは言わないで・・。