1.板橋の未来戦略について
この項では、板橋区の未来戦略として、急速に変化を感じる科学技術環境やイノベーションをどのように板橋区が捉えて、先進技術を活用していくのかを伺いたいと思います。近年のIT環境の劇的な変化は、改めて口にする必要はありませんが、高校時代に使用していたポケベル、大学時代に使用していたPHSなどかつてのIT環境を思いますと、ここ30年にも満たない間に人類未踏のIT革命が生活から思想や政治や宗教に至るまで広く深く影響するようになったことに驚きます。そしてその変革の真っただ中にあり、その変化は今も続いていることを強く感じています。
Society5.0は、ご存知の通り、日本が提唱する未来社会のビジョンであり、科学技術基本法の第5期(2016年~2020年)で初めて示されました。簡単に言えば、仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムによって経済発展と社会課題解消を両立する未来社会の呼び方です。「イノベーションを通じて、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差からくる閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重しあえる社会、ひとりひとりが快適で活躍できる社会となる」ヴィジョンを国家戦略として描いています。
IoTで人とモノがつながり、様々な知識が共有され、新たな価値が生まれること、AIにより、多くの情報を分析するなどの面倒な作業から解放されること、ロボットや自動運転車などの支援により人の可能性がひろがること、など具体的な想定がされておりましたが、すでに現実となっているものもあり、想定している未来社会がものすごいスピードで目前に迫っていると考えます。
そうした時代の到来に備えて、教育現場でも対応を迫られています。教育委員会では、将来社会Society5.0を見据えた人材育成をしようと努めており、教育現場においても認知が広がりつつあると考えています。そこで2点、質問をしたいと思います。
自治体への最新技術やテクノロジーの導入は、慎重になされてきた経緯があり、多くは民間企業に浸透してから、一歩を踏み出すいわば「石橋をたたいて渡る」ように変化を繰り返してきた歴史があります。Society5.0を国家戦略として目指すのであれば、板橋区としても役割を理解し、イノベーションが生まれやすい環境整備に努める必要があると考えます。同時に自治体として保持するビッグデータの活用やAIやRPAを取り入れることによる効率化を区民ひいては国民の利益となるように積極的に検討していくことを求めたいと思います。
日本は、SDGsの8つの優先的な課題を解決していくためにもSociety5.0社会の実現を日本の成長戦略と位置付けています。そこには、先進国としての強みである科学技術を生かして、地球規模の課題と日本国内の課題を同時に解決していこうという意図が読み取れます。
さて、令和元年度の予算概要の中で、板橋区はSDGsを取り上げ、政策に広く反映していく方針を示しています。また、「SDGsを見据えた持続可能な区政経営をめざして」という冊子を作成し、これまでの政策を振り返り、SDGsとの親和性や互換性を示し、どの開発目標に該当するのかの列挙がされています。
しかしながら、17のゴール、169のターゲット、232のインディケーターと3層構造の最下層にある進捗管理にまで及ばなければ本来はSDGsを取り入れた行財政運営は機能しないのです。今ある施策を当てはめていく場合は、進捗管理においても3層構造を意識する必要があり、また板橋区の特有の課題解消のためにSDGsを活用するのであれば、地域レベルの課題に落とし込むローカライズが必要となります。取り組みを進めるためには、議会を巻き込んだ議論や検討を重ねていく過程が欠かせません。そこで2点伺います。
AI導入の推進についてであります。最近はAI(人工知能)や機械学習やディープラーニングという言葉をよく耳にするようになりました。象徴的な出来事は、2016年のディープマインド社が開発した囲碁プログラムが実力がある棋士(きし)に勝利したことで大きな注目を浴びました。そこから、AIは、実用レベルにおいて人間に代わって多くの仕事を効率的に、効果的に、高い精度で行うところまで開発が進められており、活用が広がっていると認識しています。
板橋区では、今年から保育園入所選考に、AIの導入がされました。運用が待たれるところですが、想定によるとAI導入によって手作業で1400時間かかると見込まれる作業が数時間で可能となり、大幅な事務効率の改善となり、利用者への内定通知も従来より1週間早く行えることとなったと伺っております。板橋区と利用者双方に明らかな効果が表れたことを考えると、さらに導入へ期待が高まります。そこで伺います。
AIの活用は、その他に多様な業務において活用機会が探られ、導入されています。特に応答の自動化、最適解の導き出し、画像解析について強みがあり、こうした特徴を生かせる業務はすでに民間企業の業務効率化を目的として導入されており、周知されています。一般ユーザーからの問い合わせに対してAIによる自動応答システムによって回答し、最適なサービス提供するなど、利用者は即時回答の利便性を感じ、提供側は、業務の省力化が図られさらなるサービス提供につなげることができています。AI導入のノウハウが社会的に積み上げられていけば、区役所の業務においても当然広がっていくものと思いますので、積極的な導入検討を進めていくことを期待しています。
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