一般質問のつづきです。文化振興を抽象的に主張するのではなく、より具体的な提案を行いました。良い文化振興政策は地域を活性化することができるはずです。助成金ではなくて、地域の人々の協力を得て育てる「文化政策の種」を蒔いてはどうかと発言をしました。

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3.文化振興についての具体的な提案

文化振興は信念に基づいて、具体的に推進していかなければ新たな創造に結びつきません。そこであえて私はいくつかの板橋区において実現可能な新しい文化振興策について自ら提案をしてみたいと思います。




(1)「アール・ブリュット」について アートと福祉 

「アール・ブリュット」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。フランス語で「生(き)の芸術」を意味する芸術の1つのジャンルです。障がい者美術と理解されがちですが、趣が違います。「健常者美術」に対しての「障がい者美術」ではなくて、主体的な文化の担い手としての願いや想いが込められています。

「裸の大将」で親しまれた山下清さんという画家を知る方も多いでしょう。社会的にハンディキャップを持っていても、特異な個性を発揮し、芸術作品を多く生み出しました。アール・ブリュットではハンディキャップを持つ方の才能や特異な個性や画力に注目し、アーティストとして、作品も大切に扱います

アール・ブリュットのすばらしさは、鑑賞する者に驚きや発見を与え、障がい者への理解を促します。また障がい者には発表の機会を与え、文化の担い手として社会に貢献する場所が広がります。板橋区では今年度区政制定80周年事業として「障がい者美術展」が企画されています。この展示機会においてアール・ブリュットの考えを取り入れて企画展示を行い、ノーマライゼーションがさらに広まる契機としていただきたいと考えますが、区長の見解をお示しください。


(2)「板橋板絵」について アートと商店街振興

かまぼこ板を利用した「板橋板絵コンクール」をしませんかという提案です。かまぼこの板のサイズは食品メーカーによって若干異なりますが、概ね幅5センチメートル×長さ11センチメートルと大きなものではありません。この板をキャンパスにして様々な画材を用いて絵を描き応募してもらうという簡単なコンクールです。かまぼこ板の制限のあるサイズの中で工夫して絵を描いてもらいます。本来は捨ててしまう木の板ですが、絵を描いてもらうことで作品として命が与えられます。

この試みには前例があります。小田原市にある「鈴廣」という食品メーカーが、かまぼこ板を使用した作品を募集し、注目を集めています。毎年、コンクールには1万点を超える応募があるそうです。蒲鉾板はサイズが小さく、郵送や展示の扱いがしやすく、スペースを取らないので保管も展示もしやすいというメリットがあるとのことです。

もう一度言いますと仮称ですが「板橋板絵コンクール」、「板橋」と「板絵」で語呂が良く、耳になじみます。ゆくゆくは板橋区を代表するアートイベントにするのが夢ですが、まずは板橋区役所のロビーに飾ってみるところから始めても構いません。優秀作品は区長賞を創設して表彰するなど工夫の余地はあります。作品を公募した後は、商店街の空き店舗などを活用させて頂いて、商店街にぎわいが生まれるような区内の商店街を優秀作品が巡回するような展示企画に発展すれば、板橋を挙げてのアートと商店街振興を兼ねたイベントになるのではないかと考えます。少し先走り過ぎておりますが、商店街は活性化のための具体的なアイデアを求めています。そこでひとつ踏み込んで提案をさせて頂きました。商店街活性化のためのアイデアを板橋区から商店街へ提案してみてはどうでしょうか、区長のお考えをお示しください。




(3)印刷文化の発信 デザインと産業振興

板橋区は印刷・関連産業の集積地であり、平成20年の工業統計調査によると印刷・関連業の製造品出荷額で東京都区部において1位となっています。印刷・関連業は板橋区が誇る地場産業であり、産業振興の柱となるべきと考えます。先日、私は板橋区内の製本工場3社を視察させていただきました。製本業だけを見学するという珍しい工場見学会でしたが、「製本」という工程だけをとってみても、奥深い技術が凝縮されていることを知りました。

この印刷文化を積極的に発信していくべきではないかと考えます。毎年、板橋区でも多くの冊子が制作されます。例えば産業振興課が制作する冊子だけでも、コストをかけてデザインにこだわり、印刷や製本を特殊にし、冊子自体が話題を呼び産業振興につながるようなつくりにしてはどうかと思います。子育て世代の関心を引くような母子手帳をデザインすることもできるでしょう。

印刷業が盛んな板橋であるからこそ、紙の文化を大切にし、産業振興に戦略的に生かしてはどうかと考えますが、区長のご意見を求めます。