二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。
「その肩の穴は何だね?」
「肩とはどこですか?」
「君は自分の身体に肩がないと思っているのかね?身体の側面が膨らんで段になっているだろう?そこだよ。穴の周りの皮膚が他よりも赤くなっているね。怪我をしているのかね?」
「ああ。この穴ですか。これは鼻の穴ですよ。しかし、鼻炎になっていましてね。そのせいで調子が悪いから周りの皮膚が赤くなっているのですね」
「鼻か。私の身体には今のところ鼻がないから羨ましいよ。君はこのコーヒーの香りを楽しめているのだね。私にも鼻が出来れば良いのだけど、なかなか自分の望み通りの身体にはならないね。今の私は鼻があった頃の記憶を頼りにコーヒーの香りを想像しながらコーヒーを飲んでいるが、実際に香りを感じられたら感動するだろうね」
「今は鼻炎ですからコーヒーの香りはほとんど感じていませんよ。しかも、この鼻の穴は口の位置から遠いですからコーヒーの香りと味を同時には楽しめません。身体はなかなか思うように発達しませんね」
関連作品
手の新しい口
頭頂部の穴
新しい臓器
天辺の新しい脚
目次(超短編小説)