石を粉砕している | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 農園の片隅で男がハンマーを振り下ろしていた。ハンマーの先端が石に当たり、石が砕けた。

 「何をしているのですか?」と農園の横の畦道を通り掛かった女が立ち止まって尋ねた。

 「見ての通りですよ。石を粉砕しているのです」と男は手を休めて答えた。

 「なぜ石を粉砕しなければならないのですか?」と女はさらに尋ねた。

 「石はその形状を永遠に保っているわけではありません。年月が経てば自然と砕けて形状が変わります。そうして形状が変わった石もまた年月が経てば砕けて形状が変わります。しかし、自然の成り行きに任せていれば私の寿命が尽きるまでに石は一度も砕けないかもしれません。私は一つの形状しか見届けられないかもしれないのです。そう思うと悔しいので私はこのハンマーで石を粉砕しているのです。たくさんの形状を見てみたいと望んでいるのですよ」と男は答えた。


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