動かしてよ | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 「これを動かしてよ」という言葉が聞こえたので私は目が醒めた。幼い子供が発した声のようだった。

 誰かが私の爪先を掴んだ。そして、足の指を何度も折れ曲げさせた。「駄目ね。動かないわよ。故障しているみたいね」と大人の女の声が言った。

 「本当にそこがスイッチなの?」と子供が訊いた。

 「そうよ。ここに『起動スイッチ』と書いてあるわ」と女が答えた。

 「本当に壊れているの?」と子供が不服そうな調子で訊いた。

 「こうして外見だけを見ていると何も問題はないように見えるわね。でも、スイッチを入れても反応がないのだから壊れているのよ」と女は断言した。

 「きっと壊れていないよ。動かしてよ」と子供はまた要求した。

 足の指が何度も折れ曲げられていた。「これは壊れていないように見えるけど、壊れているのよ」と女の声が言った。


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