怪獣のような石像 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 暇な時間が出来たので美術館に行ってみた。抽象的な形状の石像ばかりが幾つも展示されていたので私は一つずつの作品の前で歩みを止め、じっくりと時間を掛けながら鑑賞していった。

 攻撃的な印象を受ける作品ばかりで私は館内を歩きながら徐々に心が荒んでいくようだと感じていた。しかし、まるで怪獣のようだという感想が脳裏に浮かぶと突如としてすべての石像が怪獣を表していると見えるようになり、私は謎解きに成功したという手応えを得て胸中のもやもやが一気に晴れ渡るような気がした。そして、怪獣の特徴や強さなどを頭の中で設定しながら作品を鑑賞していくと愉快な気分になってきた。

 ふと、一人の男の姿が目に入った。彼も私と同じ来場者のようだった。彼は厳しい表情で眉間を潜めてながら石像を凝視していた。どうやら謎が解けていないようだった。先程までの自分もこのような顔をしていたのだろうと私は思った。


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