抽象的な石像 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 暇な時間が出来たので美術館に行ってみた。抽象的な形状の石像ばかりが幾つも展示されていたので私は一つずつの作品の前で歩みを止め、じっくりと時間を掛けながら鑑賞していった。

 石像には照明が当てられていたが、館内は全体的に薄暗かった。天井から吊るされている幕で空間が複雑に分岐と湾曲をしながら仕切られているのだが、そうして作られた通路を歩きながら私は自分が同じ場所を堂々巡りしているようだと感じていた。幾度となく似たような形状の作品を目にしているのだった。

 それで、私は美術館の構造に注意を傾けながら歩いたのだが、それでも出口にはなかなか辿り着けなかった。ずっと同じような形状の展示物ばかりと遭遇していた。ひょっとしたら似て非なる作品なのかもしれないのだが、私は見分けが着いていなかった。

 試しに他人を尾行してみたが、それでも美術館から抜け出せなかった。それで、私は一つずつの作品をしっかりと確認していかなければならないと考えた。見覚えがない形状さえ見つかれば同じ場所を堂々巡りを続けているわけではないと判断できるはずだった。新しい形状の発見が脱出の手掛かりになるはずだと考えていた。


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