惑星から遠く離れると宇宙船の丸窓から見える景色は途端に変化が乏しくなった。目的地に到着するまでに要する時間の長さを考えて私は気が遠くなるように感じた。まだ旅は始まったばかりだったが、早くも暇を持て余していた。
そこで、私は椅子に腰を下ろし、船室内に流れている無限の音楽に耳を傾けた。そこにはこの宇宙で発生し得る楽曲がすべて含まれているはずだった。私はその絶えず変化し続ける音楽に意識を集中させた。その長大な調べは夢の中にまで聞こえてきた。
無限の音楽を傾聴している内に宇宙船は目的地に到着した。中途で席を立たなければならなくなったので心残りだったが、いつまでも終了しない楽曲だったので仕方がなかった。
私は久々に椅子から腰を上げて片手に荷物を持ちながら船室のドアを開けた。宇宙船の内部構造に関する記憶が頭の中に残っていたので道には迷わなかった。しっかりとした足取りで通路を歩きながら自然と鼻唄が出てきていた。長大な時間が経過したはずだったが、あまり実感はなかった。
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