よく見える眼 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 眼が古くなって視界が白濁してきたので休日に肉体屋まで足を運んだ。すると、ちょうど発売が開始されたばかりの新型眼球が店頭に置かれていた。性能に関する説明を店員の口から聞かされている内に私はすっかり魅了され、値段は高めだったが、思い切って購入した。

 手術は無事に成功し、動作にも支障は出なかった。最初こそ軽い目眩を覚えたが、すぐに焦点の会わせ方にも慣れて視界が安定した。目に見える景色が鮮明になったので私は嬉しくなった。

 肉体屋からの帰路、私は街を歩きながら周囲の様々な箇所に注目した。遠くの店の看板に書かれている文字もくっきりと読み取れたし、路上を行き交う人々の動作も事細かに認識できた。情報量が急増した影響で周りの世界が巨大化したように見えるので圧倒されていたが、それでも私は鮮明な視界を覗き込み続けていた。

 ふと、私は足元からの視線を感じ取った。立ち止まって見下ろすと地面を這う蟻達と目が合った。複眼がこちらに向けられていた。そして、彼等の周りには人間に踏まれたらしい死骸が幾つも転がっていた。道路を歩く度にこのような痛ましい光景を見せ付けられるのだろうかと想像し、私は途方に暮れた。

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