勤務中、私はふと自分自身の口から単調な呟きが漏れ出しているという事に気付く。
「いけいけいけいけいけいけいけいけいけいけいけいけいけいけいけいけいけ」
同じ言葉が延々と繰り返されている。完全に意味不明な言語というわけではないが、意図は不明である。まるで自分の声ではないように聞こえ、それどころか人間の声でさえないような気がする。声というよりも音という表現が適当かもしれない。一切の感情が込められておらず、一切の感情を呼び起こさない。何も連想させずに殺伐とした風情のまま屹立している。私は口を閉じ、周囲を見回す。誰もいない。その事実を確認した後にようやく軽い戸惑いを覚えたのだった。
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