六年前の夏、近くの山中の遊歩道を散策していた私の目に小さなワラビが目に留まりました。彼はおんぼろの木製のベンチの下でひっそりと一人咲いていました。身長は10センチほどしかありません。ワラビは通常3,40センチまで成長しますが彼は成長しませんでした。恐らく環境が合わないのでしょう。翌年も同じ場所でひっそりと咲いている彼に私は「うちに来るか?」と尋ねました。彼は「うん。」と頷きました。

 私は彼を連れ帰り家庭菜園の一角、華北の地に植えました。そろそろ年齢的に野菜作りがつらくなって家庭菜園を辞めようと思っていたからです。その年彼は六本になりました。そのうち二本は40センチほどに成長しました。翌年彼は華北の地の三分の二を制圧し覇権を確立しました。本数は40本余りになりました。そしてその翌年四区画ある家庭菜園の一角、華北の地を完全に平定した彼は高さが1メートルを超えるようになりました。本数は百本を超えました。彼は自らを魏王、曹操と名乗りました。

㊟華北の地というのは私の妄想です。中国とは関係ありません。