修法ケ原(しょうがはら) 大師堂 

【1】南海龍王

 孫悟空は波梨采女に会う為に観音様、秀二、小龍と共に筋斗雲で北印度にある牛頭天王の居城に向かいました。牛頭天王はまだ勤務中で帰っていませんでしたが、波梨采女が一行を迎えてくれました。波梨采女は何度か来たことのある孫悟空だけでなく、観音様達の来訪に驚きました。観音様や孫悟空の話を聞きながら、波梨采女は兄の黒龍の事を思い浮かべました。南海龍王や后の前では如何にも温厚な人格者のように装いながら、裏では部下達に威張り散らし、些細な事で激怒し厳しく処罰する黒龍。その陰険なやり方を見るにつけ波梨采女は何度彼を叩きのめしてやろうと思ったかしれません。南海龍王家の秘剣の伝授も形だけ学んだ黒龍に対し、波梨采女は伝承者たる技倆を身に付けていました。もし闘えば波梨采女は苦も無く黒龍を打倒したでしょう。しかしそれは後継者である彼に大恥をかかせることになります。いずれ彼も南海龍王ともなれば少しは自覚し、行動を自重するかもしれないと思い我慢して来たのです。そして真に後継者たるにふさわしい器量を小龍が持っていることを波梨采女は承知していました。波梨采女は決心し、観音様達と南海龍宮に同行することにしました。南海龍宮に着いた一行は波梨采女の案内で南海龍王と面会しました。皆を紹介した後、波梨采女は「父上、重要な話が有りますのでお人払いを願います。」と言いました。「波梨采女、私もですか?」と尋ねる后である母に波梨采女は頷きました。小龍を見て薄々事情を察したのか后は黙って他の王族達を促し退室していきました。后や王族、部下達が退出した後、波梨采女は小龍を横に「父上、この小龍はあなたの息子であり、私の弟。そして斉天大聖孫悟空様の義弟です。」と言いました。「な、なんと。もしや数十年前、后が小百合から奪い取って、東洋の何処かの湖に捨てさせたというあの卵から生まれた子なのか?」と南海龍王は尋ねました。波梨采女は黙って頷きました。じっと小龍を見ていた南海龍王は「済まなかった。見つけてやれなくて済まなかった、小龍。」と目に涙を浮かべ頭を下げました。后が小百合から卵を強奪し部下に東洋の名もなき湖に捨てさせたという事実を知った南海龍王は部下達に何度も東洋の方々の湖を調査に向かわせましたが、ついに見つけることが出来ず断念したのです。「父上、気になさらないで下さい。私はそれなりに幸せに暮らして来たと思っていますから。」と小龍は答えました。波梨采女は小龍発見の経緯から今日までの小龍の事績を語って聞かせました。その上で今日ここに訪問した理由を述べました。

【2】黒龍の怒り

 「では、この小龍に宝珠を渡せというのか?」と南海龍王。「小龍、そしてその友であるここにいる秀二には、我々よりももっと大きな使命があるのです。その使命を果たすために宝珠を小龍にお与え下さい。」と波梨采女。「しかし、宝珠は後継者が持つ決まり、小龍を後継者にすることは出来ぬ。」と南海龍王は苦悶の色を浮かべながら答えました。すでに后の子で長男である黒龍を後継者にしている以上それを変えることは出来る相談では有りませんでした。「父上私は後継者の地位を望んでいるわけでは有りません。いえ、後継者になるつもりは有りません。」と小龍。その時観音様が初めて口を開きました。「南海龍王殿、この小龍はそなたの子息の中でも飛抜けた能力と使命を持った存在なのです。そして本来宝珠は象徴として持つのではなく、その能力にある者が持ち、用いるべきものです。王位は他の者に継がせても構いませんが宝珠は小龍にお与え下さい。波梨采女殿も斉天大聖殿もこの点に関して異論は有りますまい。」と観音様は言いました。頷く波梨采女と孫悟空を見やりながら南海龍王は「分かり申した。小龍に宝珠を渡しましょう。」と言いました。

 王族達を呼び集め南海龍王が小龍に宝珠を与えることを伝えると皆はざわめきました。王位継承は黒龍に変更はないと南海龍王が伝えると徐々にその騒ぎは収まるかに見えました。しかし一人黒龍は「承服できません。氏素性の知れぬ女子の産んだ子に宝珠を与えるなぞ、納得出来かねます。どうしてもと言うなら、小龍、この黒龍と勝負をしろ。」と言いました。「黒龍、止めなさい。龍王の言う通りにしなさい。」と后が止めましたが「いいえ、如何に父上、母上のお話でも受け入れることは出来ません。」と黒龍は頑なに拒みました。例え黒龍が王位を継いでも宝珠無き継承者と陰で侮る者も出るでしょう。それは自尊心の強い黒龍にとっては耐え難い屈辱でした。

3】黒龍VS小龍

 「受けて立ちましょう、兄上。」と小龍は答えました。「お前に兄上なぞと呼ばれたくはない!」と黒龍。小龍は黒龍の言葉を気にするでもなく「父上、木刀はお有ありでしょうか?お有りなら拝借したいのですが。」と南海龍王に尋ねました。南海龍王は部下に木刀を持ってくるように命じました。黒龍は「臆したか!小龍。真剣で立ち会え!」と嘲るように言いました。「別に臆したわけでは有りません。ただ兄上と命のやり取りをするつもりがないだけです。望みとあらば兄上は真剣でも構いません。」と小龍は答えました。「おのれ、愚弄しおって!許せん!望み通り真剣で相手をしてやる。謝るなら今の内だぞ。」と黒龍は叫びました。「どうぞ、ご自由に。」と言って、小龍は部下の持って来た二本の木刀を受け取りました。黒龍は真剣を抜き「どこの田舎で剣法を学んだか知らんが、南海龍王家の秘剣北斗七星剣で血祭りにあげてくれる。腕の一本ぐらいは覚悟しておくんだな!」と叫び切りかかって来ました。しかしその攻撃はあっさりと躱されました。黒龍は幾度も攻撃をしていきますが、小龍は紙一重で躱していきます。「小龍、うぬの剣法は逃げるだけか!そんなにこの黒龍の北斗七星剣が恐ろしいか!」黒龍は吠えました。フッと笑いを浮かべた小龍。黒龍の剣法は小龍から見れば児戯に等しく剣法と呼べる代物では有りませんでした。小龍は木刀を構えました。「あ、あれは南斗鳳凰剣の構え!」と南海龍王は言い、波梨采女に目をやりました。頷く波梨采女。渾身の力を込めて切りつける黒龍。だがその刃は小龍の木刀によって撥ね退けられ弾き飛ばされました。「勝負あった!」と孫悟空。「まだだ!まだ決着はついてはいない。」と黒龍は弾き飛ばされた剣を拾いに行きました。にやりと笑った孫悟空は「小龍、真剣を出せ。黒龍もそれを望んでいるようだ。」と言いました。「分かりました。悟空義兄さん。」と言うと小龍は双竜剣を抜き放ちました。「さあ、兄上剣をお拾い下さい。本気で行かせて頂きますので、腕の二三本も覚悟して頂きましょう。」と小龍は不敵な笑みを浮かべて笑いました。剣を拾おうとした黒龍は顔面蒼白になりました。相手が木刀なればこそ強気でいただけですから、小龍が真剣を持って闘い、本気で切りかかってくればまさしく両腕を切り落とされてしまうでしょう。その時后が小龍の前に転(まろ)び出て「小龍殿、どうか黒龍を許してやって下さい。この子はあなたの技倆が分からなかったのです。」と頭を下げて頼みました。南海龍王も「黒龍、小龍に無礼を謝りなさい!」と言いました。黒龍は屈辱に顔を真っ赤にし、ものも言わず部屋を飛び出して行きました。

【4】八大神龍

 「仕方の無い奴め。」とぼやいている南海龍王に、観音様は「では南海龍王殿、宝珠を小龍にお渡しください。」と言いました。南海龍王は宝珠を取り出し小龍に渡しました。「小龍、小猿を呼び出し神龍に変えなさい。」と観音様。小龍は首筋の毛を抜き八匹の小猿を呼び出し「南海龍王家に伝わりし宝珠よ。その力を現し小猿達を神龍に変えさせ給え。」と宝珠に祈りました。小龍の祈りに宝珠は閃光を放ち八つに分かれると小猿達の口に飛び込みました。感嘆を発する人々の前で、小猿達は見る見る神龍に変わって行きました。そして小龍が戻れと叫ぶと小龍の首筋に毛となって戻って行きました。観音様は「小龍、今のあなたの神龍は秀二の神将と同じくそんなに強くは有りません。でもあなたが鍛えればどんどん強くなっていくでしょう。」と言いました。「良し、それじゃあ小龍と秀二は俺が小部村まで送って行こう。南海龍王殿、お世話を掛けましたな。」と孫悟空は言い、筋斗雲に二人を乗せて療養所へと向かいました。観音様は補陀落山に、波梨采女は牛頭天王の居城へと帰って行きました。部屋から飛び出した黒龍は南海龍宮を出奔し行方不明となりました。止む無く南海龍王は次男の黄龍を跡継ぎにしました。黄龍は穏やかで優しい性格だったので誰からも異論は出ませんでした。しばらくして北海龍王の宝珠が盗まれたと言う噂が波梨采女の耳に届きましたが、北海龍王が否定したため噂は立ち消えになりました。ただその真偽は不明です。

【5】天の鳥船

 年が明け大同三年正月、秀二や小龍は空海から頼まれた場所に護摩壇(ごまだん)を築き護摩木の用意をしました。そしていつものように神将や神龍を交え稽古をしていましたが、何やら奇妙な音が西の空から聞こえてきました。二人が摩尼山に登り西の空を見ると大きな空飛ぶ物体がこちらに向かって来ていました。「あれは、天(あま)の鳥船(とりふね)!遥か昔に失われたはずなのに!」と秀二は叫びました。秀二と小龍は大急ぎで療養所に戻り、秀策一家と療養中の者を裏山の洞窟に避難させました。小龍は八大神龍を呼び出し洞窟の入口の守りに着き、秀二は十二神将を呼び出し療養所の側で警戒に当たりました。天の鳥船はゆっくりと湖の辺に降りて来ました。秀二が如意棒を取り出し身構えた時、天の鳥船の扉が開き空海が出て来ました。「やあ、秀二さん。お久しぶりです。」と言う空海に秀二は少しズッコケましたが気を取り直し「空海さん、お久しぶりです。でも、どうして天の鳥船に乗っているのですか?」と尋ねました。「ああ、これが天の鳥船なんですか?実は落ちてたのを拾ったんですよ。」と空海は答えました。「???とにかく療養所で話を伺いましょう。」と秀二は言って神将の一人に警戒を解除するように小龍に伝えさせました。皆が療養所に戻り、秀策特製のドクダミ茶を飲みながら空海の話を聞くことにしました。また小龍と空海が敬称を付けずに呼び合っていることに倣(なら)い秀二も同じようにすることにしました。

【6】有明海の落とし物

 ここからは空海の話です。

 一月の半ば過ぎ、経典類の整理が一段落した空海は身代わりを残し、気分転換に有明海の散策に出かけました。海岸沿いを歩きながら「さてそろそろ小部村に行かねばならないが、どうやって行こうか?」と空海が考えていると急に天気が崩れて雨が降り出し、雷も鳴りだしました。いわゆる春の嵐です。「春雷か、参ったな。」と言いながら空海は近くの漁師小屋に避難をしました。漁師小屋から外を見ていると何故か雷が幾度も幾度も海に落ちていくのが見えました。そして一際(ひときわ)大きな稲光が「ばりばり!」とすさまじい音と共に落下したと同時に海がキラキラと輝きだしました。やがて雨や雷は治まり辺りに静寂が戻りました。漁師小屋から出た空海は大自在天召鈎秘法(だいじざいてんしょうこうひほう)を使いそのキラキラしたものを引き寄せました。そのものは空海の召鈎に応えるかのように海岸に飛んできて停まりました。空海がそのものの回りを調べて扉らしきものの前に立つと扉が自動的に開きました。空海が中に入り調べてみると上下の取っ手と前後左右の操縦桿で簡単に操縦できることが分かりました。そして空海は、そのまま天の鳥船を操縦し、小部村の療養所に飛んで来ました。

【7】ムーの末裔

 「ところで秀二、あれがどうして天の鳥船だと分かったのですか?」話し終えた空海は尋ねました。「私が倭小碓(やまとおうす)と呼ばれていた頃、私は叔母の倭姫(やまとひめ)の所によく遊びに行っていました。」と秀二は言いました。戸惑う空海に「秀二の前世の記憶だよ。」と小龍。「父との縁の薄かった、私倭小碓を憐れんで可愛がってくれていた叔母の倭姫がある時我々の祖先についての話をしてくれました。」ここからは倭姫によるお話です。

 昔、日の本の南東遥かにムー大陸と呼ばれた大陸が有りました。そしてそこには、代々天照(あまてらす)女王が治める王国が栄えていました。ある時三十二代天照女王は最近頻発している地震について天才の呼び声の高い建御雷(たけみかずち)博士に調査を命じました。数か月かけて調査を行った建御雷博士の報告は驚くべきものでした。それはこのムー大陸が十年後に海底に没するという内容でした。しかし多くの科学者達はそのようなことはあり得ないと反対し、またその頃地震も落ち着いてきたため、天照女王や王族達も建御雷博士の報告は間違いと考え、建御雷博士の報告は葬り去られました。しかし王族の中でただ一人建御雷博士を信じた者がいました。天照女王の第三王子邇邇芸(ににぎ)の御子でした。邇邇芸の御子は建御雷博士を援助し天の鳥船を建造させ、ムー大陸が海底に没した場合の避難先を探させました。そして自らもムー大陸の高原地帯、高天原(たかまがはら)に移り密かに船を建造しました。天の鳥船に乗り各地を調べていた建御雷博士はムー大陸の北西に移住に適した大八洲(おおやしま)があることを発見し邇邇芸の御子に報告しました。更にその地を詳しく調べるため、建御雷博士は天の鳥船に乗って調査に向かいましたが、そのまま消息を絶ちました。雷を動力としていた天の鳥船でしたが、動力が尽きてどこかに不時着したのかもしれません。そして建御雷博士が予言した年、大地震と共にムー大陸は海底に没しました。高天原に押し寄せる波の中、邇邇芸の御子とその一族は船に乗り込み大海原へと雄々しく乗り出して行きました。数か月後、一行を乗せた船は黒潮の流れに乗り日向(ひゅうが)の浜に辿り着きました。そして邇邇芸の御子達は高千穂に移り居を構えたのです。

 「なるほど、動力が尽きて有明海に不時着し海底で眠っていた天の鳥船が雷のせいで再び動力を取り戻し、浮上したという訳ですか?」と空海。「今となっては推測の域を出ませんが空海の話から考えると、そう考えるのが妥当なように思います。」と秀二は答えました。

【8】お釈迦様の依頼

 祇園精舎の奥の院の一室、お釈迦様と観音様が話をしています。「あの三人が力を付けて小部村に集まりましたね。もうすぐ像法の時代は終わります。いよいよこの燃灯古仏(ねんとうこぶつ)から託されたものを彼等の力で納めなければならない時が来ました。」とお釈迦様は言いました。「これは何でしょうか?」とお釈迦様が差し出したものを見ながら観音様は尋ねました。「これは遥かな未来の人々の護りであり、道標でもあります。普通の者は扱えませんが、今のあの三人なら大丈夫でしょう。」とお釈迦様は言って観音様にやり方を教えました。空海が療養所に訪れた翌日、三人が鍋蓋山で般若心経の読経をしていますと、雲に乗って観音様がやって来ました。秀二は観音様に空海を紹介しそれぞれ挨拶を交わしました。観音様は「今日はあなた方三人にお釈迦様の依頼をやって頂くためにやって来ました。」と言いました。三人は驚きましたが「いかようにも仰せつけください。」と言う秀二の言葉に小龍も空海も頷きました。「ではまず小部天王神社に参りましょう。」と観音様は仰って、みんなは小部天王神社に移動しました。

【9】聖石

 小部天王神社に着くと観音様は三つの聖石を取り出し、三人に選ぶように言いました。秀二は青の聖石を選び、小龍は黄色の聖石を選び、空海は緑の聖石を選びました。そして観音様は大地に聖石を納めるすべを教えました。秀二は雲に乗り大角木山へ向かいました。大角木山に着いた秀二は青の聖石を取り出し地面に置き十二神将を呼び出し共に祈りを捧げました。すると聖石は地面に溶け込むように見えなくなりました。同じく高原山に向かった小龍も黄色の聖石を八大神龍と共に地中に納めました。空海は観音様と共に摩尼山に行きました。緑の聖石を地面に置いた後観音様は「本来はあなたと天将で聖石を納めるのですが、まだ天将がいませんから私が代わりをします。」と言って空海と共に緑の聖石を地中に納めました。聖石を納め終わった三人は小部天王神社に戻りました。観音様は最後の聖石、黄金の聖石を取り出しそれを地中に納めるように三人に言いました。境内に置かれた黄金の聖石に三人が祈りを込めると聖石は地中に消えて行きました。観音様は「これで遥かな未来の人々の護りと道標が出来ました。三人ともご苦労様でした。」と言って南海の補陀落山に帰って行きました。

【10】秀二、小龍天に昇る

 二月に入り月が半月に近づく頃、空海は空を見上げ「そろそろ始めなければなりません。お二人とも宜しいですか。」と秀二と小龍に尋ねました。頷く二人に空海は「では明日から始めます。」と言いました。翌日前もって秀二と小龍が用意していた護摩壇の前に集まった三人は霊水で周囲を浄めました。そして秀策や秀和が見守る中、空海は修法を始めました。護摩木を燃やしつつ一心不乱に祈る空海。そしてそれを身動(みじろ)ぎもせず静かに見つめる秀二と小龍。修法は昼夜分かたず続けられました。事前に随時休むように空海から言われていた秀策と秀和は合間に食事や睡眠を取りながら見守り続けました。そして七日が過ぎ月が満月となって天頂に掛かる時、空海の鋭い声があたりに響き渡りました。ばったりと倒れ伏す三人。空海に駆け寄る秀策。秀二と小龍に駆け寄る秀和。空海は弱々しい息ながらかろうじて意識を保っていました。しかし秀和の口からは「お父さん、伯父上と小龍さんは息をしていません。」と言う悲痛な声が発せられました。「空海様、これは一体?」と秀策は空海を抱きかかえながら尋ねました。空海は弱々しく天の一角を指さしました。そこには二人の少年が中空に浮かんでいました。「あれは秀二兄さん!!!」そう、そこには幼い頃、秀策が憧れた少年の日の秀二の姿が有りました。そしてもう一人の少年には小龍の面影がはっきりと浮かんでいました。「秀二殿と小龍殿は凡骨脱胎し、秀二殿は金光童子と成られ、小龍殿は金龍童子と成られました。二人はこれより天に昇ります。」と空海はそう言うと意識を失いました。中天に浮かぶ二人は秀策達に手を振りながら天に昇って消えて行きました。数日後秀策の手厚い介護により体力を回復した空海は天の鳥船に乗って九州に帰り、他人に悪用されたりしないよう、天の鳥船を再び海に沈めました。

 空海が渡唐の前と後の二度訪れたということで摩尼山は再度山(ふたたびさん)と呼ばれるようになり、祈願を行った場所は修法ケ原(しょうがはら)と呼ばれるようになりました。

 孫悟空外伝 小龍伝 天の巻 完

 

 この物語を書きだしたのは三年前です。それをFC2ブログに投稿しましたが、パソコンを習いだしたばかりでブログを書くのも初めてでしたから、とても読みづらい物が出来ました。そこでもう一度FC2ブログを書き直しました。その段階で原作と投稿内容が少し乖離していきました。思うところが有ってそれをこのアメバブログに乗せましたが、その段階で話がまた乖離し原作からそのまま話を進めるのが困難となりました。と言う次第でこの続きを投稿するのは、内容を考え直さなければならない為しばらく先になりますがご容赦願います。