2022年01月20日 | 源義経黄金伝説(2022年版)

YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようと

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源義経黄金伝説■第25回 西行は、多賀城に居る吉次と源義経救出について話しあう。平泉に向かう奥大道を歩く 静かの一行と出会う。その後静かは黒田の悪党に拉致される。

 

源義経黄金伝説■第25回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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平泉で、義経が感激している時期、西行は少し離れた、多賀城たがじょう

(現・宮城県多賀城市)に入っている。

 

奈良時代から西国王朝の陸奥国国府、

鎮守府がおかれている。つまり、多賀城は西国王朝が東北地方を支配がせん

がためにもうけた城塞都市である。

 

いわば古来からの西国征服軍と先住アイヌ民族戦争での最前線指揮所である。

ここから先は、慮外の地、今までに源氏の血が多く流されしみついていた。

今も奥州藤原氏勢力との国境にあり、世情騒然たる有様である。鎌倉と平泉と

の間に戦端が開かれるかいなか、民衆は聞き耳をたてている。

 

西行は、多賀城にある金売り吉次の屋敷を訪ねる。

 

屋敷はまるで、御殿のようであり、「大王の遠つ朝廷みかど」多賀城政庁

より立派な建物と評判であり、金売り吉次の商売の繁盛を物語っている。

ここ多賀城だけではなく、日本中に吉次の屋敷はあるのだ。

 

二人は先刻から、座敷に対峙していた。

 

吉次は赤ら顔でイノシシのような太い体を、ゆらゆらと動かしている。

体重は常人の倍はあるだろうか。

西行は、思いが顔にでていまいかと、くるしんでいる。

話はうまく行ってはいない。

 

「吉次殿、どうしても秀衡殿の荷駄の護衛を受けてくれぬか」

 

吉次はふっとためいきをいき、上目つかいで、ためないながら言った。

 

「西行様、、、、いくら西行様のお願いとて、吉次は、今はやはり商人でござ

います。利のないところ商人は動きませぬ。今、藤原秀衡様は鎌倉殿と戦いの

火ぶたを切られようとするところ。さような危ないところに、吉次の荷駄隊を

出すことはできませぬ。やはり、昔のような事ができませぬ」

 

「わたしとお主との旧い縁でもか」

「牛若様、いや義経様が、鎌倉殿とあのような、今は、、、やはり、時期が

悪うございます」

「吉次殿、お主も偉くおなりだな」

 西行は吉次に嫌みを言った。

一体誰のお陰で、、この身上を吉次がきづけたのかという思いが西行には

ある。

 

「西行様、もうあの頃とは時代が違ごうてございます。今は世の中は、鎌倉

殿、頼朝様に傾きつつまると、吉次は考えます」

 

「そういうことなら、仕方あるまい」

 西行、吉次の屋敷振り返りもせず出て行く。先を急がねば、

いつの間にか、姿を消していた重蔵の姿が現れている。

 

この2人をとりまくように、人影がまわりを取り巻き歩いている。鬼一方眼が

使わせた結縁衆である。

 

西行は重蔵に語りかけるのでもなく、、一人ごちた。

 

「不思議な縁だよ。いろいろな方々との縁でわたしは生きておる。平清盛殿、

文覚もんがく殿、みな、北面ほくめんの武士の同僚であった。清盛殿は平家の支配を確立し、文覚は源頼朝殿の旗揚げを画策し、この私は義経殿をお助けしたのじゃ。がしかし、この治承・文治の源平の争いの中を、この私が生き残ってこれたのも、奥州藤原秀衡ひでひら殿のお陰だ」

 

西行は昔を思い起こしている。

 

 

西行は、多賀城にある吉事屋敷をでて平泉に向かう奥大道を歩いていた。前を歩

く小者と乳母をつれた女性が静であるとに気付き、呼び止める。

 

「静殿、静殿ではござらぬか」

「ああ、西行様」

静は西行に気づいている。静も平泉を目指していると言う。

 

「お子様のこと、誠にお気の毒でござる。が、御身が助かっただけでもよいと

はせぬか」西行はなぐさめようとした。

「我が子かわいさのため、あの憎き頼朝殿の前で舞い踊りましたものを。

ああ、義経殿の和子を殺されました。ああ、くやしや」

 

「その事を確かめるのも、みどもの仕事であった。後白河法皇さまから、言わ

れておったのじゃで、静殿、この後はどうされるおつもりじゃ」

静は、少し考えて言った。

「行く当てとてございません。母、磯禅尼とも別れたこの身でございます」

 

「禅師殿とのう。さようか、そうなれば白河の宿の小山家こやまけまで

行ってくだされぬか。我が一族の家でござる」

西行の一族、藤原家はこの板東に同族が多い。その一の家にとどまれと西行

はいうのだ。

 

「白河の関。まさか、義経様がそこまで…」

「はっきりしたことは言えぬ。が、義経殿に会える機会がないとも言えぬ」

「私が、西行様と同道してはならぬとお考えですか」

 

「ならぬ。儂の、この度の平泉への目的は、あくまでも東大寺の勧進だ。

秀衡殿から沙金を勧進いただくことだ。女連れの道中など、目立ち過ぎ

る。鎌倉探題の義経殿に対知る詮議も厳しかろう。それに、いくら私が七

十才を過ぎた身なれば、何をいわれるかわかり申さぬ」

 

しづかは、ある疑いをたづねた。

 

「ひょっとして、西行様。わが母、磯禅尼とはなにか拘わりあいが、若き

時に」

静はつねから、疑問に思っていたのである。

 

「これ、静殿、年寄りをからかう物ではない」

が、静は自分の疑問がまだ広がっていくのを感じた。

 

 西行は、自分と乙前があったあの神泉苑で、その思い出の場所で、この

若い二人が、義経と静が、出会うとは思っても見なかった。縁の不思議さ

を感じている、やがて西行は意を決して言葉を発した。

 

「これは義経殿よりの便りじゃ」

「えっ、どうして、これが西行のお手に」

「儂がこのみちのくへ旅立つ前のことじゃ。実は、儂の伊勢にある草庵に

、義経殿の使いの方がこられて、これを鎌倉のいる静殿に渡すよう頼まれ

たのじゃ。あの鎌倉では危のうて渡せなんだ」

 

「西行さま、義経さまとは」

「たぶん、平泉であえるだろう」

 

「平泉。どうか、私もお連れください」

「それはならぬ。頼朝殿の探索厳しい、そのおりには無用だ。この地

にある小山氏屋敷に止まっておられよ。きっと連絡いたそう。これが私

の紹介の書状です。私の佐藤一族がこの地におる」

 

「きっとでございますよ」静は祈念した。

 

 西行と分かれ旅する静たちに気付く数人の騎馬武者がいる。

 

遠く伊賀国黒田庄に住まいしていた悪党、興福寺悪僧、鳥海、太郎左、次郎

左を中心とする寺侍、道々の輩の姿の者どもが板東をすぎる途中に、

14人に膨れあがっている。その一行である。

 

 黒田庄は東大寺の荘園であり、東大寺の情報中継基地の一つであった。

大江広元からの指示を得て、西行のあとに追いついてきていた。

そこでめざとく静をも見染めている。

 

「おい、あれは静ではないか」鳥海がつぶやいた。

「おお、知っておる。見たことがあるぞ」

 

「あれは京一番の白拍子と謳われたのう。が、確か義経とともに吉野へ

逃げて、どうやら頼朝が離したらしいのう」

 鳥海が付け加えた。

 

「ふふう、ちょうどよい。ここでいただこうぞ」

「おう、そうじゃ。女子にもとんとご無沙汰じゃのう」

「よき話。幸先がよいのう。静は西行へのおさえにもなろう」

 

 なかの三人はゆっくりと、旅装の静たちを追い越し、一定の距離

で止まっている。静は何か胸騒ぎを感じた。

 

 騎上の三人がこちらを見ているのが、痛いほどわかる。

それも好色な目付きで、なめ回すように見ている。

首領らしい三人とも、普通の武士ではない。

加えて、心の荒れた風情が見えるのだ。

 

この戦乱の世でもその人間の壊れ具合が静かには手に取るようにわかる、

「そこなる女性、我々の相手を

してくれぬか」

静たちは無視して通り過ぎようとした。

「ほほう、耳が遠いと見えるわ」

「いや、違うじゃろう」

「義経の声でないとのう、聞こえぬと見えるわ」

すわつ、鎌倉探題の追って、静は思った。

 

 静は走り出していた。

が、三人は動物のように追いかけて捕まえてい

る。小物と乳母はその場で切り捨てられいる。

 

「ふう、どうじゃ。我が獲物ぞ」

「兄者、それはひどいぞ」

「次郎左、よいではないか。いずれ、西行が帰って来るまで、こやつは

生かしておかねばならぬからのう」

「それも道理じゃ。ふふ、時間はのう、静、たっぷりとあるのじゃ」

 ひげもじゃの僧衣の男がにやついている。静の顔をのぞき込んでいる。

 

 街道の近くにある廃屋の外にひゅーっと木枯らしが吹いていた。

 可哀想な獣たち。

 

 静は、太郎佐たちを見てそう思った。

 

 きっと、この戦乱が悪いに違いない。静は舌を咬んで死のうかと思った。

が、万が一でも、義経様に会えるかもしれない。この汚れた体となっても、

義経様はあの子供のような義経様は許してくださるに違いない。

 

 静はそう思い、いやそう念じていた。この獣たちと生きて行くが上の信

仰となっていた。 この獣たちは、静の体を弄ぶとき以外は、非常に優し

かった。

 

静という商品の価値を下げてはいけないという思いと、以外と京

の白拍子という、京に対する憧れが、静を丁寧に扱わせているのかもしれ

なかった。

 

「おい、鳥海。あの笛、止めさせぬか。俺はあの音を聞くとカンが立つ」

太郎左が言う。 静が廃屋で、源氏ゆかりの義経からもらった形見の薄墨

の笛を吹いているのである。

「よいではないか、兄者。笛ぐらい吹かせてやれ」

「次郎左、お前、静に惚れたか。よく庇うではないか」

静は、我が体が死しても義経に会わなければならなかった。こうなった今はなおさら、

 

続く 201308改訂

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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