ロボサムライ駆ける■第12回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」

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「何をおっしゃいます。おそれおおうございます」
 こいつは、ホモかと主水は思った。いやなこった。
「手を貸せともうしておるのじゃ、はようせい」
 レイモンはいらだっていた。

 レイモンの方に、主水の右手が勝手に動いていく。
「うわっ、どうしたことだ。手が…」
レイモンの手に主水の右手がくっついてはなれない。
「何をなさいます、レイモン様」

 恐るべき力が主水の腕に加わってくる。電流が二人の間に流れている。
「さすがロボザムライ、記憶が電磁処理だけに読み取りやすいわ。ふふん」主水の持つ電脳情報が手を通じて流れていく。

「お、おやめください」
 あがらう主水。が、手を離すことはできない。

 主水の体にレイモンの体から発せられた電流が走っていた。
微弱ではあるが、主水の体のメインコンピューターが出力低下を起こしている。自らの命令のまま、動かないのだ。

 ロボザムライの頭脳記憶の中に、レイモンの何かが侵入してきた。ロボの記憶データは膨大過ぎる。レイモンのそれは必要な情報を、主水の記憶の森から奪い取るようであった。
「くくっ、徳川公もくせ者よな」
 一瞬、空白が主水の頭を襲う。レイモンの前に倒れている主水に、

「気を失いよったか、この機械人形。やくたいもない。わしの護衛としては、どのようなものかのう、夜叉丸」
「レイモン様、こやつはやはり力仕事に」
 夜叉丸が尋ねた。
「そうじゃな、へんに情報を与えると我々の仕事の邪魔をするやもしれん」

「ところで、御前、また、お薬の時間でござる」
 夜叉丸がいった。夜叉丸はレイモンの薬飲のタイムテーブルを持っているのだ。後ろには薬品が詰まった収納庫が控えている。前の主水より、薬の方が大事だった。

「うーむ、この時間はどの薬じゃったかの」
 金庫の棚の薬をかき回すレイモンであった。ふと、夜叉丸の方を振り返り、
「よいか、夜叉丸。やつがれの薬、忘れず西日本に持って行くのだぞ。薬は生命の源じゃからのう」
 レイモンの最大の関心事は、薬である。

「承知しております。して、御前。この主水なるロボット侍の処置は」

「主に任せる。とりあえず帰してやれ。気を失ったことなど、忘れておるであろう。そう電脳の処理はしてある」
「ふっふっふっ」
 軽く含み笑いをするレイモンであった。

    ◆

 何とか旗本公国マンションにたどり着いた主水は、確かに、落合レイモンの家での事を忘れていた。

「旦那、どうでしたい。お上の御用は」
屋敷にはすでに、鉄が上がりこんでいた。

「うむ、ご壮健であられた。しかし、鉄、おまえも良く宅にくるのう。まったく」
「よろしいじゃござんせんか。姐さんもよろこんでいることですし」
「どなたが喜んでいるんですか、鉄さん、あなた……」
「へい、何でござんしょ」
「感情のラインが、いかれているのじゃないのかしら。一度ドクターにチェックしてもらいなさいませ」

「そりゃ、姐さん。ないですよ。私がいるおかげで、早乙女家にいつも笑顔がたえないってものでしょ。ねえ旦那」
「旦那じゃねえや。用がすんだら早く帰れ」
「そう、邪険にしちゃ、いけあせんぜ。そいでお上の御用向は」

「しばらく、東京を留守にいたす」
「どこかにご出張ですか」
「西日本に下向いたす」
「西日本ですって、そりゃ大変だ。旦那、まさかロボット奴隷になりにいくんじゃ」
「ばかもの、なぜわざわざ私が奴隷にならねばならんのだ」

「いや、どれいでもすきにしてとか」
「鉄。ばかもの。貴様が奴隷になれい」
「でも、あなた、京都では、足毛布博士にお会いになるのでございましょう」マリアが話しの話題を変えた。

「その足毛布博士よな……」
 いいながらマンションから東京の風景をみる主水であった。どうしょうかなと思い悩んでいるのである。生みの親である足毛布博士の顔が夜空に浮かんだ。
「ちちうえ……」
思わず叫んでいた。

なぜちちうえという言葉が口から飛びだしたのか。主水は自分でも不思議に思った。

続く090901改訂
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