遙かなる絆-ランナー第13回■
地球防衛機構(EDO)シリーズ
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」

■ランナー第13回

数日が経過していた。

地球は。死の天使(フイダイ)の暴動のおかげて、各地で火が燃えあかっている。

 ロードランナー、ヘルムといえば、マコトを背負って高速度に近い自らの足で、
月へと驀進していた。

がエネルギーか不足し始めている。

地球防衛機構(EDO)テロリストハンター、 サムナーは、ムーン=ウェイの
外壁にぷらさがって数日たっている。

作業ポッドからはい出したのだ。

 サムナーの前を、宇宙艇が月へ向かって進んでいくのがみえる。

 サムナーの体からは、救難信号が発されている。

 船は気づき、サムナーの方へ近づいてくる。

 マニュビレーターにより、サムナーの体は艇内へ運びこまれる。

 この艇は、地球連邦軍のものだ。

サムナーの様子を見に来た男は地球連邦軍技術将校の制服をつけている。

「何だ、貴様、サイボーグか。ムーン=ウェイにぶらさがっているとは、きさまは何者だ。
作業ロボットではあるまい」

 「EDO(地球防衛機構)の者だ」

 サムナーは割れた声で言った。

「EDOの者が外壁で、何をしていた」

「それに答える必要はあるまい。軍とEDOとは別組織だからな」

「何! それが助けてもらった者に対する言葉か」

「助けてくれとお願いしたわけではない」

「このくされサイボーグめ」

 将校は、サイボーグ公社ナンバーを調べるために、乱暴にサムナーの体にさわろうとした。

 「ぐわっ」

 サムナーの体は再び、白熱していた。

衝撃で将校の体は吹きとばされる。

 「どうした」

船の操縦席からあわただしく男が走ってくる。

 サムナーの体はまだ、動けない。

男は、倒れている将校を見て、レイガンを引き抜こうとする。

サムナーの体から超電磁波が流れ出す。

その体は瞬時に黒コゲとなった。

サムナーはほくそえみ、独りごちた。

「ふふ、どうやら、この艇は俺のものになったようだな。それにこの艇は月のメースチングクレーターヘ向かかっているらしい。先に行っているぞ、ヘルム、マコト」

二人の名前を呼んだ。


 Z89は、軌道内の清掃を目的として作られたロボットだった。

軌道内に異物があった場合、シャトルトレインを危険にさらす事になる。

Z89は異物除去に必要な装置を持っていた。

 Z89のセンサーは異物の存在を先程からとらえていた。

これ程大きい異物はZ89にとっても初めてであった。

おまけにそいつらは生体反応かあるのだ。

このような場合、通常Z89は中継ステーションに連絡を取るのだが、

先刻からステーションとは通信がとれなくなっていた。

Z89にとって初めての試練であった。自分で判新しなければならない。

過去のデータからして破壊、もしくは除去すべきであろう。

こうZ89は類推した。

 マコトとヘルムは巨大な機械が目の前に現われたのに驚いていた。

マコトはこの機械に交信しようと試みた。が、機械はマコトのテレパシーには

まったく反応しない。おまけに敵意が感じられるのだ。危険だ。

 「逃げろ、ヘルム、あいつは軌道内部から、僕達を除去するつもりだ」

 Z89は、その四肢をのばし、全軌道をふさぐ大きさに拡大して、二人の行く手を塞いだ。
 ヘルムの足は、瞬間停止ができなかった。

加えてマコトのテレポートも一瞬、遅れた。

 ヘルムはマコトを背負ったまま、軌道内でZ89に激突する。

ヘルムとZ89の体は共に、激しいショックを受け、反動で吹き飛ぶ。

マコドは軌道に倒れた時、Z89の体内エネルギー構造を読み取っていた。

 まだ、ショックで倒れたままの傍らのヘルムに言った。

 「喜んでと、ヘルム。このロボットのエネルギーは、君の体に適応するよ」

軌道最後のユニットだった。

これを走り抜ければ、あとはメースチングクレーターの出口なのだ。

 その時、重々しい声が上から響いてきた。

 「ヘルム君、聞いているかね、私はEDO長官オットーだ。

ごくろうだった。君は驚嘆すべき男だ。我々は偵察衛星をつかい、君たちめ行動をずっとモニターしていた。
さて、今、君がいるこの最後のユtニットの外壁の表面に核融合剤が付着されている。

我々がスイッチをおせば、ユニットもろとも君たちは噴き飛ぶ。」

EDO長官オットーはしばらく黙り、やがて口を開く。

「しかし、ものは相談だ。ヘルム君に提案しよう。おとなしくマコトを我々に渡したまえ、そうすれば君は生きてこのムーン=ウェイから出れる。

恐らく、君がこのムーンウェイを走破したということは
長く記録に残り、世界は君にすばらしい特典を与えることだろう」

 「話にならないな。

EDOか何か知らないが、いいか、俺はロードランナーだ。走ることそれ自体が俺の名誉なのだ。

そして俺はこのロードランナーになった瞬間から、あらゆる権力という代物と戦ってきたのだ。

いまさら妥協などできない。たとえ、爆死しようと最後まで走り続ける。それが俺のーロードランナーとしての誇りなのだ」

(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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