封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第10回●
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所
ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」



アー・ヘブンが立ち去った後、しばらくして,北の詩人は意識をとり戻す。

大球と小球を結ぶコードは揺れていた。

北の詩人は振動するコードの中で,はいつくばりながら、事の始まりを思いかこしていた。

北の詩人は、古代に生きていた男の実体化であった。

詩人は自分白身のデータを情報ユニットとして残していたのだ。

北の詩人は、詩人であると共に、優秀な技術者でもあった。

彼の画期的な発明が「イメージコーダー」てあった。

 情報ユニットをイメージコーダーのある部位にセットすれば、それが実体化されるのだ。

ただしわずかな時間だったが。

 詩人は、その発明のパテント代で億万長者となり、死後、巨大な地下ピラミッドに埋葬された。

 もちろん納宮室には、イメージコーダーと、彼の大好きだった情報ユニット

のコレクションが収納された。

 数百年後、このピラミッド近くに建築された、軍のビッグコンピュータとリンクして、

イメージコーダーが機械共生体の中心になるとは想像だにしなかった。

 彼の地下ピラミッドの上には、樫の樹林が果てしなく広がっていた。

その中の樫の木一本に、北の詩人が若い時、ナイフで刻みつけたフレーズが残っていた。

『私の夢は・・・・:』

 たどり着いたシャフトの内部を見て、アー・ヘブンは驚く。

ここは古代の遺跡なのだろうか。


 触手をのはしてみる。情報ユニット群にふれる。情報ユニットはやはり、
アー・ヘブンと同じ植物繊維からできている。

 さらに、情報これらの一つ一つは繊維のシートの集合体だった。

 各シートの表面には、この星の旧生物が使用していた記号が、多量に刻み込まれている。

 記号をシート上に刻み込むことを「印刷」といったらしい。

 その記号を、この星の生物は古代より「文字」と呼んでいた。

この一枚一枚のシートから或る情報ユニットは″本″と呼ぱれていたのだ。

この本の集合体が、データベースであり、この星の住民は、視覚を通じて脳に入力していたのだ。


この情報ユニット″本″が数十万、いや数百万ユニット、シャフトの中心部内壁に埋め込まれている。


しかし、アー・ヘブンが鉄表を破って潜入し、密閉されたシャフト内に外気が侵入したことにより、シート=紙が変質し崩れ始めた。

粒子となり飛び散り出す。

 何千年の夢だろう。

数えきれない程の、多数のこの星の住民の知恵が、虚空ヘチリとなって消え去っていく。

 この星の文明遺産の消失であった。

 膨大な本というペーパー情報集合体が消え去り、その後に古い機械が姿を現わす。

機械共生体であった。


(続く)
●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第10回●(1987年作品) 
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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