ロボサムライ駆ける■第18回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所
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■第3章(6)
 そこにはものものしい雰囲気があった。検問所である。

 検問ゲートには装甲車、戦車など重装備の機材がおかれている。誰も通さないぞという意気込みがあたりには、感じられた。
 加えて、クラルテという八足型ロボットに乗った、武士姿の西日本の境界警備員がいた。

 遠くからクラルテを見て、主水は尋ねる。
「なぜ、あの歩行ロボットをクラルテというのだ」

「昔の話だけど、あのロボットのプロトタイプには人間用の席がなかったんだって」
 小さい声で知恵はささやく。
「ほう、それで」
「いやー、これは鞍がいるでと製作担当者がいったらしいんだ」
「それから、鞍がいるで、↓鞍いるで、↓くらるてと変化した訳か。なるほど」
 という、たわいもないシャレを口にする主水に、

「まて、あやしい。異形のロボット。この関所を通すことは相成らぬ」
 関ヶ原の関所で、武士から主水と知恵は止められる。

 ふとこらから、主水は書類をだした。
「この証明書を見ていただきたい。拙者、早乙女主水。徳川公国直参旗本ロボット。天下御免のロボザムライでござる」

「東日本ではロボザムライとして認めていようとも、この西日本エリアではロボットなど奴隷よ。この天下の公道、ましてやこの関所を通行することは相成らぬ」
 役人は強気である。
 判でおしたような役人の答えだった。いつの時代でも役人は変わらぬのである。

「無体な。拙者はこの証明書にもあるとおり、東日本市民連合に所属する東京エリア霊能師落合レイモン殿の供者として、この西日本エリアにまかりこした」
「レイモン殿は先刻お通りになった。護衛ロボットだと、よけいにこの関所、とおすわけにはいかぬ。貴様武器を所持しておろう」
 役人の表情が余計に険しくなる。

「あたりまえでござろう。刀は侍ロボの命でござる」
「それじゃ。それがよけいに困り申す。通すわけにはいかん。西日本エリアでロボットに武器を持たすなど気違いざたじゃ」

 もめている関所の役人と主水のところへ、具合よく落合レイモンの籠が戻って来た。
 先行していたレイモンは、もめる音声を聞き、後戻りしてきたのだ。籠から顔を出す。「どうしたのじゃ、主水」

「これはレイモン閣下。今、この役人より、護衛ロボットは入国できないと申されて、困っております」
 レイモンが助け舟をだす。

「お役人殿、それではどうであろう、このロボザムライの武器は、私の使い番、夜叉丸が預かるということでお許しくださらぬか」

「ははあ、レイモン閣下がそうおっしゃいますならば」
 
その役人は納得しかけたが、騒ぎを聞き付けた上役がやってきた。この男がもっと煩い。

「落合レイモン閣下とて、規定外のことは、できもうさん。この護衛ロボットの剣、我が役所にてあずからさせていただきます」

「サムライの命の刀ですぞ」
「主水、しかたあるまい。ここはおれてくれい」
「しかし……落合様」
「まあ……まあ……」

 主水は刀を腰にせず、西日本に入ることになった。
「何か、腰のものがなくなりますと変でございますなあ」
 
刀のないサムライロボットは言った。関所を過ぎてしばらくして、原野の国境線にある、ロボットのさらし首の群れにきづく。

「これは一体……」
「こちら側では普通の光景さ-」
 知恵が悲しそうに言う。

「むっー」
 考え混む主水であった。

 一体このような事が許されてよいものであろうか。
恐らくこれは足毛布博士もからんでいるのに違いない。
ロボットはこの西日本では人間ではなく奴隷なのだ。
(続く)
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