ロボサムライ駆ける■第15回■

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」

「くそっ、皆出て来い」
 まわりに急に黒い影が現れる。
 西日本都市連合の使い忍び十名。
「ただでは帰してくれぬようだな」


 フリスビー野郎が言う。
「さよう、お代を払ってほしい。じゃない。貴様とそのこわっぱ、証拠が残らぬよう分解し、粉々にしてくれるわ」
「それはどうかな。粉々になるのはどちらかなあ」
 その男はにっこりとほほ笑んでいる。


 一瞬後、侍と子供ロボットのまわりをとりかこむロボ忍。
 続いてロボ忍の手から何かが次々と投げられた。手裏剣である。
 が、侍ロボットは瞬時刀を抜き、自在に振り回す。手裏剣はすべて足元に落ちていた。刀を動かす速度は目にも止まらなかった。


「くっ、我らが頭脳手裏剣を落とすとはただ者ではないのお、お主」
 頭脳手裏剣は、小型の電子頭脳を持ち、軌道を計算するいわば小型ロボットである。
「今度はこの刀じゃ…」
 黒い影が一つ、その男に切りかかる。
「まて…」
 ロボ忍者のリーダーが止めようとしたが。一瞬遅く、
「ぐわっ」
 そのロボ忍の体が三つにおろされている。機械油や生命液が噴き出ている。その動きはロボ忍群たちにも見えないのだ。
「見たか、聞いたか、さんまい降ろしの剣」

「やったね。ピース」


「いかん、皆引け。覚えていろよ。さ、お主、名前を聞いておこう」


「名乗るほどではない。が、覚えておくため答えてやろう。
拙者、早乙女主水。徳川公国直参旗本ロボット」
「貴様が主水か。いずれ会おうぞ」
 ロボ忍は、名前を聞いて少し驚いていた。
 彼らは一塊になり、姿を消す。

「主水のおじさん、助けてくれてありがとね」 
子供ロボが擦り寄る。

「まあ、よい。危ないことには近づかぬ方がよい。特にこの御時世ではな」
「おじさん、お願いがあるんだ。俺をおじさんの使い番にしてくんな」
 急に顔を変え擦り寄る子供。

「といっても、お前の体は誰かに所属しているだろう」
「いや、所属していないーよ」
 子供は軽々しく喋る。

「みてごらん。その証拠さね」
 子供は自分の右肩を見せた。右肩にあるはずの登録番号が削り取られている。
「登録番号がないのか。お前、はぐれロボットか」
「ああそうさ、土木建設専用事業団『いろは組』に捕まって、この有り様さ。今この東海道復旧工事に使われているのさ。どうせ、俺が消えたって、わかりゃしないさ」
「そういうことなら、人助け。いやロボット助けかもしれんのお。ついてくるがよい。小僧」
 かねてから、いろは組のやり方には不満を持っていた主水である。

「俺(わい)は、小僧ではない。細工師の知恵ってんだい」
「よしよし、わかった、わかった、知恵。こちらへ」
 レイモンの一行から少し離れて歩いているいわゆる遊軍の主水だった。

主水はゆっくりと木陰から騒がしい一群を、のぞき見た。
「ははん、おじさん、あの行列と一緒にいたくなかったね」
 図星である。

「いや、その、ちょっと、不都合があってな」
「不都合って何なのさ」するどく尋ねる知恵。 どぎまぎする主水
「まあ、よいではないか」
「ふーん、まあよいことにしておこう。ねー」
 知恵にかるくいなされている。

続く090901-20140423改訂
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」