【発狂】
「かゆい」は「痛い」より残酷だ。32歳、公園で自分を掻きむしる。
かゆい。
全身が、猛烈にかゆい。
ホームレスになってから、まともに風呂に入っていない。
最後にシャワーを浴びたのがいつだったか、もう思い出せない。
OSの履歴が消去されたみたいに、清潔だった頃の記憶が遠い。
春の生ぬるい風が吹くたびに、皮膚の裏側を無数の虫が這いずり回っているような感覚。
首筋、背中、脇の下。
一箇所を掻けば、別の場所が「次は俺だ」と主張し始める。
終わりのない無限ループ
公園の水道水で頭を洗ったくらいじゃ、何も解決しなかった。
むしろ水分が乾くたびに、皮膚が突っ張って、さらにかゆみの解像度が上がる。
汚い。
俺は今、世界で一番汚い物体なんじゃないか。
昼間、平和そうに笑っていた親子連れ。
あいつらが俺を避けて通ったのは、見た目が不審者だからじゃない。
俺から漂う「不潔」という名の悪臭と、この「かゆみの波動」を本能で察知したからだ。
爪を立てて、皮膚が赤くなるまで掻きむしる。
「痛い」方が、まだマシだ。
痛みは刺激として理解できる。でも「かゆみ」は、精神を内側から腐らせていく。
腹が減って、髪が抜けて、その上、体中がかゆくて眠れない。
32歳
俺のレゾンデートル(存在理由)は、今や「ただの痒い肉の塊」に成り下がった。
これで石鹸を買うか?
いや、そんなの買ったところで、体を洗う場所なんてどこにもない。
銭湯? 10倍以上の金が足りない。
笑ってくれ。
エリートを気取ってPythonを叩いてた指が、今は自分の垢を必死に掻き落とそうと震えてる。
情けなくて、惨めで、かゆくて、涙すら出てこない。
もう、皮膚を全部脱ぎ捨てたい。
今夜も、このかゆみと格闘しながら、ベンチの上でのたうち回る。
明日、俺の意識が残っていたら、また更新する。
腹減ったー米ください↓🙇!
