山田優の★行政書士試験憲法の分析★ -2ページ目

山田優の★行政書士試験憲法の分析★

行政書士試験の憲法の過去問について分析するブログです。
分析の手がかりは芦部信喜著『憲法』(岩波書店)のみです。
「芦部憲法」があれば行政書士試験の憲法の問題は解ける!
ということを示したいと思っています。

こんにちは、行政書士の山田優です。

 下記の説明が少し難しいと感じる人はコチラの
「山田優の☆ちゃんテキ合格☆行政書士試験」
の補足説明を読んでみてください。



 権力分立に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1 アメリカでは、国会議員と執行府の長の双方が国民によって直接選挙されるが、権力分立の趣旨を徹底するために、大統領による議会の解散と議会による大統領の不信任のメカニズムが組み込まれている。

 この選択肢の「国会議員と執行府の長の双方が国民によって直接選挙される」制度とは「大統領制」である。大統領制は、立法権(議会)と行政権(政府)との関係の型の一種であり、議会と政府とを完全に分離し、政府の長たる大統領を民選とするアメリカ型である(芦部15-3-1)。

 ところが、アメリカの大統領制においては、大統領による議会の解散と議会による大統領の不信任のメカニズムは組み込まれていない。行政府による立法府の解散と立法府による行政府の不信任のメカニズムは議院内閣制の特徴の1つである。そこで、この知識さえあれば、本選択肢が誤りであると判断できる。

 このように正誤を判断すること自体は困難ではないが、少々詳細に検討してみると、実は、本選択肢は含蓄が深い。というのも、「権力分立の趣旨を徹底するために」と記述してあるからである。

 どういうことかというと、「大統領による議会の解散と議会による大統領の不信任のメカニズム」を組み込むことは「権力分立の趣旨」を徹底することにならないのか、「権力分立の趣旨」を徹底するためにはどのようにしたらよいのかという疑問が生ずるのである。

 あるいは、「大統領による議会の解散と議会による大統領の不信任のメカニズム」を組み込まないことが「権力分立の趣旨」を徹底することになるのかという疑問だといってもよい。

 この疑問は考えてみる価値はあるが、容易に簡単な結論が出るかどうかは分からないことかもしれない。ただ、これについて考えるためには、権力分立制とはどういう意味かということに注意して、再度芦部憲法を熟読してみる必要があるだろう。



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