2023年10月30日(月)~10月31日(火)に、社会人博士の軽部さんとB4の林、渡辺、竹下の4名で、北九州市の小倉へ出張をしてきました。小倉では、西日本総合展示場新館にて日本設備管理学会 2023年春季研究発表大会に参加し、研究発表を行ってきました。

 

写真1:日本設備管理学会発表会場前の集合写真(左から順に、林、竹下、渡辺)

 

・日本設備管理学会 2023年 秋季研究発表大会

日本設備管理学会は、1989年に設立され、ものづくりを実践している企業の経営的成果を獲得するために、企業、大学・研究機関、行政の人々が協業して設備管理に関する知識・技術・技能の発信・交流・革新を目指す学会です。今回の大会では、多くの学生と企業の方々が参加し、研究発表を行いました。また、企業のPR展示コーナーも同日に開催され、様々な企業の設備機器が展示されていました。

 

今回、林は「3次元モーションの可視化による分解作業の分析に関する一考察」と題して研究発表を行いました。この研究では、循環型経済において重要となるリユース・リサイクルをテーマとし、リユース・リサイクルを行う際に必要となる使用済み製品の分解作業に対して、光学式モーションキャプチャーを用いて、作業動作データを取得することで、分解作業における重要な身体部位やコツの定量化を目的とする研究です。取得されたデータは、3次元グラフ上にて分解作業の動作軌跡を可視化したうえで、習熟前後の動作比較を行いました。

この分析より、分解作業の習熟による動作の違いが、3次元グラフ上で可視化され、分解作業の習熟において重要となりうる身体部位がわかりました。

 

写真2:林の発表場面

 

竹下は、「温室効果ガスの回収による炭素税還付を考慮したリバースサプライチェーンネットワークのモデル化」と題して研究発表を行いました。この研究では、地球温暖化対策として、現在世界各国で導入が進められている炭素税を、温室効果ガスの回収効果があるリユース・リサイクルにおいて、その回収量に応じて還付することによって、どのようにリユース・リサイクルが促進されるのかを、リサイクル率やコストなどの感度分析にもとづいて行いました。この分析より、リサイクルによる炭素税還付がおこることで、総コストが削減され、リサイクル率を上昇させる場合があることがわかりました。

 

写真3:竹下の発表場面

 

渡辺は、「環境負荷と経済性を考慮したライフサイクルオプション選択に関する一考察」と題して研究発表を行いました。この研究では、持続可能な社会の実現に向けて、カーボンニュートラルの達成と循環型経済への移行をテーマとし、部品の新規調達時に温室効果ガス排出量が削減できることに着目し、回収・分解・組立てコスト間のトレードオフ関係を考慮した上で、数理計画法を用いた、使用済み製品をアップグレード・再製造を含むライフサイクルオプション選択法を提案しました。この提案法より、使用済み製品のアップグレード・再製造を行うことで、どれぐらいの数値まで温室効果ガスを削減できるのかを示すことができました。

 

写真4:渡辺の発表場面

 

発表後には、動作の習熟におけるプロセスや、炭素税の見える化についての考慮、提案法を別の製品を対象とした際に、他の人でも同様に分析できるようにした方がよいなど、それぞれにおいて複数の方から質問やアドバイスをいただくことができ、一人では気づくことができなかった考察や手法の改良について改めて考える機会をいただくことができました。今後の研究に生かせる部分が大いにあると感じ、これかも研究活動を頑張っていきたいと感じました。

 

発表した3名ともに、初めての学会発表ではあり、事前に発表の練習を重ねてきましたが、発表前は緊張していました。しかし、いざ各自の発表が始まると、自身の研究成果をスムーズに行い、発表時間内に収めることができました。また、外部の人に自分の研究アピールしたり、他の人の研究からヒントや新たな学びを得られる点で、学会に参加することの魅力を感じることができました。

 

研究発表終了後には、小倉内のホテルにて懇親会が開催され、豪華な料理と地元のお酒を嗜みながら、参加した学生、教職員や企業の方々と交流することができ、とても貴重な体験をすることができました。

翌日には、九州旅客鉄道(株)小倉総合車両センターへの工場見学に参加しました。100年以上の歴史を持つ工場であり、鉄道車両の検査や修繕などの作業現場を実際に拝見させていただきました。また、敷地内において展示されているC12形蒸気機関車や485形電車を見学することもでき、日常で頻繁に使用している電車や気動車の歴史とそれを扱う現場に触れる素晴らしい経験となりました。

 

写真5:発表後に寄った小倉城

 

文責:林

2023年3月4日〜7日に伊集院さん(当時D3)と髙橋(当時B4)が,本学の外国人著名研究者招へい事業で日本に滞在中のSurendra M. Gupta先生(米国ノースイースタン大学教授)と広島に出張しました。

 

 

○研究打ち合わせ

 

3月5日にサステナブルサプライチェーンについて,山田研をはじめ国内外の研究者で推進している科研費基盤研究(A)「炭素税と経済連携協定を考慮したグローカルサプライ・再製造チェーンの構築」の成果まとめと,新たに採択された科研費基盤研究(B)「再エネと再製造のAI数理協働による天候駆動型サプライチェーンGX支援システムの開発」の計画について,広島大学きてみんさいラボで研究打ち合わせを行いました。この打ち合わせは,長沢先生(広島大学助教),山田先生,木下先生(山田研博士修了生。現・近畿大学助教)も参加されました。

 

写真1:研究打ち合わせ後の様子

(左から順に,木下先生,山田先生,伊集院さん,Gupta先生,長沢先生,髙橋)

 

 

○広島大学セミナーでの発表

3月6日に広島大学東広島キャンパスで行われたセミナーでは,Gupta先生が“Sustainable Supply Chain Management”と題して講演なされました。そして,伊集院さんが“Design Issues of Reverse Supply Chain Network for Sustainability Using Multiple Criteria Decision Making”と題して発表を行いました。

 

続いて髙橋は“Evaluation of Electric Moped Scooters Sharing Services by Supplier Selection for Greenhouse Gas Emissions and Costs in Procurement Stage”と題して,英語で口頭発表を行いました。私の研究では,交通サービスにおける温室効果ガス削減の1つとして期待されている電動モペットのシェアリングサービスに着目し,サプライヤー選択による温室効果ガス排出量とコストの評価を行いました。

 

温室効果ガス排出量とコストの評価は,整数計画法を用いた電動モペットの調達段階のサプライヤー選択によって行いました。今回の実験例では,パリ協定で日本が宣言した,2013年度比で26%削減するという目標が,GHG削減量に関する費用対効果が最も高いとわかりました。

 

このセミナーでは,環境配送生産の第一人者である Gupta先生も交えて,電動モペットの調達段階でサプライヤー選択を行った意義や,得られた温室効果ガス削減量の結果に関して,活発な議論ができました。

 

今回のセミナーは,私にとって初めての対面かつ英語での発表でした。Gupta先生には,セミナーの前に自分の研究内容について聴いて頂くことができました。その際,自分が発表スライドや口頭での説明で伝えきれなかったことについて,質問をいただきました。このとき、自分の研究内容を伝える英語力がいかに足りていないかを痛感しましたが、同時に本番に向けて良い訓練にもなりました。また,最初に行われたGupta先生の講演を聞いて,世界トップ2%の研究者であるGupta先生が行ってきた循環型サプライチェーンに関する研究業績の大きさに驚くばかりでした。

写真2: 広島大学セミナーでの様子

(発表者:髙橋)

 

広島での打ち合わせやセミナーの間には,伊集院さんと髙橋がGupta先生を原爆ドーム,そして原爆資料館へと案内しました。特に原爆資料館で原爆の痕跡や犠牲者に関する説明を聞きながら俯くGupta先生の姿が印象的でした。

 

文責 髙橋

2023年6月8日に電気通信大学において、日本設備管理学会関東支部と本学環境調和型ライフサイクル研究ステーションの共催講演会「AI活用によるサステナブル交通 -Sustainable Transportation by AI Applications-」が開催され、香港大学経営システム工学科のYoung-Hong Kuo先生と本学情報学専攻 経営・社会情報学プログラムの長濱章仁先生による講演が行われ、27名の参加者が集まりました。

 

写真1. Kuo先生のご講演の様子

 

Kuo先生には、「Data-driven sustainable transportation」と題し、電気自動車充電インフラの配置計画問題、シェアサイクルステーションの需要によるクラスタリングや、ロジスティクスとサプライチェーンマネジメントのための強化学習の3つのテーマについてご講演いただきました。

 電気自動車や電動自転車といった利用時のCO2排出量が小さい移動手段の普及のためには、充電スタンドやサイクルステーションといったインフラ設備の整備が今後も必要不可欠です。特に私個人としても、日常的にレンタル自転車を利用している際、最寄りのステーションに利用可能な自転車がなく困ってしまうことがよくあるので、ステーションのクラスタリングのお話は非常に興味深かったです。

 

写真2. 長濱先生のご講演の様子

 

長濱先生は、「Detection of groups in heterogeneous vehicle traffic and investigation of generative models reproducing traffic structures -Toward sustainable development of hetero-social systems -」と題し、多様な車両による交通における集団の検出やそのモデル化のAI活用についてご講演くださいました。

私は3年次に長濱先生の「経営・社会情報学実験」という講義を履修し、1種類の車両による交通モデルを用いてシミュレーションを行いました。その際、スピードの差や車の台数といった案外に簡単な原因で渋滞が発生してしまい驚いたことを覚えています。それが現実の道路のように多種の車両で構成されていたらと考えると、長濱先生の研究をますます興味深く感じました。

 

写真3. 講演中の教室の様子

 

今回のワークショップは山田哲男先生(日本設備管理学会関東支部長、本学情報学専攻 経営・社会情報学プログラム長)が英語で司会進行を務められ、講演や質疑応答も全て英語で行われました。また、準備は長濱研と山田研の学生でサポートしました。大学院入試に向けたTOEIC対策などを通じて英語に対してはある程度自信を持っていましたが、ご講演の内容をその場で理解することが難しく、質問を考えることすらできませんでした。今後学会への参加の機会があるとしたら今の英語力では足りないと感じたため、英語学習へのモチベーションが再び高まりました。

 

写真4. 講演者と参加者の集合写真

 

文責:竹下