2030年時点での原発依存率について、0%・15%・20~25%の三択が示されていますが、ふと疑問に思うことがあります。
「なぜ、この三択なんだろう?」
行動経済学に、「妥協効果」という手法があります。
例えば、居酒屋でAコース5,000円・Bコース3,000円という二択の場合は、お客さんの選択は両方に分散する傾向にあります。
しかし、Sコース10,000円という高いコースを設定して三択にした場合、AとBが安く感じられ、一番安いコースを選んで失敗したくないという心理によって真ん中(つまりA)が選ばれやすくなるというものです。
非常に高価格なSを設定することで、本当は高価格であるAを無難な選択肢だと思わせることができるのです。
この手法は、使用前の品質判断が難しい製品やサービスにおいて、選択を利益率の最も高くなる選択肢に誘導させるために活用されています。
こうした視点で考えた場合、「三択の議論」は非常に誘導的で不自然です。
2010年時点での原発依存率は23%なので、20~25%というのは「非常に高価格」といえます。
また、仮に電力需要全体が大きくなれば、依存率が0%でない限り、原発の新設しなければならなくなります。
15%という数字の、本当の意味は何でしょうか?
三択にするなら、選択肢は具体的な依存率ではなく、
(1) すぐに全原発を停止する。
(2) 期限を定めて全原発を停止する。(2030年にこだわらない)
(3) 今後も原発にある程度依存する。
くらいが現実的ではないでしょうか。
ちなみに、「妥協効果」にはまらないためには、「相手からの限定された選択肢は一旦無視し、自分にとっての到達点及び妥協点を事前に設定することが必要」と指摘されています。