2020年までの成長目標などを示した「日本再生戦略」が本日閣議決定される見込みです。


これにあわせて、生活保護制度の見直し等に係る「生活支援戦略」も、秋を目途に策定される予定です。


某芸能人の道義的問題とすりかえ、制度や利用者の欠陥であるかの様な偏向報道が目立つ中、先行きは非常に危険です。


しかも、厚労相は「親族側に扶養が困難な理由を証明する義務を課す」と、扶養を生活保護利用の要件とする法改正を検討する考えまで示しています。


生活保護申請者にはDV・虐待経験者も多く、私が相談に乗った何人かの方も親族関係は断絶していました。


なぜ、扶養が生活保護制度上保護の要件とされていないのか?


この議論がされないまま法改正が進みそうで、強い不安を感じます。


そんなことを考えながら、今さらながら今年3月の「厚生労働省社会・援護局関係主管課長会議」の資料を読んでいたら、驚くべき内容がありました。


福祉事務所内に、警察官OB等の配置を積極的に検討してください」(保護課資料「重点事項」 P73)


何だ、これ!?


退職した警察官OB等を配置することにより、不正受給に対する「告訴等手続きの円滑化」「暴力団員と疑われる者の早期発見」等の効果が期待されるそうです。


警察官と福祉事務所職員(社会福祉主事)は専門分野が全く異なりますが、配置にあたって警察官に主事資格を取ってもらうのでしょうか?


数年前、大阪府・豊中市で、主事資格のない警察官OBの職員が被保護者に対し暴言を吐き、大阪弁護士会が人権救済の勧告を行った事件は記憶に新しいです。


不正受給はもちろん問題ですが、割合で見ると件数ベースで2%弱・金額ベースで0.4%弱程度です。


しかも、アルバイト料の申告漏れ等が大半で、暴力団絡みのものはごく一部です。


わざわざ配置しなくても、一部の深刻なケースは個別に警察に相談すれば良いと思います。


これでは、警察官の再就職支援事業です。


すでに各地で反対運動も行なわれているようです。


「まさか、新宿区で配置を検討していたりはしないよな?」


6月に開催された新宿区議会定例会で、中山区長は「生活保護法には改善すべき点もある」(具体的な箇所については明言せず)と発言していました。


それが気になったので、生活保護担当課に新宿区の対応について確認したところ、「採用していないし、予定もない」とのことでした。


適切な対応、安心しました。


あまり報道されませんが、日本の生活保護利用率は1.6%に過ぎず、現状でも先進諸国の中では異常に低い(つまり、必要と考えられる人に行き渡っていない)のです。


単純比較が適切でない部分もありますが、アメリカは13.1%、ドイツは9.7%、イギリスは9.3%、フランスは5.7%、スウェーデンは4.5%となっています。


この状況に加えて利用を抑制する様な制度改革がされれば、餓死・孤立死・自殺が増えるのではないでしょうか?


いわゆる「最低賃金」の「逆転現象」をあげ、「働かないのにもらいすぎだ」という意見をいう方もいるでしょう。


それは発想がです。


政府も認めているとおり、大企業の内部留保266兆円中、すぐに換金可能な資産は99兆円もあります。


そして、その7%弱の切り崩しで月1万円賃上げ・時給100円アップが可能といわれているのですから。