震災を契機に、寄付文化の醸成が高まりを見せています。


ボストンコンサルティンググループ(BCG)が2011年4月8日(金)~4月10日(日)にかけて約3,000名を対象に行った調査によると、「今後積極的に寄付を行う」32%、「ボランティアを行う」16%となっています。また、約8割は、日本や東北の商品を積極的に支援したいと回答しています。


また、電通総研が2011年4月11日(月)~4月12日(火)にかけて2,000名を対象に行った調査によると、「『他人や社会のために役立ちたい、正しいことをしたい』という気持ちが震災前より強まっている」52%、「『社会に貢献しよう』『もっとよい社会に変えていこう』という姿勢が見える企業を応援したい」65%となっています。


これまで日本は、寄付文化が醸成されにくいといわれていました。個人の寄付を比較しても、アメリカの88分の1に過ぎませんでした。しかし、前述のいずれの調査からもいえるのは、震災を契機にソーシャル・マインドが高まっているということです。


寄付文化の醸成といえば、震災の前にも印象的な出来事がありました。昨年末にいわゆる「タイガーマスク運動」が全国的な広がりを見せたのは記憶に新しいところですが、その中でいくつかの組織において「不要なものが届く」といったマッチングの不具合が報告されています。


これでは、せっかくの善意も無駄になってしまいます。また、寄付する気持ちがあっても、そのやり方がわからないというのは大変残念なことです。


「協働」を区政運営の1つの大きな柱にしている新宿区として、こういった点についてしっかりとサポートをしていくべきなのではないでしょうか。


こういった視点から、2点について取り上げました。


第1は、「タイガーマスク運動」についてです。区内の社会福祉施設や市民活動団体等の財源以外の支援ニーズをしっかり把握し、寄付とのマッチングを積極的にはかるべきではないでしょうか。


区長からは「寄付文化を根付かせるには、様々な価値観のある中で社会全体での意識喚起を図る仕組みづくりが必要。各機関と連携を図るとともに、区民活動支援サイトや地域ポータルサイトを活用し、社会福祉施設や市民活動団体等と区民や企業との情報共有等を促進していきたい」という答弁がありました。


第2は「コーズ・リレーティッド・マーケティング」についてです。「コーズ・リレーティッド・マーケティング」とは、ある製品の売上によって得た利益の一部を社会に貢献する事業を行っている組織に寄付する活動を通して売上の増加を目指すというマーケティング手法で、エイボンによる「ピンクリボンキャンペーン」、アメリカン・エキスプレスによる「自由の女神修復プロジェクト」、最近ではボルヴィックによる「1L for 10L」などが有名です。今後、新宿区が行うキャンペーンやイベント等において地元の商店会等と連携してこういった手法を取り入れ、寄付文化の醸成や商店の売上に貢献するべきではないでしょうか。


区長からは「新宿区商店会連合会とも意見交換を進めることにより、『コーズ・リレーティッド・マーケティング』という手法に関して、区としてどのように関わることが効果的なのか研究したい」という答弁がありました。


私は、日本は寄付文化が醸成されにくいのではなく、寄付に係るインフラが整備されていないだけであると考えています。現時点で、自治体が関与すべき課題や対応はまだまだたくさんあるのではないでしょうか。