{旅}

それからの娘は会話の端々で、夫のようなことを云い始め・・・

娘との相性は良い方なのに、何かが違うと思いつつ

そろそろ娘からの卒業か・・そんな気がしてました。


年末に、そのホテルでカウントダウンパーティーに誘われましたが、娘はアッサリ断りました。

総ての主導権は娘にありました、私は英語が話せないので、仕方ありません(笑)。


娘は、ビラでのキャンドルサービスディナーを頼みました。

100個のキャンドル・そして、プール一面の花びら・何故?

そうです、夫を父を偲ぶためです。


私達は旅行中、二人の方にだけ夫の事を伝えました。


一人は、その大晦日にルームサービス担当だった

クリスティーンさん、

カウントダウンパーティーの日に、ビラへ食事を運ぶことにさせてしまった事が

申し訳ないと、娘が気持を伝え、私は夫の写真を見せ、・・・でもその前に

テーブルの上に置いてたので気付いてくれてました。


ハンサムですねと云ってくれて、更に、そのホテル全9部屋のうち、

4部屋がビラでのキャンドルサービスを希望されたので気にしないで、とも。


縁があって、私たちの部屋の担当になった訳です。

笑顔が素敵なクリスティーン、

確か、初日も彼女の笑顔でホッとしたのを、覚えてました。


3人で意気投合し、不思議な時間を楽しみました。

娘より一歳年上のクリスティーンに、娘は、同じ何かを感じると云い、

私も何だか産んだ気がしてました(笑)。


もう一人は、その翌日の一日ツアーの案内人

ギリさんです。


まず彼は、私たちを見て不思議そうに???男の人は?と聞きました。


日本語で、娘が前日申し込んだのに、カップルだと聞いてたそうで

間違いだと伝えてからも、??どうしても腑に落ちない感じでした。


その日、私達は、

ギリさんの明るさと流暢な日本語に驚かされ、思いっきり楽しく過せました。


彼は、車に乗って直ぐに、

「私の名前はギリです、続けて云うと日本では良くない言葉になるので

続けて云わないで下さいね。」

「???ギリ・・ギリ・・・」と、娘と私は同時に呟いて、思わず爆笑してしまいました。


それからはギリさんペースで、話は尽きませんでした。

ギリさんは、日本語が十分上手いのに、知らない言葉が出てくると、

興味津々で勉強しなくてはと、ノートに書いてました。

その向学心には頭が下がり、あまりにも不勉強な自分が恥しくなりました。


そして、海の中に聳え立つ

『タナロット寺院』に行き、

海岸、断崖絶壁の上を歩きながら、海を下に眺めました。

その初めて見る波の凄さに身体が震え、

こんな海があるんだ・・・・夫は観たかったのでは・・・その時も

やはり、夫が連れて来てくれたとしか思えませんでした。


その後、夕陽と寺院を眺める為に、別の場所に移動して

そこで娘は、夕暮に海に聳え立つ寺院を見つめたまま動かなくなりました。


ギリさんは、予定の時間をとても気にされてましたので、

何度か娘を促がしたのですが、とても動けそうにないので・・・

ギリさんに、そっと夫のことを話しました。


そうでしたか・・・そう云って暫らく待ってくれました。

ギリさんも、笑顔が素敵で優しい方でした。

日本語が上手なせいか初めて逢った気がせず、私達は

親戚の御兄さんと居るような安心感がありました。


それから夕食を取るために近くのホテルに案内されて行きました。

そのテーブルの上に、一枚の葉が置いてあり、

その葉を見て、娘と私は驚き・納得しました。


その葉には銀色の文字で 《Rezerved Mr/Ms Yamauchi》と、書かれていたのです         

                        ・・・・・yamatsuma