日曜日。静かで穏やかで、秋の美をやっと見せてくれた。寝起きの気分も最高。というか、しばらく自分の位置が解らずじっとあたりを見回していた。深刻だった病状の哀しさや慌しさが周囲から消えて、心のリハビりをしているだけのようだ。

休日の病院はいい。此処にいると何か得したようなきがする。登院する先生や看護士さんやスタッフの人が少ない。通院の患者はもちろんいないし、入院の人たちも外泊なのか人数が少ないように思える。

広い空間を独占して森も酸素の一人占めだ。

ベットに寝転んで本を開いても、朝日が私専用の明かりのようでうれしい。


再入院のとき、司馬さんの本を2冊選んで持ち込んだ。紀行文や講演物があれ以来多く、司馬さんの本を何かの記念出版で、売らんかなが見えて書店にも行く気がしなかった。久しぶりの私に春秋さんは、小説2冊をくれた。連載は昭和30年代。忍者ものと時期的には近い。語り口の若々しさが、とても新鮮で500ページのほうは一晩で終わってしまった。小説を・・・司馬さんの・・・読みたい・・・高名な方があとがきで書かれていたが、私の、司馬さんが亡くなられる前の切なる願いであった。


その恋心ゆえか。分厚さを・・・いつもながらのことだが・・・感じさせない、目をそらせさせない、私の好きな司馬さんが、そこにいた。