0 はじめに
私は、78期司法修習生です。任官、任検も考えていましたが、結局弁護士になることにしました。任官、任検するのであれば、おとなしくしていた方がよいのかもしれませんが、特におとなしくしている必要もなくなったので、今の司法修習がどんな感じなのかお伝えしていきたいと思います。合格体験記等については、別に取り上げていただいてますのでそちらをご覧ください。
前回は、合格発表後に司法修習生になるための手続きなどについて言及しました。
今回は、私が合格発表後にやった勉強について振り返りたいと思います。
1 司法試験に合格しても勉強しなければならないのか?
多くの合格者が気にする点がこの点でしょう。
結論から言えば、別に勉強する必要はないと思います。
どうせ修習に入れば嫌でも勉強することになると思いますし、修習に入ってから周りの修習生と同じペースで勉強していれば二回試験に合格するレベルまでは容易に到達可能だと思います。
他方、任官を考えていたり、就職する事務所の留学などで司法修習の成績が要求される人の場合、修習生の中で抜きんでる必要があるわけですから、この時期から勉強しておくのが無難だと思います。
ただし修習でする勉強は、司法試験の勉強と比べれば単純ですし、勉強量でどうこうなるものでもないので、修習中に追いつき、追い越すことも十分可能だと思います(というか修習中でも多くの修習生はそんなに勉強していません。)
2 修習生に求められる勉強内容
修習で一番に要求されるのは、事実認定能力と手続に関する基本的知識です。細かいことをいえばそれ以外もありますが、大きく分ければこの2点が整っていれば、それだけで優秀な修習生ということになると思います。
前者の事実認定能力は、記録を検討し、何が争点なのかを的確に把握し、争点に対して判断するための要証事実(最終的に証明すべき事実)が何かを特定し、その事実が証拠から認定できるかを検討するというものです。
この基本は、裁判、検察、弁護どの起案をとっても異なることはないと思われます。
争点を的確に把握するためには、十分な法律知識があることが必要不可欠です。民事にしても刑事にしても、ここは実体法の知識が要求されるもので、司法試験科目としての民法や刑法、民事で言えば要件事実の勉強が重要になるわけです。
事実認定については、どのような証拠があるのか、意味がある証拠は何なのかを見定めたうえで、その証拠から設定した争点を判断するために必要な事実(主要事実)を認定できるか検討することになります。
抽象的な話をすれば、修習生に求められている能力は述べてきた通りです。
3 私がしたこと
このような前提をもとに私が何をしたかについて振り返りたいと思います。
まずは要件事実の勉強を始めました。当時ロースクールに通っていたので、ロースクールの授業で要件事実の勉強をしました。
具体的には、紛争類型別の要件事実や要件事実論30講といった教材で予習し、授業の中で主張整理の演習(起案)を行い、その解説を受けるというものです。
一応、司法試験に合格する前もロースクールの授業で民事訴訟実務の基礎(民実)という科目を履修してはいましたが、そこから一定期間が空いていたり、当時は他の勉強も忙しかったりして出来ていなかった部分を勉強する良い機会になったと思います。
次に事実認定の勉強もしました。
民事事実認定については、元裁判官が解説する授業を受けました。なかなか面白い授業ではありましたが、講義を受けただけでは実際に事実認定起案ができるようになるわけでもなく、難しいなと思いました。
刑事事実認定についても、元裁判官が解説する授業を受けました。こちらは、元裁判官が解説とはいっても、一応学生が模擬記録を検討し起案した上で解説を受けるというゼミ方式だったので、考え方を学べたと思います。
とはいえやはり事実認定は、記録を検討し、実際に起案する中でしか勉強できないことなのかなとも思いますので、1人で勉強するのは難しいと感じました。
要件事実の方は、極論すれば知識科目、暗記科目ですのでロースクールにいる間でも、結構勉強できたのかなと思います。
一応、現在の通説とされる修正された法律要件分類説について、要件事実論30講で勉強されるとよいのかなとは思いますが、そこまでやらなくても何とかなるのかなとは思ってます。
また民事執行・民事保全については、ロースクールで講義を受けましたが、それ以外の手続については特に勉強していませんでした。
4 アドバイス
そもそも修習前に勉強する必要はないのかなと思ってはいますが、やる気があって勉強したいという人は、最低限、紛争類型別の要件事実、事例で考える民事事実認定を読み込んでおくとよいのかなと思います。
5 おわりに
この連載が何部作になるのか、あるいはどこまで続くのかはよくわかりませんが、誰かの参考になれば幸いです。続編も楽しみにお待ちください。
次回は、寮生活について振り返りたいと思います。