寝ながら、通夜までの間にいろいろ思い出していた。

義父との思い出はあまりなかった。
旦那と一緒になって元気だったのは3年ぐらいだった。その間二回くらい魚釣りに連れて行ってもらったぐらいで、後は寝ている義父しか知らない。

義父が甘いものが好きだから遊びに行く時は差し入れを持って行った。私はビールやチューハイをごちそうになった。何時間か実家で義母の話し相手になって帰ると言う付き合い方だった。
2人で話すことは無い。私と義母が話すのを黙って聞いてるだけだった。


今回の旦那との事は何1つ話してない。私は旦那のした事は親も知るべきだと思っている。
親を傷つけたくなくてショックを与えたくなくて黙ってるのはおかしいと思う。子供の事は親が責任持つものだと思ってる。いくつになっても。
それを傷つけないよう守られてあの世にいくのは傷つけられた私からすれば甚だ納得できない。
でも亡くなった人に全て話しても、何も解決しないし、気持ちがスッキリするわけではない。

最後はキレイに終わらせたかったので、私は耐えた。黙っていた。
きっと亡くなってからでもわかるだろう。亡くなった後に何も出来なかった自分やそういう息子に育てた事を悔やめば良いと思った。

お通夜は18時からだったが14時にはみんなで集まり、準備したり、義父の顔を覗いたり、触ったり、話しかけたり、みんな思い思いに時間を過ごした。
葬儀屋さんが時々入ってきて確認事を打ち合わせたり、準備したりして出たり入ったりしてたのが気になったが、家族だけで良い時間を過ごせたなと思う。

離婚の話が出てからお互い背中を向け合っていた旦那と娘はその時間を取り戻すかのようにずっと側にいた。旦那が泣いてると娘が背中を触ったり、もともと旦那との方が気が合うみたいで娘はいつも側にいた。
義母は嬉しそうに「仲が良いねぇ」と目を細めたが、私はそんな娘を裏切った旦那に腹が立って仕方なかった。

お前はこのささやかな幸せに目を向けずに何を見ていたのかと、これ以上の幸せがそこにはあったのかと聞いてみたかった。

そう考えるたびに悔し涙が流れたので、その度に義父の棺を覗き込んで義父を思って泣くふりをした。