文章中の傍線のカタカナ漢字に、漢字ひらがなに直せ。


【A】易を読んで、お銀様が腹を立つ、それは立つ方のお銀様が無理です。孔夫子でさえも、五十初めて学ぶという易を、女王様風情で物にしようというのが大ベラボウのもとなんですが、ゴウマンと、ジュソと、増長で持ちきっているこの女には、その分別がつかないのです。事実、わかるわからないは別として、現在お銀様には歯が立たないのです。立たないのがあたりまえなのですが、それをそうと素直に受けることのできないことが、この女の持つ重大なる不幸でもあり、生存の根拠でもありましたのです。


(中里介山「大菩薩峠 京の夢おう坂の夢の巻」より)


【B】闇かと見ると、その行燈の消えた隙間から一面に白い水――みるみる漫々とひろがって、その岸には遠山の影をし、木立の向うに膳所ぜぜの城がかすかにソビえている。昼にここから見た打出の浜の光景が、畳と襖一面にぶち抜いて、さざなみや志賀の浦曲の水がお銀様のキョウソクの下まで、ひたひたと打寄せて来たのでありました。その湖のまんなかに、いま見た二つの物影が、浮きつ沈みつもがいている。


(中里介山「大菩薩峠 京の夢おう坂の夢の巻」より)


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