やがて、そのモノよりも、それを手に入れられる力そのものにフォーカスするようになった。力が欲しい、実力をつけたい、その為の人脈を離したくない。力を持つことが幸せと信じた
ところがどっこい
お金持ちどころか、ギリギリの生活が始まった。夢は広がり、力を得るという希望を捨てることはなかったけれど
どこかで思っていた。その場所って私に相応しい? 向いてるのかな? 無理してない? 私… どうして寂しいの? どうして辛いの?
考えてはいけない。幸せの場所は、遠いし険しいのだから。頑張らないと!
華やかな世界は眩しくて、宝石のような魅力があった。今は貧しくても、やがて私は山の頂に立つ。そこからの景色を眺めるのだ、と。それしかない!と思い込んでいたのだ
山を登る体力もないのに、荷物を背負って断崖を命綱なしでよじ登る。仲間がいたから。皆必死に登る。頂を目指して
不幸にも、いや、今思えば幸いにも私は足を踏み外し落ちてしまった。チラリと仲間が見る
助けて
言えない。言っても誰も来ない。皆必死だから。断崖にしがみついているのだから
助けてくれた人がいた
思いがけない人たち。身近にいたけど、私の視界には殆ど入らなかった人たち
優しく、穏やかに手当てをしてくれた
「あんな崖を登らなくても、こっちに道があるのよ」
「そんな道…だれでも登れる。遠回りだし」
まだ私は気付けなかった
体が癒えた頃、その道を歩いてみた。穏やかだった。悔しくて涙が出る。こんな筈じゃない、私は、私は…
ゆっくりしか進めない私は、足元に目がいくようになった。いや、道端やそのまわりの景色に
鳥が鳴いている
こんな花が咲いていたんだ
すれ違う人が、こんにちは、と笑顔で話しかけてくる
断崖を登っている時には分からなかったこと
頂までは遠い
だけど、その道は優しく楽しい
タンポポが咲いている
可愛いね! と道行く子供が言った
可愛いねと、私は微笑み返す
はい、と子供がタンポポをくれた
ありがとう
こんな些細なことが嬉しいなんて
私は、こんなことで今、小さな幸せを感じている
断崖を見つめる。登りきった仲間が見えた。頂に咲く、美しい薔薇のような花を持っていた。手は花の刺が刺さり、登るときに出来た傷だらけであった
仲間は、遠くから見ても心から幸せそうに見えなかったが、頂を制したものの威厳があった
素晴らしい
凄いよ! 私もあなたのようになりたかったけど、私はそこを登る力がなかったよ
正直、妬ましい気持ちも湧いたが、私は手にあるタンポポを見つめて気づいた。私にはこちらが合っている、と
穏やかな道は小さいが、愉快な出来事を沢山発見できる。何よりそこは、温かい。仲間が落ちても一瞥するだけ、なんてことがない
私は、自分に相応しくない道を選んでいた。そこから落ちたら、全てを失うと思い、恐怖心で更なる恐怖の場所を目指してしまった
道は、結構他にもあるもんだ
そして、その方が無理なく楽しい事もある
自分が薔薇でなくタンポポだと気付いて、良かったと思う。卑下や諦めではない。だってタンポポは、薔薇を羨まない。
タンポポは、野原で伸び伸び咲くのが幸せなんだ。棘も要らないしね
お金持ちじゃなくても、車なくても、中古の狭小マンションでも、私は今不幸じゃない。
穏やかな道を、マイペースでゆく
景色を楽しみながら、行き交う人と無駄話をしながら、でもちゃんと、頂に近づいている。前と目指す山は変わったけど。それもよし!
そこが私の幸せの場所
山の上だけが幸せの場所じゃない
今歩いているこの道も、寄り道した森も川も、全てが私にとっては幸せの場所となる。頂きは、ただの目印だ。歩いていればたどり着く場所。その頂が、私の最終的な幸せの場所とは限らない。そうだとしたら、それは人生の最後、昇天するための場所かもしれない
難しく考えるの、やめよう!
鼻歌唄いながら行こう
LaLaLa♪
タンポポの詩
だよ(*^▽^*)
あなたの、幸せの場所はどこですか?
会ったこともないあなた
最後まで読んでくれたあなたに
ありがとう