ミツバ篇を観たり読んだりする度に、空知先生はどうしてミツバさんにこんなセリフを言わせられるんだろうと驚愕します。

男の子は幾つになってもつるんで悪巧み。
そういう時が一番楽しそう。
女の子は蚊帳の外。

男の友情に対する女の羨望を、ものすごく綺麗に言語化されているなと、毎度のように思います。



女性同士って、お互いを感じやすく弱いものだと認識しているだけに、どこか遠慮がありますよね。
伝えたら強く反発する感情が彼女に起こることを身を以て知っているので。
「これは耳に痛いだろうが言ってあげないと」という大切なことも、伝えるのに非常に心労があります。
友達と喧嘩や口論をした記憶って、数える程しかありません。

一方、男性たちは、「ええっ、そんなこと言ったら修復不可能でしょ……」というような激しい喧嘩をしておきながら、数日後にはけろっとして一緒に遊んでたりします。
ひょっとして腹に一物抱えているのではと思い聞くと、本当になんの怨恨もない様子ということがザラ。

多少雑に扱ってもこいつは大丈夫!
精神的に叩かれても平気!
俺にもなんかあったらガツンと言ってくれ!

(もちろん男性に限ったことではないけれど、)こういう信頼関係は本当に羨ましい。
女性は男性よりも脳梁が発達していると言われているので、物理的にそうなりづらくて仕方ないっちゃ仕方ないんですけど。



ミツバ篇は真選組の男の友情を熱く描き出すことが最大の目的になっていたと思います。
ただ、そのためにあんなにいいキャラクターをすぐ退場させるのは寂しい……。
しかし、女性のこの憧れは、ミツバさんを登場させることでしか表現できなかったんでしょうね。
作品にインパクトを与えるための死ではなかったと、私は思います。

ミツバさんは恐らく作中の表現だと、30代前半〜半ばのようです。
近藤さんより歳上だけど、土方さんと10は離れていないかなといった具合。
沖田くんとは15歳くらい年の離れた姉弟だとすると、「小さい頃に両親を亡くしたこの子を甘やかしすぎた」というセリフと、近藤さんに出会った時の沖田くんの年の頃から、20歳前後(恐らく20前)で両親を亡くしたと考えられます。
目の離せない年の弟を、若い姉がお金を稼ぎながら(もしかしたら財産があったかもしれませんが)育てる必要のある状況で、引き取ってくれようという親類はいなかったのでしょうか。
ミツバさんの苦労はいかばかりか、想像するのは容易いです。
その苦労の中で洗練され、男性・女性・自分自身を冷静に見つめることのできる目を持った、落ち着いた賢い女性が生まれたのだろうなと考えられます。
そしてその賢い女性が、真選組の事始めを最も間近で外から見ていたことで、ようやくあのストーリーを語らせることができたのでしょう。



ミツバさんが生き延びると、①本気で女性との関係は構築しない土方さんの信念を曲げさせるか、②互いに思い合っているという事実に目をつぶって一人の女性を不幸にさせた臆病者で終わらせるかしかありません。
その結末には、できなかったのだろうな。