こんにちは、訪問ありがとうございます。

 

小児科診療を離れて、4年は経ちます

 

今回のテーマは「幼稚園児の便秘」です。

 

成人の便秘と異なりますので、

あくまで小児の便秘についてです。

 

小児科では非常に稀な、

「大腸癌などによる器質性便秘」

「抗コリン薬、医療用麻薬などにによる薬剤性の便秘」

は除外して考えています。

 

便秘って意外に、多くて、

腹痛を訴える方は

救急外来にもよく受診されます。

 

小児救急で、下痢や嘔吐、発熱といった胃腸炎症状がなく、

「腹痛が主訴」であれば、まずは便秘を疑うほどです。

 

便が出ていると言っても、

コロコロ排便で、満足に出ていないと、

毎日排便があっても便秘の可能性があります。

 

便秘とは、

排便回数や排便量減った状態

排便が痛みなどで出にくい状態

を指します。

 

(小児慢性機能性)便秘症とは、

⭕️4歳未満の小児について

以下の項目が少なくても2つが1ヶ月以上あること。

○1週間に2回以下の排便

○トイレでの排便を習得した後、少なくても週に1回の便失禁

○過度の便の貯留の既往

○痛みを伴う便通の既往、あるいは、硬い便通の既往

○直腸に大きな便塊の存在

○トイレが詰まるくらいの大きな便の既往

乳児では排便が週に2回以下、あるいは、硬くて痛みを伴う排便で

かつ、診断基準の少なくても1つでもある場合、便秘だとみなされる。

 

⭕️4歳以上では以下の項目が少なくても2つ項目をみたす

(過敏性腸症候群の診断基準を満たさないこと)

○1週間に2回以下のトイレでの排便

○少なくても週に1回の便失禁

○便を我慢する姿勢や過度の自発的便の貯留の既往

○痛みを伴う便通の既往、あるいは、硬い便通の既往

○直腸に大きな便塊の存在

○トイレが詰まるくらいの大きな便の既往

診断前、少なくても2ヶ月にわたり週1回以上基準を満たす。

 

便秘になりえる場合

トイレを使用する前は、

部屋の隅にしゃがみ込んでうんちをしたり

親や机などにしがみついてきばってうんちをしていた。

 

場合にトイレトレーニングが始まると、

便座に座ってうんちをすることがなかなか出来ない場合があります。

座ってするのが、難しくできない場合は、

先ずは座る練習をさせて、(5〜10分程度)それ以上、無理強いしたり

怒ったりするのはやめましょう。

拒否感が強くなってしまいます。

 

トイレトレーニングが始まって便秘がちな場合は

トイレトレーニングを一旦中断して、1ヶ月以上してからまた挑戦しましょう。

 

※早期のトイレトレーニングは

便秘を起こしやすくなるだけではなく、

頻繁に小便を繰り返すことで、

膀胱に尿が十分にたまることなく成長し、膀胱の成長を妨げ、

膀胱が小さくなり、夜間の尿を十分に貯める事ができなくなると、

夜尿症の一因になります。

トイレで排便をするなんて、小学校入る前に完了すれば

十分です。

年長さんでも遅すぎないですので、

3〜4歳で頑張りすぎないようにしましょう。

 

トイレでのうんちがしにくい姿勢

足を交差させる(足を組む)→やや股を広げた姿勢(膝と膝が離れる姿勢)が出しやすい

足が地面につかない→台座(足場)を用意する

 

学童期以降では、

朝の排便時間が十分に取れないことが便秘につながります。

朝したくても、時間が間に合わずに我慢して登校してしまうと、

学校では恥ずかしくてトイレに行けないため便秘になりやすいです。

早起きが必要→早寝が必要ということです。

 

食事と便秘について

○水分摂取について

通常、小児は脱水がない(老人は脱水である事がある)ため、

水分をたくさん取ることで便秘が改善する場合は、ほとんどない。

 

ただし、ある種の便秘薬の種類や、食物繊維をたくさん摂った場合は

水分が過多の方が効果が出やすい。

 

○乳酸菌などを取ることによって、腸内細菌叢を改善することで

便秘が改善するか?

 

そもそも、腸内細菌叢の乱れが便秘を引き起こすという

エビデンスがありません。

 

一方で、母乳栄養児は、乳酸菌などが腸内に多く便性が緩く回数が多いことも分かっています。

 

従って、エビデンスはないが、

腸内細菌叢が、善玉菌のバランスを増やすことは悪影響はないと

考えられるので、

「乳酸菌」や「ビフィズス菌」を積極的に取ることは問題ないことと考えられる。

 

※乳酸菌やビフィズス菌を善玉菌と言います。

 

○牛乳は便秘に良い?悪い?

牛乳をたくさん飲む子には、そうでない子より、「裂肛が多い」「便秘が多い」

また、牛乳不耐症の症状の1つに「便秘」があり

牛乳アレルギーの症状の1つに「便秘」がある

ことから、

牛乳は、便秘の原因の1つです。

 

牛乳を飲む量を減らしたり、一時的にやめると便秘が改善することがあります。

牛乳を毎日200mlを超えて、たくさん飲むのは便秘の児は幼稚園や学校で出る量と合わせて

200ml程度までにしておきましょう。(もっと減らしたり、中止しても良いです)

 

○食物繊維はとった方が良いか?

とった方が良いです。

うんちの容量を増やす効果→不溶性食物繊維

善玉菌の栄養源(善玉菌を増やす)効果→水溶性食物繊維

があります。

 

赤はおすすめ

野菜「とうもろこしかぼちゃ、ごぼう、ほうれん草、ブロッコリーなど」

海藻「ひじき、海苔」

果物「りんご、バナナ、キウイなど」

芋 「さつまいも」 

豆 「小豆大豆、おから、納豆、枝豆」

お菓子「ポップコーン、きんつば、甘納豆」

シリアル「オールブラン、フルーツグラノール

 

※「オリゴ糖」について

甘味料としてのオリゴ糖は、

善玉菌の餌になるため、腸内細菌叢を改善するのに役立ちます。

 

※食べることが少ない児は、作られるうんちが少ないため、

排便量が少ないです。

そのため、便秘になりやすいのです。

逆にたくさん食べる子はうんちの量が多く、回数も増えやすいです。

たくさん食べ過ぎると、うんちの1回量が大きすぎて、

排便痛やお尻が切れそうになったりして逆効果にもなります。

体重が少なくやせ型の子は、便秘になりがちです。

やせ、女児、ダイエット→便秘

といった感じです。

 

食事療法で改善しない場合は薬物療法になりますが、

不勉強な小児科医は便秘に対する薬物療法もよく間違っています。

 

もし自分の子供が薬物療法を受けている場合は

下記と見比べてください。

 

食事療法と並行して、

乳児の場合は

綿棒浣腸で肛門を刺激してください。

コツとしては、

綿棒を2〜3cmと少し長めに入れる事です。

ぐるぐると少し円を描くのが良いですが、

出し入れしても良いです。

入れる時に抵抗が有るのに強く押し込まなければ、

腸が傷ついたりはしません。

何度してもクセになりませんし、1日も何回かしても大丈夫です。

 

薬物治療

便塞栓があれば、まずはそれを解除する。

1週間程度を目安に強めも薬も使います。

 

ポリエチレングリコール(モビコール)を使う

 

刺激性下剤

ピコスルファートナトリウム (ラキソベロン液など)

センノシド

 

グリセリン浣腸

座薬(ビサコジル)   テレミンソフト坐剤の事です。

 

と言った強めの薬剤や浣腸や座薬も使用します。

 

弱めの浸透圧下剤

酸化マグネシウム製剤や

モニラックシロップ

 

なども用いる事があります。

 

とにかく、邪魔な便塊を取り除く事がまずは重要です。

 

慢性便秘の原則

便塞栓の解除を除けば

浸透圧性下剤から開始する

 

浸透圧性下剤

糖類のもの

マルツエキス

6ヶ月未満    1回 3〜6g

6ヶ月以上1歳未満 1回(6〜)9g

1歳以上3歳未満 1回(9〜)15g

 

モニラックシロップ 体重kg×1〜2mlを1日3回に分割して内服

※ガラクトースト血症の患者さんには使えません

 

ほとんど副作用がないこれた糖類の下剤を乳児では使う事が多いです。

 

強力なものとして、

ポリエチレングリコール製剤

モビコール配合内用剤です。

2歳以上で使用可能で、海外でも第一選択薬になっています。

 

塩類下剤

酸化マグネシウム

水酸化マグネシウム

小児投与量は決まっていません。

 

この辺が効果が不十分であれば、

刺激性下剤ということになります。

 

テレミンソフト坐剤

グリセリン浣腸

ラキソベロン等(ピコスルファート製剤)

 

こちらは、乳児でも内服いらずで簡単に投与できてしまいますが、

海外のガイドラインでも、

日本の小児慢性機能性ガイドラインでも、

乳児には使うにしても短期間投与で、乳児に使う事は推奨されていません。

 

簡単に投与できて、

効果が強いため安易に乳児に、

座薬や浣腸やラキソベロンを使うのは

ダメな小児科医で、注意してください。

 

以上が乳幼児に対する便秘に対する話です。

 

器質的な異常がある、

内科的な病気がある

外科的な病気がある場合は考えていません。

 

非常に治りにくい場合は、クリニックの小児科でなくて、

総合病院の小児科などでよく診てもらいましょう。

 

過去に私が経験した話です。

6年くらい前に私が小児科医をしていた時に、

中学生の女子が腹痛で来院しました。

この時は夏休みだったのですが、

前日にバレーボールの大会で隣の県に試合に行き、

そこで腹痛があり、大きな病院の救急外来に行ったそうです。

 

その時は、浣腸して軽快し、便秘だねと帰宅になりました。

 

翌日になりお出かけ中に、また腹痛があり私の元へ受診しました。

 

お腹が痛い時は、まずは腹部の触診ですが、

腹部を触ると、肝臓腫大に私は気づきました。

 

(3年目、小児科医としてデビューして3ヶ月目の新米小児科医だった時に、

ここ1週間の間に腹痛で2回受診している4歳児をみたら、

肝腫大に気付き、肝芽腫と診断した事があるのです。

 

前の2回は部長や先輩医師で、肝腫大に気づかなかったのです。

その時に、部長に、丁寧に診察しているから私のお陰で見つかってよかったと

褒められまして、

小児科専門医試験の面接でも、症例検討にその肝芽腫が選ばれ、

そこでも珍しい症例をきちんと診断できたのは、

丁寧に診察しているからで、これからも丁寧に診察してあげて下さい。

といわれ、私は腹部の触診を常に腫瘍や肝腫大がないか考えて触っていたのです。

 

そう言った経験から、腹部診察も重要だと私は思っています。)

 

触った瞬間に肝腫大と見抜いた私と比べて、

前の救急当番の小児科医がいかに適当かがわかります。

 

腹痛これは、便秘だな〜

と軽く考えていたに違いありません。

 

肝臓腫大に気づくと、あれ?!と思いよく見ると、

紫斑が首や他の部位にちらほらと見つかりました。

 

腹部エコーをすると、脾臓も腫れていました。

 

「肝脾腫と紫斑」

これは、白血病や悪性リンパ腫などあり得るなと思い、

地域の中核病院へすぐに紹介状を書いて行ってもらいました。

 

結果、白血球が27万もあり、急性白血病でした。

その日のうちにヘリコプターで、大学病院に搬送となっています。

 

1年くらいして母が私にお礼を言いに受診しました。

寛解して、今は自宅にいるという事でした。

 

腹痛と言っても、すぐに便秘と考えると

そうではない事もあり注意が必要です。

 

私が経験した記憶に残るひどい便秘の子は2名います。

 

1人は尿閉の小学5年生女児

私が当直していた、夜に腹痛、尿閉で受診しました。

エコーでは、膀胱に尿が溜まり、

腹部レントゲンでは、便秘を疑う画像所見でした。

 

浣腸して、何度か排便すると自然と尿も

できるようになりました。

 

膨らんだ直腸などが、尿管や膀胱を圧迫して尿が出にくく

なっていたのです。

 

その日は入院して、

本当に便秘のためだけのために尿閉なのか

泌尿器科、小児科部長たちにも相談しましたが、

結局は、便秘が原因だろうとなりました。

 

便秘で私の外来に通っていたのですが、

私が診察時に、腹部マッサージをこの女児が気に入ったようで、

ゆうくん先生にお腹を触ってもらうと気持ちいいと言って、

便秘が改善しても半年くらい通っていました。

 

腹部マッサージは、腸を動かす効果やリラックス効果もあり、

喜んでくれると、私も嬉しかったです。

 

もう1人は、

3〜4歳くらいの幼児で、

腹痛が主訴ではなくて、

お風呂に入ると、自然に大便が漏れてくる

とう児でした。

 

これが、便塞栓です。

 

硬い便が直腸に留まり、そのわきから便が溢れてくるのです。

 

パンツなども自然と汚れます。

 

慢性的な便秘が酷すぎると、

便意がにぶり、

排便が出そうといき感じがなくなってしまうのです。

 

看護師に摘便してもらい、

しばらくは、浣腸を用いて

定期的な排便をさせる事で改善しました。

 

もう10年くらい前の症例ですが、

これも半年〜1年位followしていたと思います。

 

不適切なトイレトレーニングが原因と考えられ、

完全に便秘が治るまで1年くらいは、

トイレトレーニングを中断してもらいました。

 

私、トイレトレーニングって、好きではないんですよね。

焦らなくても、自然にトイレで出来る様になるから、

4〜5歳で十分ではないかと思います。

 

ちなみに、私の子供ですが、

便秘になったことはありません。

 

たぶんですけど、

高級フルーツをよく与えられているからかもしれません。

それと、私自身が野菜好きですから、

食物繊維もたくさん取れているのかもしれないですし、

ヤクルトみたいな小さい乳酸菌飲料で鉄分、カルシウム強化のものも

よく飲ませています。

 

大きくなると、運動も大事です。

公園に走りに行くとよくお腹も痛くなりトイレの行きたくなります。

運動すると腸も動くんだと思います〜