こんにちは、訪問ありがとうございます。
研修医〜小児科医として学んだ貴重な症例を残しておきます。
5〜10年以上前のことなのでやや曖昧です
⑩(小児の)頭痛は難しい
はっきり言って、ほとんどの小児の頭痛患者は様子見で大丈夫です。
しかし、ごくわずかに
大丈夫ではない患者が、存在します。
★反省した、ウイルス性脳炎の中学生女子★
風邪ひいて、熱が下がったが、頭痛がひどくて生活がままならないという
女子中学生が来院した。
採血は異常なし。
頭痛の訴えがあり、生活出来ないと言う割に元気で、
ウイルス性髄膜炎の検査ができますが、背中に針を刺してものすごく痛いのと、
ウイルス性髄膜炎だと根本的には治す薬がほぼないから、入院で様子見る程度になる。
わたしには、あまり痛そうに見えなかったから、
動けない程であれば、痛みが治るまで経過観察入院もできる
というような事を説明して
そこまでは望んでいないため、様子を診ていきましょうとなった。
数日後、病棟当番で回診していると、
この前、帰した女の子が入院となっていた。
頭部MRI撮影して、ウイルス性脳炎と診断されていた、、、
私も、頭部MRIくらい撮っておけば良かったと、反省しました。
その子は2週間くらいは入院していました。
★細菌性前頭洞炎+敗血症の男子中学生
この症例の1か月前くらいに、小児感染症学会があり、
新幹線で岡山に行った。
私は症例発表をしに行きました。ちょうどワンオペ育児の最中でして、
新幹線で小僧さんと一緒にいったのですが、3歳の小僧がおとなしくできないため
あちこちうろうろしていたら、財布を掛けていたコートからすられてしまったのです。
新幹線をおりて、改札にいくと財布がない。7万円紛失
駅員さんに説明すると、次の駅に向かった新幹線内を探してもらえましたが見つからず
改札はそのまま通らせてもらえました。
しかし症例発表はあるので、小僧さんを予約しておいた託児所に預けて、
別の新幹線で来ていた先輩医師に説明し帰りの電車賃を借りました
そこで、気が気がではないものの、
発表をしに来たから発表の順番を待っていると、
細菌性前頭洞炎とそこから脳へ波及した細菌性脳炎の講演をしていて
へー、こわいこともあるなと聞いていたのです。
前頭洞とは、おでこの骨の隙間のことで、薄い骨の向こうには脳があります。
鼻の奥~頬の骨、前頭洞などはつながっていまして、
細菌が増殖し骨の空洞に巣くってしまうことがあります。
良くあるのが、上顎洞炎(頬の骨のすきまに細菌性の膿がたまる、副鼻腔炎とも一般的に言われます)
前頭洞炎(おでこ)にしても、上顎洞炎(ほほ)にしても、
おでこやほほを軽く叩くと響いて痛みがでます。
私がみた男子中学生は、おでこを叩くと、とても痛くて響くというのです。
CTで骨の空洞がどうなっているか撮影すると、前頭炎がはっきりわかりました。
講演で怖いこともあると、聞いていた私は、念のため採血だけでなく血液培養を実施しました。
血液検査も数値がとても悪く、後日、血液培養も判明し
原因菌が肺炎球菌と特定され、最適な抗生剤も判明し
2週間しっかりと抗生剤投与を行い無事に治癒して退院していきました。
財布はどうなったかですが、
岡山でなくした財布ですが、大阪で発見されました。
警察からの電話で判明しました。
取りに来てほしいということでしたが、
取りに行けないと説明するとクロネコヤマトで郵送してくれるということでした。
着払いで郵送を頼むと、
1~2週間たっても配達されません。
クロネコヤマトに電話すると、
配達済みになっているというのです!!!
配達証明として私のサインが残っているはずだからそれを見せてください
ということを伝えると、
調査して連絡するということでした。
翌日には電話があり、配達済みとなっているが
配達はされていないと言う事がわかった。
配達物(財布)は行方が分からない
ということで、責任者が謝罪に来るということでした。
配達員は配達物を、その日のおわりにまとめて配達済みにしたが、
そもそも私宛の配達物(財布)がどこの時点でなくなったか不明ということでした。
警察はすでにお金は入っていないといっておりましたが、
2度も盗られたことがショックです。
お詫びに3万円ほどくれました。
まあ、2度も盗まれるなんて、不幸な財布だな
ということは今でも、よく覚えていますが、
発表はどんなことしたか、全く完全に忘れてしまいました
★自転車の練習で転けて翌日頭が痛いと救急に来た小学生は?
これは、数年以内の話です。
前日の昼にこけて、翌日の夜に救急外来に来た症例です。
頭から壁に止まれなくてぶつかったといっていて、
顔にも擦り傷があり、ちょっと元気がない様子です。
気持ち悪くて何回か吐いたとのこと。
こう言った場合、頭痛も存在し、気持ち悪いからと言っても、
頭痛は頭痛、
気持ち悪さは、胃腸炎なんてことも考えられます。
二つ症状があっても、1つの原因で、2つの症状がでることも、もちろんありますが、
2つの原因で2つの症状ということも十分に考えられます。
CTスキャンは、レントゲン撮影よりも遥かに多くの放射線を浴びますので、
脳細胞の遺伝子に傷をつけます。
腹部CTなどを行っても、以後の腹部の悪性腫瘍のリスクが高まりますので、
慎重に適応を考えなくてはいけません。
今回、診察室でも比較的元気はなかったものの、
1日経ってから来院した事が気になりました。
激しくぶつけたのであれば、すぐその日に痛がって来院したのでは?
私もCTを撮影するか悩みましたが、
待合室で待っている姿をのぞくと、
桶をもって、気持ち悪そうにぐったりしていました。
脳炎の子もそいなのですが、
診察室では元気を装う、我慢してシャッキリ振る舞う
ことで、過小評価してしまう事があります。
そこで、おかしいと思い、CT撮影にまわすと、
下記の写真です。写メを撮って置きました。
すぐに、大きな病院へ転送となったのです。
白い部分が新しい出血で、その周り時間がたった出血があります。
急性硬膜外血腫
医師の仕事で難しいと思うことは、
例えば
発熱して、咳が出て受診します。
鑑別疾患では
風邪、
肺炎
喘息
風邪+中耳炎の合併など
稀ではあるけど、悪性腫瘍、気管支異物、心不全が悪化して肺水腫など
発熱、咳でも
鑑別疾患はたくさん上がりますが、
常に検査をするわけではありません。
どのような患者に検査して、どのような患者には検査せず様子見る。
1つ1つ、ケースバイケースの中から考えるのです。
考えすぎてもダメ、慎重に検査しすぎてもダメ、全て風邪だと決めつけるのもダメ
毎回診療ごとに
不安を正しい知識と経験、診察によって打ち消したり、
これは、検査が必要だと判断したりします。
これが、医師としての仕事の難しさだと思います。
単に知識があり、検査しまくるようでは研修医レベルです。
大人と違い子供は頭部CTやMRIを撮ることは少ないです。
頭部CT
主に脳出血や外傷性出血、骨折などを調べる場合
すぐに取れるが、放射線を浴びて発癌のリスクが少しあがります。
頭部MRI
撮影に20〜30分かかり、通常は予約にて行う。
主に、脳腫瘍、脳炎、脳梗塞などを疑った場合に実施する
放射線を浴びる事がない。
子供だと、じっとしていられない、
(静脈麻酔で寝かせて取ったりします)
緊急の場合でも予約の都合でとりにくいなどに欠点があります。
今回はここまでです。