医師である私が考える良い小児科・悪い小児科の違いを考えてみました。
絶対条件①
良い小児科は、やたらとたくさんの薬をださない。
悪い小児科は、症状に関係なく沢山の薬を出す。
解説:子供にとっての風邪薬は、
早く治すための薬ではなく、症状を緩和するだけのものです。
風邪薬を飲んでも早く治ることはない。
風邪薬にも副作用があるため、必要最低限の処方をするのが、良い小児科医です。
一部の鼻水どめには、痙攣を起こしやすくする作用があります。
咳止めには、呼吸を抑える作用があります。
咳止めの(正しくは肺の空気の通り道を広げる喘息の薬)テープには、
不整脈の副作用などがあります。
特に乳児の突然死症候群には、風邪薬も関与していると考えられ、乳児にやたらと
風邪薬を出す小児科はダメな所です。
絶対条件②
発熱するたびに、抗生剤をだす小児科は、悪い小児科である。
解説:
抗生物質の不適切使用は社会問題となっています。
小児の発熱の90%程度は、ウイルス性であり、抗生物質は効果がありません。
加えて、抗生物質の投与は、肺炎などの重症感染症の予防効果はありません。
抗生物質が投与されると、体の中に耐性菌が出現する可能性があります。
耐性菌ができてしまえば、薬が効きにくくなりますし、耐性菌が人から人へ移ることで、
抗生物質が効かない菌がどんどん増えてきています。
良い小児科医は、発熱時に抗生剤を極力出さないように努めます。
発熱患者に対する抗生剤投与率を10%にするのは無理ですが、20〜50%程度に抑える事は可能です。
熱がでても2回に1回は抗生剤を出されない小児科があれば、そこはかなり良い小児科でしょう。
逆に毎回、抗生剤を投与する小児科はどうして悪いかと言えば、
ウイルス性か細菌性かを見極める努力をしていない。
ウイルス性が疑われるから大丈夫と自信を持って言えない。
母親を納得させるために手取り早く抗生剤を出しておくといって、早くすませたい。
こういった考えであることがほとんどです。
抗生剤が、小児にとってかえって不利益になることがあるということの説明を怠っているのです。
今回は、比較的簡単に判別できるポイントを紹介しました。
今後はもう少し細かく、よい小児科と悪い小児科の違いを考えたいとおもいます。
おまけ
優しい小児科医は、母親に好かれます。
医師は優しいだけではダメです。
母親の言いなりにはならず、不必要な治療はしない態度が必要です。
点滴が必要な時はしてあげるし、ただ母親が心配でしてほしいといっても、
必要ない場合はしないことも、大切です。
小児によく使う1回200mlの点滴には、塩が0、8g 糖分5g 水分200g程度なのですから
これをしたからよくなるということはあまりありません。
胃腸炎で嘔吐ばかりする児や、検査などするついでに点滴や、抗生剤の点滴など
場合よっては必要となるでしょう。
すぐに点滴をしてくれる医師は、母親を満足させる事はできるでしょうが、
必要ない点滴をされる児は、不必要に痛くて怖い点滴をされるだけなのです。
※理想とする小児科を実現するためには、
医師サイドの努力だけでは無理です。
母親の受診態度もまた、小児科医を育てるとうことも覚えておいて下さい。