彼が
フキの煮物を
おすそ分けしてくれると
言うので

彼の家へ
それを受け取りに行った



私は
お店のカウンター席に
座らせてもらい

お喋りをしながら
彼の洗い物が終わるのを
待っていた



「よし、終わった!
 ちょっと待ってね。
 今、タッパーに詰めて
 持って来るから。」



2階の部屋へ上がり
間もなく
バタバタと下りて来て

手にはタッパーと
ペットボトルのお茶…

「営業は出来ないからね~(笑)
 これ、俺のお茶だから
 飲んでから帰りな。」

そう言って
お茶をごちそうしてくれた



彼が落ち着いたところで
いよいよだ…

私は
隠しておいたアップルパイを
カウンターの上に置いた



「お土産、持って来た…。
 味はどうかわからないけど…
 頑張って作ってみたよ?」

「えっ!?
 もしかして…?」



焼いたパイを
紙のパイ皿に移し替えて
アルミはくで覆った

その丸い形から
彼はアップルパイだと
気付いたようだった



アルミはくを外して見せると

「おぉーっ!
 すげぇ!
 きれいに出来てるじゃん!」と

とても喜んでくれた



「この形も
 自分で作ったの?」

「うん。
 ネット検索してたら
 可愛いのがあったから
 真似してみた。」

「どれどれ、
 ごちそうになろうかな。」

「うん、食べてみて…?
 私、作ったことないし、
 食べたこともないから…
 アップルパイが
 どんなものなのか
 よくわからなくて…。」



彼は
私の話しに頷きながら
パイを4つにカットした



「いただきまーす!」

「はい、どうぞ。
 ……リンゴ……味はどう?」

「うん!
 ちょうどいいよ!
 シナモンも
 効かせてくれたんだね~。
 ありがとね。」



ちょうどいい

その言葉に安心して
急にテンションが上がった(笑)



「良かったぁ!
 全然わからないで
 作ってたからさ~!
 頑張って良かった~!」

「うんうん!
 美味しいよ!
 リンゴのシャキシャキ感も
 残ってて
 いい感じだね。」

「そのリンゴもね?
 紅玉が売ってなくて
 王林にしたんだ。
 だから
 酸味とか甘みとか…
 ちょっと心配だった。」

「そうそう!
 俺、王林にしなよって
 言おうと思ってたんだ。
 王林で正解!(笑)」

「そっかぁ!
 それなら良かった!
 ホントに作って良かった~!」





美味しそうに食べてくれる
彼を見ていると
本当に嬉しくて幸せだった



「全部、頂いていいの?」

「うん!いいよ?」

「やったぁ!
 また明日食べよっ!」

そう言って半分食べて
残りの半分を
アルミはくに包んでいた



その後
また少し
コロナの話しをして
煮物を頂いて帰ってきた






彼は
「煮すぎて失敗した」
と言っていたけれど

やっぱり
常時売られているものとは
全然違う

ちゃんと旬の味がして
とても美味しかった



すごくHAPPYな一日だった