前回の内容です
パーキンソン病を患っていた母は
71歳の時に胆のう炎を患い手術をしました。
手術は問題なく成功したのですが
手術後の2週間の入院中に
身体が動かなくなってしまったのです。
一旦退院した母ですが
自力で介護ベッドから起き上がれず
リハビリのために再入院しました。
しかし身体機能は一向に回復せずに
1年もの間、病院をたらい回しにされて
寝たきり生活となりました。
正直、1年間の母の入院生活は壮絶で
私は何度も心が折れそうになりました。
けれども私には頼れる人が
誰もいなかったのです。
結婚をして幸せな家庭を持ちながら
母の入院や介護については
全く無関心でいられる妹を
羨ましく思いました。
私が泣きながら母の危篤を訴えても
妹は他人事のようにそれを聞いて
彼女が本当に心配していたのは
息子の受験のことだったのです。
私は自分がこの年齢になるまで
結婚出来なかったことを
初めて後悔しました。
自分にも家族がいれば
妹のように母のことを割り切れるのだろうか
もしそうだったら
どんなにか心が楽になれるのに
やがて母は入院生活を終えて
自宅に戻ってきました。
完全寝たきりの在宅介護が始まったのです。
母はもう今までの母ではなくて
明らかに別人でした。
1日に何度も大量に飲む薬の副作用で
毎日のように幻覚や幻聴に襲われ
寝たきりのせいか
認知症のような症状が現れるようになりました。
私は平日は会社から帰宅すると
母の介護をして
土日も母に付き添う日々でした。
母の介護はいつまで続くのだろうか。
私の未来は一体どうなるんだろう。
そんな不安を抱えながら毎日を送っていました。
ある日、母のオムツを替えていた時に
母は私の目をまっすぐに見て
はっきりとこう言ったのです。
「私と一緒にいたら幸せになれないわよ。
私のことは捨てなさい」
それは、病気で弱ってしまう以前の
娘を想う母の顔でした。
続きます