「ポルガラと相談した方がよさそうだな」ローダー王も同意した。「思うに一週間は休養が必要だぞ」
だがセ?ネドラは今やめる實德好唔好わけにいかないことを知っていた。ちょうどすべてが勢いづいてきたところだった。そこには絶対に途中で崩すことの許されない、加速的に高まりつつあるリズムのようなものがあった。初めのうち、王女が来るという噂はきわめてゆっくりした速度で広がっていったが、今では彼女に先行して走っているありさまだった。彼女たちはそれに追いつくためにますます先を急がなければならなくなっていた。観衆のセ?ネドラに対する好奇心が満たされる決定的な呼吸のようなものがあり、これを逃したらすべては水の泡と化し、彼女は再び初めからやり直さなくてはならなくなるのだ。
ボー?ワキューンの聴衆はこれまで相手にしてきた中ではもっとも人数が多かった。すでにその気になりかけている人々を燃え上がらせるにはわずかの火花でことたりた。再度わけのわからないパニックにむかつきを覚えながら王女はありったけの気力をかき集め、彼女の戦争への呼びかけに応じるよう人々を説得するために演壇に登った。
すべてが終わり、集められた若い貴族たちが軍隊の列に次々と加えられていくあいだ、セ?ネドラは一人で心を落着かせるわずかな時間をもとめて野営地の周辺を散歩した。これは今や彼女にとってなくてはならない儀式になっていた。演説が終わったあと気分が悪くなることもあれば、さめざめと泣くこともあった。またあるときは樹木に目もくれず、もの憂げに森のなかをさまよっているだけのこともあった。ポルガラの指示によりダーニクがつねに彼女につきそっていた。この誠実で純朴な男の存在はこの上もない慰めだった。
二人は廃墟からさほど離れていない場所をぶらぶら歩いた。よく晴れた明るい午後で、樹木では小鳥がさえずっていた。セ?ネドラは憂いを含んだ表情で、森の静けさに身をゆだねて動揺する心をいやそうとしていた認知能力
「そりゃ、お偉いさんはいいよなあ、デットン」突然、反対側の藪で人声がした。「だがおれたちに何の関係があるっていうんだ」
「あんたのいうとおりさ、ラメール」恨めしそうなため息とともに別の声が答えた。「けどけっこうわくわくさせられたぜ」
「おれたち農奴をわくわくさせるものい物ぐらいなもんだ」最初の男は苦々しげに言った。「あの娘っ子はさんざん義務だのなんだのがなりたてていたが、おれが目下のところ義務を感じてるのは自分の胃袋だけさね」ふいにかれは話を中断した。「おい、あの草は食えるかな」
「たぶん毒があるんじゃないかね」デットンが答えた。
「だがおまえさんだって確かなわけじゃないだろ? 食えるものをみすみす見逃す手はないぜ。そいつで死なない限りはな」
セ?ネドラは二人の農奴の会話を聞きながら足がすくむような思いにとらわれていた。いったい人間はここまで惨めになれるものだろうか。彼女は衝動の命ずるまま藪の向こう側へ足を踏み入れていた。むろん忠実なダーニクもあとに従った。
二人の男は泥によごれたぼろをまとっているだけだった。双方とも中年すぎの男だったが、これまで幸せというものを一度も味わったことのないような顔つきをしていた。痩せた方の男は葉の多い雑草を吟味するのに夢中だったが、もう一方は近づいてくるセ?ネドラの姿を見て恐怖の表情もあらわに立ち上がった。「おい、ラメール」かれはあえぐように言った免疫系統。「今朝しゃべっていた娘っ子だぜ」